第65回税理士試験 消費税法 解説

(無断複写・転載を禁ず)
~解説~
【第一問】
問1
1.「課税資産の譲渡等」と「課税仕入れ」の意義及び両者が表裏の関係とならない取引の列挙に関する問題である。
⑴
⑵
各定義は確実の解答してほしい。
表裏の関係とならない取引については、どれだけ列挙できるかによるが、全部解答する必要はないと思われる。最低限、「輸出
免税取引」は書けてほしい。
また、理由を付して具体的に述べなさいと指示があるため、理論のベタ書きではなく、的確に解答する必要がある。
2.非課税取引に関する問題である。
⑴
非課税取引は、税の性格及び社会政策的等の2つの理由から設けられており、本問では税の性格に関する部分を解答すること。
⑵
課税売上割合は、税の性格に関する部分を解答する必要があるため、消費税法施行令48のほとんどが解答範囲となる。
問2
取引分類に関する事例形式の問題である。昨年の問題と比べると解答構成も含めて問題の難易度は易しいと思われるため、できるなら
取扱いのミスは避けたい。
【第二問】
問1が原則、問2が簡易が出題され、昨年の問題と同じ形式であった。ボリュームはそこまでないと思われる。
内容に多少難しいものがあるが、ケアレスミスをできるだけしないかがポイントとなる。
問1
1.納税義務
⑴
平成24年11月19日~平成25年3月31日
資本金 500万円で 1,000万円未満であることから新設法人に該当しないため、納税義務はない。
⑵
平成25年4月1日~平成25年9月30日
事業年度開始の日の増資をしており、資本金 2,000万円となっている。新設法人の判定は、事業年度開始の日であるため、判定を
する際は、増資後により判定を行う。
よって、資本金 2,000万円で 1,000万円以上であることから新設法人に該当し、納税義務がある。
⑶
平成25年10月1日~平成26年3月31日
基準期間はないが、特定期間による課税売上高により判定を行う。この場合、前事業年度が6月で短期事業年度に該当するため、
前々事業年度の開始の日後6月の期間が特定期間となる。前々事業年度は6月未満であるが、6月の換算は行わない。
よって、前々事業年度の課税売上高75,445,000円で10,000,000円超であるため、納税義務がある。
⑷
平成26年4月1日~平成27年3月31日
基準期間(上記⑵)が1年未満であるため、事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過した日までの間に開始
した各事業年度を合せた期間を基準期間(上記⑴)とする。この場合、年換算することを忘れないこと。
⑸
平成27年4月1日~平成28年3月31日
上記⑷と同様、基準期間(⑶)が1年未満であるため、事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過した日まで
の間に開始した各事業年度を合せた期間を基準期間(上記⑵、⑶)とする。
この場合、結論は変わらないが、理論的には年換算を行う。
2.中間申告
更正の請求により、平成27年10月13日に更正決定通知書が到達しているため、同月から更正後の金額により中間申告の判定を行う。
3.取引区分
⑴
経過措置の適用がある請負契約には、印刷に係る契約が含まれるため、印刷売上高のうち、平成25年9月30日までに締結した請負
契約については、経過措置の適用がある。
⑵
不動産賃貸収入のうち、倉庫Cに係る賃貸収入は、倉庫Cは保税地域に所在するが外国貨物ではないため、倉庫Cに係る賃貸収入
については、輸出免税取引に該当せず、 6.3%課税取引となる。
また、本邦にある外国の大使館等又は大使等に対する課税資産の譲渡等は、措置法86条(外国公館等に対する課税資産の譲渡等に
係る免税)の規定により免税取引となる。
なお、この規定の対象となる取引は、課税資産の譲渡等に限定されているため、建物A(居住用)の賃貸収入は、は非課税取引に
該当する。(非課税資産の輸出等の規定は、法7条(輸出免税等)に掲げる資産の譲渡等に適用対象が限定されている。)
⑶
経営指導料という名目で受領するものであっても実質的には給与負担金であるため、課税仕入れに該当しない(基通5-5-10)
⑷
運転手への心づけは対価性がないため、課税仕入れに該当しない。
⑴
(無断複写・転載を禁ず)
⑸
退職者が赴任先から転居のために要した旅費は、通常必要と認められる場合には、課税仕入れに該当する(基通11-2-1)
⑹
資産の貸付けに関する経過措置は、指定日(平成25年10月1日)の前日までに契約を締結し、施行日(平成26年4月1日)前から
引続き借り受けており、かつ、次の①及び②又は①及び③のいずれかを満たすことが要件とされる。
①
その契約に係る資産の貸付けの期間及びその期間中の対価の額が定められていること。
②
事業者が事情の変更その他の理由によりその対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
③
契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないことその他対価に関する契約の
内容が政令で定める要件に該当していること。
本問において③の要件が明確でないため、①及び②を満たしているかどうかで判定する。
よって、本社の家賃及び車両のレンタル料はいずれも指定日の前日までに契約を締結し、施行日前から引続き借り受けているが、
本社の家賃については、家賃の額を変更することができる旨が規定されているため②の要件を満たさないことから、経過措置の適用
はなく、 6.3%課税取引となる。
一方、車両のレンタル料は、①及び②の要件を満たしているため、経過措置の適用がある。
⑺
⑻
渡切交際費は課税仕入れに該当しない
水道光熱費のうち、建物Aに係るものは非売対応、マンションBの共用部分に係るものは非売対応、本社事務所に係るものは共通
対応となる。
⑼
取引先に支払った販売奨励金は、売上げに係る対価の返還等の適用があり、機械Jを購入する際に支払った外国銀行への送金手数
料は課税仕入れに該当しない。
⑽
⑾
寄附した食料品は甲社が取扱う製品ではないため、当該食料品の寄附は共通対応となる。
平成24年12月の売掛金の貸倒れは、免税期間に係るものであるため、貸倒れに係る消費税額の控除の適用はない。
また、平成27年1月の売掛金の貸倒れは営業保証金を預かっており、売掛金の金額 409,750円が営業保証金の控除後という指示が
ないため、控除前と想定し、売掛金から営業保証金を控除した金額について、貸倒れに係る消費税額の控除を適用する。
⑿
子会社整理に要した弁護士費用及び海外渡航費は課税仕入れとなり、共通対応となる。
なお、海外渡航費用については、実費相当額という記載から弁護士に支払った報酬の一部として判断した。
⒀
⒁
自社役員に対する棚卸資産以外の資産の贈与については、資産の譲渡とみなされ、贈与時の時価が資産の譲渡等の対価の額となる
技術使用料は、権利の使用、すなわち権利の貸付けの対価として支払われるものであり、国内判定は、使用する権利が特許権の登
録に関する権利であるため、登録機関の所在地により判定する。
外国で登録されているため、当該技術使用料は、国外取引となり、課税仕入れに該当しない。
また、技術指導料は、技術指導という役務の提供の対価であり、国内において行われる技術指導の対価として支払われるものであ
るため、国内取引なり、課税仕入れに該当する。
⒂
K社の現物出資は、投資有価証券の金額が現物出資資産の帳簿価額の合計額であることから、適格現物出資と考える。
消費税法上、現物出資は、資産の譲渡等に該当するものとされ、その課税標準はその現物出資により取得する株式の取得時におけ
る価額に相当する金額(時価)とされているため、その現物出資が適格現物出資であるか、非適格現物出資であるかに問わず、その
現物出資により取得する株式の取得の時における価額に相当する金額(時価)となる。よって、株式の取得の時における価額に相当
する金額は、 6,850,000円(建物 4,000,000円、土地 1,850,000円、貸付金 1,000,000円)となる。
また、本問における現物出資は、課税資産と非課税資産を一括して譲渡しているため、それぞれの対価の額は按分して計算する。
なお、貸付金の譲渡については、金銭債権の譲渡であるため、譲渡対価の5%を課税売上割合の計算上、分母に算入することに注
意すること。
⑵
(無断複写・転載を禁ず)
問2
1.納税義務
乙社は、平成26年4月1日以後に資本金 1,000万円未満で設立された法人であり、丙社から50%超の支配を受けており、かつ、丙社
の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超えるため、乙社は特定新規設立法人に該当する。
よって、第1期及び当課税期間は納税義務がある。基準期間相当期間の取り方を間違えないようにすること。
2.経過措置
平成27年4月1日以後に開始する課税期間については、不動産業が第5種から第6種に変更されるが、経過措置として平成26年9月
30日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出している場合には、第5種により仕入税額控除の計算を行える。
本問では、平成26年7月1日に提出しているため、経過措置の適用がある。
3.事業区分
⑴
ホテル宿泊売上は第5種事業となる。
なお、1月以上利用している者がいるため、住宅の貸付けとして非課税取引にしまいがちであるが、ホテル業は旅館業に該当し、
旅館業は住宅の貸付けからは除外されているため、課税取引となる(基通6-13-4)
⑵
ホテル内レストラン売上はルームサービスに係る売上を含めて飲食サービス業として第4種事業となる。
なお、飲食サービス業は、主として客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の食料品又は飲料をその場所で飲食させる事業所並
びに客の注文に応じ調理した飲食料品をその場所で提供又は客の求める場所に届ける事業所及び客の求める場所において、飲食料品
を提供する事業所をいう。
⑶
宴会売上も上記⑵と同様、第4種事業となる。
⑷
駐車料収入は、不動産業に該当し第5種事業となる。
⑸
ホテル内自動販売機売上は第2種事業となる。
レストラン内に設置している自動販売機売上は飲食サービス業として第4種事業となるが、ホテル内(フロントや通路と解釈)な
らば、飲食サービス業とはならず、事業者に販売したかどうか不明であるため、第2種事業となる。
⑹
車両の譲渡は固定資産の譲渡であるため、第4種事業となる。
4.中間申告
6月分の金額が24万円以下であり、かつ、任意中間申告の届出書を提出していないことから、6月中間申告はない。
⑶