アーム株式会社

Premium Talk Session
Premium Talk Session
アーム株式会社 日本オラクル株式会社
これからは Javaでしょ! ARM でしょ!
®
高付加価値な製品作りのヒントがここにある。
組込み機器のプログラミング言語として採用がひろがる Java テクノロジ。バーチャルマシンという仕組みによってハードウェアや
OS が隠蔽されるためソフトウェアの移植性や再利用性を高めやすいという特徴がある。最近では、組込み機器の早期開発や高付加
価値化を図ることができるとして注目されている。あらゆる機器がネットワークでつながる今の時代にこそ、Java のメリットが活
きてくるといえるだろう。今回の「プレミアムトークセッション」では、オラクルと ARM からそれぞれ二人のキーパーソンを招いて、
組込みのこれからについて聞いた。
と言われていますが、Java はどの程度浸透し
あらゆる分野で使われていると考えていい
ていると感じますか?
かと思います。
ア ー ム 菅 波:SoC( System On Chip)や
オラクル島田:Java がすでに使われている
ASIC を 通 じ て、 わ れ わ れ の IP を 使 っ て く
分野と、使われるのが遅かった分野とがあっ
ださっている組込み機器メーカーのお客様
て、とくにネイティブコードや C++ コードが
のところに行っても、もうずいぶん前から
根強く残っているところは、今までの資産も
Java の 名 前 を 聞 く こ と が と て も 多 く な り
あるし開発環境も変えなくちゃいけないので、
ましたね。開発者がソフトウェアを上から
移行するにはちょっとシンドイなという感じ
下までまる抱えで組んでしまうと、ハード
はあるようです。ただ、早い段階で Java に
ウェアの変更のたびにアプリケーションや
乗り換えたメーカーのほうが、ビジネスを上
ミドルウェアを大幅に変更、場合によって
手く進めている印象があります。
日本オラクル株式会社
Java Embedded Global Sales Unit
セールスコンサルタンティング
シニアマネージャー
はすべて書き換えないといけなくなります
が、Java はバーチャルマシン(VM)という仕
組みによってポータビリティが確立されて
VM によって
宇野 浩司 氏
プラットフォームを隠蔽
いますから、そのメリットが大きいんだと
思います。
オラクル宇野:Java には主にパソコンで
使われているというイメージがありますが、
言語としての Java は、どういうところが
優れているのでしょうか?
も特徴といえます。
アーム五月女:宇野さんの言われたメモリ
アーム五月女:私は十数年前までは計測器
管理を不要にしたという点は、大英断なんで
実際にいちばん使われているのは携帯電話
メーカーに勤めていて、C 言語などで制御ソ
すよ。組込みソフトをやっている人間って物
で す。 ま た、Blu-ray に は 仕 様 と し て「Blu-
フトを書いていたんですが、計測器の機能が
理メモリが見えないのはとても気持ち悪いは
ray Java(BD-J)」が規定されていますし、一
増えていくにつれて、だんだんとソフト開発
ずで、この言語にはメモリポインタはない
部のデジタルテレビや複合機にも Java が使
が困難になっていったことを経験したんです
よって言われたら必ず文句が出ると思うんで
われています。最近はエネルギーマネジメン
ね。その後 Java が登場してきて、大規模で
すね。ただ、メモリポインタの存在が逆にい
トシステムなどにも採用され始め、すでに
複雑なソフトウェアにまつわる問題を解決す
ろいろなトラブルを引き起こしてしまう側面
る手法がいろいろと入っていることを知った
もあるわけです。そこで、Java を作った人た
ときに、きっとこれを考えた人もソフトウェ
ちは思い切って物理メモリを見せないように
ア開発の問題に悩んで、それを解決したかっ
してしまったと。あとはやはりバーチャルマ
たのだろうな、と。その経験が Java に生か
シンによる隠蔽ですね。プラットフォーム側
されていると思いますね。
とアプリケーションを VM で切り離したこと
オ ラ ク ル 宇 野: 私 が 1990 年 代 に 初 め て
もメリットとして大きいと思います。
Java に接したときは、C++ と比べてメモリ管
インターネット黎明期に
扱っていますが、もともとは旧サン・マイ
ながらハードは成功せずに言語だけが残っ
理をしなくても済むところが大きなメリット
Java はバーチャルマシン上で動くので性
クロシステムズに在籍していたジェーム
た と い う 形 で す ね。 ち な み に 旧 Netscape
だと感じました。メモリポインタが存在しな
能が十分に得られない、といった意見もある
ズ・ゴズリン(James Gosling)らによって
Communications が開発した JavaScript とよ
いおかげでアドレス空間を見つけてウイルス
かと思います。
今日は組込み市場を Java と ARM という切
1990 年 代 半 ば に 開 発 さ れ た、 ネ ッ ト ワ ー
く混同されるのですが、言語としてはまっ
を作り込むことができませんから、セキュリ
オラクル島田:それって 10 年前の話なん
り口から覗いてみようと考え、皆さんにお越
ク時代を見据えたオブジェクト指向言語で
たく異なるものです。
ティの面でも安心です。それに加えて、当初
ですよ。ハードと OS の上に Java VM を一段
しいただきました。まずはじめに Java はど
す。当時、サンではセットトップボックス
からマルチスレッドへの対応機能が言語レベ
かませるので遅くなります、っていうのが
のように誕生したのか教えてください。
などのハードウェアを手掛けようとして、
ルで組み込まれていたので、マルチコアやマ
たしかに 10 年前にあったんですけど、今は
ルチプロセッサ環境でも開発が容易というの
VM そのものが進化していますし、CPU も何
誕生した Java
オラクル宇野:Java は現在、オラクルが
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ARM PARTNERS SUCCESS
その一環として Java が生まれました。残念
組込みのアプリケーションプラットフォー
ムとして Java が使われる事例が増えている
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メディアプロセッシング担当
ビジネスデベロップメント マネージャー
菅波 憲一 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
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百倍も高性能になってるんで、そういった指
ロセッサでも動きます。Cortex™-A だろう
摘はもう当てはまらないんです。ただ、昔の
と Cortex-M だろうと。
イメージをなんとか払拭してもらわないと
ア ー ム 菅 波:C o r t e x - A な ら L i n u x な り
Java の採用はひろがりませんので、啓蒙に力
μITRON の上で VM が動きますし、Cortex-M
を入れているところです。
な ら た と え ば Keil の「RTX」と い う OS 上 で
VM が動きます。開発環境も問題ないですね。
いざ Java を採用しようとなったときに、
基本的に VM さえ動けば下のハード部分は見
言語の習得や人材の育成という点で課題はあ
えないんで、プロセッサを気にする必要は
りますか?
まったくありません。
オラクル島田:C 言語をやっていた人であ
れば Java はすぐに扱えます。C をもうちょっ
とオブジェクト化させたのが Java なんで、
シンプルさとコミュニティが
日本オラクル株式会社
Java Embedded Global Business Unit
シニアディレクター
普及の源泉
先ほどもあったようにメモリ管理も要らない
し、すんなりと習得できるはずです。
Java がプログラミング言語の主流に躍り
オラクル宇野:サンの時代に出版されてい
出たように、ARM プロセッサも今では組込
た解説書籍やチュートリアルが今ではイン
みマイコンの主役になっています。先ほど
などに順次採用されていくうち成長を遂げ
ターネット上で PDF で配布されたりもしてい
Java 誕生の話がありましたが、ARM はどの
てきた、というのが ARM の歴史ですね。
ますし、「NetBeans」という統合環境を使っ
ように生まれたのですか?
てどの OS 上でも開発できますから、とっつ
きやすいと思います。
念のために ARM プロセッサ上での Java の
対応状況について教えてください。
オラクル島田:基本的には ARM のどのプ
アーム株式会社
第二営業本部
営業本部長
さ
お
と
め
五月女 哲夫 氏
12
げん
島田 源 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
いなと感じます。それにアーキテクチャを単
アーム菅波:われわれは「Mali」という
な、といつも感じています。コミュニティが
純に作っておいたほうが、パートナーとかコ
GPU の IP も提供していますが、スマホやタ
育ててくれた便利な Java を世の中に広めよ
アーム五月女:話し出すと長くなります
コンピュータの黎明期を含めてさまざまな
ミュニティといった仲間を作りやすいと。要
ブレットの GPU を用いたタッチパネルの操
うというのを自分のミッションにしながら、
が(笑)。1983 年にイギリスの BBC テレビが
テクノロジが登場してきました。多くの選択
はエコシステムが大きくなるには、単純で
作感にみんなが慣れてしまったこともあって、
アームとのコラボレーションも深めつつ、組
パソコンを題材にした教育番組を始めたん
肢の中から Java と ARM が生き残ったという
シンプルなものが構造として重要なんだなと
ほかの組込み機器でも同様の操作感を得るた
込みのお客様をサポートしていけたらと思っ
ですね。その番組に 8 ビットコンピュータ
のは、なにか共通する理由があったのでしょ
思います。
めに、GPU による高いグラフィックス性能が
ています。
を 提 供 し た の が「Acorn」
( エ イ コ ー ン )と
うか。
欲しいという声が高まってきています。ひと
ア ー ム 五 月 女: モ ノ と モ ノ が つ な が る
つの流れとして、そうしたグラフィックスを
「Internet of Things」という考え方が広まっ
重視する方向に向かうのかなと。あと昨年ぐ
ていますし、最近は家電製品でもネットにつ
らいからは、実際のアプリケーションで使わ
ながったりしますから、Java を活用して上位
れている算術演算などを GPGPU で高速化し
側のソフトを再利用していかない限り、タイ
オラクル宇野:センサーや通信モジュール
ようということで、Mali を使えないかという
ムリーな製品開発ができない時代になってい
あらゆるプラットフォームで動作
いうメーカーで、番組の評判も良く一気に
アーム五月女:Java と ARM は共通点が結
成長したんです。じゃあ次の機種はどうす
構多いと思っていて、どちらも核になるとこ
るってなったときに、パソコンメーカーな
ろはシンプルな標準仕様を決めて動かさない
の に 32 ビ ッ ト CPU を 作 り 始 め ち ゃ っ た ん
ようにしているところですね。歴史を振り返
で す ね。 と こ ろ が IBM PC/AT や Macintosh
ると、アーキテクチャのバリエーションを許
が出てきて Acorn のビジネスがうまく回ら
したプロセッサは、ほとんどが消えました。
の進化によって、いろいろな情報を簡単に収
問い合わせも増えてきています。そうしたア
ます。部品化と再利用化ができて、標準化さ
なくなった。そこで CPU 開発だけは別の会
Java も基本的なことは定義するけれども、残
集してクラウドに集約できるようになってき
プリケーションも今後は登場してくるのでは
れているアーキテクチャっていったら、最
社 で や ろ う と い う こ と で、Apple と 旧 VLSI
りの部分はクラスとして拡張していくという
ました。オラクルでも「Device-to-Datacenter」
ないかと見ています。
短距離にいるのが Java だろうと。流行り言
Technology か ら 出 資 を 受 け て「Advanced
ふうに、ある意味でコミュニティに任せてい
というコンセプトを社外にアピールしてい
RISC Machines」
(ARM)という会社を作った
ます。結果論かも知れませんが、そういうと
ますが、たとえばスマホやカーナビといっ
それらの応用でも Java が活躍すると面白
(笑)だと思っているので、オラクルさんと
のはいいんですが、リソースが足りないの
ころは生き残るうえで重要だったと思います。
たデバイスから情報を取って、ゲートウェイ
くなりそうですね。最後に今後の取り組みを
のパートナーシップを強化しながら、お客様
でチップ製造まで手が回らず設計図(IP)だ
オラクル島田:ARM の場合はとくに AMBA
を介してクラウドにデータを集めて、BI ツー
お聞かせください。
に向けてメリットの啓蒙に努めていきたいと
け売ろうとなったんです。その後幸運にも、
バスを公開したのが大きくて、ARM が主導
ルを使って解析する、といった時代がすぐに
オラクル島田:Java が世の中に出てからか
バッテリでも動くローパワーという特性が
しているわけじゃないのに、いろんなサード
来ると思っています。いわゆる「Internet of
れこれ 18 年ほど経っていますが、プログラ
認められて、日本製の携帯ゲーム機、Apple
パーティがくっついて意外なところで思わぬ
Things(IoT)」だったり「Machine-to-Machine
マの皆さんに愛されながら進化してきました。
の「Newton」、さらに Nokia などの携帯端末
イノベーションが起きてるのがやっぱり大き
さて、Java に限らず組込み市場全般で新し
い動きがあれば教えてください。
(M2M)」の考え方ですね。
葉を使えば「Java いつやるの?今でしょ!」
あらためてコミュニティの力ってすごいんだ
考えています。
本日はいろいろと興味深いお話をありがと
うございました。
Oracle と Java は、Oracle Corporation 及びその子会社、関連会社の米国及びその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。
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