class="img-table" border

世界のエネルギーと環境戦略
2015 8/10
Vol.4/No.32
インサイドグローブ
米国クリーン・パワー・プランの電源構成
特
集
米国クリーン・パワー・プランの要約
(その2:目的)
CONTENTS
2015.8.10
インサイドグローブ
米国クリーン・パワー・プランの電源構成
1
ニュース&トピックス
パナソニック/米国バイオ燃料
2
パナソニック社とテスラ社、欧州での蓄電池の販売競争の準備を整える
米環境保護局のバイオ燃料計画はガソリン価格を犠牲に
特
集
米国クリーン・パワー・プランの要約(その2:目的)
3
掲載記事の原文についてはインターネットのアドレスを明示していますが、入手でき
ない場合は下記までメールでご依頼下さい。折り返しこちらより送付いたします。
お問合せ先
グリーンフォーカス編集部 E-mail [email protected]
インサイドグローブ
米国クリーン・パワー・プランの電源構成
2030 年米国クリーン・パワー・プランの電源構成
オバマ大統領は 8 月 3 日、既存の火力発電所から排出する二酸化炭素(CO2)を 2030 年までに 2005
年よりも 32%削減するクリーン・パワー・プランを発表した。環境保護局(EPA)は詳細な計画内容を
ホームページにアップしており、「クリーン・エネルギーの現在と将来」と題する資料(1)ではクリー
ン・パワー・プランを実施したときの 2030 年の電源構成を 2012 年との対比で明らかにしている。
次の 2 つの円グラフに示したものであるが、意外に思われるのは 2030 年になっても石炭が相当残っ
ていることである。主役の座を天然ガスに明け渡してはいるものの、石炭のウェートは再生可能エネ
ルギーよりも大きい。オバマ大統領はスピーチで「クリーン・パワー・プランは地球温暖化対策でア
メリカがおこなった単一政策では最も重要なものである」と述べているが、はたしてこれでクリーン
な発電の目標といえるのだろうか。
米国の電源構成:2012 年とクリーン・パワー・プランでの 2030 年との対比(EPA 資料)
電源構成の推移とクリーン・パワー・プランの評価
エネルギー情報局(EIA)のデータ(2)をもとに電源構成の推移を調べてみると、次の表のとおり
石炭の比率はこれまでにも徐々に下がってきており、2000 年の 53%から 2014 年の 40%まで 14 年間で
13 ポイント低下している。クリーン・パワー・プランにおける 2030 年の比率は 27%としているので、
今後 16 年間で 13 ポイント下げる計画になっている。14 年間と 16 年間で対比期間は少し異なるが低
減する%ポイントは同数であり、2030 年の目標数値はこれまでの低減ラインのほぼ延長線上にある。
再生可能エネルギーについては 2030 年の比率は 21%である。これは水力発電を含んだものであるた
め、EPA の資料に数値はないが、水力発電を含まないソーラー、風力、バイオマスなどの比率は 15%
程度となろう。これは目標数値としては低いのではないか。
グリーン フォーカス 2015 8/10 1
米国の電源構成の推移とクリーン・パワー・プランでの 2030 年数値(%)
年
2000
2005
2010
2012
2014
2030
2030(日本)
石炭
53
51
46
38
40
27
26
天然ガス
14
18
23
28
26
33
27
再生可能
9
8
10
12
13
21
22~24
24
23
21
22
21
19
原子力 20~22、
エネルギー
原子力ほか
石油 3
堅実な電源構成とした背景
オバマ大統領はスピーチのなかで「クリーン・パワー・プランは現実的で達成可能なものであり、
かつ意欲的なものである」と述べている。オバマ大統領のエネルギー戦略である“すべてのエネルギ
ー活用戦略(all of the above energy strategy)”に従って電源構成のバランスをとった結果であ
り、石炭の比率も現実的で実務家タイプのオバマ大統領らしい目標設定といえる。
さらにこうした電源構成とした背景には、今後いくつかの州からクリーン・パワー・プランは大気
浄化法で定めた内容から逸脱しているという訴訟が起こされることが予想されている。これに勝つた
めには、クリーン・パワー・プランにおいても石炭はある程度残すことにより電力供給は信頼性があ
り、電気料金も値上がりすることがないようにしなければならない。また技術の面でも開発リスクを
伴わない既存の技術で十分に目標の達成は可能であるという堅実な電源構成とする必要があったので
あろう。
革新的な電源構成は次期大統領で
エネルギーを転換するには長い年月を要する。技術開発をして成果を実証し、根拠となる法を定め
てインフラを整備し、社会的な認知を得るまでには 10 年以上かかる。家電や自動車の新製品開発とは
大きく異なるところだ。米国のような大きな国の電源構成はなかなか変わらない。
米国における地球温暖化対策の難所は 2030 年までではなく、2030 年以降にある。2030 年までの排
出削減はシェールガスの出現により石炭を天然ガスへ切り替えることで達成できる。しかし 2030 年以
降二酸化炭素の排出を 50%~80%削減するには石炭および天然ガスの比率を大きく下げなければなら
ない。この技術を米国は持っていない。石炭、天然ガスともに二酸化炭素の回収貯留(CCS)が必要で
あり、ソーラー、風力などの再生可能エネルギーはバッテリーを含めたコストダウンがいる。また原
子力についても小型モジュラー炉(SMR)の実証を見極めなければならない。長期的な削減目標を達成
するための革新的な電源構成の導入は次期大統領に委ねられることになった。
(1) EPA http://www2.epa.gov/cleanpowerplan/fact-sheet-clean-power-plan-clean-energy-now-and-future
(2) EIA http://www.eia.gov/totalenergy/data/monthly/pdf/sec7_6.pdf
了
グリーン フォーカス 2015 8/10 2
ニュース&トピックス
パナソニック
パナソニック社とテスラ社、欧州での蓄電池の販売競争の準備を整える
テスラ・モーターズ社の車両に搭載するリチウムイオン蓄電池を生産するパナソニック社は、欧州
の家庭に電力を供給する蓄電池の販売を開始する。太陽光発電による電力への移行が国民に奨励され
ている独で最初に販売する。テスラ社は、家庭用および企業向けの蓄電池セットを今年 5 月に発表し
た。日本企業であるパナソニック社が家庭用蓄電池の国際市場に参入することは、同社蓄電池の最大
の顧客であるテスラ社と直接競合することを意味する。テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者
も独市場がカギだとみている。パナソニック社は、独に続いてフランス、英国、その他に進出す計画
である。同社が欧州で販売を開始する時期はまだ決定されていない。同社の蓄電池は日本ではすでに
利用可能であり、ソーラーパネルで発電された電気の蓄電は家庭の使用電力量の 70%を代替すること
に役立っている。
(Renewable Energy World Sep. 4, 2015
http://www.renewableenergyworld.com/articles/2015/09/panasonic-and-tesla-poised-for-battery-fight-in-europe.html
米国バイオ燃料
)
米環境保護局のバイオ燃料計画はガソリン価格を犠牲に
石油団体向けにまとめた調査によると、米政府のバイオ燃料使用に関する計画案は消費者のガソリ
ン負担を増やすことになるとしている。同様の非難に対して、米環境保護局(EPA)が反論した数ヶ
月後に発表され、バイオ燃料の生産数量を確定する期限を前にして EPA に対する圧力が高まってい
る。今年 11 月 30 日までに確定する予定の EPA の計画案の潜在費用に関して、米国石油協会(API)
が委任した調査の中で米国経済研究協会(NERA)は、2015 年と 2016 年のエタノールの目標使用量
を達成することは不可能であり、著しい経済的損害を引き起こすと述べている。同調査は、議論の的
になっている再生可能燃料基準計画(RFS)の影響を調べた同じコンサルタント会社の 2012 年の報
告書の内容を繰り返しており、EPA が計画は消費者の負担または製油所の負担を増やすことはないと
石油ロビイストに反論したわずか数ヶ月後に発表された。
(Reuters Sep. 9, 2015
http://www.reuters.com/article/2015/09/09/us-usa-renewablefuels-idUSKCN0R91Q420150909 )
グリーン フォーカス 2015 8/10 3
特 集
米国クリーン・パワー・プランの要約(その2:目的)
先週号(8/3 号)に引き続き米国環境保護庁(EPA)が発表したクリーン・パワー・プランの要約の
抄訳を掲載する。
(本文 http://www2.epa.gov/sites/production/files/2015-08/documents/cpp-final-rule.pdf )
2. 目的
(ルールの目的)
このルールの目的は、米国における化石燃料火力発電プラントから排出される CO2 を減らすことに
より、人間の健康と環境を保護することにある。これらのプラントは定置式では最大の CO2 排出源で
あり、このルールにより初めて既存の発電プラントからの排出削減のガイドラインを制定した。
(既存と新設の発電プラントそれぞれにガイドラインを制定)
既存の発電プラントへの対応と同時に、EPA は新設、改修、および再建される発電プラントに対し
ても CO2 の排出基準を制定する最終案を策定している。これらのルールにより、電力の信頼性と十分
な供給量を確保しながら、また電力という公共性を損なうことなく、CO2 の排出を削減する。
(実証された技術と対策がベース)
このルールでは排出削減を達成するために、実証された技術と対策に依拠している。ガイドライン
では、電力会社や州において既に広く使用されている戦略、技術、および方法論を反映している。
(州が鍵となる役割を果たす)
排出削減が合理的なコストで実施されるために、州が鍵となる役割を果たす。ここで州の経験が重
要となる。このルールでは計画の方法論から対策まで州に柔軟性を与えている。発電プラントに対し
ても柔軟性を保障しており、州はトレードをベースとした排出基準を制定することができる。
(CO2 排出削減の目標)
米国全体として、この最終案である大気浄化法セクション 111(d)既存排出源のルールにより、電
力会社の発電セクターから CO2 の排出を 2005 年レベルから 2030 年までに約 32%削減する。
(2030 年のベネフィットと電源構成)
このルールにより、直接減少するその他の大気汚染物質とともに、CO2 の排出削減が 2030 年に 250
億ドルから 450 億ドルの気候および健康でのベネフィットを生むと EPA は予測している。同時に米国
では石炭と天然ガスは発電用の 2 つの主要なエネルギー源として残り、電源構成として石炭は発電の
27%、天然ガスは 33%を供給する。
続く
グリーン フォーカス 2015 8/10 4
グ
グリ
リー
ーン
ンフ
フォ
ォー
ーカ
カス
ス
2015年8月10日号
Vol.4/No.32 通巻172号
発行責任者 木村源次郎
E-mail
[email protected]