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社会福祉法人改革について
私達の最大の関心事でありました改正社会福祉法が今国会で成立予定です。
法律ができ上がったことで、いわば、これからの法人運営の基本設計が見えて
来た、そして、これからはより細かい実施設計が示されてくる段階に移ってく
ることとなります。その過程を注意深く見守りながら、私達法人側からも意見
をタイムリーに発していく必要も出てくると思われますが、同時に,私達として
も、極力情報を得ながら、所要の準備を併せ進めておくことも必要となります。
当稿については、出稿後の動きにより、旧聞に属する内容になってしまって
いる部分が有るかも知れませんし、又、既に十分に理解されている経営者の方
については蛇足となるかもしれませんが、皆様方の参考になればと思いあえて、
編集子が参加した中四国地区社会福祉法人経営者セミナー(7 月23・24日岡
山市)と、たまたま入手しました社会福祉懇談会第 43 回経営セミナー(7 月 1
日東京都)の内容をサマリーにして紹介します。
双方とも、当時の国会における審議の進み具合から、いよいよこれ迄の議論
が終着に至るということで緊張感が漂い、真剣な質疑がなされ、又、至る所で
具体的な情報交換が活発にされている状況でありました。
今次法改正の背景
御承知のとおり大きな流れとしては、国の規則改革会議からの動きと、政府
税制調査会における議論の二つの動きから今日の状況に至っている。
この過程では、
「社会福祉法人が何故必要なのか」そして「社会福祉法人をど
うするのか」ということまでの議論がなされてここに至っている。
そもそものキッカケは、一部の限られた法人の事情に端を発したものであり、
そのいずれも、今日迄、営々と一生懸命やって来て、成果を積み上げて来た私
達社会福祉法人の経営者の大多数にとっては、スッキリと腹に落ちないアゲイ
ンストなものとなっています。
しかしながら、確かにそうかも知れませんが、事がここ迄に至ったのは、私
達を巡る環境がいつの間にか変化して来ており、社会福祉事業も変容し、
「経営
改革」がやはり求められて来たということの帰結でもあります。この際むしろ
私達は、この変化を前向きに捉え、これを活かしていくことで、より一層、国
民の負託に応える組織となり、私達社会福祉法人が今後とも特別法人として、
又非課税法人として在り続けるための『答え』としたいというものでありまし
た。
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以下、当面私達にとって特に関連の深い事項についての説明は以下の通りで
した。
理事会・評議員会
理事会:これ迄も実行上は枢要な機能であったが、現行法上に規定はなかった。
このためきっちり規定すると同時に“業務執行”をする機関(定数は 6
名以上)として明示される。
:現在評議員会等で審議されている予算については、基本的には理事会
で審議されれば足りる(⇒定款の定める方法による)。
評議員会:従来の評議員会とは、役割は全く違ったものとなる。権限と機能は
法律に定められたもののみであり、定款変更、合併・解散の承認、
理事・監事・会計監査人の選任・解任、理事・監事の報酬決定等と
なる。
:ガバナンスを担う側であり、メンバーについては十分なる検討が必
要である(選任例は別添のとおり)。親族・職員は選ばれない。
:28 年度中に定款変更をし、28 年度中に評議員を選任する。29 年度
初頭には評議員会を開催し、理事を選任する。
:理事との兼任はできない。定数は 7 名(理事数+1 名)以上である。
但し小規模法人(1 法人 1 施設経営のものが考えられているのではな
いかとのこと)については 29 年度から 4 年間は 4 名との特例がある。
:評議員の選び方は、定款で法人が定める。定款により(常設の)第
三者機関(選定委員会)を設置し、選定することも可。(実体上は、
理事会が選定委員を選び推せんすることも考えられる。)
:付議議案の提案は理事会が行う。原則、評議員会からの動議はでき
ない。
※今後示される定款準則等に十分留意して下さい。(編集子より)
役員報酬基準の作成・公表、役員関係者への特別利益の提供の禁止
役員報酬基準の作成・公表
:各法人で報酬基準を作成する必要がある。
(ガイドライン的なものは国
において作成される予定)
:基準は公表する。
個々人の報酬額は公表せず、トータルでの公表となる
※第三者から見て,どのような額がどのような基準で支給されるのか分からなけ
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ればならないという考え方である。(編集子より)
役員関係者への特別利益の提供の禁止
:親族等の関係者に特別の利益を提供することを禁止するもの。
例えばファミリー企業から市場価格よりもはるかに高い価格で買った
とか、安く売ったりとか、貸したりするものがこれに当たる。従前より
もこれらの取り決め内容の範囲が拡大され、そして公表されることとな
る。
内部留保
:収支差が発生しても、発生すること自体が問題とされることではない
が、これがいくらでも生じていいのかということである。
例えば職員の処遇がキッチリと確保されているかのように、当然に充
実させなければならないことがしっかりと手当された上での内部留保
であるかどうかという問題である。
社会福祉法人の利益は敢えて言えば社会の公費なわけであり、一定の
条件を越えてどんどん貯められたものは社会に還元されるべきである
というのが今回の改革の発想である。
:内部留保を事業推進に必要な資金・財産とそれ以外のものに分け、
もしも事業推進に必要なものを越えるものがあれば、これを再投下
させるというのが今回の仕組みである。
利益については、法人の経営努力で創り出したものであり、法人の財
産そのものであ。何故これを取り上げるのかという意見も強かったし、
このことを巡る議論も平行線を辿ったが、今回の法律で仕切られ、返
納することはしないが、該当する法人において、社会福祉の充実に使
うべきだとされた。この方法が国のため一番重要ではないかという形
で整理されたものである。
:必要な財産・資金であるか否か、又その額の計算方法についてはこ
れから細かく詰められていくことになっている。
若し、この額を越えるものが有れば、該当法人において再投下計画
を作成し、関係する地域協議会等とのスリ合わせを経ながら、事業
として還元されなければならないこととなる。
:投下すべき資金・財産の充当の順位は当然のことながら
① 各法人において実施されている社会福祉事業への充当が第一順
位であり、施設の新設・増設とかの新たなサービスの展開が考え
られる
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② 次に地域公益事業とされ
③ その次がその他の事業となっている。
地域公益事業は例えば、介護保険以外の支援であるとか、児童福
祉施設において、卒園者等の特定の者に対する支援・居場所づく
りのように、今取り組んでいる定型的な社会福祉サービスから一
歩踏み出したようなものがイメージされている。
次のような例示が有った。
社会福祉充実事業のイメージ
~それぞれの地域コミュニティが抱える福祉課題への対応~
・大阪府社協「レスキュー事業」をはじめ、各地で
始まっている困窮者支援・貧困の連鎖防止等
・地域包括ケアシステムにおける「住まい」、「生活
支援」
・子育てに悩む専業主婦の親に対する保育所の地域
支援
・重度障がい者や社会適合困窮者に対するケア付き
就労
・児童養護施設「卒業者」に対する進学・就職・結
婚等のライフステージにおけるアフターフォロー
・刑余者、外国籍者、シングルマザー等の社会的包
摂活動
・(大阪)スマイルサポート事業
「地域協議会」が地域ニーズを発掘⇒社会福祉法人が
実施(単独/協業)
※再投下計画の作成を求められる法人は、左程多くないのではないかという感
触を持っているとのコメントが付された(編集子より)
公益性の発揮―私達に今一番必要とされる認識とは?-
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ここ迄の各項目は、いわば、新しい手続きとして、私たちが粛々と対応をし
ていけばいいことであり、大多数の法人においては当然のこととして取り組ま
れて来たはずの内容でありますが、これから述べるこの“公益性の発揮”に係
わることが今回の改正の一番の根っ子の部分であり、私達が一番意識し、考え
なければならないポイントであるようですので、一番最後にまとめました。
:法律第 24 条第 2 項においては『社会福祉法人は・・・・日常生活又は社
会生活上の支援を必要とする者に対して無料又は低額な料金で、福祉サ
ービスを積極的に提供するよう努めなければならない。』と新しく追加さ
れ規定さています。
ここに規定され私達に課された責務は、よくよく考えてみれば、私達社
会福祉法人がもともと生まれた時から持っている性格のものであり、何故
もう一回、わざわざ法律において確認されたのか、その意味は何なのかと
思いを馳せることが重要なことなのです。
私達の行っている通常の業務に加えて、行政とかの制度外あるいは市場
外で困っている人達に対してサービスを提供するための法人の在り方が、
もう一度、法律の条文にして責務として整理されています。
:何故、私達社会福祉法人が、特別法人として、又非課税法人としての地
位を与えられているかというのは、やはり私達が社会の一番厳しいとこ
ろをカバーし、頑張って活動を続けて来たということだったはずです。
ところが、営々として重ねて来た歴史が今、信頼を欠き、制度も揺ら
いでいるというのが現状です。ここをもう一度明確に意識し直し、私達
の福祉サービスを通して地域貢献を続けていくことが、即ち、公益性の
発揮をしていくことが、今後とも、私達が特別法人として又、非課税法
人として存在し続けるための答えのようであります。この点をしっかり
と認識しなければならないということでありました。
:もちろん、資金的に全裕のない法人は資金のかからないことをすればい
いのであって、情報提供とか居場所づくりとか、それぞれ各法人の専門
性を活用し手の届くところでの取り組みを進めて欲しいということであ
りました。
:具体的に、事業を進めるに当たっては、極力、地域全体として取り組め
るようなもの、あるいは業種を通じた広がりの有るもの、更には、協同
体として市・県を単位とするような事業展開を志向して欲しいとのこと
であった。
:更に考え方の整理・徹底を図るためということで、説明が加えられたが、
①この項の取り組みは、当然のこととして全ての法人の責務とされてい
るものであり、先に述べた、余裕資金が生じた法人が進めるべきとさ
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れた事業とは位置づけがちがうものであること
②必ず、全ての法人が取り組まなければならないものであり、全ての国
民から注視されているということを忘れてはならないとのことであっ
た。
:各法人においては、これから直ちに検討を深め、法の期待に応えるべ
く“何ができるのか”“何をなすべきか”について具体的に行動を開始す
ることが一番肝要なこととなるようであります。そして、このことの成
否が、社会福祉法人の改革を左右することであると結ばれていました。
以上がサマリーでありますが、県経営協としても引き続き、関係行政機関、
全国経営協等からの情報収集に努め、皆様にタイムリーにお届けしたいと考え
ております。又、その都度の直近の情報に触れていただくための講演会・研修
会等を積極的に企画して参りたいいと考えています。
とりあえずの第一報が以上であります。(編集子)
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