水坤 寄稿 千葉県営水道とコンサルタント 千葉県水道局/技術部長 下埜義治 ○千葉県営水道の概要(平成 27 年3月末現在) ■1.はじめに ・現在給水人口 297 万人 千葉県営水道は、昭和 11 年に給水を開始して ・給 水 区 域 11 市(千 葉 市、市 川 市、 以来来年で 80 年となり、市民生活や社会経済活 船橋市、松戸市、習志野市、 動に欠かすことのできない水の安定供給に努めて 市原市、鎌ヶ谷市、浦安市、 成田市、印西市、白井市) まいりました。 この間、千葉県営水道は県勢とともに発展を遂 ・実績一日最大給水量 104 万㎥/ 日(平成 げ、成田国際空港、東京ディズニーリゾート、幕 26 年度実績) 張メッセを中核とした幕張新都心や大規模住宅団 地等の建設により給水人口が増加し、数次にわた り拡張事業を進めてまいりました。現在では、県 ■2.コンサルタントへの委託業務の現状 北西部地域(11 市)を中心に、千葉県民約 620 万 千葉県営水道では、主に水道管の整備・更新工 人の約半数の方々に水をお届けする大規模水道事 事に係る調査・基本計画・設計業務や浄水場・給 業体となっています。 水場の整備・更新に係る基本計画・実施計画・設 第2期施設 【図1】ちば野菊の里浄水場(第2期) 25 【図2】「水道の安全保障に関する検討会報告書 (平成 21 年3月 日本水道協会) 」より 計業務などの調査、計画、設計業務をコンサルタ 老朽化等に対応するための大規模な更新時期を控 ントに委託しています。 えています。将来にわたって安全・安心な水道水 特にちば野菊の里浄水場(第2期)整備事業で をお客様に供給し続けるためには、確実な施設更 は、平成 26、27 年度の2ヵ年で約2億円をかけ 新を行っていく必要があります。この大規模更新 実施設計業務を委託しています。 に対応するためには、職員の確保、技術力の向上 を図るとともにコンサルタント等への業務委託が ○ちば野菊の里浄水場(第2期)施設整備の概要 【図1】 必要になります。 一方、業務委託の問題点として水道事業体職員 ちば野菊の里浄水場に近接する栗山浄水場は、 の技術力低下が懸念されるとのアンケート調査結 昭和 33 年に稼働し、現在最も古い浄水場であり、 果【図2】があります。このアンケート調査は、 施設の老朽化対策や耐震化、高度浄水処理の導入 水道事業者及び水道用水供給事業者を対象として が必要となったため、ちば野菊の里浄水場を増設 行われたもので、この調査結果によれば、技術的 し、栗山浄水場の機能を移転するものです。 業務を委託したことによる問題点として、「職員 ・所 在 地 松戸市栗山 478‒1 の技術力低下が懸念される(受託者の管理ができ ・施設規模 186,000㎥/日 (現栗山浄水場相当) ない等)」が 60%以上と最も高くなっています。 ・事 業 費 約 446 億円 このことから、業務委託をさらに進めていくため ・整備施設 沈殿池、急速ろ過池、高度浄水 には、多くの水道事業者等が人材育成と技術の継 処理施設 承を重要な課題と考えていることがわかります。 ・建設工期 平成 28 年度~34 年度 千葉県水道局でも同様であり、業務委託を進め ・稼働予定 平成 35 年度 ていくためには、人材育成と技術の継承が重要な 課題です。そこで、千葉県水道局では、平成 23 ■3.人材育成と技術の継承 年度から 27 年度までを計画期間とする水道技術 千葉県営水道では、昭和 30 年代以降に大量に 施するとともに外部機関の研修会等にも職員を派 建設した浄水場・給水場、水道管等の水道施設の 遣しています。座学研修に加え、体験型研修を取 26 研修計画(第2次)を策定し、局内部の研修を実 り入れ、現場技術力を養成しています。 のこと、全プロセスにわたる高度な専門知識、技 また、OJT 研修により、新人職員に具体的な仕 術、マネジメント力を駆使した包括的なサービス 事を通じて計画的に技術の取得を図っています。 が求められると思われます。公民連携の流れのな さらに、ベテラン職員である再任用職員が「技 かで、今後は DB や DBO などの業務におけるコ 術指導員」として若手職員を指導しています。 ンサルタントの役割が重要になってくると思われ これらの取り組みにより、委託業務の成果を適 ます。 切にチェックできる職員の技術力を確保し、必要 な業務委託を行うことができると考えています。 コンサルタント業界においても、人材育成と技 ■5.終わりに 術の継承は重要な課題ではないでしょうか。先程 水道事業者の責務は、24 時間 365 日、常に安全 のアンケート調査でも業務委託の問題点として、 で安心な水をお客様のところに安定的に届けるこ 「受託者の技術力が不足していると思われる」が とです。そのためには、水道事業者もコンサルタ 20%以上ありました。多くの水道事業体で今後大 ントもお互いに切磋琢磨し、技術力を向上してい 規模更新が本格化するなか、ニーズに対応するた くことが大切です。 めに、人材育成と技術継承が重要であると考えま 千葉県水道局は、お客様に、より安全でおいし す。 い水道水をお届けするために、これからもたゆま ぬ努力を続けてまいります。 ■4.今後、コンサルタント業界に望まれること 最後に、全国上下水道コンサルタント協会の皆 コンサルタント業界には、今後の水道施設の大 通じて、千葉県営水道の発展に御協力いただきま 規模更新に係るニーズとして、これまでの基本計 したこと、この場をお借りして、心からお礼申し 画等の作成や設計などの技術サービスはもちろん 上げます。 様には、これまで技術的な助言や設計業務などを 27
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