発酵食品の香気及び機能性の強化に関する研究

発酵食品の香気及び機能性 の強化 に関する研究
( H 1 0 ∼1 3 )
一一乳酸菌の発酵
食品中のフランノン生成 とその増強 に関する研究一一
発酵食品部発酵食品科 富 永―哉 田 村吉史 柿 本雅史 発 酵食品部 田 中常雄
研究の目的 と概要
国内ではキ ッコーマンの研究者が最初、醤油及 び味噌の香 り物質として 1978年
頃にハ イ ドロキシ ・エチルメチル ・フラノン (HEMF)を 発見 しました。1990年代 に
入 つて、ウィス コンシン大学でこの物質に抗腫瘍活性 が存在することが指摘され ま
した。最近では、キ リンビールの研究者 によって ビール中にも同物質 が発見され、
また ドイッの研究者はチーズの中にハ イ ドロキシ 。ジメチル ・フラノン (HDMF)を
発見 していて、 フラノンは発酵食品中に広 く分布 しています。また、スイスのネス
レ社 ではフラノン類の生成経路についての研究を進めています。共同研究者である
熊本県工業技術 センターにおいても、味噌の発酵における HEMFの 生成の研究を進
めていて、糖 とアミノ酸 が加熱によつて変化 した物質 (メーラー ド物質)が フラノ
ンの前駆体であ り、酵母 がこれをフラノンに変換 しているという発見を しました。
フラノン類は、カラメル様 の甘 い香 りを持ち、味噌な どの発酵食品の特徴を示す
香 り物質です。分析法はガスク ロマ トグラフ質量分析法 (GC―
MS)な どで確立され
ていて、他の生理活性物質を測定する場合より、極めて容易に分析 ができます。本
研究では、北海道の特産食品中である発酵乳製品、特にヨーグル トとワインにおけ
るフラノン類の分布を検索 し、熊本県 との共同研究で開発された技術 を用 いて、発
酵食品中のフラ ノン類の増強に取 り組みま した。
実用化 または予定される成果】
【
・北海道産の発酵食品、特に、発酵乳製品、ワイン
、味噌 ・醤油等の高付加価値化
2.
試験研究の方法
酢酸 メチルを用 いた抽出法 によ り市販の ヨーグル トとワインからフラ ノン類 を
MSを 用 いて分析 しました。発酵乳製品に多 く見 いだされる有用乳酸菌
抽出 し、GC―
のうち代表的なものを用 いてフラノン類の生産能を測定 し、ヨーグル ト試験仕込み
中の フラノン類の消長を調 べ ました。 ワインについても同様 に、原料 プ ドウ及び試
験仕込みを したワインのフラノンを調 べ ました。
3.
実験結果
市販 ヨーグル トの分析では、分析限界をやや下回る程度の HDMFを 観測 しました。
い くつかの試験結果 か ら、乳の殺菌過程 でフラノンの前駆体 が生成 していると予想
され ました (図 1)。また、乳酸菌にはこの前駆体 か らフラノンを生成する能力があ
ることが分か りました (図 2)。従 つて、ヨーグル ト中のフラノンを増強するには、
殺菌 工程 で如何 に前駆体の生成量増やすかと、これを効率良 くフラ ノンに変換する
乳酸菌選択することが重要であることが分かりました。現在、モデル製造工程を考
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案 して、小規模の商業牛産設備 でフラノン増強 ヨーグル トの牛産 を試みて います。
ワインの市販品を分析 したところ、通常生で食べ られて いるアメ リカ原産のプ ド
ウから造 られたワインに HDMFが 多量に存在することが分か りました (表 1)。試験
醸造の結果、果汁にはほとんど含 まれていない HDMFが 発酵工程の中で生成するこ
とが明 らかにな りました (表 2)。更 に、果汁を絞る段階で適当な処理をすることに
より、HDMFの生成量を増やすことが可能 であることも分 か りました。現在、明らか
になった増強法を用いて、工場規模の仕込みを行 つています。
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発酵 時間( h r )
図 1ス キムミルクを使った発酵試験
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発酵 時 間 (hr)
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b ) 酸度の変化.
c ) H D M F とH M M F の 生成量の変化
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図 2 10%ス キムミルを43℃ 、6時 間発酵後ののHDMF生
hdは 検出限界以下の意味
成量
4.平 成 13年度の計画
フラノンを強化 したヨーグル トとワインの市場性 を調査 し、製造技術の普及を図
ります。
ス コ ッ トラン ド)
共同研究機関 :熊本県工業技術センター、国際醸造蒸留酒 センター (ICBD、
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