平溪再発見!

特集
十分といえば、十分瀑布(十
十分
分の滝)と天燈(ランタン)上
げで有名だが、今回は4ヵ月間
の改装期間を経て昨年12月29
日にリニューアルオープンした
十分瀑布公園をあらためて紹介しよ
瑞芳區
猴硐
う。政府管轄になったため、以前は有料だった入場
料が不要となり、足場も整備され、さらに行きやす
菁桐
嶺腳
十分
くなったスポットだ。
十分瀑布は高さ約15メートル、幅30メートル。
「台湾のナイアガラ」という別名が示すとおり、高
さより横幅が長いカーテン型の滝で、台湾では最大
平溪區
の規模を誇る。雨の多い春先が、水量が最も多くな
り迫力があるベストシーズン。流れが強く滝壺の上
特集
ローカル情緒たっぷり
平溪再発見!
バ ス 増 便 で ア ク セ ス 便 利 に
新北市の北東に位置し、台灣鐵道の3支線のうちの一つ・平渓線が走る平渓は、のど
かなローカル台湾を味わえる場所として人気の観光地。三貂嶺駅から菁桐駅まで、全線
わずか 12.9 キロの短い路線だが、そのエリアは豊かな自然、炭鉱の遺跡、ノスタルジー
には白い飛沫が盛大に上がるため、天気が良い日に
は虹もよく見える。午後2時ごろが、最も虹が出や
すい時間帯だそうだ。
また、十分瀑布公園内にはもう一つ、眼鏡洞瀑布
と呼ばれる滝も。水の流れに浸食された石のくぼみ
が眼鏡の形に見えることからこの名がついた。十分
瀑布の上流200メートルに位置しているので、つい
でに足を延ばしてみるといいだろう。
公園内の遊歩道を歩く際は、ぜひ両脇の木々を見
ることもお忘れなく。運が良ければ、木の枝にとま
る台湾固有種の臺灣藍鵲(ヤマムスメ、タイワンア
オカササギ)の姿が見られるかもしれない。臺灣藍
鵲は、海抜200メートルから1200メートルの広葉樹
林や森林に生息し、赤いくちばしと脚、長い尾を特
徴とする美しい鳥で、台湾の国鳥でもある。
を感じさせる街並みなど、さまざまな魅力にあふれている。
今回は、木柵駅から運行している観光路線バス「台灣
好行・木柵平渓線」の増便に伴い、新北市の観光局が今、
最も薦める十分、猴硐、嶺腳、菁桐を紹介する。
協力/新北市政府觀光旅遊局 取材・文/二瓶里美(編集部)
十分瀑布公園
新北市平溪區南山里乾坑路10號
9:00~16:30
台鐵十分駅から徒歩約20分。
分老街から観光路線バス「台灣好行・木柵平渓線(795路)」
十
に乗車し、十分遊客中心で下車。
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嶺腳古橋
駅の南側には、基隆河で一番幅が狭いとされる場所
がある。西から東に流れる基隆河は嶺腳で大きく南
に曲がるため、水流がぶつかり浸食された穴やくぼ
みによる池のような風景を見ることもできる。その
基隆河に架かる二つの橋がある。一つは100年近く
前、日本統治時代に建造された嶺腳古橋。もう一つ
は近年にできた106号線につながる平陽橋だ。嶺腳
古橋の通路は一時崩れかけていたが、今では修復
され再び人が渡れるように
なった。この二つの橋の下
部構造が、円形と方形の絶
妙なコントラストを出して
いることから雙重橋とも呼
ばれ、嶺腳のシンボル的存
在となっている。
喵~
日本人にはまだあまりなじみがないが、実は見
平渓線の手前に位置する猴硐駅は、基隆河と三貂嶺山を
猴硐
背景に、駅構内や近隣の至る所に猫の姿が見られる癒やし
嶺腳
感たっぷりのエリア。近年は「台湾の猫村」としてすっか
り定着し、猫好きをはじめ多くの観光客が訪れている。
(微笑みのプラットホーム)とも呼ばれているそうだ。
台湾最大の炭鉱地として栄えた1960~70年代には6000人余り
かつて炭鉱の労働者が鼠よけに飼っていた猫はこの地に残り子孫を増やした。
しかし、猴 硐 の住民たちの厚意で世話は行き届
いていたものの、野良猫は増える一方に。それが、
2007年に同地を訪れた作家で写真家の簡佩玲が、猫
の医療、避妊・去勢など環境整備を呼び掛けたこと
により状況は一変。新北市の観光局やメディアの協
力の下、時代と共に忘れ去られた炭鉱の街が再び注
状が特徴的なことで知られる。地形に沿ってホー
ムが弓なりに湾曲しているため、「微笑的月台」
猴硐の歴史は古く、日本統治時代に石炭の採掘が始まり、
が居住していたという。1990年に炭鉱が閉鎖されると人口は急激に減少したが、
どころが多い嶺腳。嶺腳駅は平溪駅から約1キロ
ほどに位置する小さな駅で、プラットホームの形
猴硐猫橋
猴硐駅と猫村
をつなぐ陸橋。
坑道をイメー
ジさせる通路、
猫が遊ぶジャン
プ台やエサ台の設置など、斬新かつ実用
的なデザインが評価を受け、第13回公共
工事金質奨の優等を受賞した。
かつてこうした湾曲したホームは多かったのだが、利便性のため真っす
蔡家洋樓
嶺腳駅の後ろ側の道を登っていくと、2
階建て赤レンガ造りの洋館がある。1939
年、永昌煤礦という炭鉱の創設者・蔡全
氏が事務所として建てたもので、胭脂と
いう口紅などに使われる高価な顔料を用
いた赤レンガを使用するなど、当時の繁
栄ぶりを想起させる豪華な造りが見どこ
ろ。1階はバロック様式だが、2階は中
国風の要素が加えられており、女兒牆と
呼ばれるバルコニーの柵の亀甲紋は長寿、
両脇の柱は男性を表す「丁」の字に見え
ることから、男の子をたくさん産むとい
う吉祥の意味が込められているそうだ。
新北市平溪區嶺腳里嶺腳街(嶺腳駅
付近)
ぐに改築され、今ではここ嶺腳駅しかこの形状を留めていない。
なお、ここも以前は炭鉱の集散地で石炭を運ぶための駅だった。駅の
後方では、かつて石炭が運ばれたトロッコのレール「台車道遺址」を見
ることができる。また、嶺腳駅から隣の望古駅までは、望古瀑布が見ら
れる2キロほどのハイキングコースがあるので、ゆっくり付近を散策す
るのもお薦めだ。
目され、猫の村として生まれ変わったのである。
217咖啡
貓巴士808線
整煤廠(選炭場)
台鐵の瑞芳駅と猴 硐 駅を結ぶ猫バス。外
観はもちろん、車内のつり革、座席カ
バーなどに猫のイラストが施され、降車
ベルは猫の鳴き声という徹底ぶり。猫好
きでなくとも一度は乗ってみたい。運行
は1時間に1、2本程度。
猫村と駅を挟んで反対側に位置する黒い廃
墟は、1920年に建てられた選炭場。かつて
各坑道で採掘された石炭が、トロッコで運
ばれここで選別されていた。その左隣・駅
の正面には、当時の様子を再現した模型や
写真が展示された博物館「願景館」があり、
炭鉱として栄えた時代を今に伝えている。
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人間だけでなく、村の猫も気軽に“立ち寄
る”人気カフェ。猴硐っ子のオーナーが経
営しており、おしゃれカフェ顔負けの多様
なドリンクのほか、猫にちなんだグッズ販
売やアート作品の展示もしている。
新北市瑞芳區柴寮路217號
+886-932-336-313 10:30~18:00(火曜定休)
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アクセス
平溪
運行状況はこちら
MRT木柵駅で観光路線バス「台
灣好行・木柵平渓線(795路)」
に乗車。途中、臭豆腐で有名な
深坑、平渓老街、十分寮(老街)
などの停留所を経て、終点に近い十分遊客中
心までは片道約1時間。4月より土日祝日は
1日32→49便に大幅増便。日中(9:00~16:
00)20~40分間隔だった運行が15分間隔にな
り、さらに行きやすくなった。平日は1日25便
だが、利用者数によって臨時増発もある。
台鐵台北駅から乗車し瑞芳駅で平渓線方面に
乗り換え
(基隆方面から乗車の場合は八堵駅で
乗り換え)。平渓線各駅で自由に乗り降りできる
平渓線一日周遊券(大人52元)が便利。
平溪線路線図
八堵
暖暖
四腳亭
瑞芳
猴硐
三貂嶺
大華
十分
望古
嶺腳
平溪
菁桐
平溪分駐所(天燈派出所)
ス キ ャン さ れ た メッ セ ー ジ
は、映像の中の天燈に投影され
下から上へ登っていく。画面に
映し出されるのは1度きり。
新北市平溪區靜安路2段141號
平日:16:00~19:00、休祝日:16:00~20:00(ショーは1時間に3回)
平渓線の終点・菁桐駅は、古跡認定を受けている木造駅舎を
桐
はじめ日本統治時代の建物が多く点在し、どこかノスタルジー
を感じさせる場所。『那些年,我們一起追的女孩』(あの頃、君
を追いかけた)や『台北飄雪』(台北に舞う雪)など、日本でも
公開された映画のロケ地としてなじみがある方も多いかもしれない。
2014年8月、そんな菁桐にユニークなスポットが登場した。駅のす
ぐそばにある平溪分駐所(新北市政府警察局瑞芳分局平溪分駐所)、つまり派出所である。
カードは1枚150元。使用後、記
載した住所に郵送してくれるの
で記念に残せる。
派出所がなぜ注目のスポットかというと、その外壁に理由がある。天燈の形を模して造ら
れた高さ9メートルの建物の外壁に20万個のLEDライトを敷き詰め、毎日スライドショー
をしているのだ。指定のカードに願いごとを書き込み隣の観光サービスセンターに申し込
むと、手書きのメッセージが天燈形に投影され壁面に映し出される仕組み。伝統行事と現
代のテクノロジーが融合した、新しい天燈上げというわけだ。中では警察が通常の業務を
果たしていると思うと少々面白く、一見この地には不釣り合いのようでもあるが、紙を燃
やす必要がないだけ環境に優しいという利点がある。暗い夜空に映し出されたメッセージ
入りの天燈は想像以上にロマンチックで、実際ここでプロポーズをする若者も増えている
とか。満開の油桐花を観賞がてら、エコな天燈上げを試してみるのはいかがだろうか。
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菁桐老街と線路を挟んだ反対
側にある高台は、駅や老街が見
渡せる撮影スポット。