静岡県手をつなぐ育成会 会長 小出 隆司

障害福祉制度の変遷に見る「障害のある人の人権」
~知的な障害のあるわが子の育ちとともに~
静岡県手をつなぐ育成会
会長
小出隆司
平成2年生まれの娘が、3歳の時に自閉症の診断を受けてから24歳の今日までと、障
害者福祉制度の変遷を重ねあわせて辿ってみたいと思います。
娘は自閉症の診断はされましたが、二歳年上の兄と同じ幼稚園に入園を希望したところ
断られ、療育施設へ通うこととしました。その時の入園の書類には、
「精神薄弱児通園施設」
と書かれていました。行政用語などで精神薄弱が知的障害となったのは娘が小学校3年生
の平成11年でした。小学校は発達学級(特殊学級)で、登下校は6年間、親が車で送迎
をしました。
平成15年、養護学校の中学部に進学しました。障害者福祉制度が措置制度から契約制
度になった年です。既に高齢者福祉は契約制度になり介護サービスなどが行われていまし
たが、障害者福祉での在宅サービスは、地域差が大きく、利用経験が無かった地域は利用
者がほとんどいませんでした。
平成18年、養護学校の高等部に進学しました。この年、障害者福祉制度は支援費制度
から障害者自立支援法に基づく制度となりました。それまで精神障害者に対する福祉サー
ビスはほとんどありませんでしたが、身体・知的・精神障害に対する福祉サービスが一元
化されました。平成19年、養護学校が特別支援学校となり、教育名称も特殊教育から特
別支援教育となりました。また、この年は、国連の障害者権利条約に日本が署名をしてい
ます。これ以降、批准までに7年の歳月がかかりましたが、今思うとこの時が日本におけ
る障害者福祉のターニングポイントであったと思います。
娘は、平成21年に社会人となり、地域にある就労継続B型の作業所へ通い始めました。
このころ政権が変わりましたが、障害者福祉制度の改革は権利条約の批准を念頭に置かれ
力強く進められました。平成23年6月には、障害者虐待防止法が成立し、7月には障害
者基本法の改正がされました。この改正は、障害の捉え方を医学モデルから社会モデルへ
の転換、障害者施策の目的を障害者の支援と社会的障壁の除去へ、障害者を保護の客体か
ら権利の主体へとの観点から施策の在り方を見直すなど、障害者に対する概念を大きく変
えるものでありました。平成24年には障害者自立支援法に変わる障害者総合支援法が成
立し、発達障害を含む3障害の他に難病患者も法の対象となりました。
そして平成25年6月に、障害者差別禁止と合理的配慮に関係する障害者雇用促進法の
改正と障害者差別解消法の成立、そして、平成26年1月に障害者権利条約が批准されま
した。娘は、3歳で精神薄弱児と診断され、生育の半分を保護の客体として措置の対象と
なり、24歳になる現在においては権利の主体として契約により福祉サービスを利用して
支援を受けながら日々の生活を送っています。このように制度的に「障害のある人の人権」
は、この10年余りで大きな変革がなされました。これからは障害のある人もない人もと
もに人権を尊重し合い豊かな社会を目指しましょう。