「太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を利用した ハイブリッド蓄電システム」

「太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を利用した
ハイブリッド蓄電システム」
東芝ITコントロールシステム株式会社
パワエレ・バッテリーシステム営業技術担当
村上
恭輔
1.はじめに
東日本大震災以降、エネルギー政策は転機を迎えており、安全で持続可能なエネルギー源
である再生可能エネルギーの導入が喫緊の課題となっています。
長崎県でも「災害に強く、低炭素な地域づくり」を推進するため、環境省の再生可能エネ
ルギー等導入推進基金事業(グリーンニューディール基金制度)を活用して14億円の基金
(平成 26 年度~28 年度)を造成し、地震や台風等による大規模な災害に備え、防災拠点や
避難所に指定されている公共施設や民間施設に、太陽光発電等の再生可能エネルギー設備や
蓄電池などを導入する事業を実施しています。
本稿では、今後増加が予測される太陽光発電と、蓄電池を組み合わせた中小規模蓄電シス
テムの選定にあたり、押さえておきたい重要なポイントを記載するとともに、東芝グループ
のハイブリッドリチウムイオン蓄電システム※1についてご紹介させて頂きます。
※1
太陽光発電エネルギーとリチウムイオン蓄電池のエネルギーを組み合わせたデュアルエネルギーの蓄電システムを東芝グル
ープでは“ハイブリッド蓄電システム”と称しています。
長崎県再生可能エネルギー等導入推進基金事業
1.基金の名称
長崎県環境保全対策臨時基金
2.基金額(再生可能エネルギー等導入推進基金事業分)
14億円(うち国庫補助金等相当額:14億円)
3.基金事業の概要
災害時の防災拠点や避難所となる公共施設や民間施設に太陽光発電などの再生可能エネルギー設備と
蓄電池の導入を推進する。
(1)地域資源活用詳細調査事業
外部有識者等で構成される評価委員会の開催経費等
(2)公共施設再生可能エネルギー等導入事業
防災拠点や避難所となる公共施設(県および市町施設)に再生可能エネルギー設備と蓄電池を導入
(3)民間施設再生可能エネルギー等導入推進事業
防災拠点や避難所となる民間施設における再生可能エネルギー設備と蓄電池の導入に対する補助
(補助率 1/3)
4.基金事業を終了する時期
平成 28 年度末
5.基金事業の目標
(1)導入した再生可能エネルギー等による発電量
743,829kWh
(2)防災拠点施設(公共施設)における再生可能エネルギーの普及率
10.7%
(3)二酸化炭素削減効果
453.9t-CO2
(4)導入した蓄電池の容量
1,183kWh
(5)災害時に再生可能エネルギーを活用した電力供給を受ける住民
28,780 人
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太陽光発電用パワーコンディショナを内蔵※1
停電時に電力を自動供給
電力ピーク抑制
安全で長寿命のリチウムイオン蓄電池
蓄電池容量
最大176kWh※2まで拡張可能
太陽光発電と蓄電システムの DC 連系
上位EMSとの連携
写真例:IPCS-LIB-X100
※1
太陽光発電PCSオプションタイプもあります。
※2
機種により最大 46.2 kWh となります。
2.リチウムイオン蓄電システム
リチウムイオン蓄電システムは非常時にバックアップ電源として、平常時に蓄電池の
充放電によりピークカット、ピークシフトなど、電力ピーク抑制に活用できる装置です。
本システムに採用しているリチウムイオン蓄電池は、近年、用途拡張や、技術進歩が
著しく、製品ごとに基本性能には大きな差があります。蓄電池がシステムの性能に
大きな影響を与えるため、システムの導入を検討する際は、採用する蓄電池の仕様や
性能に着目することが重要となります。特に蓄電池容量は、定格容量ではなく、実際
に充放電可能な容量(実効容量)を考慮することが必要で、東芝のリチウムイオン
蓄電池(SCiB)は定格容量の100%を実効容量として使用することが可能です。
(1)蓄電池の安全性
リチウムイオン蓄電池は、エネルギー密度(基準となる量あたりのエネルギー)が高いた
めに短絡時には大電流が流れ、急激に過熱する危険性があります。
さらに、有機溶剤の電解液が揮発し、発火事故を起こす恐れも否定できません。
内部短絡試験や、押し潰し試験などを参考に、安全性の高いリチウムイオン蓄電池を採用す
ることが必要です。
東芝の蓄電システムが採用するリチウムイオン蓄電池(以下 SCiBTM)は東芝独自の酸化物
系新材料の採用などにより、内部短絡を非常に起こし難い構造を有しています。 また強制
的に内部短絡させた場合でも熱暴走を起こさない高い安全性を保持しています。
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添付写真
(2)蓄電池のサイクル寿命
(株)東芝 HP より
サイクル寿命とはリチウムイオン電池の充電時、および放電時の電気化学的、物理的変
化に起因する劣化の寿命で、一定の条件で充放電を繰り返し、充放電サイクル数と電池の
容量維持率との関係により評価されています。
納入時の蓄電池容量が同じでも、サイクル寿命が長い電池と、そうでない電池では数年後
には蓄電池容量に30%以上の差が出る場合が有ります。
蓄電池の容量が減ってしまうと、災害時にバックアップできる時間が減る上、ピークカッ
ト、ピークシフトの能力減ともなります。サイクル寿命が長く、容量維持率の高い蓄電池
を採用することが必要です。
SCiB™は、12000 回の充放電後も、80%以上の容量を維持する、これまでにない長寿命性
能を実現しました。
(3)蓄電池の低温動作性能
一般的なリチウムイオン蓄電池は気温 0°を下回る環境下では出力電圧が下がり出力性
能が悪くなります。冬季の運用などを考え、低温動作性能に優れた蓄電池を選択する必要
が有ります。SCiB™は、マイナス 30℃※1 の低温環境でも十分な放電が可能です。また、充
電する事もできますので、幅広い温度環境下での使用が見込まれる用途にも適しています。
(株)東芝 HP より
※1
蓄電池以外のシステム構成機器により周囲温度条件は制限されます。
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表1 中小規模蓄電システム概略仕様一覧
シリーズ
三相系統連系シリーズ
型式
IPCS-LIB-X100
適用規格
単相系統連系シリーズ
IPCS-LIB-S250
相数
三相
定格出力(定格電圧時)
単相
10kW
25kW
定格入力電圧
蓄電池容量(標準搭載)
22kWh
DC168~226.8V
太陽光定格電圧
DC240V
DC350V(※1)
太陽光入力電圧範囲
DC100~355V
DC30~420V(※1)
0.95%
定格出力周波数
50/60Hz
定格電流
28.6A
71.5A
49.5A
出力電流ひずみ率
総合5% 各次3%以下
系統保護機能
過電圧(OV)、不足電圧(UV)、周波数低下(UF)、周波数上昇(OF)
単独運転検出
騒音
受動的方式、能動的方式
55db
塗装色
65db
5PB9/0.5 グロス40±10(半艶)
屋内据置式
設置場所
屋外筐体
オプション
周囲温度
-10~40℃
湿度
15~85%(結露なき事)
保護構造
(屋内:半艶/屋外:全艶)
-
1000m以下
IP20 IEC60529(JIS C 0920)及びJEM1267(1997)
AI
IP45相当
受電電力、負荷電力、
受電電力
太陽光電力(※2)
DI(無電圧接点入力)
DO(無電圧接点出力)
50db
5Y7/1
屋内/屋外
オプション
高度
RPR、OVGR
解列外部出力、蓄電システム故障、
蓄電池残量低下
LAN(100Base)
オプション
上位EMS通信用
自立運転、連系復帰運転
ピークシフト
(タイムスケジュール設定)
制御機能
11kWh
DC156~360V
力率(定格電圧、25~100%出力時)
I/F
10kW
AC202V ±10%
15.4kWh
入力運転電圧範囲
使用環境
SPCS-LIB010A
JIS、JEC、JEM、JEAC 9701
○
○
○
○
ピークカット
○
○
逆潮流防止機能
○
○
蓄電池残量下限設定機能
○
○
○(太陽光発電用)
オプション(※1)
太陽光運転モード
○(太陽光発電用)
オプション(※1)
スリープ機能
○
-
最大電力点追従制御
(MPPT制御)
※1)太陽光発電接続(太陽電池モジュール 直流接続)には、別途オプションの「DC/DCユニット」が必要。
※2)電力計測には、別途オプションの「システム切替盤」が必要。
3.最後に
ご紹介させて頂きましたように、東芝グループのハイブリッドタイプリチウムイオン蓄
電システムは、防災拠点や、企業のBCP(Business continuity planning:事業継続計
画)に採用する蓄電システムとして最適です。東芝グループは、これからもエネルギーの
安定供給や、災害対応力の高い社会を目指し、より良い製品を御提供し続けます。
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