資料 憲法と戦争(9) 日本国憲法の改正手続に関する法律(抄) 第98条 投票総数(は)……憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計し た数をいう。 第102条の6 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的 に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を 審査するため、各議院に憲法審査会を設ける。 第102条の7 憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関 する法律案を提出することができる。…… 第102条の8 各議院の憲法審査会は、憲法改正原本案に関し、他の議院の憲法審査会と協議し て合同審査会を開くことができる。 2 前項の合同審査会は、憲法改正原案に関し、各議院の憲法審査会に勧告することができる。 第103条 国若しくは地方公共団体の公務員若しくは特定独立行政法人……は、……影響力又は 便益を利用して、国民投票運動をすることができない。 2 教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために……影響力又は便 益を利用して、国民投票運動をすることができない。 第105条 何人も、国民投票の期日前十四日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、 ……一般放送事業者等の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせ ることができない。 第126条 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第98条第2項に規定す る投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第96条第1項の国 民の承認があったものとする。 【コメント】この法律(国民投票法あるいは改憲手続法ともいう)は、一昨年5月14日、「右」に 歪んだ憲法観・歴史認識を持つ安倍首相のもとで、自民党・公明党が強行成立させた。 改憲手続き法には重大な問題点が含まれている。ここでは4つの問題点を指摘しよう。① 最低 投票率の定めがない。定めがなければ近時の選挙のように投票率が50%前後では、国民のわずか 20%台の賛成で改憲案が成立する。国民の声とかけ離れた結果が生じる。【98条と126条参照】。 ② 500万人を超える公務員、教育者の国民投票運動が禁止される。本来国民投票運動は自由でな ければならないものである。【103条の1と2】。③投票日14日前からの有料広告の禁止以外は、 有料広告は野放しとなっている。有料広告を野放しにすれば、「金で憲法を変える」事態をもた らしかねない。【105条】。④国民投票は先送りして、憲法審査会だけを先に設置し、そこで3年 間改憲について議論して、改憲に向けた世論作りができるようになっている【102条の6・7・8】。 私たちは「二度と戦争はしない・させない」「日本国憲法の前文と第9条を守り抜く」ことを 共通の目標としている。自民党がめざす改憲の内容は、先に発表した「新憲法草案」をみれば、 憲法の基本原理、とりわけ非戦、非武装の絶対平和主義を放棄し、日本をアメリカとともに戦争 のできる国にすること、そしてそのために立憲主義を破壊し、憲法を「国民を縛るもの」に変え てしまうことにあるのは明らかである。改憲手続法は、憲法破壊のための法にほかならない。こ の恐るべき法律がいつ鎌首を持ちあげても叩き伏せることができるよう構えておきたい。【R】
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