抄録集PDFファイルダウンロードはこちら

2015年3月14
第26回
土
◯
日
日本眼瞼義眼床手術学会
=+()FGH=G>
CDE
=()
(=>
+,-(!./,(*00
123(
4-/5
0()7;5-/<(78(=>=
(92:2
(?@A
,
(/
8
(20
7
(
B
06
!"#
$ % & % # ' ( ) *+
場 所
北海道大学医学部学友会館「フラテ」
会 長
1
2
特別講演
特別講演
問い合わせ先
野田実香
(北海道大学病院眼科)
ランチョンセミナー
講師 野平久仁彦 先生(蘇春堂形成外科 院長)
眼窩手術手技フォーラム
テーマ 「小児のブローアウト骨折」
◆学会事務局
(北大眼科)
Tel 011-706-5944
[email protected]
◆学会運営担当
(株式会社プロコムインターナショナル)
Tel 011-272-5234 [email protected]
ご 挨 拶
この度、第 26 回眼瞼・義眼床手術研究会を主宰させていただくこととなりました。本研究会の
役員ならびに会員の皆様に深く感謝申し上げます。
本学会は代表世話人である小川豊先生
(現関西医科大学形成外科名誉教授)
が形成外科医、
眼科医、
義眼師に呼びかけ平成 2 年に『義眼床手術研究会』として発足いたしました。また、第 11 回から
は形成外科、眼科が交互に会長を担当し、第 17 回からは『眼瞼・義眼床手術研究会』に名称を改め、
さらに前回の第 25 回からは「日本眼瞼義眼床手術学会」と改称されました。義眼床に限らず広く
眼窩・眼瞼疾患を対象に討議を行っています。
本学会の最大の特徴は、診療科や職種の垣根を取り払った意見交換の場であることと共に、それ
ぞれの立場から率直で白熱した討論がおこなわれることであります。
今回初めて海を超えて北の地でこの学会を開催させていただきます。
第 26 回の新しい試みとしまして、特定のトピックスに関して 1 時間に渡り討論するフォーラム
を設けました。初回のテーマは「小児のブローアウト骨折」です。また会の最後には、本学会発足
時からこの会に大きな影響を与え続けている先生方による座談会を予定しております。経験のある
先生方のお話をまとめて聞ける、またとない機会です。さらにランチョンセミナーでは札幌で活躍
される野平久仁彦先生のユニークなお話をしていただきます。
懇親会には当科の誇るグルメの達人である陳進輝先生おすすめのワインや鮨さらにスイーツなど
を取り揃えてございます。そして、ランチョンセミナーのメニューは、「選べるランチョン」を導
入しました。ぜひ海産物が最もおいしい季節に北海道のグルメをお楽しみいただければ幸いです。
多くの先生方のご参加をお待ちしております。
第 26 回日本眼瞼義眼床手術学会
会長 野田 実香
(北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)
1
歴代世話人・会長
回数(開催年)
開催場所 所 属(在任時)
氏 名
(第1回∼第 17 回までは義眼床手術研究会)
第 1 回(平成2年)
第 2 回(平成3年)
大 阪
大 阪
関西医科大学
関西医科大学
形成外科
形成外科
小川 豊
小川 豊
第 3 回(平成4年)
第 4 回( 平 成 5 年
大 阪
大 阪
関西医科大学
関西医科大学
形成外科
形成外科
小川 豊
小川 豊
第 5 回(平成6年)
第 6 回( 平 成 7 年
第 7 回(平成8年)
大 阪
大 阪
大 阪
関西医科大学
関西医科大学
関西医科大学
形成外科
形成外科
形成外科
小川 豊
小川 豊
小川 豊
第 8 回(平成9年)
第 9 回(平成 10 年)
大 阪
大 阪
関西医科大学
関西医科大学
形成外科
形成外科
小川 豊
小川 豊
第
第
第
第
第
第
第
第
大 阪
大 阪
名古屋
大 阪
大 阪
岸和田
浜 松
神 戸
関西医科大学
神戸中央市民病院
中部労災病院
大阪市立大学
市立伊丹病院
岸和田市民病院
聖隷浜松病院
神戸大学
形成外科
形成外科
形成外科
形成外科
眼科
形成外科
眼形成眼窩外科
形成外科
小川
澤田
田邊
村岡
萩原
久徳
中村
田原
豊
正樹
吉彦
道徳
正博
茂雄
泰久
真也
木下
鈴木
大島
楠本
辻 角谷
山田
茂
茂彦
浩一
健司
英貴
徳芳
貴之
10
11
12
13
14
15
16
17
回(平成 11 年)
回(平成 12 年)
回(平成 13 年)
回(平成 14 年)
回(平成 15 年)
回(平成 16 年)
回(平成 17 年)
回(平成 18 年)
(第 18 回∼第 24 回までは眼瞼・義眼床手術研究会)
第
第
第
第
第
第
第
18
19
20
21
22
23
24
回(平成 19 年)
回(平成 20 年)
回(平成 21 年)
回(平成 22 年)
回(平成 23 年)
回(平成 24 年)
回(平成 25 年)
京 都
京 都
岡 山
大 阪
東 京
東 京
広 島
京都府立医科大学
京都大学
岡山医療センター
関西医科大学
がん研有明病院
昭和大学藤が丘病院
広島大学
眼科
形成外科
眼科
形成外科
眼科
形成外科
眼科
(第 25 回∼日本眼瞼義眼床手術学会)
第 25 回(平成 26 年)
第 26 回(平成 27 年)
名古屋
北海道
愛知医科大学
北海道大学
形成外科
眼科
横尾 和久
野田 実香
第 27 回(平成 28 年)
神奈川
横浜市立大学
形成外科
前川 二郎
2
ご 案 内
参加者の皆様へ
● 当日、受付は午前 8 時 45 分から行います。
● 受付にて参加費 8,000 円をお支払い下さい。
● 受付にて眼科専門医の登録を致します。
● 質問・討論は、座長の指示に従って下さい。
● プレゼンテーションの写真・動画の撮影は、学会指定担当者以外は、ご遠慮下さい。
● 会場内は全て禁煙です。
● 学会終了後、北大内レストラン「エンレイソウ」にて懇親会を予定しております。ぜひ御参
加下さい。
● 昼食は、選べるランチョン弁当(十勝名物豚丼、札幌スープカレー、和食弁当)をご用意し
ております。
発表者の皆様へ
● 口演時間は、発表 7 分、質疑応答 5 分です。
● 前の演題が始まりましたら、次演者席にお着き下さい。
● 発表は PC プレゼンテーションのみとします。
会場に用意する PC は Windows7、PowerPoint2013 です。
● PowerPoint にて作成したファイルを CD-R、USB メモリのいずれかのメディアに入れて、口
演時間の 1 時間前までに会場前のスライド受付にて動作確認を済ませて下さい。
● 動画データを使用する場合は、PowerPoint および動画データを、必ず同一フォルダー内に格
納した状態で御持参下さい。
● Macintosh 使用の場合は御自身の PC を持ち込んでの発表となります。
電源ケーブルおよび VGA アダプターも御持参下さい。
● いずれの場合も、必ずバックアップデータをご準備下さい。不測の事態に対しての責任は、
主催者側では負えませんので宜しくお願い申し上げます。
座長の先生へ
● 御担当セクション開始予定時刻の 10 分前までに、次座長席にお座り下さい。
3
発表される皆様へ
個人情報保護法の施行により、学会・研究会において発表される症例報告は、医学研究におい
て医学、医療の進歩に貢献する極めて重要なものと捉えられておりますが、特定の患者の疾患や
治療内容に関する情報が含まれていることが多いので、そのプライバシー保護に配慮し、患者が
特定されないよう留意する必要があります。日本眼瞼義眼床手術学会で発表をされる皆様におか
れましては、以下の点に留意されましてご発表の準備をお願い申し上げます。
1)患者個人の特定可能な氏名、入院番号、イニシャルまたは「呼び名」は記載しない。
2)患者の住所は記載しない。但し、疾患の発生場所が病態等に関与する場合は区域までに限定
して記載することを可とする。(愛知県、名古屋市など)
3)日付は、臨床経過を知る上で必要となることが多いので、個人が特定できないと判断される
場合は年月までを記載してよい。
4)他情報と診療科名を照合することにより患者が特定され得る場合、診療科名は記載しない。
5)既に他院などで診断・治療を受けている場合、その施設名ならびに所在地を記載しない。但し、
救急医療などで搬送元の記載が不可欠の場合はこの限りではない。
6)顔写真を提示する際には目を隠す。眼疾患の場合は、顔全体が分からないよう眼球のみの拡
大写真とする。
7)症例を特定できる生検、剖検、画像情報に含まれる番号などは削除する。
8)以上の配慮をしても個人が特定される可能性のある場合は、発表に関する同意を患者自身(ま
たは遺族か代理人、小児では保護者)から得る。
9)遺伝性疾患やヒトゲノム・遺伝子解析を伴う症例報告でじゃ「ヒトゲノム・遺伝子解析研究
に関する倫理指針」(文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)による規定を遵守する。
4
会場「北海道大学医学部正面玄関」へのアクセス
千歳空港から北海道大学構内にございます会場への道順を簡単にご案内します。
千歳空港から JR で札幌駅まで40分かかります。電車は約15分ごとに運行されています。
札幌駅北口からタクシーにて1000円以下で到着します。
3月の札幌の気温は、+5度から−5度程度です。下記のものをご持参頂くことをおすすめい
たします。
・手袋
・帽子
・すべりにくい靴
粉雪ですのでほとんどの人が傘をささず、帽子を被り、積もった雪を払い落とす要領で過ごし
ています。手をポケットに入れると転んだときに危ないので、必ず手袋をしてください。気温が
プラスになって少し雪が溶けてからマイナスになると、ところどころで滑りやすい箇所が発生し
ます。冬用の滑りにくい、できれば防水の靴でおいでください。
【北海道大学医学部正面玄関までのアクセス】
JR 線 札幌駅 徒歩約 20 分
地下鉄南北線 北 12 条駅 徒歩約 10 分
新千歳空港駅∼札幌駅まで
JR 快速エアポート 約 40 分
バス 約 80 分
正面玄関前に噴水とロータリーがございます。タクシーはロータリー内に入ることができます。
5
会場のご案内
6
第 26 回日本眼瞼義眼床手術学会
プログラム
開会式
9:25~9:30
A. 義眼
9:30~10:18
座長:辻 英貴 先生(がん研有明病院 眼科)
A1 両眼性複視の症例を義眼により調整した経験
○山本 裕義 1)、西岡 裕司 1)、厚澤 正幸 1)、厚澤 弘陳 1)、横川 昌彦 2)、小野 眞史 3)
1)
株式会社アツザワプロテーゼ、2)伊勢原協同病院 眼科、3)日本医科大学病院 眼科
A2 デジタル技術を応用した義眼内面と義眼床との適合向上への試み
○西川 圭吾 1)、藤田 岳志 2)、垂水 良悦 2)、野田 実香 3)、道田 智宏 1)、
賀山奈美子 1)、輪島 克司 1)、阪野 充 1)、高木 敏彦 1)、賀山奈美子 1)
1)
北海道大学病院 生体技工部、2)株式会社札幌デンタルラボラトリー、
3)
北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野
A3 両先天性無眼球症の 1 例
○南 喜郎 1)、野田 実香 2) 長岡 泰司 3)
1)
名寄市立総合病院 眼科、2)北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野、
3)
旭川医科大学 眼科学講座
A4 エピテーゼに関わる諸問題
○辻 英貴 1)、小林めぐみ 1)、光安 哲人 2)
1)
がん研究会有明病院 眼科、2)アツザワプロテーゼ九州
A5 Medpor® 義眼台の使用成績:第 3 報
○鈴木 茂伸
国立がん研究センター中央病院 眼腫瘍科
休 憩
10:30~10:40
7
B. 眼瞼1
10:40~11:40
座長:柏木 広哉 先生(静岡がんセンター 眼科)
B1 8/0 バイクリル糸を使用した小児の眼瞼皮膚縫合の検討
○今川 幸宏 1)、市橋 卓 1)、越智 亮介 1)、佐藤 文平 1)、池田 恒彦 2)
1)
大阪回生病院、2)大阪医大 眼科
B2 「なみだぶくろ」を保存できた下眼瞼内反症の一症例
○大島 浩一 1)、中村 泰久 2)
1)
岡山医療センター 眼科、2)愛知医大 眼科
B3 挙筋機能の程度別にみた眼瞼下垂手術後の涙液貯留量の変化
○渡辺彰英 1)、岡 雄太郎 2)、山中 行人 1)、横井 則彦 1)、小泉 範子 1)、木下 茂 1)
1)
京都府立医科大学 眼科、2)同志社大学 生命医科学
B4 退行性下眼瞼内反症における眼輪筋の乗り上げに対する評価法の提案
○綾 梨乃 1)、幸島 究 2)、鈴木 茂彦 1)
1)
京都大学医学研究科 形成外科、2)第 2 にしむら眼科
B5 大腿筋膜による吊り上げ術を施行した片側先天性眼瞼下垂症に対する
長期経過の検討
○石瀬 久子、今井 啓介、出口 綾香、岡田 愛弓、山口 憲昭、高橋 誠、
升岡 健
大阪市立総合医療センター 形成外科
休憩・移動
11:40~11:55
特別講演1 大研修室にて
11:55~12:45
ランチョンセミナー(共催:参天製薬株式会社) 座長:山本 有平 先生
眼瞼下垂症術後変形の治療:とくに他院での手術例にどう対処するか
蘇春堂形成外科 ○野平久仁彦、矢島和宜、新冨芳尚
休 憩
12:45~13:00
8
総 会
13:00~13:20
特別講演 2
13:20~14:20
セミナー(共催:メディカルユーアンドエー)
第一回眼窩手術手技フォーラム:「小児のブローアウト骨折」
小児のブローアウト骨折の特徴と手術加療の目標
京都府立医科大学 眼科 渡辺 彰英先生(座長)
機能と解剖から考える小児の眼窩骨折
群馬大学 眼科 鹿嶋 友敬先生
成人例との比較
兵庫医科大学 形成外科 藤原 敏宏先生
治療の実際
北海道大学 形成外科 小山 明彦先生
休 憩
14:20~14:30
C. 眼瞼 2
14:30~15:18
座長:前川 二郎 先生(横浜市立大学 形成外科)
C1 当科における顔面神経麻痺による下眼瞼下垂に対する治療について
○廣冨 浩一、三上 太郎、長谷川佳子、篠木 美穂、鍵本慎太郎、足立 英子、
北山 晋也、松原 忍、前川 二郎
横浜市立大学附属病院 形成外科
C2 内眥形成術
○冨士森良輔、冨士森英之、外岡 真紀
冨士森形成外科医院
C3 下眼瞼広範囲全層欠損に対し眼輪筋を茎とした皮弁を用いて再建した1例
○山下 建、四ッ柳 高敏、安田沙緒里、小澤 隆矩、北田 文華、権田 綾子、
加藤 慎二、須貝明日香、山内 誠、齋藤 有
札幌医科大学 形成外科
C4 上眼瞼の広範囲全層欠損に対する再建の工夫
○畑 真貴、金本 侑子、高木 正
住友病院 形成外科
9
休 憩
15:18~15:30
D. 腫瘍
15:30~16:18
座長:中川 雅裕 先生(静岡がんセンター 形成外科)
D1 上眼瞼血管腫に対して挙筋前転法を併用した 3 例
○茂利 真美、横尾 和久
愛知医科大学 形成外科
D2 眼窩壁を貫き眼窩の内外に及んだ皮様嚢腫の 2 例
○北 愛里紗 1)、石崎 力久 1)、山下 建 2)、須貝明日香 2)
1)
函館五稜郭病院 形成外科、2)札幌医科大学 形成外科
D3 眼窩脂肪腫を認めた 1 例
○勝村 宇博 1)、嘉鳥 信忠 1)、笠井健一郎 1)、末岡健太郎 1)、村上 正洋 2)
1)
聖隷浜松病院 眼形成眼窩外科、2)日本医科大学 武蔵小杉病院 形成外科
D4 眼窩内転移をきたした小児悪性黒色腫の 1 例
○山中 行人、渡辺 彰英、木下 茂
京都府立医科大学大学院 視覚機能再生外科学
E. 眼窩
16:18~17:06
座長:垣淵 正男 先生(兵庫医科大学 形成外科)
E1 眼窩・眼瞼形態に配慮した人工骨を用いた中顔面再建の経験
○坂原 大亮、元村 尚嗣、羽多野隆治、藤川平四郎、丸山 陽子、上野真理恵、
梶原 大資、松本 后代
大阪市立大学 大学院医学研究科 形成外科
E2 甲状腺眼症での眼窩減圧術におけるナビゲーションシステムの応用
○齋藤 拓也、西本 聡、河合建一郎、藤原 敏宏、曽束 洋平、藤田 和敏、
木下 将人、垣淵 正男
兵庫医科大学 形成外科
E3 緊急手術により著明に視力が回復した眼窩 blow-in 骨折の1例
○恋水 諄源(こいみず じゅんげん)1)、秋田 梨恵 1)、五影 志津 1)、中村 寛子 1)、
吾妻 隆久 1)、素輪 善弘 1)、沼尻 敏明 1)、西野 健一 1)、上田 幸典 2)、山中 行人 2)
1)
京都府立医科大学附属病院 形成外科、2)京都府立医科大学附属病院 眼科
10
E4 上顎洞開窓骨切り術でアプローチした眼窩内球後部腫瘍の二例
○山内 崇史、光井 俊人、楠本 健司
関西医科大学附属枚方病院 形成外科
休 憩
17:06~17:20
座談会
17:20~17:50
司会進行:辻 英貴、野田 実香
「これまでの25年と本日の討論を振り返って」
冨士森良輔、田邊 吉彦、中村 泰久、土井 秀明
閉会式
17:50~17:55
懇親会
18:20~
11
抄 録
特別講演
座長 : 山本 有平 先生
眼瞼下垂症術後変形の治療:とくに他院での手術例にどう対処するか
蘇春堂形成外科 ○野平久仁彦、矢島和宜、新冨芳尚
形成外科における眼瞼下垂症手術の普及は目覚ましいものがある。眼瞼は外貌のうち特に人目
につきやすく、手術には機能的改善はもとより整容的改善も強く求められるため、患者を十分に
満足させるにはかなりの経験と美容外科的な手技が要求される。そのため多くの施設で手術が行
われるに従って、他院での術後変形を訴えて当科を受診する患者も増加傾向にある。
2006年1月から2014年12月までの9年間に他医で眼瞼下垂症手術を受け、結果に不
満足なために当科を受診して修正術を受けた患者は103名だった(22歳から87歳、平均
58.1歳、男10名、女93名)。術後観察期間は1ヵ月から6年10ヵ月、平均1年3ヵ月、
手術回数は1回から6回、平均1.6回であった。眼科で手術を受けた者31名、形成外科美容外
科で手術を受けた者70名、脳外科で手術を受けた者2名だった。変形は1)下垂が治っていな
いもの、2)左右の開瞼幅が違うもの、3)左右の重瞼幅が違うもの、4)左右の開瞼幅、重瞼
幅とも違うもの、5)眼瞼後退、の5タイプに分類することができた。
これらの修正手術は困難なものもあり、多くの手技を用いたり治療期間も長期に渡ることも少
なくない。他医眼科や形成外科、美容外科で眼瞼下垂手術を受け、結果に不満足で当科を受診し
た患者を中心にその治療法について述べる。
略 歴
野平 久仁彦(のひら くにひこ)
昭和53年
北海道大学医学部卒業
同年
北海道大学医学部附属病院形成外科入局
昭和62年
米国アラバマ大学形成外科留学
昭和63年
日鋼記念病院形成外科科長
平成 3 年
蘇春堂形成外科副院長
平成15年
蘇春堂形成外科院長
日本形成外科学会専門医
日本美容外科学会専門医
日本美容外科学会理事
日本形成外科学会評議員
13
A. 義眼
A1
座長 : 辻 英貴 先生 (がん研有明病院 眼科)
症術後変形の治療:とくに他院での手術例にどう対処するか
○山本 裕義 1)、西岡 裕司 1)、厚澤 正幸 1)、厚澤 弘陳 1)、横川 昌彦 2)、小野 眞史 3)
1)
株式会社アツザワプロテーゼ、2)伊勢原協同病院 眼科、3)日本医科大学病院 眼科
眼窩静脈瘤による間歇性眼球突出の症状がある女性が、その後さまざまな要因が重なり内斜視となり
複視の度合いが強くなった症例において、装用時間に制限を設けた上で視力のある片眼にシングル義眼
の装着を試み整容性と複視の両方を改善できないかというテーマに挑戦し、現在のところ重篤な障害を
生じていない症例の報告をする。
A2
デジタル技術を応用した義眼内面と義眼床との適合向上への試み
○西川 圭吾 1)、藤田 岳志 2)、垂水 良悦 2)、野田 実香 3)、道田 智宏 1)、賀山奈美子 1)、
輪島 克司 1)、阪野 充 1)、高木 敏彦 1)、賀山奈美子 1)
1)
北海道大学病院 生体技工部、2)株式会社札幌デンタルラボラトリー、
3)
北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野
はじめに
義眼床と義眼内面の適合度が義眼使用患者の装着感に大きく影響することは周知のことと思われる。
海外においては義眼床の状態を軟性材料で印象採得(型採り)し、石膏模型に再現してその上に義眼を
作製する場合が多いため、高い適合の義眼が作製されていると聞いている。一方国内では印象採得は印
象材を眼窩部に注入するため、材料の安全性の面や患者の体への負担などもあることから、ほとんど行
われていないのが現状ではないかと思われる。今回、印象採得に代わる方法として、デジタル技術を応
用し、患者に直接的に体への負担をかけずに義眼床と義眼の良好な適合を達成するための方法を模索し、
義眼の形状の試作を行ったのでここに報告する。
方法
1.医用画像処理ソフト Mimics( マテリアライズ社 ) を用いてコンピュータ画像上で筆者の CT および
MRI 画像 (DICOM データ ) から眼球前面(義眼を装着する部分)の三次元形状を STL 形式のデー
タとして抽出した
15
2.抽出した STL データを石膏造形 3D プリンターに入力しての眼球前面状態を石膏立体造形模型とし
て作製した
3.3次元モデリングソフト、Freeform®(3D システム社)を用いて1で抽出した眼球前面の三次元
形状データを入力し、その上に厚さ 0.5mm の義眼の形態を作成して STL 形式のデータとして抽出
した
4.樹脂造形 3D プリンターを用いて4で作成した義眼の形態を樹脂造形立体モデルで再現した
5.2で作製した石膏立体造形模型の上に5で作製した樹脂造形立体モデルを重ね合わせ適合を確認し
た
結果
今回は患者に直接負担をかけずに義眼床と義眼の良好な適合を達成する方法を模索した。実験の結果、
石膏立体造形模型と樹脂造形立体モデルの適合はほぼ良好であり、患者の MRI 画像 (DICOM データ )
から医用画像処理ソフトを用いて形状データを抽出する方法は患者の負担を軽減し、義眼内面と義眼床
の適合を向上させることができることを確認した。
A3
両先天性無眼球症の 1 例
○南 喜郎 1)、野田 実香 2) 長岡 泰司 3)
1)
名寄市立総合病院 眼科、2)北海道大学大学院医学研究科 眼科学分野、
3)
旭川医科大学 眼科学講座
目的:先天性無眼球症の 1 例を経験したので、報告する。
症例:0 才 11 ヶ月の女児。在胎 39 週 2 日、アプガースコア 7、2672 gで出生。出生時に無眼球症を疑
われ当科へ紹介となった。初診時、瞼裂狭小(瞼裂幅 5 mm)を認め、眼球は確認できなかった。日齢
1 にCTを施行し、両側とも眼球を認めず、無眼球症の診断となった。画像上、視神経も認めなかったが、
外眼筋は確認できた。出生時には、無眼球症と鼻腔が狭い以外の先天異常は認めなかった。
日齢 12 から拡張器の眼窩内挿入を開始した。5 ヶ月までは 2 週間毎、6ヶ月以降は 4 週間毎に診察し、
可能であれば順次大きな拡張器との交換を行った。現在は瞼裂幅 15mm で、全身状態に特に問題はない
が、発達はやや遅く 10 ヶ月の時点で寝返りができてない。
考案:本症例は、外胚葉由来の眼球、視神経は認められず、中胚葉由来の外眼筋は認められることから、
第一次眼胞の発育不全が原因の先天性無眼球症と考えられた。出生後早期に診断し、拡張器の挿入を開
始したことで、良好な眼窩の発達を得られたと考えられた。
16
A4
エピテーゼに関わる諸問題
○辻 英貴 1)、小林めぐみ 1)、光安 哲人 2)
1)
がん研究会有明病院 眼科、2)アツザワプロテーゼ九州
緒言:眼部腫瘍の進行例、例えば眼瞼脂腺がんや結膜悪性腫瘍の眼窩内浸潤、眼内悪性腫瘍の眼外浸潤
例などでは、侵襲の大きな手術を施行しなければならない症例が存在する。最も多い術式は眼窩内容除
去術であり、術後は顔貌が著しく変化してしまうため、何らかの審美的方法が求められる。今回、演者
らは眼窩内容除去術にエピテーゼを作成した症例を経験し、考察したので報告する。
症例:代表症例は自閉症の 25 歳の男性で、結膜由来と思われる扁平上皮がんであった。腫瘍は急速に
大きくなって眼窩内に浸潤し、眼窩内容除去術を施行後、エピテーゼ(外装義眼)を作成した。眼瞼脂
腺がんの症例では前医で霰粒腫の診断にて何度も切開を行われているものが多く、中には頸部リンパ節
に転移し、廓清が必要な症例も存在した。
結果:皮膚移植後の経過は順調で、3Dプリンターを用いたエピテーゼを装用し、患者の QOL に大き
な貢献をしており、経過は良好である。
結論:眼窩内容除去術のエピテーゼは有用である。しかしながら早期に適切な診断を行うことにより眼
窩内容除去術を施行しなくても済む症例も存在し、眼部悪性腫瘍のさらなる啓蒙を進める必要があると
思われた。
A5
Medpor® 義眼台の使用成績:第 3 報
○鈴木 茂伸
国立がん研究センター中央病院 眼腫瘍科
【緒言】2007 年、2010 年の本研究会で Medpor® 義眼台埋入症例の成績を報告した。その後観察期間を
延長したため、今回改めて予後を検討し報告する。
【対象と方法】2002 年 11 月から 2009 年 12 月までに眼球摘出を行い一期的に Medpor 義眼台を埋入した
症例。Medpor®PLUS(以下 PLUS)と Medpor®PLUS SST(以下 SST)義眼台に分け、義眼台の露出
について検討した。
【結果】成人は 15 例中 1 例、小児は 42 例中 11 例で露出した(P=0.15)。PLUS 義眼台は 44 眼に使用し、
6 ヶ月以内の早期露出が 7 眼、それ以後の晩期露出が 5 眼に生じた。SST 義眼台は 13 眼に使用し、早期
露出が 1 眼、晩期露出が 1 眼に生じた。Kaplan-Meyer 法による解析で義眼台の種類による露出率に有
意差はなかった。
【結論】義眼台の表面形状を工夫しても露出率の有意な減少は期待できない結果であった。
17
B. 眼瞼1
B1
座長 : 柏木 広哉 先生 (静岡がんセンター 眼科)
8/0 バイクリル糸を使用した小児の眼瞼皮膚縫合の検討
○今川 幸宏 1)、市橋 卓 1)、越智 亮介 1)、佐藤 文平 1)、池田 恒彦 2)
1)
大阪回生病院 眼科、2)大阪医大 眼科
【目的】8/0 バイクリル糸による小児の眼瞼皮膚縫合の安全性と有用性について検討すること。
【方法】抜糸しないことを前提に 8/0 バイクリル糸を使用して眼瞼の手術創を縫合し、術翌日、術後 1 ヶ
月、術後 3 ヶ月時に経過を観察できた小児 17 例 38 眼瞼(3-16 歳、平均年齢 6.8 歳 男児 10 例、女児 7 例)
を対象とした。吸収に伴う組織反応の有無、創の離解および感染の有無、
縫合糸の消失する時期、
術後 3 ヶ
月時の手術痕の状態について診療録をもとに後ろ向きに調査した。
【結果】縫合部位の内訳は、11 上眼瞼と 27 下眼瞼。術後 1 ヶ月時に 5 眼瞼に吸収に伴う組織反応が原因
と思われる発赤所見を認めたが、1 眼瞼は経過観察、4 眼瞼は創部へのステロイド軟膏塗布を行ったと
ころ、術後 3 ヶ月時には消失した。すべての症例で創の離解や感染を疑う所見はなく、抜糸を余儀なく
されることはなかった。術後 1 ヶ月時の縫合糸の状態は、すべて残存が 25 眼瞼、
部分的に残存が 10 眼瞼、
すべて消失が 3 眼瞼であった。術後 3 ヶ月時の手術痕の状態はすべての眼瞼で良好であり、縫合糸痕を
残した症例はなかった。
【結論】8/0 バイクリル糸による小児の眼瞼皮膚縫合は、糸の吸収に伴う炎症は起こり得るものの、安全
かつ効果的に施行できると推察された。
B2 「なみだぶくろ」を保存できた下眼瞼内反症の一症例
○大島 浩一 1)、中村 泰久 2)
1)
岡山医療センター 眼科、2)愛知医大 眼科
緒言:
「なみだぶくろ」の定義は明確でないが、「下眼瞼縁から下眼瞼溝に至る皮膚のなだらかな隆起」
と考えるのが一般的であろう。西洋人にはほとんど見られないようであり、日本人でも目立つ人と目立
たない人がいる。わが国の若い女性の一部では、
「なみだぶくろ」に執着する傾向がある。下眼瞼内反
症にたいして、ホッツ変法を行う際に眼輪筋を切除すると、
「なみだぶくろ」が平坦になる可能性がある。
「なみだぶくろ」を保存できる術式は、一部の患者の要望に合致するであろう。
症例:17 歳の女性。両側下眼瞼内反症手術を希望して、受診した。
「なみだぶくろ」が明瞭に存在する
症例であった。局所麻酔下にホッツ変法に準ずる手術を行った。このとき眼輪筋を皮下組織・瞼板前組
織から剥離し、切除せずに下方へ移動させた。瞼縁側皮膚の皮下組織と瞼板付近の牽引腱膜を縫合する
ことで、睫毛を外反させた。術後に術創に近い部分の襞が若干目立ったが、睫毛はよく起きており、
「な
みだぶくろ」は保たれていた。
18
B3
挙筋機能の程度別にみた眼瞼下垂手術後の涙液貯留量の変化
○渡辺彰英 1)、岡 雄太郎 1)2)、山中 行人 1)、横井 則彦 1)、小泉 範子 1)2)、木下 茂 1)
1)
京都府立医科大学 眼科、2)同志社大学 生命医科学
目的)我々は、挙筋機能が良好な眼瞼下垂症例に対する挙筋短縮術後の涙液量は、術前の涙液量が多い
症例ほど減少しやすく、少ない症例はあまり変化しないということを報告してきた。今回、術前の挙筋
機能の程度別にみた涙液量の変化について検討したので報告する。
対象と方法)対象は、挙筋短縮術を施行した 42 例中、術前の挙筋機能が 6 から 9mm である群(fair
群 ; 6 例 9 眼)と挙筋機能が 10mm 以上である群(good 群;36 例 56 眼)に分けて、術前後の Margin
Reflex Distance-1(MRD-1)
(mm)、涙液メニスカス曲率半径(R)
(mm)を測定した。
結果)MRD-1 は両群ともに術後有意に改善していた。術前、術後 1.5、3、6 ヶ月の R は、fair と good
群の順にそれぞれ 0.244 と 0.299、0.251 と 0.233、0.265 と 0.238、0.255 と 0.247 で、fair 群では術後の涙
液量に変化は認められなかったが、good 群では術前と比較して術後 1.5 ヶ月以降 R は有意に減少してい
た。
結論)挙筋機能が弱いと術後の涙液量は変化しにくいことがわかった。
B4
退行性下眼瞼内反症における眼輪筋の乗り上げに対する評価法の提案
○綾 梨乃 1)、幸島 究 2)、鈴木 茂彦 1)
1)
京都大学医学研究科形成外科、2)第 2 にしむら眼科
退行性下眼瞼内反症は複数の病因が重なり発生する。その一つとして眼輪筋の乗り上げ、すなわち眼
窩隔膜前部眼輪筋が瞼板前部眼輪筋を乗り越えて眼瞼皮膚が角膜側にめくり込むことが指摘されてい
る。この現象を瞬目試験で観察する報告もあるが、上眼瞼による押え込みと眼輪筋の乗り上げとの判別
が困難である。今回、我々は眼輪筋の乗り上げを評価する方法として、上眼瞼が下眼瞼に接しないよう
に抑制した状態で瞬目を行い、内反が生じるか否かを確認した。結果は、7 例 8 眼瞼のうち 6 例 7 眼瞼
において上眼瞼抑制下で皮膚がめくり込むように内反が起こることが確認された。このように高頻度に
眼輪筋の乗り上げが認められる理由として、アジア人に多い下眼瞼牽引筋腱膜(LERs)の皮枝の脆弱や
欠損を基礎とし、そこに各組織の退行性変化(弛緩)が加わると眼輪筋の乗り上げが起こりやすくなる
ためと思われる。この評価方法を追加することで、より正確に病因を把握でき、乗り上げの起こりやす
い症例では wheeler 法など眼輪筋に対する効果の高い術式が有用であると考えられた。
19
B5
大腿筋膜による吊り上げ術を施行した片側先天性眼瞼下垂症に対する
長期経過の検討
○石瀬 久子、今井 啓介、出口 綾香、岡田 愛弓、山口 憲昭、高橋 誠、升岡 健
大阪市立総合医療センター 形成外科
(目的)
当施設で大腿筋膜移植による吊り上げ術を施行した片側先天性眼瞼下垂症に対し、術後長期経過につ
いて検討したので報告する。
( 対象と方法 )
対象は 1997 年 10 月∼ 2003 年 10 月までに大腿筋膜移植術を行った片側先天性眼瞼下垂症例で 10 年
以上の経過観察を行い、臨床写真による評価を行うことが可能であったものである。対象症例は 14 例(男
6 例、女 8 例)、手術時年齢は 2 歳∼ 4 歳(平均 2.67 歳)であった。評価方法は、術前、術後早期(5 ヶ
月∼ 5 年)、術後長期(10 年以上)の臨床写真を用い、健側、患側の瞼裂高、MRD1 を測定した。検討
項目は、MRD 比(MRD1 / MRD2)とした。MRD 比は、瞼裂高から MRD 1をひいた部分を「MRD 2」
とし、相対的な基準値として比率を算出した。
(結果)
MRD 比は術前患側では平均 0.213、健側は平均 0.775 であった。術後早期では患側は平均 0.470、健側
は平均 0.641、術後長期患側は平均 0.354、健側は平均 0.519 であった。患側では術後早期では術前と比
べ有意差をもって改善を認めた。術後早期では左右における有意差は認めなかったが、術後長期では有
意差を認めた。
(考察)
当施設で行っている術式において、術後短期では MRD 比、左右差は改善していた。術後長期ではや
や下垂する傾向を認めた。
20
C. 眼瞼 2
C1
座長 : 前川 二郎 先生 (横浜市立大学 形成外科)
当科における顔面神経麻痺による下眼瞼下垂に対する治療について
○廣冨 浩一、三上 太郎、長谷川佳子、篠木 美穂、鍵本慎太郎、足立 英子、北山 晋也、
松原 忍、前川 二郎
横浜市立大学附属病院 形成外科
【目的】当科で手術を行った顔面神経麻痺を原因とした下眼瞼下垂について報告する。
【方法】症例は 2005 年から 2014 年に手術を適用した顔面神経麻痺を原因とする下眼瞼下垂 23 例(男 12
例、女 11 例。51 歳∼ 81 歳(平均 65.3 歳)
)
。麻痺の原因、術式、術後の症状改善、再手術の有無等につ
いて検討を行った。
【結果】麻痺の原因は、腫瘍切除後 17 例、神経血管減圧術術後 1 例、頭蓋骨骨折を伴う外傷性麻痺 1 例、
脳出血に伴うもの 1 例、Ramsay-Hunt 症候群 1 例、ベル麻痺 1 例、不明 1 例。主に適応した術式は筋膜
移植術 5 例、耳介軟骨移植術 7 例、真皮付き耳介軟骨移植術 6 例、瞼板縫合術(切除を含む)5 例であっ
た。いずれの症例も症状の改善を認めたが、軟骨単独の移植術では再手術を必要としたものが多かった。
【考察】下眼瞼下垂に対しては筋膜で瞼板を吊り上げる、軟骨で衝立を作る手術を適応することが多いが、
筋膜移植術では固定部の緩み、軟骨移植術では軟骨の変形や下眼瞼形態へのミスマッチなどが再手術の
原因となる。近年我々が適応している真皮付き軟骨移植術は各々の欠点を補うことができる簡便な方法
として有用であると考えられた。
C2
内眥形成術
○冨士森良輔、冨士森英之、外岡 真紀
冨士森形成外科医院
熱傷瘢痕や義眼床拘縮あるいは美容外科術後の変形のいろいろの修正法について報告する。また以前
内眼角贅皮(epicanthus)の再建に、Z の特殊な形として贅皮皮弁(epicanthus flap )を報告したが、
その後土井秀明先生が発表された Shark fin flap(Z の特殊型 ) を追試してそれぞれの特長も比較検討した。
21
C3
下眼瞼広範囲全層欠損に対し眼輪筋を茎とした皮弁を用いて再建した1例
○山下 建、四ッ柳 高敏、安田沙緒里、小澤 隆矩、北田 文華、権田 綾子、加藤 慎二、
須貝明日香、山内 誠、齋藤 有
札幌医科大学 形成外科
下眼瞼の欠損に対しては周囲の皮膚を利用した局所皮弁が各種報告されている。特に高齢者において
は、眼瞼皮膚弛緩症を合併していることが多いことから、上眼瞼の余剰皮膚を眼輪筋皮弁として利用す
ることが可能である。本皮弁は眼瞼自体の皮膚であるため整容的に良好で、また採取部瘢痕を重瞼腺に
一致させることが可能である。
今回われわれは 76 歳女性、脂腺癌切除後に生じた下眼瞼縁の全層欠損に対し、上眼瞼の余剰皮膚を
利用した眼輪筋皮弁と耳介軟骨、口腔粘膜移植を併用した再建を行った。術後、開閉瞼機能は維持され、
整容的にも比較的良好な結果が得られた。下眼瞼の再建法につき、文献的考察を加えて報告する。
C4
上眼瞼の広範囲全層欠損に対する再建の工夫
○畑 真貴、金本 侑子、高木 正
住友病院 形成外科
上眼瞼の全層欠損では、欠損範囲が狭い場合は縫縮が可能であるが、上眼瞼の 1/4 を越える欠損に対
しては、何らかの皮弁による再建が必要となる。上眼瞼内側の広範囲欠損、外眼角を含む上眼瞼欠損、
上眼瞼全幅の欠損について、当院で行っている再建方法につき報告する。
上眼瞼内側寄りの欠損では、外眼角側方に Z 形成を作成し、外眼角靱帯を切断、眼瞼結膜に減張切開
を加えることで皮弁全体を水平方向に大きく移動させることが可能となる。
外眼角を含む欠損では、Cengiz らが報告した方法に準じて、前葉は外側から水平 V-Y 皮弁を、後葉
は硬口蓋の粘骨膜弁を用い、外眼角形成と上眼瞼再建を同時に行っている。
さらに広範囲な上眼瞼全幅の欠損に対しては、眉毛下に残存している上眼瞼皮膚を眼輪筋双茎皮弁と
して挙上し上眼瞼縁まで移動させる。皮弁採取部は眼窩外側皮弁で再建を行う。
これらの方法は、一般的に用いられる switch flap 法、瞼板結膜法などの術式と比較し、一期的に再建
が可能であり、また下眼瞼を犠牲にしないという利点がある。カラーマッチ、テクスチャーマッチ、開
閉瞼など、整容的・機能的にも満足のゆく結果が得られ、再建方法の一つとして有用と思われたため報
告する。
22
D. 腫瘍
D1
座長 : 中川 雅裕 先生 (静岡がんセンター 形成外科)
上眼瞼血管腫に対して挙筋前転法を併用した 3 例
○茂利 真美、横尾 和久
愛知医科大学 形成外科
上眼瞼に血管腫が存在し開瞼不全を合併した3症例に対して、血管腫の減量のみならず、眼瞼挙筋前
転法を併用し改善が得られたので、報告する。
【症例 1】15 歳女性。生後まもなくより左上眼瞼に巨大乳児血管腫を認め、幼少時よりレーザー治療や減
量術を繰り返していた。14 歳時頃より、左上眼瞼の下垂を認めたため、
15 歳時に左眼瞼挙筋前転法を行っ
た。術後は開瞼良好で整容的にも改善を認めている。
【症例 2】50 歳男性。顔面毛細血管奇形の増殖により、両側の開瞼が困難とのことで当院紹介受診。
血管腫の減量、および両眼瞼挙筋前転法を施行し、術後開瞼は良好である。
【症例 3】34 歳男性。生下時より左顔面四肢に血管形成異常を認めた。30 歳頃より左上眼瞼毛細血管
形成異常の増殖に伴い、開瞼困難になったとのことで、当科を受診した。左顔面の血管腫の減量および
左上眼瞼挙筋前転法を行い、術後は開瞼の改善を認めている。
3 例とも、術中所見として、挙筋腱膜の菲薄化や挙筋の萎縮が認められた。長期にわたる、または増
大する血管腫・血管奇形の影響によるものと考えられ、この場合、血管腫の減量のみならず、挙筋前転
法を併用することで良好な開瞼および整容の改善が見込めると考えられる。
D2
眼窩壁を貫き眼窩の内外に及んだ皮様嚢腫の 2 例
○北 愛里紗 1)、石崎 力久 1)、山下 建 2)、須貝明日香 2)
1)
函館五稜郭病院 形成外科、2)札幌医科大学 形成外科
小児期に多い眼窩腫瘍の一つである皮様嚢腫は骨変形を伴い、眼窩縁に陥凹を有することが多いが、
まれに眼窩骨を貫いたり、ダンベル様の形状を示すこともある。われわれは眼窩外側壁を貫通して眼窩
の内外に及んだ 2 症例を経験したため、文献的考察とともに報告する。
症例 1:4 歳男児、眼瞼外傷を受傷した際、骨折スクリーニングの画像診断にて眼窩外側骨壁を貫く
腫瘤が認められた。症例 2:65 歳女性、10 年以上前より、左側頭部の皮下腫瘤を認めた。画像診断にて
眼窩外側骨壁を貫いてダンベル型に眼窩内外にまたがった腫瘤が認められた。両症例とも、全身麻酔下
に、側方アプローチにて腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍の病理診断は皮様嚢腫であった。術後 1 年以上
の経過観察にて再発や変形を認めなかった。
23
D3
眼窩脂肪腫を認めた 1 例
○勝村 宇博 1)、嘉鳥 信忠 1)、笠井健一郎 1)、末岡健太郎 1)、村上 正洋 2)
1)
聖隷浜松病院 眼形成眼窩外科、2)日本医科大学 武蔵小杉病院 形成外科
【緒言】脂肪腫は、成熟脂肪細胞の増生からなる良性の軟部腫瘍であり、体幹や四肢近位部に認めるこ
とが多く、眼窩に認めるのはまれである。また、まれに再発することがある。今回我々は、眼窩脂肪腫
の 1 例を経験したので報告する。
【症例】症例は 77 歳男性。2006 年より徐々に左眼球突出、左上眼瞼腫脹が出現。前医において眼窩脂肪
ヘルニアと診断され、数度の眼窩脂肪摘出術を施行されたが、再発を繰り返したため、当科へ紹介となっ
た。初診時所見では、左外下斜視および内転障害があり、眼窩 MRI では、眼窩脂肪の眼瞼周囲への脱出、
内直筋、上直筋への脂肪浸潤を認めた。当科で左眼窩脂肪摘出術を2回施行した。病理組織学的診断は
前医と同様に脂肪腫の診断であった。現在左眼球運動障害は残存しているが、繰り返し再発、増大して
いた症状はなくなっている。
【考按】眼窩内にも脂肪腫が発生し得ることに留意すべきである。
D4
眼窩内転移をきたした小児悪性黒色腫の 1 例
○山中 行人、渡辺 彰英、木下 茂
都府立医科大学大学院 視覚機能再生外科学
【緒言】今回、稀と思われる眼窩内転移をきたした小児の悪性黒色腫の 1 例を報告する。
【症例】4 歳男児。2010 年 1 月の生下時より腰部から臀部にかけて巨大黒色腫を認めていた。2011 年 8
月頃より左腰部の腫瘤性病変が急激に増大したが、切除生検では悪性所見を認めず経過観察とされてい
た。しかしその後腫瘤は徐々に増大傾向を示し、鼠径リンパ節の腫脹も認めたため 2013 年 9 月に腫瘤
の摘出術を施行。摘出した検体の病理検査では、褐色顆粒を含む N/C 比の高い異型細胞を認め悪性黒色
腫の診断であった。10 月に拡大切除術および植皮術および右鼠径リンパ節郭清術を施行し、
インターフェ
ロン投与で経過観察となった。2014 年 2 月の PET-CT にて肺・後腹膜・左手指への転移を認め悪性黒
色腫の再発の診断を受け化学療法を施行されていた。5 月 28 日の MRI では眼窩部に異常所見を認めな
かったが、6 月 16 日の CT で左眼窩内に径 2cm の腫瘤性病変を認め、眼窩内転移と考えられた。腫瘍
の増大に伴い左眼球運動制限、眼球偏位、下眼瞼結膜の露出、閉瞼不全を認めたが、全身多発転移があ
ることから積極的な加療を行わず保存的に経過観察とした。全身状態の悪化に伴い 11 月に永眠された。
【考察】小児の悪性黒色腫は稀ではあるが、時に眼窩内転移をきたすことがあり注意が必要である。
24
E. 眼窩
E1
座長 : 垣淵 正男 先生 (兵庫医科大学 形成外科)
眼窩・眼瞼形態に配慮した人工骨を用いた中顔面再建の経験
○坂原 大亮、元村 尚嗣、羽多野隆治、藤川平四郎、丸山 陽子、上野真理恵、梶原 大資、
松本 后代
大阪市立大学 大学院医学研究科 形成外科
【はじめに】中顔面再建は未だ最も困難な再建部位の一つである。今回われわれは広範囲骨欠損を伴っ
た中顔面再建において人工骨を用いて良好な眼窩・眼瞼形態を再建できたため報告する。
【症例】46歳男性、鼻腔癌。耳鼻科・脳外科による拡大切除の結果、中顔面の広範囲欠損となった。
遊離腹直筋による軟部組織再建を行った。温存した眼球機能の改善および整容的改善を図るため、両内
貲同士を縫合した。
術後補助療法の後、硬性再建を施行した。術前の CT 画像から人工骨を作成した。両内貲靭帯付着部
に相当する部位に孔を開けておき、チタンワイヤーを両内貲に固定・締結することにより内眼角部再建
を行った。人工骨は初回手術時に移植した腹直筋皮弁で十分にラッピングした。
術後眼窩・眼瞼形態は良好に維持されており、初回手術に生じていた複視の改善も見られた。
【考察】中顔面再建では広範囲な骨欠損を伴う場合での硬性再建材料の選択には非常に苦慮する。十分
な軟部組織で再建が行われている場合では、人工骨による再建もひとつの選択枝になり得ると考える。
さらに人工骨を工夫して作成することで良好な機能・整容再建が可能である。
E2
甲状腺眼症での眼窩減圧術におけるナビゲーションシステムの応用
○齋藤 拓也、西本 聡、河合建一郎、藤原 敏宏、曽束 洋平、藤田 和敏、木下 将人、
垣淵 正男
兵庫医科大学 形成外科
ステロイドパルス療法などの内科的治療が著効しない甲状腺眼症については、眼窩減圧術が行われて
おり、この際、十分な範囲の骨除去が行われる必要がある。
Brainlab 社のナビゲーションシステムは骨構造を可視化し、ポインタープローベで指し示した位置を
CT 画像とリンクさせ検出することができるシステムで、脳神経外科、耳鼻咽喉科、整形外科領域など
で使用されている。
このナビゲーションシステムを使用することが、甲状腺眼症の減圧術における骨除去の範囲を決定す
る際に有用であり、また骨除去を行う際に起こりうる頭蓋底損傷による髄液漏、視神経損傷などのリス
クを軽減することができると考えた。
今回、甲状腺眼症に対する減圧術においてナビゲーションシステムを応用したので報告する。
25
E3
緊急手術により著明に視力が回復した眼窩 blow-in 骨折の1例
○恋水 諄源(こいみず じゅんげん)1)、秋田 梨恵 1)、五影 志津 1)、中村 寛子 1)、吾妻 隆久 1)、
素輪 善弘 1)、沼尻 敏明 1)、西野 健一 1)、上田 幸典 2)、山中 行人 2)
1)
京都府立医科大学附属病院 形成外科、2)京都府立医科大学附属病院 眼科
症例は 14 歳男性。運転中に、高所から車両ごと転落し、右顔面を強打した。右顔面の扁平化と右眼
の視力低下を認め、CT で右頬骨粉砕骨折・右眼窩底骨折と、右眼窩外側壁の blow-in 骨折を診断された。
眼窩深部で視神経が骨片に圧迫され、屈曲している所見があった。視力低下があり緊急手術を要すると
の判断で、前医より当院へ転送された。
当院到着時、右眼視力は光覚弁まで低下していた。眼科と合同で、緊急に骨折整復術を施行した。頬
骨の転位により眼窩容積が著明に縮小し、眼窩内操作が困難であったため、まず当科が頬骨骨折の整復
固定を行い、その後眼科が眼窩内骨片を整復した。術後はステロイドパルス療法を施行した。
術後2日目、右眼視力は 1.0 に回復した。開口障害が残存し、術後開口訓練を要したが、目立った変
形も残さず治癒に至った。
眼窩壁 brow-in 骨折は、比較的頻度の低い骨折である。骨片による視神経圧迫、球後出血などによる
外傷性視神経症を生じ、観血的治療を要する場合があるが、頭部外傷を合併し、眼科的評価が困難な場
合や、保存的治療が選択される場合もある。本例では、視力低下と、それに直結し得る視神経圧迫所見
があり、緊急手術の適応と判断し、良好な結果を得た。
E4
上顎洞開窓骨切り術でアプローチした眼窩内球後部腫瘍の二例
○山内 崇史、光井 俊人、楠本 健司
関西医科大学附属枚方病院 形成外科
眼窩内に存在する腫瘍は血流が豊富であることが多く、患側の眼球突出、進行性複視が典型的症状で
ある。手術時期を逸すると腫瘍の増大や浸潤が進み乾燥性角膜障害や腫瘍の圧迫により視機能に問題を
生じるだけでなく、腫瘍の摘出が困難になることもある。このことから、可及的早期の摘出が推奨され
ている。
眼窩内腫瘍の摘出には周辺組織を温存しつつ安全に摘出することが望まれる。眼窩内、特に球後部で
は周辺が骨格に覆われ腫瘍前方には眼球が、腫瘍周辺には脈管系や外眼筋が存在し、腫瘍摘出の際には
十分な術野の確保が必要である。今回、我々は上顎洞開窓骨切り術によるアプローチで十分の視野を
確保し、腫瘍を安全、確実に摘出し得た眼窩内球後部腫瘍二例を経験したので若干の文献と考察を加
えて報告する。症例は 71 歳女性と 34 歳男性である。ともに眼球突出を主訴として来院し、眼窩内球
後部眼窩底寄りの筋円錐内に腫瘍を認めた。この二例に対し上顎洞開窓骨切り術でアプローチするこ
とにより直視下に周辺組織をできる限り温存しつつ腫瘍を摘出し得た。腫瘍の病理組織診断は、B-Cell lymphoma と Schwannoma であった。
26