C+Bousai/地区防災計画学会誌 別冊 地区防災計画学会梗概集第1号 ~国連防災世界会議パブリックフォーラム 地区防災計画学会第1回大会記念~ 平成 27 年7月 地区防災計画学会梗概集第1号 2015 年7月 本誌について 本誌は、地区防災計画学会の機関誌である「C+Bousai/地区防災計画学会誌」の別冊であり、 平成 27 年3月に開催された第3回国連防災世界会議パブリックフォーラム「地区防災計画学会 第1回大会」を記念して取りまとめたものです。 主な内容としては、大会開催の経緯やプログラム等について整理するとともに、同大会の発表 者である先生方から予稿として寄せられた論文、大会での司会、パネリスト等の先生方から事後 に寄せられた論文等を掲載しています。 大会を記念して、形式にとらわれず、地区防災計画の普及啓発のため、先進的な論文を広く掲 載するという趣旨から、各論文の様式や分量は、執筆いただいた先生方の裁量により比較的自由 に設定いただいております。そのため、本格的な学術論文から、最新の現場の状況を踏まえた論 考的な論文まで多様なものが掲載されています。 なお、編集担当の不手際で発刊が遅れてしまいましたことについて、深くお詫び申し上げます。 本誌の発刊に当たっては、内閣府や復興庁をはじめとする国及び地方公共団体の関係者の先生 方、室﨑益輝先生や矢守克也先生をはじめとする学会内外の先生方から多大な御協力をいただき ました。 海外からは、中国地震局地球物理研究所副研究員である伍国春先生に仙台までおこしいただき、 大会の複数のパネルでパネリストとして的確な御発言をいただいたほか、本誌にも中国における 先進的な取組に関する大変興味深い論文をお寄せいただきました。 また、大会に御協賛いただきました一般財団法人関西情報センター及び新建新聞社の皆様方の 御協力なしには、本誌は発刊できなかったと思います。 お世話になりました先生方にここに記して御礼申し上げます。 平成 27 年 7 月 編集担当一同 地区防災計画学会梗概集第1号 2015 年7月 目 次 本誌について 発刊に当たって ・地区防災計画学会会長 3 室﨑益輝(神戸大学名誉教授) ・地区防災計画学会副会長 矢守克也(京都大学防災研究所教授) 1 第3回国連防災世界会議パブリックフォーラム地区防災計画学会第1回 大会の模様 5 ・開催の経緯 ・森下俊三最高顧問挨拶 ・地区防災計画学会第1回大会プログラム ・地区防災計画学会賞 受賞者・受賞作品紹介 2 論文 12 ・近藤誠司(関西大学准教授) ・杉山高志(京都大学) 「地域防災実践におけるアイデンティの変容 ―神戸市長田区真陽地区 の津波避難対策を例に―」 13 ・大矢根淳(専修大学教授) 「「安渡町内会津波防災計画づくり検討会」の取り組み 地区防災計画」 策定の体制と調査」 17 ・伍国春(中国地震局副研究員) 「中国の地域コミュニティの防災活動の現状及び対策」 1 21 地区防災計画学会梗概集第1号 2015 年7月 ・金思穎(専修大学客員研究員) 「日本の「地区防災計画制度」に基づく防災活動と中国の「社区」の 防災活動に関する考察」 33 ・井上禎男(福岡大学准教授) 「上大河平地区(宮崎県えびの市)における地区防災計画策定への取組み」 45 ・三舩康道(ジェネシスプランニング代表) 「東日本大震災から学ぶ地区防災計画の課題」 53 ・守茂昭(都市防災研究所上席研究員) 「都心の真っ只中で考える地区防災計画」 59 ・中澤幸介(新建新聞社取締役) 「地縁を生かした BCP」 61 ・磯打千雅子(香川大学准教授) 「女性と子供が育む地区防災計画―共感の防災力―」 63 ・西澤雅道(内閣府)・筒井智士(NTT 東日本)・田中重好(名古屋大学教授) 「東日本大震災後の地域コミュニティにおける住民主体の防災計画の 課題-災害対策基本法に基づく地区防災計画制度の在り方-」 65 ・川脇康生(兵庫県庁・国際エメックスセンター事務局長) “Role of Social Capital in Promoting Mutual Aid after Disasters” 77 ・田中行男(一般財団法人関西情報センター専務理事) 「地区防災計画における ICT の役割について ―自助・共助のための災害情報共有システムの実現モデルの検討―」 89 (参考)地区防災計画学会役員等一覧 92 2 地区防災計画学会梗概集第1号 2015 年7月 発刊に当たって 「梗概集第1号の発刊に当たって」 地区防災計画学会会長 室﨑益輝 (神戸大学名誉教授) 災害対策基本法の改正で「地区防災計画」が法律で位置づけられて 2 年、私たちの「地区防 災計画学会」設立されて 1 年を経過した。この間に、全国各地において、地区防災計画を策定 し、かつその計画を実践する取組が、燎原の火のごとく全国に広がっている。危機の時代を迎 えて、コミュニティを主体としたボトムアップ型の防災や減災の取組がいかに必要かを、全国 の皆さんが身をもって感じていたからこその、「大きな広がり」である。 とはいえ、地区防災が必要だということだけでは、ボトムアップ型の「コミュニティに根差 した防災」は前に進まない。必要性に可能性が与えられてこそ、命を守る取組は花を咲かすこ とができる。その可能性を与え、水をやり花を咲かせるためのお手伝いをするのが「地区防災 計画学会」だと思う。 防災には「心・技・体」が欠かせない。心は、防災に取り組もうとする意欲、技は、防災を 進めるうえで欠かせない知恵、体は、知恵を持ち寄って励まし合う体制である。地区防災計画 学会は、その知恵を磨き広める大きな責務を負っている。 知恵を広めるうえで、経験を普遍化して「皆のものにする」ことが欠かせない。全国の地区 防災計画の経験を、理論化し普遍化して広めるプロセスが欠かせないのだ。この梗概集がその 駆動力となり、全国の地区防災計画の取組に刺激を与え、結果としてコミュニティ防災力の向 上がはかられ、安心して暮らせる地域の実現につながればと思っている。その期待に十分応え うる素晴らしい論文や報告が、この第 1 号に掲載されていることを「身びいき」ながら、誇ら しく思う。 3 地区防災計画学会梗概集第1号 2015 年7月 「「~して下さい」と「~します」」 地区防災計画学会副会長 矢守克也 (京都大学防災研究所教授) 最近、ある町の、とある小さな地区で、地区防災計画づくりのキックオフとなる集まりに出 席した。会場となった小さな集会所には。地区の住民、役場職員など 50 人以上の方が集まっ ていた。熱気あふれる空間で、地区の詳しい地図を見ながら防災上の課題やこれまでの成果に ついて、グループごとにワークショップスタイルで話し合いがもたれた。みなさんの地区への 強い思いを感じることができる、掛け値なしにすばらしい話し合いだと感じた。 ワークショップでは、参加者が考えたことや感じたことを、付箋紙に書いて地図の上に貼り 付けていった。100 枚を優に超える付箋紙群を眺めていて気づいたことがあった。書かれた内 容の語尾に、 「~して下さい」という表現がたくさん見られたのだ。たとえば、 「ブロック塀が あって避難が不安なので撤去『してください』」といった言葉で、要するに、住民から役場に 何かを「お願い」(要望)したいことが表現されているのである。 アドバイザーを仰せつかっていた私は、ワークショップの取りまとめとして、こうコメント させていただいた。 「みなさん、 『~して下さい』の付箋紙を一枚書いたら、必ず、自分(たち) は『~します』も一枚書いてください。今後、この地区でワークショップをするときは、これ をルールにしませんか」と。 地区防災計画づくりでも、「自助・共助・公助をバランスよく…」の精神はむろん大事であ る。しかし、このお題目、誠にもっともであるが、言うは易く行うは難しでもある。しかし、 こんなワークショップルールを置いてみると、ゲーム感覚で、自分(たち)でまずなしうるこ とと、役場にも一肌脱いでもらわないと埒があかないことについて考えをめぐらせることがで きるようになる。 今回刊行された「梗概集」には、このような意味での一工夫、地区防災計画づくりを現場で 進めるための実践的な知恵・手法が満載されている。すでに刊行されている学会誌「C+Bousai /地区防災計画学会誌」ともども、大きく育ってほしいと願っている。 4
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