ファサードの領域と分類

144号[2015.1]
新
技術紹介シリーズ
ファサードの領域と分類
株式会社LIXIL 総合研究所 新事業創造部
ゼロエネ建築グループ グループリーダー 石井
久史
図2をご覧頂きたい。ファサードは建築の正面、正
1.序
面玄関側の立面であることから、一般的には4立面の
建築は、支えるものと仕切るものとに大別される
(図
中で1立面だけが対象となるだろう。同様にエンベ
1)
。人間の身体に喩えるならば、支えるものは骨格を
ロープは、覆いという意味から、4立面とその上下面
成す骨や筋肉、靭帯であり、仕切るものは差し詰め皮
を合せた6面が対象となるはずである。ここで、両者
膚や脂肪に該当するのであろう。内臓などは、それら
は類義的であるにも関らず、その領域が必ずしも一致
に守られながら体内環境をコントロールする設備機器
しないことに気付く。そこで、実効上のファサードと
といったところだろうか。どれも重要な役割を果たす
いうものを少し考えてみる。実効上のファサードと
ことは言うまでもないが、ここでは、内外を仕切りな
は、実務上の取扱い領域も踏まえた本質的なファサー
がら繋げる皮膚の役割に相当するファサードについ
ドとでもしておこう。そもそも、実務では1面だけが
て、述べてみたい。
ファサードというわけではなく、状況に応じてファ
サードの領域は変化する。また、建物周囲からの見え
開口部
方や見栄えによってもファサード領域は同様に変化す
外壁
内壁
る。
非耐力壁
開口部
内面壁
間仕切壁
床
梁
耐力壁
床
柱
外面壁
(外壁)
基礎
カーテンウォール
耐圧盤
地盤
ファサード
杭
エンベロープ
図2 外壁領域の概念
図1 建築の構成1)
一方、エンベロープのように6面が対象ならば、地
2.ファサードの領域
に接する床面もファサードということになってしま
2.1 領域
ことは誰しも納得しているはずである。そこで、建築
建築において、ファサードというコトバをよく耳に
的に魅せたい、もしくは見ることが出来る外壁が正面
すると思う。ファサード
「Facade」
は、フランス語で建
だけに限定されないのであれば、外壁面において視線
う。しかしながら、これが実務上の領域に含まれない
2)
築の正面、正面玄関側の立面を意味する 。最近では
に曝される全てをファサードとして捉えてはどうか。
仏製英語として一般化され、わが国でも同じである。
すなわち、実効上のファサードは、ファサードとエン
一方、ファサードと同義語的なものとして、エンベ
ベロープの間に位置すると考えられないだろうか。そ
ロープというコトバがある。エンベロープ
「Envelope」
こで、この考え方を明確にするために写真1のような
は、外皮や覆いという意を示しており、ファサードと
事例を当てはめてみる。写真1のファサードは、4立面
同じように浸透している。どちらも建物の外周部を意
に加えて屋根面まで連続することで外壁面を構成して
味するコトバの一つであるが、両者には領域の違いが
いる。ここに示す5面は、人々の目に曝される領域で
明らかに存在する。
あり、どの面を取ってみてもファサードと認識せざる
を得ないように映る。つまり、ファサードは、最小で
50
144号[2015.1]
1面の場合も有り得るが、最大で5面(図3)
まで想定
る場合がある。無論、どちらもファサードであること
されるわけであり、それらを踏まえた上で実効上の
に変わりはないが、ファサードを構成する部位が構造
ファサードを定義するならば、ファサード≦実効上の
的に寄与するのであれば、それは建築構造躯体と解釈
ファサード<エンベロープと考えられる。
されて然りであり、明確に区分しておく必要がある。
そこで、ここでは非耐力壁のファサードを扱うことに
する。非耐力壁となれば、上階の長期荷重を負担せ
ず、また、短期荷重による層せん断力も見込まなくて
よく、建築外周部に作用する風荷重や比較的軽微な荷
重に留意すれば良い。そのため、構造設計や施工技術
とファサードエンジニアの間で設計施工および責任範
囲が明確となり何かと便利となる。
写真1 壁と屋根の一体性
3.2 構成上の分類
ファサードは、その表情の豊かさから様々な構工法
(以下:構法と称す)にて構成されているように見える
が、実際は実にシンプルに構成されている。図4に
ファサードにおける構成上の分類を示す。
非耐力壁
図3 ファサードの領域
2.2 職務上の領域
ところで、建築外壁の設計技術者は、世界的に見て
ファサードエンジニアと称され、建築における影響力
は比較的大きい。では、わが国の場合はどうであろう
か。良し悪しは別にして、分離発注によりファサード
エンジニアリングの役割を示すことができなかったと
思う。基本的に建築は、意匠設計者、構造技術者、設
ブロック類
レンガ、石材
ガラスブロック
練りもの類
コンクリート
RC、SRC
パネル類
ガラス、ALC
成形セメント
CW 類
ガラス、
メタル、PC
図4 ファサードにおける構成上の分類3)
備技術者、施工管理者により構成され、それら以外は
専門工事業という位置付けにある。それゆえに、この
ファサードを構成していくには、現場作業を主体と
領域をカーテンウォール(以下:CW)メーカーなどが
するものと、予め工場生産し品質や施工性を高めた上
中心となり担ってきた訳だが、最近ではファサードへ
で現場にて取付け施工するものに分類される。普段目
の関心度が増し、デザイン的要素とそれを実現する構
するのはパネルを建込む、もしくはCWを吊下げる形
造的要素、さらには内外を仕切る環境装置としての役
式のものであり、それらのほとんどは、非耐力壁の
割を統括する働きとして、各種技術者と連携を図りな
ファサードである。もちろん、コンクリート打設によ
がらファサードエンジニアの領域が確立されてきてい
り、その表層にタイルなど装飾を施したファサードも
る。そのため、 CWメーカーはファサードコントラク
見かけるが、構造耐力を見込むものに該当する場合が
ターへの変貌過程にあると考える。
多く、レンガなど(ガラスブロックは除く)組積造もま
た然りであり、ここでは非耐力壁から除外する。
3.ファサードの対象と分類
次に図5に示すパネル建込み形式と吊下げ形式を見
ることにする。パネル建込み形式の構成は、板状部材
3.1 対象
を床スラブ上に設置することで面が構成される。そこ
ファサードは、建築の表層であり、内外を繋ぎ皮膚
に用いられる代表的な材料は、押出成形セメント板、
の役割を果たすような仕切るものにも該当すると説明
ALC、ガラスなどが挙げられる。
した。その仕切るものは、支えるものとしての建築構
一方、吊下げ形式は、CWに代表されるように金属
造躯体との関係性が気になるところである。一般的に
フレームを主部材としているメタルCWとコンクリー
建築外周部は、構造的役割を果たすものも果たさない
トを主体としているPC(プレキャストコンクリート)-
ものも表層だけを捉えて一括りにファサードと呼称す
CWの二つに分類される。特にメタルCWは、金属フ
51
144号[2015.1]
レームやパネルおよびガラスなどで構成され、高層建
を担保する一重の外壁に対して外側もしくは内側に完
築の外壁には数多く採用されている構法の一つであ
全密閉されることのないスキンを設ける
(恒常的スキン
る。CWは、スラブから吊下げられて面を構成するた
という意味ではない)
ことで、簡便に熱的性能に寄与す
め、仮に面外剛性が小さくても、座屈に対して優位に
るものである。ここでは、代表的なものについて、そ
働き、上下連続した面を構成しやすい特徴がある。
の特徴などを簡単に説明したい。
表1 ファサードの分類と環境対応型ファサードの形態5)
構成上の分類
シングルスキン
パネル建て込み
吊り下げ:メタルCW
吊り下げ:PC-CW
図5 分類例外観
フ
ァ 簡易ダブルスキン
サ
ー
ド
の
分
類 ダブルスキン
メタルCWの領域において、20年くらい前から新た
特徴など
種類・型
①パッシブ型
外気導入、IGU、断熱
②アクティブ型
空調制御(エアバリア)
③パッシブ型
外ブラインド等
④アクティブ型
エアフローウィンドウ
⑤吹抜け型
密閉、上下開放
⑥複数層型
複数層区画
⑦各層型
各層区画、
⑧回廊型
回廊区画
⑨シャフト型
排熱部シャフト
なファサードの形態が出現している。それは、表層の
ガラスに極力フレームが存在しないファサードのこと
であり、ここでは、ガラスファサードと呼ぶことにす
る。ガラスファサードは、メタルCW(写真2 左)
の一
つに該当し、建築の低層部を中心に採用される傾向が
高かった。しかし、最近では高層部に適用されたメタ
ルCWの構成要素の一つとしてガラスファサード構法
が採用されるなど、その領域は拡大しつつある。ガラ
スファサードは実務上メタルCWと呼ばれることは少
なく、その逆も同じである。そのため、両者の間で
シングルスキン
簡易ダブルスキン
ダブルスキン
図6 ファサードの効果上の分類
は、一定の線引きがなされてきたわけだが、ここで取
り上げるガラスファサードとは、建築外壁において非
基本的にメタルCW構法は、気密性・水密性を高め
物質化
(フレームレス化)が図られた高透過な外壁を実
ることで密閉型のファサードを構築し、空調設備によ
現するための構法(写真2 右)と定義して扱うことに
り人工的ではあるが快適な環境を居住者に提供してき
4)
た。ファサードにおける熱取得や熱損失は、主にビ
したい 。
ジョン部(開口部)
で生じるため、シングルスキンの熱
的性能は当然高いとはいえない。それは、単にシング
ルスキンという物理状況に依存しているからである。
その反面コストアドバンテージにより、最も採用実績
が多いことも事実である。そのため、ビジョン部から
の熱取得や熱損失をいかに和らげられるかがシングル
メタルCWの事例
ガラスファサードの事例
写真2 ファサード形態の違い
4)
スキンでの関心事の一つである。例えば、日射遮蔽を
目的とするならば、ルーバー(写真3)
や庇によってあ
る程度緩和できるし、断熱性を高めるのであれば熱橋
4.効果による分類
を切るSSG(Structural Sealant Glazing:図4)構法な
4.1 環境的側面からの分類
メタルCWやガラスファサードは、外壁構成上の分
類として、表1や図6に示す三種類が存在する。一つ
目は、シングルスキンであり、いわゆる一重の外壁を
指す。二つ目は、主に日射遮蔽や断熱性能を高める目
的で用いられているダブルスキンであり、二重の外壁
を意味する。そして三つ目は、その間に位置付けされ
ている簡易ダブルスキン5)であり、これは、基本性能
52
①②密閉型
③外ブラインド ④エアフロー
シングルスキン
簡易ダブルスキン
⑤吹抜け型
ダブルスキン
写真3 ファサード構成上の分類別事例
144号[2015.1]
ど断熱の採用が考えられる。既報6)では、SSGの採用で
真5)
を紹介しており、外部ルーバーが可動可変するこ
U値を10∼57%も向上できることが報告されている。
とで熱性能を2倍向上8)させ、優位な運用が可能であ
メタルCWに組込む建材製品の工夫だけで、ある程
ると報告をしている。
度性能を損なわないようにすることも可能である。一
番わかりやすいものとして、ビジョン部にLow-E
(低放
射)
コートされたIGU
(複層ガラス)
を用いることであろ
排熱
う。また、無目部の開閉により内気排熱や外気導入を
する窓もある。図7には無目材から定風量の外気導入
を可能にした換気装置を示す。これは、定風量での外
気取入れを可能とするものであり、風速変動に応じて
自動的に駆動するフラップにより、人々の手を煩わす
こと無く風量が制御される。また、それによって空調
負荷だけに頼る機会も減らすことが可能となる。
室内
室外
写真4 SSG構法
外気導入部
図7 定風量換気装置
反射板
白色
空気層
開放
外部
中
空
層
内部
外部
中
空 内部
層
反射板
白色
空気層
外部
中
空
層
内部
導入
夏期遮熱モード 中間期換気通風モード
冬期断熱集熱モード
図8 簡易ダブルスキンの事例7)
冬期断熱集熱モード
悪天候時全閉モード
夏期遮熱モード
中間期換気通風モード
写真5 簡易ダブルスキンの実施事例7)
簡易ダブルスキン5)は、基本的な性能を担保できてい
ダブルスキンは、性能を担保するスキンの外側にも
るシングルスキンに必要な部位だけ簡便に二重化する
う一層スキンを設けて熱環境に対応したファサードで
こと、もしくは密閉されることのないスキンを付与し
ある。ダブルスキンは、吹抜け、複数層、各層、回廊
たものと定義する。例えば、外ブラインドや外ルー
およびシャフト型の5つに細分化される(表1)。
バーおよびエアフローウィンドウ
(以下:AFW)
は、そ
そもそもダブルスキンは、日除けルーバー保護のた
れに該当する。
めに既存スキンの外側にもう一層設けたことが始まり
外ルーバーによる簡易ダブルスキンは、外部側に設
とされる。ダブルスキンは、夏期の日射をキャビティ
けられた完全に密閉されないスキンである。そのため
内のブラインドに反射吸収させて放射による上昇気流
気密性や水密性は得られないが、夏期には日射遮蔽と
により外部へ排熱する仕組みであり、冬期は断熱層を
ルーバーが吸収した日射熱を外部側で放射し、熱負荷
形成して熱効率を向上させる技法である。ここで、ダ
低減を図ることができる。しかし、風荷重や照明環境
ブルスキンの種類について表1に対応した外観を写真
などに課題が残る。
6示す。一口にダブルスキンといっても複数種あり、
AFWは、基本的にシングルスキンであるが、ビジョ
条件に応じて目的も変わるわけだが、詳細説明につい
ン部内側に半開放型のスキンが付与され、薄いキャビ
ては文献5)を示して省略させて頂く。
ティを形成し室内のリーターンエアが換気設備に戻さ
ダブルスキンには、デザイン、遮熱、遮光、断熱集
れる仕組みによって熱負荷を低減する方法として知ら
熱および遮音のほか、高層ビルでの強風や降雨環境で
れている。このメカニズムを簡潔に述べれば、日射に
も排熱処理が居室から直接行えるなど、熱負荷をペリ
よる熱エネルギーは外ガラスを透過したものがブライ
メーター領域において、ある程度コントロールできる
ンドなどに吸収され、室内側へ放射される。夏期には
点はメリットであろう。しかしながら、吹抜け型や複
室内の冷やされた空気がキャビティを通ることでこの
数層型の場合には、キャビティ内での反響音や排熱に
熱を回収でき、冬期には室内の暖められた空気がキャ
よる上階への影響および防耐火上の区画に関する課題
ビティを通りコールドドラフトを解消する。そのた
もあり、イニシャルコストとは別にメンテナンスも含
め、ペリメーターゾーンに近い部分で快適性が増す仕
めた詳細な検討を施す必要がある。
組みである。また、既報7)では、簡易ダブルスキンの
新たな取組みとして、可動可変型ファサード
(図8、写
53
144号[2015.1]
一方、線支持とは別に、写真7に示すような部分支
持や点支持に関しては、構造要件が線支持とは異な
り、ガラスに発生する主応力が局所的に大きくなる。
そのため、取扱には注意が必要となる。しかし、上手
く活用すればフレームレスでの透過性の高さや熱的性
能向上が見込める可能性がある。
⑤吹き抜け型密閉
⑤吹抜け型上下開放
⑥複数階型
⑦各階型
⑧回廊型
⑨シャフト型
③ガラス方立構法
④SSG構法
⑥部分支持構法
⑦ガラス方立部分支持構法
⑧孔明け点支持構法
⑨挟込み点支持構法
写真6 ダブルスキンの種類5)
4.2 構造的側面からの分類
ファサードに適用されているガラスは、必ず何かに
支持され、その支持部を介してガラスへの作用荷重を
構造躯体へ円滑に伝達できる仕組みとしている。ガラ
スに作用した荷重は、ガラスが支持されている部分
(ガ
写真7 ガラス留め方としての支持構法の種類5)、9)
ラスの留め方)
から支持架構
(ガラスの支え方)
へと伝達
され、最終的には構造躯体
(支えるもの)
へ流れる。こ
れは、地震荷重でも同様である。設計者は、これらが
ガラスの支え方は、表3に示す3つに分類され、メ
円滑に行えるように配慮する必要がある。ここでは、
タルCWでは単一系の方立が多く採用されている。方
ファサード面材の支持形態とファサードを構成する上
立は力学的にもシンプルで、事務所ビルの標準的スパ
で必要な支持架構について簡単に説明する。
ンに用いられる。ただし、同じ単一系でもガラス方立
ファサードの支持形態としてガラスの留め方を表2に
構法の方立ガラスは脆性材ゆえ、孔明け加工などが伴
示す。ガラスの留め方は、デザインだけでなく構造的
う仕様の場合は注意が必要となる。
な意味合いも強い。ガラス四周を線上支持したものを
線支持といい、最も適用例が多い。
線支持には物理的支持と化学的支持がある。前者は
サッシやCW類で、後者はガラス方立やSSGである。
表2 ファサードにおけるガラスの留め方5)
支持形態
フ
ァ
サ 線支持
ー
ド
の
支
持
形
態 部分支持
の
分
類 点支持
54
構法種類
特徴など
①サッシ
4 辺フレーム支持
② CW
2 辺 4 辺フレーム支持
③ガラス方立
2 辺ガラス接着支持
④ SSG
2 辺 4 辺フレーム接着支持
⑤エッジ引掛け
軸力抵抗系 トラス
⑥部分支持
点支持 < 部分支持 < 辺支持
⑦ガラス方立
部分ガラス接着支持
⑧孔明け点支持
ガラス孔明け支持 ピン 剛節
⑨挟込み点支持
ガラス孔明け不要挟込み支持
表3 ファサードにおけるガラスの支え方5)
支持形態
フ 単一系
ァ
サ
ー
ド
の 組合せ系
支
持
架
構
の
分 張力系
類
支持架構種類
特徴など
①方立
曲げ抵抗系 単純梁
②方立ガラス
曲げ抵抗系 単純梁
③片持ち方立ガラス
曲げ抵抗系 片持ち梁
④複合部材
曲げ抵抗系 重ね梁
⑤トラス
軸力抵抗系 トラス
⑥フィーレンディール
曲げ抵抗系 ラーメン
⑦テンショントラス
張力抵抗系 張力小剛性大
⑧フィッシュボーン
張力抵抗系 張力相殺
⑨テンセグリックトラス
張力抵抗系 圧縮材
⑩ケーブルグリッド
張力抵抗系 張力大剛性小
144号[2015.1]
一方、組合せ系では、吹抜け部など大スパンに対応
5.結
できるフィーレンディールトラス(写真9)が多く採用
されている。トラスと称されているが、曲げ抵抗系
本報では、ファサードの領域と分類を軸に、そのあ
である。また、最近ではガラスと鋼材などの複合部
り方とやり方を簡潔に説明した。ファサードを取り巻
5)
材型 支持架構も増えつつある。
く状況は、多種多様であると感じて頂いたと思う。よ
張力系は、ケーブルやPC鋼棒による非抗圧材に張力
り良いファサードの実現には、条件に応じた総合的な
を導入し構造的安定性を図る支持架構である。例え
判断が必要であり、技術の最適な適用と運用こそが重
ば、ケーブルグリッドの場合、点支持構法と組み合わ
要ではないかと考える。
せることで圧倒的な透過性が得られる。しかしなが
ら、境界構造へ与える影響や非線形性も含めた検討を
参考文献
要するため、通常設計より煩雑となる。また、同じ張
1)
力系でもテンショントラスは、導入張力が小さいがサ
2)
グにより安定し、フィッシュボーントラスは圧縮材で
彰国社:
「建築大辞典」
,1979.9
カーテンウォール防火戸開口部協会:「カーテン
ウォールってなんだろう」,2003.4
導入張力をキャンセルできるなど、その特性の違いに
3)
注意が必要である。
4)
日本建築学会:「構造用教材」,2014.3
石井久史:「ガラスファサードの設計法について
構造・材料の側面から」,GBRC Vol.37 No.1 pp
2-14,2012.1
5)
石井久史:
「ガラスファサードの形態と構成方法に
ついて」
,GBRC
(Vol.36 No.1)
,pp12-23,2011.1
6)
石井久史:
「ガラスファサードにおける4辺SSG構
法の適用可能性について」、GBRC(Vol.38 No.
①方立支持
②方立ガラス支持
1),pp2-9,2013.1
7)
石井久史、信太洋行、野城智也:「ZEBファサー
ドとしての可動可変型簡易ダブルスキンに関する
研究」
、GBRC(Vol.38 No.4),pp10-19,2013.10
8)
H.Ishii,H.Shida and T.Yashiro:「Evaluating
the thermal performance of a movable variable
facade system using survey methods and
⑤トラス支持
⑥フィーレンディールトラス支持
calculations」、ICBEST 2014 Aarchen Germany
2014.6
9)
日本鋼構造協会:「鋼構造建築のためのガラス
ファサード設計・施工ガイドブック」,2014.3
⑦テンショントラス支持
⑩ケーブルグリッド支持
写真8 ガラスの支え方としての支持架構の種類5)、9)
55