H20_実施内容 ソフトウェアの評価技術の標準化に関する調査研究 1.研究開発の目的 ソフトウェア製品は、個々の業務に利用されるだけでなく、社会システムの基盤 として広範囲に活用されている。そのため、ソフトウェア製品に内在する誤り(エ ラー)からシステム全体の障害に発展し、社会生活に大きな影響を及ぼす事故が多 く発生している。こうした、システム障害を防止するためには、ソフトウェア製品 そのものの品質を向上させることが重要であり、そのために JTC1/SC7 国内委員会 の関連 WG(WG2、WG6、WG10)と連携をとって、JIS 化した場合の影響を考慮しつつ 国際規格の開発・提案を行っている。具体的には、次の項目に焦点を当てている。 ①ソフトウェア製品の品質要求及び品質評価、②ソフトウェア開発プロセスの評価 及びプロセス改善、③ソフトウェア製品に関連する文書の枠組みと要求事項、につ いて規格を作成し、品質の優れたソフトウェア・システムを作り出すことに寄与し ていく。特に、日本が得意とする組込み系ソフトウェアにも影響のある規格開発に 関与することは国内産業育成の上でも重要である。 2.目標とする国際標準の内容 わが国の意見を十分に反映した国際規格化された、ソフトウェア技術の普及により 、ソフトウェアについての調達の改善、高品質化、生産性の向上及び国際競争力の向上を 図る。 3.研究開発の体制及び研究者 国内 JTC1/SC7 に対応する WG と連携し、国際規格の提案を行う。また、必要な JIS 原案を作成する。 (1)研究体制 財団法人 日本規格協会(情報技術標準化研究センター) ソフトウェアの評価技術 標準化調査研究委員会 ITSCJ:SC7 WG1(SPE:ソフトウェア製品の品質要求と評価分科会) ITSCJ:SC7/WG6 WG2(SPA:開発プロセスの成熟度アセスメント分科会) ITSCJ:SC7/WG10 WG3(OLD:ソフトウェア製品文書の作成と管理分科会) ITSCJ:SC7/WG2 (2)研究者 氏 名 秋間 升 山形 薫 村石 幸二郎 所属・役職 情報技術標準化研究センター 所長 情報技術標準化研究センター 主任研究員 情報技術標準化研究センター 4.研究開発のスケジュール(研究開発期間) 実 施 項 目 H18 年度 Key item H19 年度 Key item H20 年度 Key item ①WG1:SPE ISO/IEC25001、25030 ISO/IEC25020、25021 ISO/IEC25010、25012 ソフトウェア 、 の IS 作成など 、 製品評価 25051、25062 の IS 25022 、 25023 、 ②WG2:SPA 作成など ISO/IEC15504-6 、 -7 25040 プロセス評価 ISO/IEC15504-6、-7 の DTR 作成 の IS 作成など の原案作成 ISO/IEC15504-6、-7 ③WG3:OLD オンラインヘルプ規格提案、 の TR 作成、 オンラインド オンラインヘルプ規格の検討 利用者文書規格 CD ISO/IEC15504-8、キュメント 、利用者文書規格 作成 9 WD 作成 の NWIP オンラインヘルプ規格原案作 成、利用者文書規 格 IS 作成 実施項目の説明 ①WG1:SPE ソフトウェア製品評価 ソフトウェア製品そのものの品質要求・評価に関する規格の提案・開発。日本か ら の 提 案 ・ 主 導 に よ っ て 、 SQuaRE ( Software Quality Requirements and Evaluation)と呼ぶファミリ規格(全 19 規格)に体系化し、開発する。製品品質 の基本規格は、JIS 化を検討する。 ②WG2:SPA プロセス評価 ソフトウェア製品の品質向上のためには、開発プロセスの成熟度を上げることが 有効であり、プロセス評価方法とプロセス改善方法に関する 7 部構成の規格を開発 している。アセスメント関連の 2 規格が提案中。認証制度にも関連するため、JIS 化を検討。 ③WG3:OLD オンラインドキュメント ソフトウェアを使用する場合、操作時に利用者が必要とするヘルプを自動的に生 成・表示するための枠組みとなる規格を日本から NWI を提案し、原案を作成する。 また、開発文書の内容・書き方などを規定することによって、開発内容の統一・漏 れの防止を図るためにソフトウェア開発に関連する利用者文書の作成規約(8 規格 からなるファミリ規格)の開発に協力する。製品開発には必須な文書であり、JIS 化を検討。 5.平成 20 年度の取り組み 実施項目 4 ① WG1:SPE ソフトウ ェア製品評価 ② WG2:SPA プロセス評価 ③ WG3:OLD オンライ ンドキュメント ④ 報告書の作成 5 6 平成 20 年 7 8 9 10 11 12 平成 21 年 1 2 3 具体的実施内容 ①WG1:SPE ソフトウェア製品評価 品質モデル FDIS25010、データモデル IS25012、外部品質測定法 CD25022、内部 品質測定法 CD25023、評価モデル IS25040 を作成予定。また、利用時品質測定法 WD25024、評価モデル WD2504n を作成する。日本がコエディタを引受けているのは 、外部品質測定法、内部品質測定法、利用時品質測定法及び復旧可能性の評価モデ ル WD25045 の 4 件である。併せて、必要な JIS 原案を作成していく。 ②WG2:SPA プロセス評価 システムライフサイクルプロセスモデルの評価モデルの事例 TR15504-6、組織成 熟度の評価 DTR15504-7 を作成中である。IT サービスマネジメントでのプロセスア セスメント NP15504-8、成熟度目標概要 NP15504-9 を作成予定。日本がコエディタ を引受けているのは、評価モデルの事例、組織成熟度の評価の 2 件で、-8 と-9 が 承認された場合にはコエディタを引き受ける予定である。併せて、必要な JIS 原案 を作成していく。 ③WG3:OLD オンラインドキュメント オンラインヘルプの枠組みは日本がエディタになり、WD を作成する。また、利用 者文書の要求事項に関する規格の WD、CD 作成にも協力し、エディタを引き受ける 予定である。併せて、必要な JIS 原案を作成していく。 6.国際標準化への展開 (1)国際規格の現状及び動向 ①WG1:SPE ソフトウェア製品評価 日本がコンビナ、セクレタリ及びプロジェクトエディタを引き受け、他の WG を 含めて、全体の整合性を確認しつつ国際規格を開発している。主要各国がエディタ を分担し、規格を開発しており、全体の好くジュールは日本がコントロールしてい る。既に、規格を発行済みにものは、SquaRE 概要 IS25000、計画及び管理 IS25001 、測定参照モデル IS25020、品質要求事項 IS25030、COTS 製品の品質 IS25051、使 用性の試験報告書 IS25062 の 6 規格が作成済み。 ②WG2:SPA プロセス評価 日本は、この規格の有効性を確認するための試行(1990 年代)を実施し、国際規 格の制定に貢献してきた。主要 5 規格が完成し、関連するアセスメント規格が次々 に提案・開発されている。プロセス評価及びプロセス改善の規格は、普及段階に入 っており、認証制度という形で諸外国又は業界で実施・検討されている。欧州では 、アセッサ教育、組織の成熟度評価が実施されている。 Automotive Spice とい う自動車関連の認証制度も実施され、航空宇宙、情報家電、金融などへの適用が検 討されている。日本でも自動車関連企業がこの動きに注目し、認証取得に動き出し ている。国内でも、認証制度についての動きがあるが、遅々として進んでいない。 ③WG3:OLD オンラインドキュメント 利用者が必要とするヘルプを動的に生成・表示するための枠組みを日本から提案 し規格化を図っている。また、ソフトウェア製品の開発に必要な文書作成に関する 規格を、その種類及び対象者ごとに分類して、八つのファミリ規格として開発して いる。 (2)国際標準化へのアプローチ 各 WG とも情報規格調査会の SC7 の国内委員会と協調しながら作業を進めてお り、対応する WG から国際規格原案として提出している。 (3)業界・団体(企業)の標準化戦略及び経営戦略における当該国際規格標準化の役割・ 位置付け ソフトウェアは業務システムだけでなく、あらゆる製品に取り入れられており 、ソフトウェア製品の品質向上は最重要事項であるとともに急務である。これに 関する国際規格を日本がイニシアティブをもち、国際的に調整を取りつつ、日本 の 実情に沿ったものにすることが必要である。 (4)国際標準獲得による経済的効果・社会的効果 ソフトウェア製品の品質向上を実現することができ、ソフトウェアが原因と思 われるシステム停止・機能低下が防止できる。 その結果、経済活動や社会活動への混乱を少なくすることができる。
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