大阪市立科学館研究報告 25, 161 -164 (2015) 2014 年度の気象に関する普及活動実施報告 江 越 航 * 概 要 2014 年 度 、当 館 では外 部 の各 団 体 との協 力 により、定 期 的 に気 象 イベントを実 施 した。イベントは気 象 に関 連 する専 門 的 な団 体 の協 力 により行 ったもので、当 館 だけではできない有 益 な普 及 活 動 を実 施 することができた。内 容 も例 年 と同 じものを実 施するだけでなく、随時 見直 して新たな項目を含んだものに なっている。本 稿 では 2014 年 度 に実 施 した気象 に関する各イベントの概要について報告する。 1.はじめに 気 象 は毎 日 の生 活 において身 近 に接 するものであ り、小中学校の理 科 、高 校 の地 学 においても主要な一 分野を占めている。科 学 館 の展 示 場 においても、昨 年 度 末 に気 象 に関 する1コーナーを設 け、常 設 展 示 とし て普及する機会を得 ているが、まだまだ充 実 していると はいえない。 そこで定期的に気 象 に関するイベントや講 座を開催 しており、2014 年 度も引き続 き多くの団 体の協 力により、 実施することができた。内 容 も例 年 通りのものを継 続 的 に実 施 するだけでなく、定 期 的 に参 加 している方 に満 足いただけるよう、新 たな項 目 を含 んだものになってい 写 真1 夏休みミニ気象台 2014 る。協 力 いただいた団 体 はいずれも、気 象 に関 する 業 務を生 業とする専 門 的 な団 体 であり、気 象 講 座 などの ための対応である。 アウトリーチ活動も多く実 施 している。 以下に、2014 年 度 に実 施 した気 象 に関 する各イベ ントの概要について報 告 する。 イベントでは研 修 室 に気 象 に関 するさまざまな展 示 物やミニ実験コーナーを設置して、気象台の職員の方 が各日とも 20 名程度来られて解説していただいた。 内容は、例年実施しているものとして 2.夏休みミニ気象 台 2014 ・ 風向風速計、雨量計などの気象測器コーナー 大 阪 管 区 気 象 台 と 共 催 で 、 恒 例 の 「 夏 休 みミニ 気 ・ 気象レーダーによる解析の紹介 象台」を開催した。1997 年より毎 年 実 施 しているイベン ・ 地震計や、津波、液状化現象のミニ実験 トである。 ・ 大雨についてのミニ講義 ・ 紫外線ビーズなどの工作コーナー 夏休み時 期 に実 施しており、今 年は 7 月 30 日(水) 11:00~16:30 および 31 日(木)9:30~15:00 に開催し などがある。昨年からは た。1日 目 579 名、2日 目 372 名 の方が見 学に来られ ・ た。2013 年 度より1ヶ月 ほど早 い時 期 での実 施 である が、これは 8 月末だと夏 休みが終 わっている学 校もある 自 分 が 生 まれた 日 の 天 気 図 が 出 せる 「 誕 生 日 の 天気図調べ」コーナー が設 けられた。印 刷 に時 間 がかかるため、整 理 券 を渡 して順 番 待 ちで行 ったが、多 くの方 が希 望 する人 気 コ * 大 阪 市 立 科 学 館 学 芸 グループ e-mail:[email protected] ーナーとなった。 また、今年新たに 江越 航 ・ ドライアイスの雲 を発 生 させ、ファンを用 いて竜 巻 二酸化炭素でろうそくを消す を作るコーナー ・ 透明の水槽に、火をつけたろうそくを立てて置く。 ・ また、別 に空 のバケツを用 意 し、二 酸 化 炭 素 のボ も設けられた。 気 象 庁の専 門 職 員 の方 に、実 際 の業 務 に則 して解 ンベか ら下 方 置 換 に より 、こ の 空 の バケ ツに 二 酸 説 してもらえることから、きちんとした内 容 であり、専 門 的 、実 践 的なものになっている。実 際 、気 象 キャスター 化炭素を集める。 ・ 空のバケツの気体を、ろうそくがついた水槽に注ぐ の方 や、気 象 予 報 士 会 からも見 学 者 があった。また、 と火 が消 える。これにより、二 酸 化 炭 素 は空 気 より 自 分 で実 験 できるコーナーが多 く、小 学 生 でも楽 しみ 重 たい気 体 であること、二 酸 化 炭 素 中 ではものは ながら学べるるものとなっている。 燃えないということをイメージする。 見える二 酸 化 炭 素(ドライアイス) 3.地 球 温 暖 化 の最 新 情 報 「未 来 の地 球 と私 たちのく ・ らし」 を取 り付 け、大 量 の二 酸 化 炭 素 を勢 いよく 出 す。 8 月 3 日(日)13:30~15:00、NPO 法 人 気 象キャス ターネ ット ワ ーク と 共 同 で、 「 地 球 温 暖 化 の 最 新 情 報 液 体 の二酸 化炭 素 が入ったボンベにスノーホーン すると、雪が吹き出てくる。 ・ しばらくすると雪は解けるが、濡れていないことから、 『未 来 の地 球 と私 たちのくらし』」という講 座 を開 催 した。 これは普通の雪とは違って二酸 化 炭素 が凍ったも これは、テレビでおなじみの気 象 キャスターが、地 球 温 のであるドライアイスであることを説明する。 暖化と私たちの暮 らしについて、実 験 やクイズを通して ・ 楽しく教えてくれるというものである。 二 酸 化 炭 素 は火 を消 す性 質 があることと合 わせ、 ぬれたら困る場所で消 火器 に使われることもあるこ 2011 年、2012 年には同 法 人と共 同で、天 気や台風、 とを説明する。 地 震 、津 波 に 関 する 内 容 の 講 座 を 実 施 したが 、今 回 化学反応で発生する二酸化 炭素 は地 球 温 暖 化 に 関 する内 容 の 講 座 である。読 売 テレ ・ ビの蓬 莱 大 介さん、NHK 大 阪の菊 池 真 以 さんが講師 として登場して、環 境 に関 するいろいろな話を行った。 発砲入浴剤を紹介する。 ・ 講座の募 集は小 学 生 および保 護 者 を対 象 に、定 員 講 座の内 容は、温 暖 化 が進 んだ未 来 の天 気 予 報 、 この 発 砲 入 浴 剤 と 水 をフィ ルムケースに 入 れ 、蓋 を閉 じると、二 酸 化 炭 素 が発 生 して、フィルムケー 約 70 名で行った。広 報は募 集 時 期の関 係 で、ホーム ページのみで行った。 二 酸 化 炭 素 が身 の回 りで使 用 されている例 として、 スが勢いよく飛び上がる。 ・ これより、二酸 化炭 素 は気体 になると体積が大きく なることを示す。 温 暖 化 の 原 因 に 関 するクイズ、生 活 の中 で二 酸 化 炭 以上のような内容で、目には見えないが空気中には 素 を使 っている場 面 の振 り返 り、地 球 温 暖 化 の影 響 、 二 酸 化 炭 素 と呼 ばれるものがあること、また、いろいろ それに対 して、私 たちができることを考 える、といったも と変 わった性 質 があることを紹 介 した。そして、現 在 地 のであった。場 面 に応 じて、クイズやゲームを取 り入 れ 球の大 気 中にこの二 酸 化 炭 素 が増えてきており、その なが ら 、 途 中 で 飽 き さ せ な いよ う 工 夫 し た 内 容 で あ っ 結 果 どうなるかということを、この後 気 象キャスターの方 た。 にお話いただく、ということで実験を締めくくった。 さらに今 回 、科 学 館 との共 催 ということで、講 座 の途 中 で当 館 も 二 酸 化 炭 素 に 関 す る 実 験 を 実 施 した 。こ 本 講 座 は、毎 日 テレビで視 聴 者 を相 手 に 解 説 して いる気象キャスターが実施する講座ということで、地球 れは 2013 年に実 施したサイエンスショー「くうきフシギ 発 見 !~シーオー ツー のひ みつ~」を アレ ンジ したも のである。講 座 の中 に1コーナーを設 け、以 下 のような 項目の実験を行った。 空気砲 ・ ろう そく を つけ、段 ボ ー ルに 穴 を 空 けた 空 気 砲 で 火 を 消 すことで、目 では 見 えないが、空 気 は 私 た ちの身の回りにあることを示 す。 ・ この後 、空 気 の 成 分 を 示 したパネルを出 し、空 気 にはほんのわずか二 酸 化 炭 素 が含 まれており、本 日の話はこの二 酸 化 炭 素 の話 であることを説明す る。 写 真 2 地 球 温 暖 化 の最 新 情 報 「未 来 の地 球 と私 たちのくらし」 2014 年度の気象に関する普及活動実施報告 温 暖 化の原 因と私たちの暮 らしに及 ぼす影 響 ついて、 「台風の不思議」 10 月 4 日(土) 大変分かりやすく学ぶことができるものであった。 台風のしくみや災 害について学び、台風による雨量 分 布 の実 習 を行 うというものである。こちらも毎 年 実 施 4.楽しいお天気 講 座 2011 年度より、日 本 気 象 予 報 士 会 関 西 支 部と共催 で、「楽 しいお天 気 講 座 」を開 催 している。この講 座 は、 しているテーマであるが、小 学 校 3・4年 生 の参 加 が中 心であることから、例年より内容をやや易しくしたものに している。 気 象 予 報 士 会 に所 属 する気 象 予 報 士 が、小 学 校 や 台 風 による災 害 の映 像 を見 て、実 際 に台 風 が来 た 科学 館・公民館などに出 向 き、講 義 や実 験 を行う出張 らどのような現 象 が生 じるのか学 び、防 災 対 策 につい お天 気 講 座 である。内 容 は、天 気 予 報 、風 、台 風 、雪 て考 えた。また、台 風 の構 造 等 について解 説 して、台 に関する各 テーマがあり、すべてを実 施 すると、一 通り 風がどのような特徴を持っているのかを理解した。 日本の天気の特徴が分かるようになっている。 2014 年 度 、当 館 で実 施 した講 座 は、以 下 の5講 座 である。なお、講 座 の対 象 は小 学 3年 ~中 学 生 で、定 また、台風は中心気圧が低くなる現象であることから、 気圧とはどういうものかを圧力の実 験を通して学んだ。 「雪の結晶を作ろう」 12 月 7 日(日) 員は 30 名 、ただし「天 気 予 報にチャレンジしよう」は小 雪 が 降 る 仕 組 みを 解 説 し、ペットボトルの 中 で雪 の 学4年~中学生対 象 、定 員 40 名、「気 圧の不 思議な 結晶を作る実験を行うというものである。同時期に開催 実 験 」は小 学 5年 ~中 学 生 対 象 である。実 施 にあたっ していた企画 展「THE 結晶 展」の関連行事という位置 て、今 年 度 は助 成 金 を獲 得 できなかったこともあり、 づけで、今年はこの時期に実施した。 「天気予報にチャレンジしよう」「台 風 の不 思 議 」を除 い 「平松式ペットボトル人 工雪 発生 装 置」により、ペット て、参加者から材 料 費 100 円を徴 収した。 ボトルに雪 結晶をつくる実験 を行った。あらかじめ少 量 「天気予報にチャレンジしよう」 5 月 10 日(土) の 水 を 入 れ て湿 らせたペットボトルにド ライアイスを 入 気 象 観 測 の方 法 を学 び、明 日 の天 気 を予 想 して発 れて冷やしていくことで、10 分程 度でペットボトルの中 表 するというものである。お天 気 講 座 の基 本 として、毎 に雪の結 晶が成 長し始める。この様 子を、スケッチした 年実施しているテーマである。 りデジカメで撮影したりした。 前 半 は座 学 により、気 象 観 測 の方 法 や天 気 変 化 の しくみ、天気図の読み方を学 んだ。 また後 半 は、日 本 の冬 の特 徴 的 な天 気 現 象 である 降 雪について、そのメカニズムを、シベリア高 気 圧の発 後 半では、グループを作 り、各 グループで天 気 予 報 生、日本海への寒気の吹き出しによる気団の変質 から を行った。予 想 天 気 図 をもとに、気 象 予 報 士 の指 導の 解 説 した。またさらに雪 結 晶 の生 成の条 件 と種 類 につ 下 、明 日 の天 気を予 測 し、アナウンサー役 、気 象 予 報 いても説明を行った。 士役に分かれて、発 表を行 った。 「気圧の不思議な実験」 2 月 7 日(土 ) 「風向風速計を作ろう」 7 月 21 日(月)・8 月 17 日(日) (2回シリーズ) 今 回 初 めて 実 施 した 内 容 である 。楽 しいお天 気 講 座 は、小 学 3、4年 生 の参 加 が多 いため、内 容 も参 加 なぜ風 が吹 くのか、雨 の日 に吹 く風 や季 節 風 など、 者に合わせたものに配 慮 している。一 方 、アンケートに 風 と天 気 の間 の関 係 について学 ぶというもので、夏 休 よると、小学校 高学 年の参 加者から、さらに掘り下げた みの自由研究を兼ねた、2回 セットの講 座である。 内 容 の 講 座 を 期 待 している声 がある 。そ こで、対 象 を 昨年 度はこの時 期 に「雨 量 計 を作 ろう」という内容 で 実施したが、継続 的 に参 加 している参 加 者 に考慮して、 小 学 5 年 生 以 上 としてさらに掘 り下 げた内 容 の 講 座 と して実施したものである。 昨年とは違う内容 の講 座である。 夏 休 み最 初 の1回 目 は、前 半 で風 が吹 く理 由 や風 講 座 の 内 容 は 気 圧 に 関 する実 験 を 中 心 とした もの で、各 自で簡 易マグデブルグを工作するほか、短 時 間 の測 り方 を解 説 し、後 半 で 牛 乳 パックによる風 速 計 を で次のような実験を交代で行った。 製 作 した。その後 、外 で実 地 観 測 の練 習 を行 った。こ ・ 空気には重さがあるか、測定する実 験 の製作した風速 計 で、夏 休 み中に風 速 を測 定 すること ・ タッパーに風 船 を入 れ、気 圧 が下 がるとふくらみ、 を宿題とした。 その内 部 温 度 がさがる実 験 。同 じく、 高 度 計 を 見 夏 休 み後 半 の2回 目 では、風 速 計 の測 定 結 果 をも とに、平 均 風 速 と風 向 を算 出 した。これを近 くのアメダ ながらスナック菓子の袋が膨らむ実験 ・ スデータと比 較 し、天 気 図 と 合 わせて 考 察 し、風 が 降 はがきで蓋をしたコップは、逆さまにしても水がこぼ れない実験 った仕組みをまとめた。データをまとめることで、夏休み ・ サイフォンの実験 の自由研究としても役に立 つ内 容 になっている。 ・ サラダボールによるマグデブルグの半球の実験 ・ しょう油さしを使った浮沈子の実験 江越 航 ・ ペットボトルの中に雲を作る実 験 地 球 環 これらの種々の実 験 を通 して、気 圧 について様々な 9 月号 季節予報って何? 面から学ぶことができるようになっている。 境 ・海 洋 課 10 月 号 11 月 号 12 月 号 気 象 観 測 測 器 と精 度 の維 持 に ついて(前編) 気 象 観 測 測 器 と精 度 の維 持 に ついて(後編) 1 月号 天 気 相 談 所 四 季 折 々(冬 編 ) 2 月号 地震業務の最前線(前編) 3 月号 地震業務の最前線(後編) 写 真3 楽しいお天 気 講 座「気 圧の不 思 議 な実験」 いずれも、長年 に渡って他の施 設 で何 度 も実施して 天 気 相 談 所 四 季 折 々(秋 編 ) 4 月号 業務課 広報係 観測課 観測課 業務課 広報係 地震 火山課 地震 火山課 天気相談所四季折々(最終 業務課 回) 広報係 いる講 座 ということもあり、教 材 ・内 容 も良 く練 られたも のになっていた。また、毎 回 参 加 者 にアンケートを取っ ているが、概ね分 かりやすかったとの声 が多 く、好 評で あった。 6.気 象 に関する展示 2013 年度に科学館4階の太陽コーナーの展示の更 新 を行 い、気 象 に関 するコーナーを設 けたが、引 き続 き運 用 を行 った。内 容 としては、屋 上 に 設 置 した 全 天 5.月刊「うちゅう」 カメラにより、現 在 科 学 館 から見 た上 空 の太 陽 や雲 の 科 学 館 で毎 月 発 行 している月 刊 「うちゅう」に、大 阪 様 子 を リアルタイムで表 示 する ものと、 国 土 交 通 省 公 管 区 気 象 台 の 各 課 の 方 に 、1 年 間 にわた り 業 務 の 内 開の X バンド MP レーダによる大阪近郊の雨量情報を 容 を執筆いただいた。私 たちが日 々接 している天 気 予 合 わせて表 示 するものである。全 天 カメラは設 置 後 の 報が作 られるまでには、様 々な方 がそれぞれの部 署で 調 整 やセンサーの故 障 が途 中 で発 生 したが、継 続 的 努 力 をされ なが ら業 務 に 携 わるとともに、科 学 技 術 の に展示を行っている。 進 歩 に 応 じてそ の 成 果 を 取 り 入 れ 、 気 象 台 の 仕 事 も 日々進化していることが分かる内 容であった。 各号のタイトルは以 下の通りである。 月 4 月号 5 月号 6 月号 7 月号 8 月号 タイトル 天気相談所四季折々 気 象 業 務 を 支 える情 報 通 信 シ ステム(前 編) 気 象 業 務 を 支 える情 報 通 信 シ ステム(後 編) 天 気 相 談 所 四 季 折 々(夏 編 ) 天 気 相 談 所 四 季 折 々(夏 編 2) 特 に全 天 カメラの映 像 は、1分 毎 に写 真 として保 存 しており、今 後 、季 節 毎 の天 候 の違 いを示 すためのコ ンテンツを制作する予定である。 課 業務課 7.おわりに 広報係 以 上 、2014 年 度はさまざまな気 象に関 する普 及 活 通信課 動を実施することができた。これらのうち「楽しいお天気 講 座」等 いくつかの講 座については、次 年 度 以 降も定 通信課 期的に実施していく予定になっている。 また、イベントは一 過 性に終 わってしまうことから、常 業務課 設 展 示 についても、今 後 さらに内 容 を充 実 させて行 き 広報係 たいと考えている。 業務課 広報係
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