デリバティブの評価モデルに関する考察 - Japan Collateral Management Forum

デリバティブの評価モデルに関する考察
有限責任監査法人 トーマツ
山内 洋幸
本講資料の内容は、講演者の私見に基づくものであり、講演者
の所属する法人の公式見解ではありません。
目次
はじめに
3
デリバティブの現在価値計算
4
デリバティブのリスク計測
9
【はじめに】リーマンショック以降、取引当事者の信用リスクの重要性が増大し、
また担保の重要性も増しました
デリバティブの評価方法の変遷
 リーマンショック以前、デリバティブの現在価値およびリスク計測は、取引当事者の信用リスクを精緻
には考慮せずに算出される事例が見受けられました。
 しかし、リーマンショックにおいて、取引当事者の信用リスクの重要性が顕在化しました。
 クレジット・スプレッドの急速な拡大等に伴い、カウンターパーティの信用力が悪化し、当
該リスクに対するCVAを通じた損失を多くの金融機関が計上。
 今般の危機で生じたカウンターパーティ関連損失のうち、3分の2がCVAによるもの(残り
がデフォルトによるもの)
(出所:金融庁(URL:http://www.fsa.go.jp/inter/bis/20091217/04.pdf))
 その結果、デリバティブの現在価値計算およびリスク計測において、取引当事者の信用リスクの重
要性が増大し、また担保の重要性も増しました。
次ページ以降、担保の受払を考慮したデリバティブの現在価値計算とリスク計測について、
概要をご紹介します。
3 デリバティブの評価モデルに関する考察
© 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
デリバティブの現在価値計算
4 デリバティブの評価モデルに関する考察
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まず、顧客とのデリバティブ取引の現在価値を考えます
現在価値計算の前提
 以下の状況を前提とし、顧客とのデリバティブ取引の現在価値を考えます。
顧客の信用リスクの顕在化に伴
う損失を資本で吸収するとの前
提
資本の出し手
資本
資本コスト
顧客とのデリバティブ取引
担保金②−
担保金①−資本
担保金①
顧客
自行/自社
ファンディング
コスト
担保レート
ファンディング
カウンターパーティ
リスクフリー
レート
担保金②
ヘッジ
カウンターパーティ
5 デリバティブの評価モデルに関する考察
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デリバティブの現在価値計算では、様々な価格調整が登場します
現在価値計算で登場する価格調整の例
 デリバティブの現在価値は、担保レートがリスクフリーレートである担保付デリバティブの現在価値に、
下記の価格調整項目を加減することで計算されます。
価格調整の種類
概要
CVA
(Credit Valuation Adjustment)
顧客のデフォルトに伴う損失
DVA
(Debt Valuation Adjustment)
自らのデフォルトに伴う利得
FCA
(Funding Cost Adjustment)
ファンディングコストとリスクフリーレートの差に対応し
たファンディングに伴うコスト
ColVA
(Collateral Valuation Adjustment )
担保レートとリスクフリーレートの差に対応した担保の
受入に伴うコスト
KVA
(Capital Valuation Adjustment)
資本コストとリスクフリーレートの差に対応した資本の
調達に伴うコスト
6 デリバティブの評価モデルに関する考察
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価格調整の計算はシミュレーションにより行われます
価格調整の計算
 価格調整の計算は、例えば、以下の手順で計算されます。
 市場リスクファクターの将来の値をシミュレーションする。
 シミュレーションされた市場リスクファクターの値に基づき、その時点における取引当事者の与信
相当額を計算する。
 担保を考慮した現在価値が正(プラス)のときには顧客に対して与信が生じていることになり
ます。
 逆に、担保を考慮した現在価値が負(マイナス)の時には自らに対して与信が生じていること
になります。
 取引相手および自らのデフォルト率を考慮して、価格調整を計算する。
7 デリバティブの評価モデルに関する考察
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価格調整の計算負荷を軽減することも重要です
計算負荷の軽減措置の例
 価格調整の計算は計算負荷が高いため、例えば下記の計算負荷軽減措置を取ることが考えられま
す。
 コンピュータの高度化
 例えば、CPU(Central Processing Unit)に加えGPU(Graphics Processing Unit)を利用し
た並列処理を実行できる環境を構築する。
 簡便的な計算方法の使用
 市場リスクファクターに対する感応度を用いて、(デリバティブの価値を再計算することなく)
価格調整を計算する方法を使用する。
8 デリバティブの評価モデルに関する考察
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デリバティブのリスク計測
9 デリバティブの評価モデルに関する考察
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リスク計測は価格調整とも関連するものです
ご紹介するリスクの種類
 前頁までにおいて、資本を、顧客のデフォルトに伴う損失の吸収のためのものと考えていました。
 これは暗に資本を顧客毎に割り当てることを前提としていると考えられます。
 上記の資本は、自己資本規制では、以下に対応したものとして計算されます。
 カウンターパーティ信用リスク
 CVAリスク
 次ページ以降、上記の2種類のリスクについて、今後の規制の変化に関する考察も含め、概要をご
紹介します。
 中央清算されないデリバティブ取引と中央清算されるデリバティブ取引に分けてご紹介します。
10 デリバティブの評価モデルに関する考察
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カウンターパーティ信用リスクの計測について、バーゼル2、3、SA-CCRの順
にご紹介します
カウンターパーティ信用リスク
バーセル2(中央清算されないデリバティブ取引)
CVAリスク
 中央清算されないデリバティブ取引の信用リスク・アセットの額は、与信相当額にリスク・ウェイトを乗
じることで計算されます。
 与信相当額は、下記の3通りの方法のいずれかで計算されます。
 カレント・エクスポージャー方式
 標準方式
 期待エクスポージャー方式
 リスクウェイトの設定方法は、以下に大別されます。
 標準的手法
 内部格付手法
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs128.pdf)より作成)
11 デリバティブの評価モデルに関する考察
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実態に即した期待エクスポージャー方式より、カレント・エクスポージャー方式を
使用する事例が多いと思われます
バーセル2(中央清算されないデリバティブ取引)
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 与信相当額について、広く使われているカレント・エクスポージャー方式と期待エクスポージャー方式
による計算結果を比較すると、以下の違いがあります。
 取引単位では、カレント・エクスポージャー方式の方が、期待エクスポージャー方式より与信相当
額が大きくなる可能性がある
 ヘッジ取引を行っている場合、カレント・エクスポージャー方式ではアドオンの計算におけるヘッジ
の効果が限定的になる
フルヘッジしていても残っ
アドオン  0 . 4  グロスのアドオン
てしまう部分

ネット再構築コスト
グロス再構築コスト
 グロスのアドオン
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs128.pdf)より作成)
 期待エクスポージャー方式の方がより実態に即した与信相当額が計算されるものの、採用にかかる
費用対効果を考慮し、カレント・エクスポージャー方式を採用することが多いと思われます。
12 デリバティブの評価モデルに関する考察
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バーセル3において、イニシャルマージンの取り扱いが示されました
バーセル3(中央清算されないデリバティブ取引)
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 中央清算されないデリバティブ取引について、2013年3月28日付「バーゼル3に関する追加Q&A」に
て、「イニシャルマージンなど、再構築コストを上回る担保を徴求している場合には、当該超過担保に
よって、アドオンを相殺することは可能」との取り扱いが示されました。
(出所:金融庁の公表資料(URL:http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130328-2/13.pdf)より作成)
13 デリバティブの評価モデルに関する考察
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また、中央清算されるデリバティブ取引の信用リスクの計算方法についても示
されました
バーセル3(中央清算されるデリバティブ取引)
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 中央清算されるデリバティブ取引の信用リスク・アセットの額は、中央清算機関を取引相手として計
算されることになりました。
 適格中央清算機関に係る清算基金の信用リスク・アセットの額は以下のいずれかの手法により計算
されます。
 リスク・センシティブ手法
 簡便的手法
 適格中央清算機関以外の中央清算機関に係る清算基金の信用リスク・アセットの額は、当該中央清
算機関に拠出した清算基金の額に1250%を乗じて計算されます。
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs227.pdf)より作成)
14 デリバティブの評価モデルに関する考察
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今後は、 SA-CCRが適用されます
カウンターパーティ信用リスク
SA-CCR
CVAリスク
 2014年3月にバーゼル銀行監督委員会が最終規則文書「カウンターパーティ信用リスクエクスポー
ジャーの計測に係る標準的手法」(SA-CCR)を公表しました。
 これは、デリバティブ等の与信相当額の計算方法に関するもので、前述のカレント・エクスポージャー
方式および標準方式に代わるものです。
 適用時期は2017年1月です。
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs279.pdf)より作成)
15 デリバティブの評価モデルに関する考察
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SA-CCRでは、リスクのマージン期間を考慮して与信相当額が計算されます
カウンターパーティ信用リスク
SA-CCR
CVAリスク
 SA-CCRにおいて、与信相当額は、ネッティングアグリーメント毎に次式に従い計算されます。
与信相当額
 1 . 4  再構築コスト
 アドオン

 再構築コストは、担保契約の内容(信用極度額、最低引渡担保額、独立担保額、担保種類)を考慮し
て、計算されます。
 アドオンは、カレント・エクスポージャー方式とは異なり、対象とするネッティングアグリーメントに基づ
くポートフォリオの時価が、リスクのマージン期間(margin period of risk)の間、ドリフトゼロの正規分
布に従い、その一方で担保の金額は現時点と同じとの前提を基礎として、計算されます。
 ポートフォリオの時価の変動は、Asset Class毎(金利、為替、信用、株、コモディティ)の時価の
変動に基づき計算されます。
 Asset Class毎の時価の変動は、定められた方法により計算されます。
 ヘッジ効果は、カレント・エクスポージャー方式よりも捕捉されます。
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs279.pdf)より作成)
16 デリバティブの評価モデルに関する考察
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リスクのマージン期間は担保契約とは必ずしも一致しません
カウンターパーティ信用リスク
SA-CCR
CVAリスク
 リスクのマージン期間は、以下のように設定されます。
担保契約による取引分類
リスクのマージン期間

Min  Max

Unmargined Transaction
 10 営業日 ,

 取引残存期間

 ,1年





Margined Transaction
non-centrally-cleared derivative transactions subject to daily margin
agreements
最低10営業日
centrally cleared derivative transactions subject to daily margin
agreements that clearing members have with their clients
5営業日
netting sets consisting of (more than?) 5,000 transactions that are not with
a central counterparty
20営業日
netting sets with outstanding disputes consistent with
paragraph 41(ii) of this Annex
Doubling the margin period of
risk
17 デリバティブの評価モデルに関する考察
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs279.pdf)より作成)
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CVAリスクの計測に関して、バーゼル3、FRTBによる影響をご紹介します
カウンターパーティ信用リスク
バーゼル3(中央清算されないデリバティブ取引等)
CVAリスク
 CVAリスクとは、CVAの変動に対応した所要資本に関するものです。
 所要資本は以下のいずれかの方式で計算されます。
 標準的リスク測定方式
 先進的リスク測定方式
 ポジションの時価を再評価する場合、CVAは次式に従い計算されます。
CVA  LGD
MKT
T

  Max  0 , EXP
i 1

 s i 1  t i 1
 
 LGD MKT


si  ti
  EXP  

 LGD MKT
LGDMKT
市場におけるスプレッドに基づく当該取引相手方のLGD
si(i=1∼T)
期間tiに対応する取引相手方のクレジット・スプレッド
ti(i=1∼T)
現時点からi 回目に再評価するまでの期間
EEi
tiにおける取引相手方に対する期待エクスポージャー
Di
期間tiに対応するディスカウント・ファクター
18 デリバティブの評価モデルに関する考察
   EE i  1  D i  1  EE i  D i 
   


2

 
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs189.pdf)より作成)
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先進的リスク測定方式を採用するためには、3つの要件があります
カウンターパーティ信用リスク
バーゼル3(中央清算されないデリバティブ取引等)
CVAリスク
 先進的リスク測定方式を採用するためには、①金利の個別リスク計測について内部モデル方式の承
認を得ていること、②追加的リスクの計測について承認を得ていること、③与信相当額の計算につい
て期待エクスポージャ方式の承認を得ていること、が必要です。
CVAリスクの計測方式
リスクカテゴリー
先進的リスク測定方式
−
標準的手法、又は
内部格付手法
一般市場リスク
標準的方式、又は
内部モデル方式
個別リスク
内部モデル方式
2
(追加的リスクを別途計測する)
カウンターパーティー
信用リスク
期待エクスポージャー方式 3
CVAリスク
先進的リスク測定方式
信用リスク
市場リスク
市場性
信用リスク
1
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs189.pdf)より作成)
19 デリバティブの評価モデルに関する考察
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先進的リスク測定方式では、より実態に即したPD、EAD、LGDが使用されま
す
バーゼル3(中央清算されないデリバティブ取引等)
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 先進的リスク測定方式において、使用するパラメータの例は以下のとおりです。
 欧米金融機関では、先進的リスク測定方式を使用する場合が多いと思われます。
CVAリスク
計測方式
使用条件
先進的
リスク測定
方式
標準的
リスク測定方
式
使用するパラメータの値
PD
EAD
LGD
 金利の個別リスク計測につい
て内部モデル方式の承認を
得ていること
 追加的リスクの計測について
承認を得ていること
 期待エクスポージャー方式の
承認を得ていること
CDSに基づくイン
プライドデフォルト
率
期待エクスポージャー方
式による値
市場が前提として
いる回収率に基づ
く値
「先進的リスク測定方式」を使用
しなければならない条件を満た
さない場合
該当なし
カレント・エクスポー
ジャー方式、標準方式、
又は期待エクスポー
ジャー方式
該当なし
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/publ/bcbs189.pdf)より作成)
20 デリバティブの評価モデルに関する考察
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FRTBにおける市場リスク量には、前述の「追加的リスク」と「個別リスク」が含
まれることになります
トレーディング勘定の抜本的見直しの影響
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)において、市場リスク量には、「追加的リスク」と「個別リ
スク」が含まれることになります(市場リスク量が大きくなる可能性があります) 。
 下表は、変更による影響が大きいと考えられる債券を例に規制の変更を纏めたものです。
 FRTBにおける所要資本の計算の全体像については、別途ご紹介します。
債券に内包されるリスクの例
金利リスク
為替リスク(外貨建の場合)
信用スプレッド
変動リスク
同一格付内
格付遷移時
(非デフォルト)
デフォルトリスク
規制におけるリスク量計上区分のイメージ
バーゼル3
FRTB(案)
一般市場リスク(金利)
一般市場リスク(為替)
市場リスク(金利)
市場リスク(為替)
一般市場リスク(金利)
個別リスク
市場リスク(信用スプレッド)
追加的リスク
債務者ごとのスプレッド
カーブが必要です。
追加的リスク
追加的デフォルトリスク
ES
IDR
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/bcbs/qis/biiiimplmoninstr_feb15.pdf)より作成)
21 デリバティブの評価モデルに関する考察
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そのため、FRTBの適用後は、より実態に即した先進的リスク測定方式を以前
より採用しやすくなると考えられます
トレーディング勘定の抜本的見直しの影響
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
 CVAリスクの計測の観点からは、「先進的リスク測定方式」を使用するための以下の要件のうちの2
つが、既に市場リスク量に含まれることになります。
 金利の個別リスク計測について内部モデル方式の承認を得ていること
 追加的リスクの計測について承認を得ていること
 期待エクスポージャー方式の承認を得ていること
 そのため、先進的リスク測定方式を以前より採用しやすくなると思われます。
 先進的リスク測定方式では、より実態に即したパラメータが使用されます。
22 デリバティブの評価モデルに関する考察
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FRTBにおいて、市場リスクに対応した所要資本は、期待ショートフォールに基
づき、デスク毎に計算されます
【ご参考】FRTBにおける所要資本の計算の全体像
カウンターパーティ信用リスク
CVAリスク
内部モデル方式の見直しによる所要資本の計算の全体像
算出する値
所要資本
算出方法
所要資本は、
• 「適格」なトレーディングデスクの所要資本
• 追加的デフォルトリスク(IDR)
• 「非適格」なトレーディングデスクの所要資本(標準的方式)
に基づき計算します。
要件
トレーディングデスクが適格となるための要件
• 組織体制と全社的な内部リスク資本モデルの包括的な評価
• 「損益要因分析」、「バックテスト」、「モデルに基づかない評価」に関する要件の充足
• リスクファクターの分析
• モデルに基づかない評価方法に関する要件の充足
IDRについて、
• 信用スプレッドリスクの計測に内部モデルを使用す
る場合は、内部モデルで捕捉します。
• 株式も対象です。
「適格」なトレーディ
ングデスクの所要
資本
「モデル化可
能」なリスク
ファクターに対
応した所要資
本
適格なトレーディングデスクの所要資本は、
• 「モデル化可能」なリスクファクターに対応した所要資本
• 「モデル化不可」のリスクファクターに対応した所要資本(ストレスシナリオに
よる値。リスクファクター毎のリスク量は単純合算)
• マルチプリケーションファクター(最低[3])
に基づき計算します。
モデル化可能となるための要件
• リスクファクターの値が「real」であること
• 年間で24個以上の値が観測可能であること
• 連続する2個の値の間隔が1ヶ月以下であること
「モデル化可能」なリスクファクターに対応した所要資本は、
• 「Reduced Set of Risk Factors」を用いた、ストレス期の変動に基づく期待
ショートフォール
• 「Reduced Set of Risk Factors」を用いた、直近の変動に基づく期待ショー
トフォール
• 全てのリスクファクターを用いた、直近の変動に基づく期待ショートフォール
• リスクファクターカテゴリー毎の期待ショートフォールの合算に使用する重み
に基づき計算します。
「Reduced Set of Risk Factors」の設定のための要件
• モデル化可能となるための判断基準を満たすこと
• 最低[10]年間、観測できること
• 全てのリスクファクターを使用した場合の期待ショートフォールの変動の最低[75%]が説
明できること
(出所:バーゼル銀行監督委員会の公表資料(URL:http://www.bis.org/bcbs/qis/biiiimplmoninstr_feb15.pdf)より作成)
23 デリバティブの評価モデルに関する考察
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まとめ
まとめ
 現在価値計算(価格調整)
 KVAについて、資本を顧客毎に配賦することが前提となっていると考えられます。
 顧客の信用リスクの顕在化に対する備えという観点からは、上記資本は、カウンターパーティ信
用リスクとCVAリスクに対応したものと考えられます。
 リスク計測
 カウンターパーティ信用リスク
 SA-CCRでは、より実態に即した与信相当額が計算されるようになると思われますが、
Asset Class毎の時価の変動の計算は、定められた方法で行われます。
 CVAリスク
 FRTBにおける市場リスク量には、「追加的リスク」と「個別リスク」が含まれることになり、先
進的リスク測定方式を以前より採用しやすくなりますと思われます。
 全般
 期待エクスポージャー方式の承認を得ると、(カウンターパーティ信用リスクのみならず)CVA
リスクについても、実態に即した計測方法を採用することが可能になると思われます。
24 デリバティブの評価モデルに関する考察
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デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそのグ
ループ法人(有限責任監査法人 トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、税理士
法人トーマツおよびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各
法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40都市に約
7,900名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トー
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