経営革新型 株式会社田原屋 顧客ニーズを起点とする販売・制作・生産一貫体制の構築により経営基盤を強化 関東支部 統括プロジェクトマネージャー 斎藤 環 【ポイント】∼ 「価値を生み出すプロセス」として組織的営業に注力∼ 田原社長は、経営環境の変化に敏感で、リスクを恐れずに企業成長に必要な様々な施策をタイ ムリーに実施している。卸売業から製造業への業態転換も着々と進み、内製化率も5割を超える 状況になっている。また、「価値を生み出すプロセス」として組織的営業に注力するなど、マネ ジメントの改革にも取り組んでいる。 こうしたイノベーションの原動力は、将来を見据えた経営者の見識と企業の努力であり、イノ ベーションのきっかけつくりに専門家継続派遣等の支援が一定の役割を果たしていると考える。 の排除をしたため、危機感を感じた田原社長が 企業概要 ▶企 業 名:株式会社田原屋 製造への進出を決断したからである。 ▶業 種:宣伝用旗、のぼり製造卸 ▶本社所在地:東京都台東区元浅草1−5−3 ▶資 本 金:45百万円 ▶設 立:昭和27年(創業大正12年) ▶売 上 高:1,658百万円 ▶従 業 員 数:54名 支援課題の設定とプロジェクト マネージャーの視点 代表取締役 田原 績社長 広告用旗類(のぼり、横断幕、懸垂幕等)の 業界トップクラス企業。 当社は平成14年に自社工場を建設、その後 64 も継続して設備を拡大し、大量生産が可能な大 斎藤 環 統括プロジェクトマネージャー 型捺染機や小ロットの生産用のインクジェット 生産性の向上を図り、経営基盤を強固なもの プリンターを導入。デザイン、製造(染色・仕 にしたいとして、平成19年に専門家継続派遣 立て) 、販売の一貫体制を構築した。 の申し込みがあった。経営環境の変化とともに 田原社長のビジネスは、顧客ニーズへの対応 無借金経営の堅持という経営方針を切り換え、 から始まり、デザイン制作、生産と一連の業務 リスクを負ってでも製造へ進出し、内製化率の プロセスを作り上げた。また、デザイン力の強 向上により収益基盤の強化を図ろうとした。内 化のために業界に先駆けて20年前にはコンピ 製化率の向上とともに営業プロセスの改革にも ュータグラフィックシステムを導入するなど積 着手し、提案・受注・デザイン・製造・納品の 極的な経営を続けている。 一連の流れを「価値を生み出すプロセス」とし 創業以来80年続けてきた卸売から製販一貫 て組織的営業に注力している。 体制へ変換した理由は、長年取引のあった最大 プロジェクトマネージャーの視点としては、 の顧客が、メーカへの直接発注によって中間卸 経営方針を踏まえ、中小機構のもつ支援メニュ ーを適宜編成し、着実な改革活動につながる方 材の育成も着々と進んでいる。 向の支援課題を設定した。 経営者のことば 支援内容と支援成果 財務、営業、生産、情報の各分野における管 設備投資計画の立案とそれに伴う財務戦略の 理及び戦略的手法にいたるご指導を頂戴し、独 専門家を派遣し、将来の経営計画とそれに伴う 力ではとても不可能だったと思われるチャレン 設備計画、 資金調達のアドバイスを半年間実施、 ジを経験させて戴きました。先ず、財務からの 並行して組織的な営業体制を確立する為の営業 視点を中心に、この先5年間の経営状態を多角 改革の長期的なアドバイス(約1年間)を行っ 的に検討する機会を得ました。その上、経営革 た。その後、製造現場の課題解決のための企業 新申請によって中小企業金融公庫(当時)から 等OB人材派遣(5ヶ月間)、さらに、情報活用 低利による設備費融資を受けることができるよ による営業活動の活性化とCIO人材育成プロジ うになりました。 ェクトの支援(平成21年6月から6ヵ月間) また、営業戦略・生産管理の分野においては、 をおこなった。 先生方より的確なご指摘とご指導を頂戴したこ 経営基盤強化のプロセスで企業が必要とする とにより、かなり早い段階で社内の管理職から タイムリーな支援が出来たと考える。経営課題 信頼を得ることができました。 この事によって、 解決と同時に、経営者の掲げる「価値を生み出 神経質なテーマに対して、比較的短期間に取り すプロセス」としての組織的な営業のできる人 組むことができたと実感しております。紙面が 足りず、ここでは全ての内容をご報告できませ んが、多面的にご支援を頂戴した結果、自社内 のノウハウだけでは不可能だった、会社成長の 可視化に成功したのではないかと大変感謝して おります。 65
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