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 会報 第 326 号・平成27 年 7 月号 山麓雑記二題 山口 文一
一、山川の珍味
子供の頃食べたものに山ブドウ、アケビ、ヨソド(ガマズミとも言った)などがある。山ブドウとア
ケビは木に絡みつくので嫌われ根元から切り取られたが、私は二,三本家の片隅に植え、秋にはその
実を味わったものである。ヨソドは赤い実がすっぱくちょっぴり刺激があるので摘み取って食べたも
のである。そんなもんでも思い出すと懐かしい。
川ではカジラ(カジカ)である。このカジラは鮪の刺身より旨かった。道志川には捕っても捕っても
その数は増え続けた。ところが昭和十年頃になったらその数が減ってゆくのである。不思議に思って
いたら上流で除草剤など農薬を使いはじめたからである。
カジラは清流にしか住めない魚らしく上流へ上流へと上っていったのである。山川の珍味などと尤も
らしく書いたが、子供の頃の珍味である。
二、鼻曲がり鮎
鮎は香魚と言って有名だが、道志川の鮎は鼻曲り鮎と言ってさらに有名であった。激流を遡るため
鼻が曲がってしまったのである。明治生まれのご老人が、昔道志川の鮎を天皇様に献上したその車を
運転して行ったのはこの俺だ、と言って自慢していたが、鼻曲がり鮎は昔から有名だったらしい。昔
は川にダムなどがなかったので海から鮎がどんどん上って来たのである。
(以上)