平成27年度赤穂市国民健康保険事業運営基本方針 1 はじめに 国民健康保険(以下「国保」という。 )をはじめ、医療保険制度を取り巻く環境は、急速な高齢 化の進展、疾病構造の変化、医療技術の高度化などにより、医療費は増加の一途をたどる一方で、 わが国経済は、緩やかな回復基調が続いているものの、保険税収入は伸び悩んでおり、依然として 厳しい財政状況にあります。 国保は、国民皆保険の基礎として重要な役割を果たしていますが、低所得者や医療の必要が高い 高齢者が多く加入する構造となっており、財政基盤の強化を図る必要があります。 このような状況の中、一昨年の「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関す る法律」 (プログラム法)の成立を受けて、国保の財政基盤強化や財政運営責任の都道府県移行を はじめとする医療保険制度改革が実施されることとなり、本年の通常国会への関連法案提出を目指 し、 「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」 (国保基盤強化協議会)において、制 度の具体的な検討が行われています。 保険者としては、この大きな変革期における保険者の責務を十分に認識し、医療制度改革への的 確な対応を図るとともに、今後の医療費の動向を見極めながら、より適正かつ安定的な国保事業の 運営と諸般の課題に積極的に取り組むことが要請されています。 参考(平成27年度医療保険制度等改正予定の主な項目:国保関係) 1 2 3 4 保険者支援制度の拡充 (平成27年4月施行) ①7割軽減の対象者数に応じた財政支援の補助率 12% → 15% ②5割軽減 〃 6% → 14% ③2割軽減 〃 - → 13% ④財政支援額の算定基準 平均保険税収納額の一定割合 → 平均保険税算定額の一定割合 保険財政共同安定化事業の拡大 ( 同 上 ) 事業対象 30万円を超え80万円以下の医療費 → 80万円以下のすべての医療費 保険税の課税限度額の見直し ( 同 上 ) 基礎分:51万円→52万円・後期分:16万円→17万円・介護分:14万円→16万円 低所得者に係る応益保険税軽減の見直し ( 同 上 ) ①5割軽減の見直し…軽減対象となる所得基準額を引き上げ (現行) 基準額 (改正後) 基準額 33万円+24.5万円×被保険者数及び特定同一世帯所属者数 33万円+26万円×被保険者数及び特定同一世帯所属者数 ②2割軽減の見直し…軽減対象となる所得基準額を引き上げ (現行) 基準額 33万円+45万円×被保険者数及び特定同一世帯所属者数 (改正後) 基準額 33万円+47万円×被保険者数及び特定同一世帯所属者数 2 平成26年度赤穂市国保財政の状況 (1)歳入 ア 急速な高齢化の進展や医療技術の高度化などにより、医療費は増加傾向にありますが、市 単独支援額72,090千円を含む一般会計繰入金327,690千円の繰入れをはじめ、 財政調整基金172,909千円の繰入れなどにより、所要の財源を確保することができま した。 イ 税率等改正の結果、保険税の総額は、886,928千円となる見込みです。 ウ また、平成25年度の繰越金10,616千円については、療養給付費等負担金(国庫) の返還金などに充当しました。 エ その他、国庫支出金や退職被保険者等の保険給付に係る療養給付費交付金などについては、 事業実績に応じて交付される見込みです。 オ 前期高齢者交付金は、1,778,625千円となります。 カ 以上により、歳入総額は、5,766,600千円と見込んでいます。 (2)歳出 ア 療養給付費算定の基礎となる医療費は、過去の医療費実績を踏まえ、さらに最近における 医療費の動向を考慮し、当初1人当たり費用額を、 ・一般被保険者 394,716円(前年度決算見込比 0.73%増) ・退職被保険者等 370,932円( 1.15%減) 〃 総費用額で、4,794,988千円(前年度決算見込比0.19%増)と見込みました が、決算見込みとしては、 ・一般被保険者 396,658円(前年度決算比 ・退職被保険者等 448,623円( 〃 1.25%増) 13.69%増) 総費用額は、4,842,364千円(前年度決算比0.89%増)で、当初見積りに比 べ、一般被保険者で0.58%増、退職被保険者等で5.68%増となっています。 また、国保会計が負担する一般と退職の療養給付費は、3,569,250千円(前年 度決算比1.59%増)となる見込みです。 イ 後期高齢者支援金等は、641,732千円(前年度決算比0.47%増)となります。 ウ 介護納付金は、272,105千円(前年度決算比0.10%増)となります。 エ 以上により、歳出総額は、5,766,600千円(前年度決算比1.21%増)と見込 んでいます。 (3)差引 結果、剰余金なしと見込んでいます。 3 平成27年度赤穂市国保事業の運営 (1)基本方針 ア 本市の国保医療費総額は、急速な高齢化の進展や医療技術の高度化などにより、増加傾向 にあります。 このような状況の中、平成27年度は、過去の医療費実績を踏まえ、さらに最近における 医療費の動向を考慮し、医療費総額を対前年度決算見込比0.43%増の 4,863,100千円と見込んでいます。 イ 本市国保被保険者1人当たり医療費は、平成25年度において県下の市町の中で1位とな っており、このための対策は引き続き重要な課題であります。 ウ 医療費の増加傾向への対策として、市民の健康な生活習慣の確立など、健康寿命の延伸に 向けた保健事業を推進するとともに、特定健康診査・特定保健指導を第2期計画に基づき適 切に実施し、医療費の適正化に努めてまいります。また、後発医薬品(ジェネリック医薬品) 差額通知を実施し、後発医薬品の更なる使用促進に努めてまいります。 エ 保険税収納率向上対策の一環として、長期滞納者などに対する納税相談の実施、短期 被保険者証及び資格証明書の発行を通じての面談機会の確保などにより、滞納者の減少と歳 入の確保に引き続き努めてまいります。 オ 被保険者間の保険税負担の公平確保及び特に中・低所得層の保険税負担軽減を図るため、 課税限度額及び保険税率を改正するとともに、物価の上昇傾向を踏まえて、低所得者が応益 保険税の軽減対象から外れないようにするため、軽減判定所得の基準を改正することとしま す。 (2)保険税率等の改正方針 保険税率等については、平成23年度に財政調整基金の活用などにより、1世帯当たりの保険 税額が平均で約1万円の減額となるよう改正を行い、平成26年度においては、基礎分の所得割 税率を0.05%引き下げることで中・低所得層の負担軽減を図りました。 平成27年度より、被保険者間の保険税負担の公平確保の観点から、法令の改正により引き続 き課税限度額が引き上げられることとなりますが、平成26年度の法定限度額までの引き上げに とどめることとし、後期高齢者支援金等分の所得割税率を0.05%引き下げることで中・低所 得層の負担軽減を図ります。 また、物価の上昇傾向を踏まえて、低所得者が応益保険税の軽減対象から外れないようにする ため、5割軽減及び2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の基準を引き上げることとします。 ア 課税限度額の改正 課税限度額については、平成26年度の法令で定められている額(基礎分:51万円、後 期高齢者支援金等分:16万円、介護納付金分:14万円)まで引き上げることとします。 【参考:平成27年度の地方税法施行令で定められる課税限度額】 基礎分:52万円、後期高齢者支援金等分:17万円、介護納付金分:16万円 イ 税率の改正 後期高齢者支援金等分の所得割税率を2.25%(現行:2.30%)に引き下げること とします。 ウ 低所得者に係る応益保険税の軽減判定所得基準の改正 応益保険税の軽減措置について、軽減対象となる世帯の軽減判定所得の算定において、被 保険者数及び特定同一世帯所属者数に乗ずる金額を5割軽減は26万円(現行:24.5万 円)、2割軽減は47万円(現行:45万円)に引き上げることとします。 エ 課税限度額及び税率改正の影響率 ①後期高齢者支援金等分 区分 現行 平成27年度 改正額(率) 影響率 課税限度額 14万円 16万円 2万円 14.29% 所得割税率 2.30% 2.25% △0.05% △2.17% ②介護納付金分 区分 課税限度額 現行 平成27年度 12万円 改正額(率) 14万円 影響率 2万円 16.67% オ 改正による影響額等 全体 (単位:円) 現行 1人当たり調定額 一般 退職 1世帯当たり調定額 一般 退職 86,795 86,238 94,979 138,334 138,839 135,317 平成27年度 86,374 85,855 94,034 137,648 138,207 133,953 比較 限度額改正 △ 421 △ 383 △ 945 △ 686 △ 632 △ 1,364 税率改正 350 386 32 515 573 49 △ △ △ △ △ △ 軽減改正 267 265 306 449 448 463 △ △ △ △ △ △ 504 504 671 752 757 950 ⑴基礎(医療給付費)分 53,447 53,153 58,802 89,806 89,860 88,919 平成27年度 53,217 52,933 58,389 89,419 89,488 88,295 比較 △ △ △ △ △ △ 限度額改正 230 220 413 387 372 624 税率改正 0 0 0 0 0 0 軽減改正 0 0 0 0 0 0 △ △ △ △ △ △ 230 220 413 387 372 624 ⑵後期高齢者支援金等分 17,473 17,369 19,392 29,361 29,362 29,324 平成27年度 17,332 17,242 18,989 29,123 29,148 28,715 比較 △ △ △ △ △ △ 限度額改正 141 127 403 238 214 609 197 206 32 331 349 49 税率改正 △ △ △ △ △ △ 軽減改正 267 265 306 449 448 463 △ 71 △ 68 △ 129 △ 120 △ 115 △ 195 ⑶介護納付金分 △0.43% △0.41% △0.70% △0.43% △0.41% △0.70% 影響率 △0.81% △0.73% △2.08% △0.81% △0.73% △2.08% (単位:円) 現行 1人当たり調定額 一般 退職 1世帯当たり調定額 一般 退職 影響率 (単位:円) 現行 1人当たり調定額 一般 退職 1世帯当たり調定額 一般 退職 △0.49% △0.44% △0.99% △0.50% △0.46% △1.01% (単位:円) 現行 1人当たり調定額 一般 退職 1世帯当たり調定額 一般 退職 影響率 15,875 15,716 16,785 19,167 19,617 17,074 平成27年度 15,825 15,680 16,656 19,106 19,571 16,943 比較 △ 50 △ 36 △ 129 △ 61 △ 46 △ 131 限度額改正 153 180 0 184 224 0 税率改正 軽減改正 0 0 0 0 0 0 △ △ △ △ △ △ 203 216 129 245 270 131 影響率 △0.31% △0.23% △0.77% △0.32% △0.23% △0.77% (3)歳出 ア 医療費の状況 平成27年度の医療費の算出に当たっては、過去の医療費実績を踏まえ、さらに最近にお ける医療費の動向を考慮し、総合的に判断のうえ見積りました。 それぞれの総費用額は、 ・一般被保険者 ・退職被保険者等 合 計 4,595,837千円(前年度決算見込比 3.54%増) 267,263千円( 〃 33.81%減) 4,863,100千円( 〃 0.43%増) 1人当たり医療費は、 ・一般被保険者 406,352円(前年度決算見込比 2.44%増) ・退職被保険者等 431,069円( 〃 3.91%減) 407,636円( 〃 1.78%増) 全 体 と見込みました。 この結果、療養給付費を、3,561,500千円(前年度決算見込比0.22%減)と 見積り、療養費など、その他の保険給付費も、過去の医療費実績を踏まえ、さらに最近にお ける医療費の動向を考慮し、所要額を算出しました。 イ 後期高齢者支援金等 国から示された係数により試算し、本年度概算見込額が681,620千円(対前年度決 算見込比:18,430千円増) 、前々年度精算見込額が△33,782千円(対前年度決 算見込比:12,324千円減)となった結果、当該支援金等647,838千円(前年度 決算見込比0.95%増)と見込みました。 ウ 介護納付金 介護保険2号被保険者に係る介護納付金は、国から示された係数により試算し、 247,092千円(前年度決算見込比9.19%減)を計上しました。 エ 保健事業費 保健事業費は、保険税収入額の4.85%、42,361千円を見込み、健康世帯表彰、 医療費通知、医療受診状況及び疾病分類調査などを継続して実施するほか、引き続き後発医 薬品(ジェネリック医薬品)差額通知を実施し、後発医薬品の更なる使用促進に努めます。 生活習慣病健診一部負担助成については、引き続き一次健診と二次健診の一部助成を行い、 健康増進と医療費の適正化に努めます。 オ 以上により、歳出総額は、6,467,000千円と見積りました。 (4)歳入 ア 保険税 保険税については、改正税率等で算定し、基礎(医療給付費)分の保険税総額は、 613,922千円(一般:577,069千円、退職:36,853千円)と見込みまし た。 後期高齢者支援金分の保険税総額は、199,912千円と見込みました。 介護納付金分の保険税総額は、60,207千円と見込みました。 イ 国庫支出金 国庫支出金は、それぞれの補助基準・交付基準に基づき算定しました。 ウ 療養給付費交付金 それぞれの交付基準に基づき算定し、一般被保険者分33,389千円、退職被保険者等 分187,756千円、後期高齢者支援金分21,718千円、介護納付金分294千円、 過年度分1千円となった結果、243,158千円と見込みました。 エ 前期高齢者交付金 国から示された交付基準に基づき算定し、本年度概算見込額が、 1,900,064千円(前年度決算見込比:77,540千円増) 、前々年度精算見込額 が、△72,628千円(前年度決算見込比:28,729千円減)となった結果、 1,827,436千円(前年度決算見込比2.72%増)と見込みました。 オ 県支出金 県支出金は、それぞれの補助基準・交付基準に基づき算定しました。 カ 一般会計繰入金 一般会計繰入金については、①保険基盤安定制度(低所得者の保険税軽減分の補填など) による繰入金208,337千円、②職員給与費等繰入金52,181千円、③出産育児一 時金繰入金12,600千円、④国保財政安定化支援事業による繰入金49,274千円、 その他一般会計繰入金として⑤市単独支援額60,612千円と見積り、 その総額を、383,004千円と見込みました。 キ 基金繰入金 平成27年度末の基金残高見込のほぼ全額に当たる13,000千円を繰り入れることと しました。 ク 以上により、歳入総額は、6,467,000千円と見積りました。 以上、平成27年度の赤穂市国保事業の推進に当たっては、医療制度改革の実施による影響や医 療費の動向などを十分見極めながら、適正な運営に努めます。
© Copyright 2024 ExpyDoc