卸薬業H27.2月号

卸DI実例集
第378回
Question No.1624
場したのが、IFN製剤を必要としないインターフェ
C型慢性肝炎のインターフェロンフリー治療と
は? (2014年11月)
ロンフリー治療です。2014年9月に発売されたダ
クラタスビルとアスナプレビルの2剤併用により、
経口薬のみでウイルスを排除できるインターフェ
Answer
ロンフリー治療を行うことが可能となりました。
C型慢性肝炎の治療は、まず、C型肝炎ウイルス
(HCV)の排除をするために抗ウイルス療法を検討
します。抗ウイルス療法で治療ができない場合は、
この他にも、各メーカーでインターフェロンフリー
C型慢性肝炎治療薬が開発、承認段階にあります。
なお、2014年9月からインターフェロンフリー
病態の進行抑制を目的とした肝庇護療法や瀉血療
治療( ダクラタスビルとアスナプレビルの2剤併
法を行います。
用)も医療費助成の対象となりました。
抗ウイルス療法は、注射薬のインターフェロン
(IFN)製剤と経口薬のリバビリン、プロテアーゼ阻
害薬との3剤併用が主流となっています。この3
剤併用によりHCVの排除率は高まってきているも
のの、IFN製剤での治療では、効果が見られない患
者や副作用により投与中止となる患者、また、高齢
等の理由で治療を受けられない患者が少なくあり
ません。
このような患者の新たな治療の選択肢として登
【C型慢性肝炎の治療法】
◆抗ウイルス療法
・ IFN単独療法
・ IFN+リバビリンの併用療法
・ Peg-IFN単独療法
・ Peg-IFN+リバビリンの併用療法
・ Peg-IFN+リバビリン+プロテアーゼ阻害薬( アスナプ
レビル以外)の3剤併用療法
・ プロテアーゼ阻害薬( アスナプレビルのみ)+NS5A阻害
薬の併用療法
◆肝庇護療法
◆瀉血療法
2014年11月作成
表1 主なC型慢性肝炎治療薬
注射
インターフェロン 抗
投与経路
経口
型肝炎ウイルス薬
C
分類
一般名
インターフェロン アルファ
インターフェロン製剤
インターフェロン アルファ-2b
インターフェロン ベータ
ペグインターフェロン ペグインターフェロン アルファ-2a
製剤
ペグインターフェロン アルファ-2b
プリンヌクレオシド
リバビリン
類似物質
テラプレビル
シメプレビル
プロテアーゼ阻害薬
バニプレビル
NS5A阻害薬
アスナプレビル
ダクラタスビル
主な商品名(会社名)
スミフェロン(大日本住友)
オーアイエフ(大塚製薬)
イントロンA(MSD)
フエロン(東レ=第一三共)
ペガシス(中外)
ペグイントロン(MSD)
レベトール(MSD)
コペガス(中外)
テラビック(田辺三菱)
ソブリアード(ヤンセン)
バニヘップ(MSD)
備考
製造販売承認
(2014年9月26日)
スンベプラ(ブリストル・マイヤーズ)
ダクルインザ(ブリストル・マイヤーズ)
2014年11月作成
表2 開発中のインターフェロンフリー C型慢性肝炎治療薬
一般名又は治験薬記号
レジパスビル/ソホスブビル
ソホスブビル
ABT-450/リトナビル
ABT-267
ダクラタスビル/アスナプレビル/BMS-791325
グラゾプレビル/エルバスビル
会社名
開発段階
ギリアド・サイエンシズ
承認申請中
アッヴィ
第3相
ブリストル・マイヤーズ
MSD
第3相
第2相
2014年11月作成
Vol.39 NO.2 (2015)
11 (83)
〈参考資料〉
ものを示す。1)、2)、3)
・C型肝炎の疾患情報,肝炎.net(2014 年 10 月)
http://www.kanen-net.info/resource/141215040
4000/kanennet/index.html
【心血管系への作用】
多くの臨床試験で、心血管イベント(動脈硬化、
脳梗塞、心不全など)の発生抑制効果が認められて
・肝炎総合対策の推進,厚生労働省ホームページ
(2014 年 10 月)
いる。
・血管内皮機能改善、冠血管拡張作用
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku
血管内皮細胞からのNO産生増加による酸化スト
-kansenshou09/080328_josei.html
レスを抑制する。
・各社製品情報
NOは血管平滑筋細胞においてcGMPの産生を促進
〈執筆協力会社〉東邦薬品㈱薬事部
させ平滑筋を弛緩させ、血管拡張作用を惹起する。
・プラークの安定化作用
プラーク内のコラーゲン含量を増加し、マトリッ
Question No.1625
クスメタロプロテアーゼ(MMP)活性を低下さ
スタチンのプレイオトロピック効果とは
(2014年11月)
せプラークの安定化を促進する。
・抗炎症作用
炎症性サイトカインであるC反応性蛋白(CRP)
Answer
を減少させる。
プレイオトロピック効果(Pleiotropic effects)と
は、
「多面的効果」のこと。これは、ある種の薬剤
が有している本来期待している効果とは別の体に
CRPは肥満、高血圧、糖尿病などの動脈硬化促進
要因があることで高値となる。
・抗酸化作用
NAD(P)Hオキシダーゼを阻害して活性酸素種
とって有益な可能性がある効果を示す。
スタチン系薬剤は、本来持っている強力なLDLコ
レステロール低下作用とは別に血管内皮機能改善
作用、免疫抑制作用、抗炎症作用、骨形成促進作用
なども有することが報告され、その多面的効果に期
の産生を抑制し、酸化ストレスを低下させる。
・血管平滑筋増殖抑制作用
MMP活性を低下させ新生内膜の増殖を抑制する。
・抗血栓作用
PI3K-Akt活性化を介し、NOの産生を増やして血
待が寄せられている。
スタチン系薬剤は、コレステロール生合成系の律
小板凝集を抑制する。
速酵素であるHMG-CoA還元酵素を阻害すること
組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の発現
により、肝臓でのコレステロールの生合成を阻害す
を亢進、プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-
る。HMG-CoA還元酵素は、肝臓内でHMG-CoAを
1)の発現を抑制する。
メバロン酸へ変換する酵素である。メバロン酸の
下流には、中間代謝産物であるファルネシルピロリ
【心血管系以外の作用】
・骨形成促進作用
ン酸(FPP)やゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)
破骨細胞の活性を阻害することが基礎研究で明
も存在し、スタチン系薬剤はこれらの産生も抑制す
らかにされている。
動物実験で化骨を促進するとの知見もある。
1)
る。
FPPやGGPPは、血栓形成や内皮機能不全、血管
・アルツハイマー認知症抑制作用
収縮性に関与するRas、Rho、Racなどの低分子GTP
βアミロイド蛋白やアポリポ蛋白Eの産生を抑
結合蛋白(G蛋白)を活性化させる。また、メバロン
制するとの報告が散見される。
酸はPI3K-Akt系を不活性化させ、一酸化窒素合成
・パーキンソン病抑制作用
酵素(eNOS)を修飾することで血管拡張物質である
動物実験で、ドパミンニューロン保護作用がある
一酸化窒素
(NO)
産生低下に関与する。スタチンは、
ことが明らかにされている。
FPPやGGPP、メバロン酸の産生を抑制することによ
ヒトでもパーキンソン病の発症頻度がほぼ半減
り、抗炎症や血管拡張、凝固・線溶等の血管リモデリ
するとの報告がある。
1)
、2)
ング抑制作用等の多面的効果を示している。
スタチンのLDLコレステロール低下作用以外の
多面的効果として、現在までに報告されている主な
Vol.39 NO.2 (2015)
12 (84)
・癌細胞増殖抑制作用
アポトーシスや細胞分化を誘導し、細胞増殖を抑
制するとの報告がある。
新規発症のみならず、治療後の発生率の抑制が報
告されている。
図 コレテロール生合成系の関与に基づく
多面的効果の機序1)、2)
・呼吸機能改善作用
抗炎症作用により気管支喘息を改善させる。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも病状の悪化や挿
管を余儀なくされる頻度が減少することが示さ
れている。
・免疫抑制作用
マクロファージの発現抑制により免疫応答を抑
制する。
・虚血性脳卒中抑制作用
脳卒中の最も重要な危険因子である動脈硬化を
予防する。
【参考資料】
1)スタチンの多面的な作用とそのメカニズム,
高橋伯夫,Angiology Frontier,10(3),179-
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版(日
本動脈硬化学会)」では、冠動脈疾患におけるスタチ
ンの有用性が示され、高LDLコレステロール血症の
185, 2011
2)ス タチン,内野真純、野出孝一,The Lipid,
24(2),122-127,2013
第一選択薬として推奨されている。冠動脈疾患予
3)各 スタチンの肝外作用の特徴,田中 篤、赤
防には、スタチンの多面的効果も踏まえ個々の症例
阪隆史,日本医事新報,No.4422,90-91,2009
に応じて適切なスタチンを選択することが重要で
〈執筆協力会社〉㈱エバルス薬事情報室薬事情報グループ
2)
ある。
本書は、
『月刊卸薬業』に連載した「卸DI実例集」につ
いて、各執筆者において経時的事項や内容の再チェック
など全面的な補正・加筆を加え、実務委員会において編
集した卸DI実例集です。
編集は、本文の前に内容の主要
事項を分類した分類目次をつけ、巻末にキーワードとな
る用語の50音索引を付し利用の便を図っています。
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