2013 年 8 月号

ALTERNATIVE INVESTMENT MANAGEMENT ASSOCIATION
Japan Chapter
Website: http://www.aima-japan.org
2013 年 8 月号
AIMA Journal 2013 年第 2 四半期号
AIMA ジャーナル 2013 年第 2 四半期号が発行
されました。 主な記事のタイトルは次の通りで
今月のニュースレターでは、最新号からオルタ
ナティブ投資ファンドマネジャー指令に関わる
記事を2つご紹介します。
 Countdown
す。
to
AIFMD:
How
prepared are you? (オルタナティブ
<タイトル>
アンドリュー・ベーカーAIMA CEO 論説
AIMA による規制当局への意見書
規制・税制関連最新ニュース
AIFMD へのカウントダウン 1: 施行に向け
た準備
AIFMD へのカウントダウン 2: EU 圏外マ
投資ファンドマネジャー指令:施行に向
けた準備)
 Countdown to AIFMD: Key issues
for non-EU managers (オルタナテ
ィブ投資指令:EU 圏外マネジャーが注
意すべき点)
内容の詳細につきましては AIMA Journal の原
文(下リンク)をご覧ください。
ネジャーが注意すべき点
http://www.aima.org/en/education/aimajourn
AIFMD へのカウントダウン 3: リスク管理
FATCA の実践
ヘッジファンドが注目すべき6ポイント
FCA: アウトソーシングの問題
豪州投資マネジャー規制
英国 FCA
ヘッジファンド料金に関するデューデリジェ
ンス
ブラジルの投資ファンド市場
al/q2-2013/index.cfm
オルタナティブ投資ファンドマネジャー指令:
1
<AIFM の私書箱(レターボックス)化禁止>
施行に向けた準備
AIFM のポートフォリオ管理やリスク管理の一
By Bill Prew, INDOS Financial Limited
部を社外に委託する事は許されるが、社外委
託が社内業務より多くなってはならない。
4 年前の発表以来、様々なレベルで討議が繰り
返されたオルタナティブ投資ファンドマネジャー
<AIFM としての認定許可を受ける時期>
指令(AIFMD)が成立した。 ケイマン諸島に拠
(移行期間に関する解釈が柔軟な)英国では、
点を置く EU 圏外ファンドの運用に関わる英国
AIFMD に従うためのマネジャーによる申請は
マネジャーの多くは、AIFMD の 1 年間の移行
2014 年 7 月 22 日までに為されなければならな
期間に関する英国の柔軟な解釈を採用して(そ
いとされる。 その約 3 か月前までに FCA への
の間に先行実施する他国のマネジャーによる
変更申請を提出する必要があるが、FCA が受
経験から学び)2014 年まで報酬規定の適用を
け取る申請の量を考えれば、2014 年 1 月末ま
先送りする動きを見せている。
でに申請準備を終えることが望ましい。 それま
でに、現在の資本、専門職業人賠償責任保険
しかし、オルタナティブ投資ファンドマネジャーと
(Professional Indemnity Insurance, “PI”2)、
しての許可登録を 2014 年まで先延ばしするか
が AIFMD の要件を満たすか確認しておく必要
否かに関わらず、ヘッジファンドマネジャーは
がある。
AIFMD 施行に向けた実施計画を練ることが必
要である。 以下は AIFMD 施行に関し準備検
<Non-EEA AIF の欧州投資家への販売>
討が必要な事項の例である。
プライベートプレースメントでのファンド販売は
報告義務等、AIFMD の数多くの規定により拘
<AIFMD の適用範囲にあるか>
束 され る 。 し か し 、 投 資 家 主 導 の reverse
投資ファンドのレバレッジを含む総資産が 1 億
solicitation (= ”passive marketing”とも呼ばれ、
ユーロを超えれば AIFMD が適用されるため、
マネジャーがイニシアチブをとらない消極的マ
殆どのファンドが適用範囲内にある。
ーケティング方法)によってファンドを販売すれ
ば、これら義務を免れる。 この方法を考えるフ
<オルタナティブ投資ファンドマネジャー(AIMF)
ァンド会社は、reverse solicitation の手順等を
の特定>
明確にしておかなければならない。
英国に本拠地を置くマネジャーにとっては、既
存の UK MiFID が FCA への申請により AIMF
<External Valuer(EV=社外価格査定人)とし
となる。 海外に拠点を置くグループを構成する
てのアドミニストレーター>
ファンドマネジャーが EU AIMF または non-EU
AIFMD では AIFM がバリュエーションの責任を
AIFM になり得る場合には、それぞれのメリッ
負うとしている。 アドミニストレーターはこれま
ト・デメリットを熟知しなければならない。
で通り AIF の NAV 計算を行うが、一部アドミニ
ストレーターは External Valuer となる意向を表
<オルタナティブ投資ファンド(AIF)の特定>
明しており、ファンドはアドミニストレーターを EV
ファンドが AIF に該当するか、また EU AIF か
に任命することを検討すべきである。
non-EEA AIF に分類されるかの判断、とくに、
マネージドアカウントについての特定には注意
<Depositary(預託機関)の特定>
を要する。
1
この記事は AIMA Journal 2013 年第 2 四半期号に掲載さ
れた”Countdown to AIFMD: How prepared are you?” (Bill
Prew, Founder and CEO, INDOS Financial Limited)の抄訳
です。
2
PI(Professional Indemnity)保険は、専門職業人賠償責任
保険とも言い、専門職業資格者や専門的事業を営む者を対象
とする損害賠償責任保険。 業務過程で起こり得るリスクや法
律上の損害賠償責任を保障する保険として活用される。
EU ファンドを運用する英国のマネジャーは1つ
を利用するために会社組織を変えるのは得策
の預託機関を選定することが求められる。 フ
ではない。 なぜなら、2015 年 7 月以前にパス
ァンドは早いうちにプライムブローカーと預託機
ポートが利用できるのは AIFM と AIF の両方が
関とのミーティングを行う事が望ましい。
EU 圏内に本拠地を置く完全なオンショア組織
に限るためである。 また、私書箱化禁止条項
<Annex IV 規定の報告義務>
(letterbox provision)があるため、業務機能を
FCA の半年ごとのヘッジファンドマネジャー調
委任してホームオフィスからファンドを運用する
査を終えていれば、既にこの報告義務を熟知し
マネジャーも注意が必要である。
ているはずであるが、そうで無い場合には、報
告が求められるデータ等について検討が必要
従って、2015 年まで(2018 年までかもしれない)
である。
の non-EU オルタナティブ投資マネジャーによ
る EU 圏内での投資商品販売は、EU 加盟各国
のプライベートプレースメント制度を利用するこ
ととなる。
<問題 2: プライベートプレースメント形式で投
オルタナティブ投資ファンドマネジャー指令:
3
資商品を販売する場合>
EU 圏外マネジャーが注意すべき点
Non-EU マネジャーが EU 圏内の投資家にプラ
By Paul Van den Abeele, Clifford Chance
イベートプレースメント形式で投資商品を販売
する場合には、AIFMD 第 42 条の最低条件を
本年 7 月 22 日が EU 加盟国、アイスランド、リ
満たす必要がある。 第 42 条は以下を義務付
ヒテンシュタイン、ノルウェーにおけるオルタナ
けている:
ティブ投資ファンドマネジャー指令の施行日で

AIF が販売される EU 加盟国の当局と、
ある。 加盟国における立法が間に合うかなど
non-EU マネジャー(AIFM または AIF)
不明な点は多いが、以下は EU 加盟国以外に
が本拠地を置く国の当局との間で協力
本拠地を置くマネジャー(以下では Non-EU マ
の取り決めがあること、
ネジャー)が考慮すべき AIFMD の問題点であ

る。
Non-EU マネジャー(AIFM または AIF)
の 所 在 国 が Financial Action Task
Force (FATF)の非協力国・地域リスト
<問題 1: 2013 年 7 月以降の EU 投資家へ
に無い事
の投資商品販売>
しかし、これまでの所、当局間の協力に関する
Non-EU マネジャーは AIFMD 施行による EU
取り決めはあまり捗っていない。
投資家に対する投資商品の販売への影響に注
意しなければならない。 AIFMD により EU 全

透明性に関する条件: 従業員の報酬
体で通用する投資商品販売のためのパスポー
情報を含む AIF の年次報告書発行、手
トが導入されるが、その non-EU マネジャーに
数料、優遇措置、カストディ形態等に関
関する実施は 2 年後、2015 年 7 月 22 日から
する投資家への事前情報公開、流動
となっている。
性・リスク管理・レバレッジに関する当
局への報告
Non-EU マネジャーが 2013 年からパスポート
これらに関しては、投資家が居住する加盟各国
の透明性ルールを検証する必要がある。
3
この記事は AIMA Journal 2013 年第 2 四半期号に掲載さ
れた”Countdown to AIFMD: Key issues for non-EU
managers” (Paul Van den Abeele, Senior Associate,
Clifford Chance)の抄訳です。
プライベートプレースメントに関する不明確な部
分: AIFMD は EU 加盟国に上記第 42 条より
さらに厳しいルールを課す裁量を与えている。
また、加盟国が第 42 条を選択肢の一つと捉え、
異なる条件を規定することも考えられる。 よっ
て、Non-EU マネジャーは投資商品を販売しよ
うとする地区のプライベートプレースメント制度
に常に注目しなければならない(特にドイツへ
の販売を考える場合には預託銀行に関して注
意が必要)。
また、第 61 条(1)で規定される移行期間(グレ
ースピリオド)についても英国のように柔軟な解
釈を行う加盟国など、様々な解釈が存在するた
め注意が必要である。
<問題 3: 今後必要な準備>
様々な不確定要素はあるものの、今後 EU 加
盟国内への投資商品販売を考える non-EU マ
ネジャーは AIFMD を EU への玄関口と考えて
備えることが重要である。 AIFMD 遵守のため
には、関係 EU 加盟国の特定、加盟国内での
弁護士事務所指定、OECD モデル租税取決め
など様々な条件を満たす必要がある。 さらに、
報酬、預託銀行、リスク管理等に関する項目を
クリアしなくてはならない。 これら準備には多く
の労力を要するが、厳格化された規制から安
心感を得た新たな投資家をオルタナティブ投資
ファンドに呼び寄せる可能性というメリットもあ
る。