JIS B 1052-2

【分科会報告】
JIS B 1052-2(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-
第 2 部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ)
の改正案について*
事 務 局
1
今回までの改正の経緯
この規格は,1972 年(昭和 47 年)に制定され,1976 年,1985 年,1991 年,1998 年,2009 年
の改正を経て,今回(200X 年)第 6 回目の改正となる。これらの制定,改正の要点を解説表 1
に示す。
解説表 1‐制定・改正の要点
経緯
1972 年
制定
制定・改正の要点
ねじ部品の機械的性質について,国際規格との整合及び製品の高度化・多様化への対応を図るため,
“ねじ部品共通規格”の形式で,次の ISO 推薦規格に整合する“JIS B 1052 ナットの機械的性質”
を制定した。
ISO R 898/Ⅱ:1968 Mechanical properties of fasteners. Part 2:Nuts
ISO R 898/Ⅲ:1969 Mechanical properties of fasteners. Part 3:Marking of bolts,screws,stauds and
nuts
ISO R 898/Ⅱに整合したものを規格本体とし,ISO R 898/Ⅲに整合させたものを附属書とした。本体
の強度区分と保証荷重応力,ねじの呼び径に関係なく,次のような単純なものであった。
強度区分
2
保証荷重応力 kgf/mm
4
5
6
8
10
12
14
40
50
60
80
100
120
140
なお,硬さは最大値だけを規定とし,最小値は参考とした。
1976 年
改正
1985 年
改正
1985 年
改正
ISO が用いている国際単位(SI 単位)を導入し,改正前の重力単位“kgf”の値を,SI 単位に換算し
て{ }括弧を付け“参考値”として並記した。規格の実体は,制定時のものと全く変わっていない。
ISO R 898/Ⅱ:1968 が根本的に改正され,推薦規格から ISO 規格になり,次の規格を規定したので,
これに整合させる改正を行った。
ISO R 898/Ⅱ:1968 Mechanical properties of fasteners‐ Part 2:Nuts with specified proof load value
JIS は,規格名称を“鋼製ナットの機械的性質”に改め,ISO 898-2:1980 に整合させたものを規格
本体とし,改正前のものを附属書とした。ただし,ISO 898-2:1980 は並目ねじだけを規定し,細目
ねじを規定していないので,本体は並目ねじだけで,附属書は並目ねじと細目ねじという変わった形
となった。本体は,並目ねじだけとなったほか,次の改正を行った。
(1)ねじの呼び径範囲 2 mm~39 mm であったのを 1.6 mm~39 mm に改めた。
(2)この規格に適用するナットの二面幅は,JIS B 1002(二面幅の寸法)によることとした。
(3)強度区分に対する保証荷重応力の決め方は,改正前のような単純なものでなく,一つの強度区
分の中のねじの呼び径を幾つかのグループに分け,グループごとに保証荷重応力値を変えると
いう大きな改正であった。このように改正した理由を,解説で説明することにした。
(4)低ナットの強度区分に 04,05 を追加し,並高さナットの強度区分 14 を廃止した。保証荷重応
* 原稿受付:
日本ねじ研究協会誌 44 巻
号 (2013)
―1―
1991 年
改正
1998 年
改正
―2―
力の単位は,kN を優先させ,その記号を kgf(kN)にから kN(kgf)に修正した。
ISO は,細目ねじナットの機械的性質に関する次の規格を 1988 年に制定したので,これを導入する
改正を行った。
ISO 898-6:1988 Mechanical properties of fasteners‐ Part 6:Nuts with specified proof load value‐
Fine pitch thread
ISO 規格は,ナットの機械的性質の規格を並目ねじ用と細目ねじ用とに分け,二つの規格としている
が,JIS は JIS B 1052(改正前は並目ねじだけを規定)の中に ISO 898-6 の細目ねじを導入して,一
つの規格の中で並目ねじと細目ねじの規定を併記することにした。
併記した関係から表などの形式を大きく変えたが,並目ねじに関する規定の部分については,実質的
内容を変更していない。ただし,次の点を修正をした。
(1)
“並高さナット”と“低ナット”の定義を改めた。並高さナットの場合,改正前では,ナットの
高さが 0.8d 以上のものと完全ねじ部が 0.6d 以上のものとの 2 種類のものを指していたが,これ
を ISO 規格に合わせ,ナットの高さが 0.8d 以上で,かつ,完全ねじ部が 0.6d 以上のものという
二つの条件を満たす 1 種類のものに改めた。低ナットについても同じように改めた。
(2)ISO 898-6:1988 は,機械的性質の表の中に,六角ナットのスタイル 1,2 及び低形の区分欄と,
ナットの焼入焼戻しの有無の欄を設けていたので,並目ねじ関係についてもこの欄に設けるこ
とにした。ただし,JIS の並高さナットと低ナットとを二つの表にして示した。
次の ISO 898-2 が 1992 年に,ISO 898-6 が 1994 年に改正されたため,整合を図る改正を行った。
ISO 898-2:1992 Mechanical properties of fasteners‐ Part 2:Nuts with specified proof load value‐
Coarse thread(締結用部品の機械的性質‐第 2 部:保証荷重規定ナット‐並
目ねじ)
ISO 898-6:1994 Mechanical properties of fasteners‐ Part 6:Nuts with specified proof load value‐
Fine pitch thread(締結用部品の機械的性質‐第 6 部:保証荷重規定ナット‐
細目ねじ)
規格本体には“序文”を設けて規格構成について簡単な説明をし,附属書 1 と附属書 2 にはそれぞれ
ISO 898-2:1992 及び ISO 898-6:1994 と一致させ規定し,附属書 3 には改正前の JIS の附属書を規
定した。
なお,ISO 898-2:1992 の Annex A(informative)を翻訳して,附属書 1A(参考)とし,Annex B
(informative)はそのまま附属書 1B(参考)とした。
並目ねじに関して,附属書 1 では次の点を修正した。
(1)適用するねじの呼び径範囲を,39 mm 以下に改めた。ただし,保証荷重値は M3 から規定して
いるので,実体は M3~M39 である。
(2)適用できないナットに,JIS B 1056(プリベリングトルク形戻り止め鋼製ナットの機械的性質及
び性能)による戻り止めナットを追加した。
(3)用語“並高さナット”を廃止した。
(4)附属書 1 表 2 の備考に“ボルトの降伏応力又は保証荷重応力を超えるようなボルト・ナットの
締結には,この表の組合せより高い強度区分のナットの使用を推奨する。
”の文章を追加した。
(5)硬さの規定値からロックウェル硬さを外し,ビッカース硬さだけとした。
(6)単位“kgf”を廃止した。
(7)
“検査”の項を廃止し,
“試験”の項を“試験方法”と改め,JIS B 1042(締結用部品‐表面欠陥
第 2 部ナット)による表面欠陥試験を追加した。
(8)すべての強度区分のものに表示を施すこととし,左ねじの表示は M5 以上に改めた。
細目ねじに関して,附属書 2 では次の点を修正した。
(1)この規格で規定する機械的性質は,10~35 ℃の温度範囲で試験した場合の値であることを明記
した。
(2)適用できないナットに,JIS B 1056(プリベリングトルク形戻り止め鋼製ナットの機械的性質及
び性能)による戻り止めナットを追加した。
(3)用語“並高さナット”を廃止した。
(4)強度区分 5 を追加した。
(5)附属書 2 表 2 の備考に“ボルトの降伏応力又は保証荷重応力を超えるようなボルト・ナットの
J.Japan Res.Inst.for Screw Threads & Fasteners. Vol.44, No.
(2013)
2009 年
改正
(制定)
今回の
改正
締結には,この表の組合せより高い強度区分のナットの使用を推奨する。
”の文章を追加した。
(6)硬さの規定値からロックウェル硬さを外し,ビッカース硬さだけとした。
(7)単位“kgf”を廃止した。
(8)ねじの呼び M18×1.5 の保証荷重値は,ISO 898-6 で有効断面積を誤っているので,216 mm2 で
再計算した値に改めた。
(9)
“検査”の項を廃止し,
“試験”の項を“試験方法”と改め,JIS B 1042(締結用部品‐表面欠陥
第 2 部ナット)による表面欠陥試験を追加した。
(10)すべての強度区分のものに表示を施すことに改めた。
附属書 3 は次の点を修正した。
(1)単位“kgf”を廃止した。
(2)2000 年 12 月 31 日限りで廃止することを明示した。
JIS B 1052:1998(鋼製ナットの機械的性質)の附属書 3(強度区分 4T~12T のナット)が,2000
年 12 月 31 日に廃止となり,更に国際整合化を高める目的で,附属書 1 を 1992 年に第 2 版として発
行された ISO 898-2 (Mechanical properties of fasteners-Part 2:Nuts with specified proof load values-
Coarse thread) と一致した,一対一対応の JIS に改正することになった。その結果,JIS B 1052 の内容
が分割され、JIS B 1052-2 として制定されたものである。
a) 規格名称 JIS B 1051:2000(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質‐第 1 部:ボルト,
ねじ及び植え込みボルト)にならい,ISO 通りの名称に改めた。
b) 用語 “ねじ等級”を“ねじの公差域クラス”に改めた。
c) 適用範囲 “ねじの呼び径が 39 mm 以下のもの”の記述を“ねじの呼び径 d が 39 mm 以下のも
の”に改めた。
d) 引用規格 最新版の JIS に合わせ,
JIS B 0205,
JIS B 0209,
JIS B 0215,
JIS B 0401 及び JIS B 1054
を削除し,JIS B 0205-2,JIS B 0205-4,JIS B 0209-2,JIS B 0209-3,JIS B 0401-2 及び JIS B 1054-2
を適用した。
e) 保証荷重試験 “附属書 1 参考表 1”を解説に移した(箇条 5 参照)
。
f)
硬さ試験 “試験荷重 HV30 を用いたビッカース硬さ試験によらなければならない”を JIS B
1051:2000 にならい,
“HV0.3 ビッカース硬さで判定する”に改めた。
g) 左ねじの表示 “座面のいずれか一つの面”を“ナットの上面”に改めた。
h) 附属書 A “序文”を追加した。
解説箇条 3 に示す。
解説表 2 に,この規格に対応する国際規格の技術的な規定内容について,主要な項目を比較し
て示す。
解説表 2 対応国際規格の規定内容の変遷
規格番号:年
ISO R 898/II: 1968
ISO 898/2: 1980
規定項目
規定内容
適用範囲
呼び高さ 0.8D のナット
強度区分
強度区分 4, 5, 6, 8, 10, 12, 14 (1)
保証荷重応力
400 N/mm2~1400 N/mm2
適用範囲
スタイル 1,スタイル 2 及び低ナット
並目ねじ:D ≤ 39 mm(又は 100 mm)
ISO 898-6: 1988
強度区分
強度区分 04,05 (3) 及び 4, 5, 6, 8, 10, 12 (1)
保証荷重応力
Alexander 理論(2) に基づく値(スタイル 1 及び 2 共通)
適用範囲
スタイル 1,スタイル 2 及び低ナット
日本ねじ研究協会誌 44 巻
号 (2013)
―3―
細目ねじ:8 mm ≤ D ≤ 39 mm
ISO 898-2: 1992
強度区分
強度区分 04,05 (3)及び 6, 8, 10, 12 (1)
保証荷重応力
Alexander 理論(2) に基づく値(スタイル 1 及び 2 個別)
適用範囲
スタイル 1,スタイル 2 及び低ナット
並目ねじ:D ≤ 39 mm
ISO 898-6: 1994
強度区分
強度区分 04,05 (3)及び 4, 5, 6, 8, 9, 10, 12 (1)
保証荷重応力
Alexander 理論(2) に基づく値(スタイル 1 及び 2 個別)
適用範囲
スタイル 1,スタイル 2 及び低ナット
細目ねじ:8 mm ≤ D ≤ 39 mm
ISO 898-2: 2012
強度区分
強度区分 04,05 (3)及び 5, 6, 8, 10, 12 (1)
保証荷重応力
Alexander 理論(2) に基づく値(スタイル 1 及び 2 個別)
適用範囲
スタイル 1,スタイル 2 及び低ナット(スタイル 3)
並目ねじ:5 mm ≤ D ≤ 39 mm
細目ねじ:8 mm ≤ D ≤ 39 mm
強度区分
強度区分 04,05 (3)及び 5, 6, 8, 9, 10, 12 (1)
保証荷重応力
Alexander 理論(2) に基づく値(スタイル 1 及び 2 共通)
※保証荷重試験力を高い方の値に統一
1
( ) 組合せて用いることのできるボルトの最大の強度区分の左側の数字に対応
(2) “Analysis and Design of Threaded Assemblies”E. M. Alexander, 1977 SAE Transactions. Paper No.770420
(3) 先頭の“0”を除いた数字がナットの保証荷重応力の公称値の 1/100 の値に対応
解説表 2 からわかるように,ISO 898-2 の第 1 版では,すでに新しい設計方式が導入され,そ
れに対応して製品のナットの高さ(及び一部製品における二面幅)が修正されるという非常に大
きな変更が行われているが,適用範囲は並目ねじに限定されており,同様の設計方式が細目ねじ
に適用されるのは,それより 8 年後であった。また,2012 年の改正において,並目ねじのナット
に対する規格(ISO 898-2)と細目ねじのナットに対する規格(ISO 898-6)が ISO 898-2 として統
合され,さらに,規定の基となる設計方式について詳細に解説した ISO/TR 16224(Technical
aspects of nut design)が発行されている。
なお, 2013 年 10 月開催の ISO/TC 2/SC 12(めねじ部品)会議では,ISO 898-2 における強度
区分 9 の廃止,及び任意の熱処理を許容する強度区分(内容については解説箇条 3 改正の要点の
項参照)を 8 だけに限定し,その場合の成分限界の規定を修正するための改正提案が出されてお
り,改正の方向で検討が進められている。
2
今回改正の趣旨
―4―
J.Japan Res.Inst.for Screw Threads & Fasteners. Vol.44, No.
(2013)
旧規格は,JIS B 1052-2: 2009(締結用部品の機械的性質-第 2 部:保証荷重規定ナット-並目
ねじ)及び JIS B 1052-6: 2009(締結用部品の機械的性質-第 6 部:保証荷重規定ナット-細目ね
じ)であり,それぞれ,ISO 898-2: 1992(Mechanical propertis of fasteners-Part 2: Nuts with specified
proof load values-Coarse thread)及び ISO 898-6: 1994(Mechanical propertis of fasteners-Part 2: Nuts
with specified proof load values-Coarse thread)の国際一致規格であった。その後,ISO/TC 2/SC 12
(締結用めねじ部品)が,両規格の統合,適用範囲の一部修正及び保証荷重試験力の修正を行っ
た規格案を作成し,ISO/TC 2(締結用部品)の P メンバー国の賛成投票を得て,2012 年 3 月に
ISO 898-2(Mechanical propertis of fasteners made of carbon steel and alloy steel-Part 2: Nuts with
specified prperty classes-Coarse thread and fine pitch thread)が発行された。
そこで,これらの JIS を ISO 規格に整合させるための改正を行った。なお,この JIS B 1052-2
の改正(統合)によって, JIS B 1052-6 はこの改正と同時に統合廃止される。
3
改正の要点
3.1 表題
2009 年版の JIS B1052-2 の表題は,
「締結用部品の機械的性質-第 2 部:保証荷重値規定ナット
-並目ねじ」であったが,細目ねじのナットに対する規定(JIS B 1052-6)が統合されたこと,及
び原国際規格の表現が鋼製ボルトの機械的性質を規定した ISO 898-1:2013(Mechanical properties
of fasteners made of carbon steel and alloy steel-Part 1: Bolts, screws and studs with specified property
classes-Coarse thread and fine pitch thread)との整合を考慮して修正されたことから「炭素鋼及び
合金鋼製締結用部品の機械的性質-第 2 部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ」
とした。
注記 ISO 898-1: 2013 の国際一致規格として,2014 年に JIS B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結
用部品の機械的性質-第 1 部:強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ
及び細目ねじ)が発行される。
3.2 適用範囲(1 項)
a) 評価温度範囲,及び使用温度範囲(注記 1 及び 2)について,2014 年に改正・発行された JIS
B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び
植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ)と同様の規定を追加した。
b) 細目ねじのナット(M8×1~M39×3)を適用範囲に含めた。
c) 並目ねじのナットに対する適用範囲から,M5 未満のものを削除した。JIS B 1181(六角ナッ
ト)には,スタイル 1 ナットとして,ISO 4032: 1999(Hexagon nuts, style 1-Product grades A and B)
に基づく M1.6~M4 のナットが含まれているが,これらのナットの高さは,Alexander 理論による
設計原理にしたがっておらず(ナットの高さの最大値 mmax が 0.8D に固定)
,ねじ山のせん断破壊
(ストリッピング)を防止するために,硬さの最小値を大幅に増加させる必要があると判断され
たためである。参考のため,附属書 A にそれらの硬さの最小値が示してある。なお,2012 年に改
日本ねじ研究協会誌 44 巻
号 (2013)
―5―
正された ISO 4032[Hexagon regular nuts (style 1)-Product grades A and B]では,M5 未満のナット
の機械的性質は,当事者間の合意によるものと規定されている。
d) ナットの呼称については,旧規格では,スタイル 1,スタイル 2 及び低ナットが用いられて
いたが,原国際規格の中で“regular nut”及び“high nut”の語が定義され,低ナットを“style 0”
とすることが決められたことから,それぞれ並高さナット(スタイル 1)
,高ナット(スタイル 2)
,
低ナット(スタイル 0)と呼ぶこととした。
e) ねじの公差域クラスの制限(旧規格では 6H)が削除された。
f) 二面幅寸法の制限に加えて,丸ナットの外径が追加され,それぞれ 1.45D 以上のものに適用
することに修正された。
3.3 引用規格(2 項)
原国際規格の中で欠落している引用規格についても,本文中で引用されているものについては
それらに対応する JIS を掲げ,注記として対応国際規格と対応の程度を記述している。
3.4 記号の意味(3 項)
今回,新しく追加された項である。国際規格では,製品規格を含めて,ナットの呼び径を記号
“D”で表すこととなったため,本体を通して,記号“d”が“D”に変更されている。
3.5 低ナット(スタイル 0)の強度区分の表し方[4.2.3 項 b)]
数字“0”に続く 2 番目の数字が,保証荷重応力の公称値の 1/100 に対応しているが,旧規格に
あった呼び保証荷重応力及び実保証荷重応力の表が原国際規格から削除されたため,保証荷重応
力の定義について,JIS としての注記で説明することとした。
3.6 ナットのスタイル及び強度区分と呼び径の範囲との関係(4.3 項表 1)
原国際規格では,細目ねじの呼び径の範囲として,M8×1≦D≦M39×3 などの表記が行われて
いるが,表現が不正確であること,及び次回の国際規格改正の際に修正される予定であることか
ら,8 mm≦D≦39 mm(細目ねじ)のように表記するとの先取り提案があったが,国際規格の改
正を待つこととした。
3.7 ボルト・ナット結合体の設計(5 項表 2)
この規格では,組合せて用いることのできるボルトの強度区分については,旧規格では,
“強度
区分の表し方”の項で,スタイル及びねじの呼びの範囲と共に表 3 として規定されていたが,こ
の規格では独立した表の形式としている。なお,今回の改正で,強度区分 4 のナットは削除され
ている。
3.8 材料(6 項表 3)
この規格では,熱処理(焼入焼戻し)を必要としない全ての強度区分のナットについて,製造
業者の判断で焼入焼戻しを実施してもよいという規定に変更されているが[本体の表 3 脚注 d) 参
照]
,2013 年 10 月から ISO/TC 2/SC 12 で進められている ISO 898-2:2012 の改正審議では,強度
区分 9 全体の削除と共に,任意の熱処理を許容する強度区分を 8(スタイル 2 及びスタイル 1 で
M16 以下の並目ねじ)に限定し,熱処理を行う場合の化学成分を強度区分 10 のものと同様,C
―6―
J.Japan Res.Inst.for Screw Threads & Fasteners. Vol.44, No.
(2013)
(最大)0.58%,Mn(最小)0.30%,P(最大)0.048%,S(最大)0.058%に修正しようとする提
案が出され,多くの委員からの賛同を得ている。そのため,強度区分 9 のナット及び任意の熱処
理の適用に際しては,今後の ISO 898-2 の改正動向に注意する必要がある。
3.9 保証荷重試験力(7 項表 4 及び表 5)
原国際規格の“proof load”の訳として,従来は“保証荷重”の語を充てていたが,古い重力単
位に関係する“荷重”の用語の使用をできるだけ避けるため,
“保証荷重試験力”とすることとし
た。また,旧規格では,スタイル及びサイズの範囲ごとに規定されていた保証荷重応力値は削除
されたが,表 5 及び表 6 の保証荷重試験力は,スタイル 1 とスタイル 2 の両方が適用できる強度
区分及びサイズについて,高い方のスタイルの値に統一してから計算されたものである。
解説表 3 及び解説表 4 に,本体の表 4 及び表 5 の計算に用いた保証荷重応力値を示す。網掛け
部分が修正個所(スタイル 1 及びスタイル 2 の高い方の値に統一した箇所)である。
なお,旧規格では,低ナットと各強度区分のボルトを組合せた際に,ねじ山がせん断破壊する
ときのボルトの最小応力が表として示されていたが,規定値ではないため,削除され,低ナット
に対する警告のための脚注を追加している。
解説表 3 計算に用いた保証荷重応力値(並目ねじ)
ねじの呼び
D
を超
強度区分
04
05
5
以下
6
8
9
10
12
保証荷重応力 Sp MPa
え
M5
M7
M7
M10
M10
M16
M16
M39
380
500
580
670
855
915
590
680
870
940
610
700
880
950
1050
1190
630
720
920
920
1060
1200
10
12
1040
1150
1160
解説表 4 計算に用いた保証荷重応力値(細目ねじ)
ねじの呼び径
D mm
強度区分
04
を超え
以下
8
10
10
16
16
33
05
5
6
8
保証荷重応力 Sp MPa
690
380
500
770
780
955
870
1030
930
1090
720
33
39
日本ねじ研究協会誌 44 巻
1100
1110
1080
号 (2013)
1200
-
―7―
3.10 硬さ(7 項表 6 及び表 7)
基準となるビッカース硬さの数値は,旧国際規格と同じであるが,対応するブリネル硬さ及び
ロックウェル C 硬さ併記した独立した表に変更されている。厳密に考えれば,一部で保証荷重試
験力を増加させる修正を行っているため,それに対応する最小硬さも増加させる必要があるが,
保証荷重試験力の増加は,最も大きい強度区分 8 のスタイル 2 のナット(細目ねじ)に対しての
値でも+7.8%であり,また従来の規定値も,Alexander 理論による計算値をグループごとにまとめ
た(丸めた)値であるため,規格本体では硬さの数値の変更は行っていない。
3.11 検査(8 項)
2014 年に改正・発行された JIS B 1051 との整合のため,この項を追加した。
3.12 硬さ試験(9.2 項)
硬さを求める際の試験力を明示すると共に,
“表面で求められる硬さ(9.2.3.2 項)
”及び“軸断
面で求められる硬さ(9.2.3.3 項)
”を区別し,それぞれの適用対象を規定している。なお,従来は,
疑義が生じた場合の試験方法として,ビッカース硬さ試験 HV0.3 を用いることと規定されていた
が,この規格では,ビッカース硬さ試験の最小試験力は,98 N(HV10)とすることが規定されて
いる。
3.13 附属書 A
旧規格である JIS B1052-2 では,附属書 A(ボルト結合体の荷重負荷能力)として,Alexander
理論を含む設計の原理が,その背景やデータと共に詳述されていたが,ISO/TR 16224(Technical
aspects of nut design)が発行されたことから,表題を“ナットの設計原理”とし,内容を簡略化す
ると共に,この規格で削除された M3~M4 のボルト及び小ねじについて,ねじ山のせん断破壊(ス
トリッピング)を防止するために必要なナットの最小硬さの数値を参考として記載した。
3.14 附属書 B
9.1.4 の e)に規定している保証荷重試験用マンドレルのねじの許容限界寸法(外径及び有効径)
を,数値で示した表 B.1 及び表 B.2 として追加した。
―8―
J.Japan Res.Inst.for Screw Threads & Fasteners. Vol.44, No.
(2013)