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2153
E・J ホールディングス
小谷
裕司
(コタニ
ユウジ)
E・J ホールディングス株式会社社長
予想を超えて変化する経営環境下で、当初計画を達成
経営資源の再配分により国内外への展開を拡大
◆会社概要
取締役 浜野 正則
当社は、2007 年 6 月 1 日、エイトコンサルタントと日本技術開発による共同株式移転により設立し、東証二部へ
上場している。本社は岡山市、資本金 20 億円、単体の総資産 194 億 27 百万円、純資産 187 億 21 百万円である。
グループ会社は、エイト日本技術開発、日本インフラマネジメント、近代設計の 3 社である。E・J ビジネスパート
ナーズは、2015 年 5 月 1 日付で、エイト日本技術開発へ吸収合併された。エイト日本技術開発の子会社に、共立
エンジニヤ、共立工営、都市開発設計があり、連結子会社は 6 社である。
◆2015 年 5 月期決算概要
2015 年 5 月期連結決算の概要については、受注高 221 億 63 百万円(前期比 91.1%)、売上高 227 億 47 百万
円(同 102.7%)、営業利益 15 億 48 百万円(同 79.7%)、経常利益 16 億 30 百万円(同 82.1%)、当期純利益 13
億 98 百万円(同 82.1%)、1 株当り利益 243.80 円(前期 300.33 円)となった。
営業面においては、受注高が当初計画 225 億円に対して 98.5%となり若干の未達である。前期と比べ、補正予
算等を含めた公共事業総額が減少したことが要因である。下期は高付加価値業務の選択受注に注力した。
技術面においては、海外インフラ市場への取り組み強化策として、バンコクのアジア工科大学と業務提携し、技
術交流セミナーを開催した。2015 年 5 月のネパール地震への現地調査団を派遣した。
経営面においては、弱点領域の強化をはかるため、北陸にエイト日本技術開発新潟事務所を、バンコクに駐在
員事務所をそれぞれ開設した。エイト日本技術開発に E・J ビジネスパートナーズを統合し、経営資源の再配分に
より、国内外における新たな事業を開拓し、弱点領域(業務分野、エリア)の受注シェア拡大をはかる。
連結受注の概要については、1 件当り受注高は 924 万円(前期比 98%)、受注件数は 2,397 件(同 93%)となっ
た。ただし、同業他社 50 社統計による受注件数の前年比 87%に比べ減少率は低い。
連結受注高の内訳については、業務別では、建設コンサルタント業務(建設コンサルタントおよび補償コンサル
タント)が前期比 92%、調査業務(測量および地質調査)が同 89%となり、計画値に対しては 99%、97%と若干下
回った。当社が注力している技術提案型業務に関しては同 99%と微減であった。重点分野(環境・エネルギー、自
然災害リスク軽減、都市・地域再生、インフラ・マネジメント、情報・通信)に関しては、同 96%であった。
発注機関別受注高については、国土交通省を中心とした中央省庁の受注高が前期比 79%となり、当初計画値
に対しても 91%と未達であり、全体の受注が減少した大きな要因となった。都道府県は前期比 93%となったが、計
画値は達成した。市町村・民間は前期比、計画値ともクリアした。海外は前期比 109%と増加したが、計画値に対
しては未達である。
地域別受注高については、北海道・東北地方での震災復興事業が減少するという予想どおり前期比 85%となっ
たが計画値は達成した。関東地方はインフラの改修が増加する傾向にあり、前期比、計画値ともに達成した。中部
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地方は前期比、計画値ともに達成した。近畿、中国、九州地方は、下期の発注が減少したため前期比、計画値と
もに下回った。
受注高は減少したものの繰越受注高が前期より多く、これが売上に繋がり、売上高は前期比 2.7%増の 227 億
47 百万円となった。営業利益に関しては、技術伝承、人材の強化・育成の計画から人件費等が増加し、売上原価
率が前期比 1.7 ポイント、販管費が 0.3 ポイント増加したが、順調な生産体制の実施により、計画値 14 億円を上回
った。以上の結果、経常利益率 7.2%(当初計画値 6.8%)を達成することができた。当期純利益は、子会社の吸収
合併により繰越欠損金を引き継いだことから税金費用が大幅に減少し、計画値 9 億円の 1.55 倍の約 14 億円を達
成した。ROE は 3 期連続 10%以上となった。
連結貸借対照表については、流動資産が 144 億 68 百万円(前期比 2 億 63 百万円増)となった。現金預金が減
少し、受取手形および売掛金が増加したことが主な要因である。固定資産は 75 億 33 百万円(同 74 百万円増)と
なった。保有株式等の時価上昇、のれんの償却、有形固定資産の取得等が主な要因である。負債合計は 72 億 95
百万円(同 12 億 96 百万円減)となった。借入金の減少、未成業務受入金の減少、未払消費税等の増加が主な要
因である。負債・純資産合計は 220 億 2 百万円(同 3 億 38 百万円増)となった。当期純利益の計上、その他包括
利益累計額の増加が主な要因である。
キャッシュフローについては、営業活動によるものが 8 億 12 百万円の増、投資活動によるものが 3 億 80 百万
円の減、財務活動によるものが 8 億 87 百万円の減となった。現金および現金同等物の増減はマイナス 4 億 43 百
万円、期首残高が 94 億 14 百万円、期末残高は 89 億 70 百万円となった。
◆2016 年 5 月期の通期業績見通し
経営基本方針としては、前期と同様に人材力強化と収益性の向上に向けた取り組みを継続する。収益体質の
強化に向けた業務プロセス改革、コスト構造改革を継続的に実施する。人材確保、処遇改善、ワークライフバラン
スなどの施策による活力ある企業を実現する。老朽化対策事業、防災関連事業へ注力する。グループ企業連携
により、経常利益 16 億円以上の確保、ROE8%以上、原価率 72.2%以下を目標とする。
営業方針としては、受注面において、震災復興関連予算、インフラ老朽化対策予算等の公共事業の当初予算
のみで想定し、補正予算等の特殊要因は考慮しない。技術提案型業務の受注拡大をはかるため、6 月 1 日付けで
「災害リスク研究センター」および「インフラ保全センター」を設立した。海外においては、アフリカ諸国、東南アジア
諸国での実績を活かし、諸国間を結ぶ広域インフラ整備、都市ライフライン分野等への展開強化をはかる。また、
タイ(バンコク)駐在員事務所を営業拠点として、東南アジア事業の拡大をはかる。
以上より、2016 年 5 月期は、受注高 232 億円(前期比 104.7%)、売上高 232 億円、売上原価 167 億 50 百万円
(原価率 72.2%)、営業利益 15 億 10 百万円、経常利益を 16 億 10 百万円、当期純利益 13 億円 1 株当り利益 226
円、ROE8.6%を見通している。
◆経営環境の変化と今後の基本戦略
社長 小谷 裕司
E・J グループの企業理念は、「地球環境にやさしい優れた技術と判断力で、真に豊かな社会創りに貢献する」こ
とであり、そのためのビジョンとして、持続的成長と企業価値向上を追い続け「我が国トップクラスのインフラ・ソリュ
ーショングループを目指す」ことを掲げている。
経営環境については、ここ数年は東日本大震災の影響が大きかったが近年はインフラの老朽化が顕在化して
きた。また、アベノミクスにおいては地方創生が不可欠であるとされ、市場の変化にも対応しなければならない。国
土強靭化施策、インフラ長寿命化などインフラへのニーズも多様化している。また、国内だけでは成長が限定的な
ので海外市場への展開も不可欠である。どのような時代においても、社会が衰退しない国土・地域を創造する企
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業であり続けるために展開を進めている。
◆第 3 次中期経営計画
第 3 次中期経営計画は、以下の 4 項目を基本方針としている。「グループ連携の強化」、「戦略的事業への取り
組みおよび弱点領域の強化」、「新たな価値を創造する人材力強化」、「安定的な経営基盤の確立」である。
「グループ連携の強化」については、グループの総合力を結集してグループシナジーを追及し、企業価値向上を
はかる。事業開発事業は、これまで E・J ビジネスパートナーズが主体となって事業の掘り起こしを担っていたが、
エイト日本技術開発に統合した。主力の建設コンサルタント事業は、エイト日本技術開発を核に、子会社の共立エ
ンジニヤ、共立工営、都市開発設計、関連会社である近代設計が、各地域や専門領域での連携を強化する。イン
フラ・マネジメント事業においては、日本インフラマネジメント、近代設計と連携し、技術者の派遣、施工管理、維持
管理などを行う。以上の連携強化により上流から下流までのワンストップ・ソリューションを進める。
「戦略的事業への取り組みおよび弱点領域の強化」については、選択と集中による戦略的な資源配分を実施す
るとともに、健全な事業運営を行う。関東エリアは市場として大きいが、当社のシェアは低いので、関東エリアの強
化をはかる。また、新たなニーズに対応した事業展開(地域創生分野など)を進める。
「新たな価値を創造する人材力強化」については、新入社員を含め若手の人材を大量に採用しており、プロフェ
ッショナルとしてチャレンジする企業文化を醸成し、人と企業が共に成長することをはかる。
「安定的な経営基盤の確立」については、品質・技術力向上を通じて顧客の信頼を獲得し、収益力とステークホ
ルダーの価値向上に努め、持続的な成長を実現する。
エイトコンサルタントと日本技術開発が統合し、その基盤を作るのが第 1 次と第 2 次の中期経営計画であった。
現在は飛躍へ向けた基盤強化として第 3 次中期経営計画の初年度が終わり、安定成長をはかる第 4 次中期経営
計画へと続くスムーズなスタートが切れた。
◆グループ事業戦略
事業開発事業は、エイト日本技術開発を中心に、道路・廃棄物等インフラ関連事業の管理・運営、地方創生の
案件開発・投資を行う。主なサービスは、低炭素社会構築事業、社会インフラ関連事業、都市・地域再生等関連事
業、PPP 事業(官民協同事業)である。具体例としては、徳島県那賀町において「木粉製造事業」を創生し、2015
年 4 月より商業運転を開始した。木粉から土木・建築資材であるウッドプラスチック製品を開発・販売し、地域材の
有効活用と地元の活性化に貢献している。また、秋田県仙北市においては、夏イチゴ生産事業を展開し、高品質
で流通量の少ない希少品種「なつあかり」を主力商品として出荷している。
建設コンサルタント事業は、エイト日本技術開発と近代設計、関係子会社が中心となり、5 つの重点分野(環境・
エネルギー、自然災害リスク軽減、都市・地域再生、情報・通信、インフラ・マネジメント)に注力している。具体例と
しては、エイト日本技術開発が設計等を担当した「太田川大橋」(広島市)、「伊良部大橋」(沖縄県宮古島市)が土
木学会田中賞(作品部門)を受賞した。2 件同時受賞したことで、企業評価も高まった。また、2015 年 3 月の北陸新
幹線開業に合わせて上越妙高駅、新高岡駅等の駅前広場の開発を実施した。
海外コンサルタント事業は、古くは東南アジアで農業土木関係を主体に展開していたが、その後アフリカで道
路・都市関係を主体とする事業を手がけてきた。2014 年にバンコク駐在員事務所を開設し、2015 年 5 月には人材・
技術提携したバンコクのアジア工科大学と技術交流セミナーを開催するなど、東南アジア事業の強化をはかって
いる。また、カメルーン共和国において、第 5 次地方給水事業を実施した。高度な機械設備ではなく、現地の人々
が維持管理できる足踏みポンプ式深井戸を採用している。
インフラ・マネジメント事業は、日本インフラマネジメントを中心に、近代設計と連携し、官公庁および民間の工事
の施工管理業務を支援する。また、計測・調査・解析および計測機器のレンタルから施設管理まで、受注の拡大を
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目指す。インフラ施設の維持・更新に係る専門部署としてエイト日本技術開発内に「インフラ保全センター」を開設
し、今後拡大する道路橋、トンネル、河川管理施設、下水道管きょ、港湾岸壁など老朽化が進むインフラ保全対策
事業へ対応していく。道路インフラ保全事業においては、汎用タイプのデータ処理技術を効果的に活用したシステ
ムを開発した。
◆5 つの重点分野
環境・エネルギー分野においては、富士山世界文化遺産登録に伴う利用促進計画に取り組んでいる。本栖湖
周辺の中ノ倉峠の富士山ビューポイント整備、スバルライン五合目の富士山散策路整備などである。
自然災害リスク分野においては、2015 年 4 月に発生したネパール大地震へ、被害状況の把握と今後の防災・
保全業務への展開をはかるため、「災害リスク研究センター」を中心に構成した独自の被害調査団を現地に派遣
した。また、地域に密着した防災・災害対応として、空撮(ドローン)・測量・地質調査・ボーリング・斜面監視・解析・
設計まで、一連の災害対応すべてに対応するシステムを構築している。
都市・地域再生分野においては、茨城県古河市の新 4 号国道沿いで道の駅を設計・施工し 2013 年 7 月より供
用を開始した。また、震災復興に関しては、5 カ所の地域で対応している。岩手の道路関係の CM(コンストラクショ
ンマネジメント)事業などである。宮城県東松島市野蒜地区においても CM 事業を展開中である。
インフラ・マネジメント分野においては、国指定重要文化財橋梁の長寿命化に取り組んでいる。東京都が管理す
る 3 橋の重要文化財橋梁のうち、清洲橋と勝鬨橋の 2 橋の長寿命化設計を実施し、「平成 27 年度東京都建設局
優良委託表彰」を受賞した。また、鳥取県の若桜鉄道の構造物点検を担当し、地方再生の一翼を担っている。
情報・通信分野においては、水防対策に不可欠な遠隔地の雨量や水位等の観測データを確実に中央システム
に伝送できるよう、災害に強く確実に機能するネットワークとテレメータシステムの設計を通じて、防災対策事業に
貢献している。
重点分野以外では社会貢献活動にも取り組んでいる。「公益財団法人 八雲環境科学振興財団」を設立し、産
学共同研究、新技術開発の推進、環境科学分野の人材育成のために助成を実施している。また、毎年、研究者
による「環境」をテーマにした研究成果の報告会を開催し研究レポート集を刊行している。さらに河川の清掃などに
も参加している。
◆当社の利益配分方針および IR 方針
利益配分に関しては、継続的な IR 活動による適正株価を形成し、企業体質強化や事業展開のための内部留保
を含め、市場環境、業績、配当性向、株主資本配当率等を勘案し、株主へ配当により利益還元することを基本方
針とする。今期の配当は 1 株当り 22 円(前期より 1 株当たり 7 円の増配)を予定している。
IR 活動についてはタイムリーな情報開示の継続、機関投資家向けのミーティングの実施、個人投資家向けの会
社説明会実施を基本方針としている。2015 年度は、7 月に東京、岡山で決算説明会を、個人投資家向け説明会は、
8 月に岡山で 9 月に東京と大阪で実施する予定である。
(平成 27 年 7 月 24 日・東京)
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