選択式リーディングテストの 妥当性を高めるための選択肢 選択式テスト

2015/1/13
選択式テストの特徴
◆卯城(2009)
選択式リーディングテストの
妥当性を高めるための選択肢
人文・文化学群
人文学類2年 R.M.
選択式リーディングテストの要素
◆Ushiro, Morimoto et al.(2007)
テキスト
(文、段落)
項目
(質問の種類)
選択肢
テ
ス
ト
の
難
易
度
○長所
 正答は一つ
→採点基準のぶれが生じないので、公平に採点
できる。
 大人数の受験者がいる場合に向いている
→データを大量に得られる。
○短所
 当て推量で正解する可能性がある
→テストの妥当性が低くなるおそれがある。
選択式リーディングテストに
おける問題点
◆Kobayashi(2002)
受験者が文章を完全に理解していなく
ても、選択肢などから推測し、正答す
ることができてしまう。

◆Henry L. Roediger Ⅲ, Elizabeth J.Marsh(2005)
錯乱肢を正しいと思い込むと、テキス
トの内容を誤って解釈したり、誤った
知識を身に付けたりする恐れがある。

(正しい/誤りの選択肢)
選択式リーディングテストに
おける問題点
つまり、選択肢の存在によって、
学習者が本当にテキストを理解してい
るのかが分からなかったり、学習者の
テキスト理解を妨げたりする事態が生
じる。
→テストの妥当性が低くなる恐れ。
⇒どのような選択肢を作ればよい
のか?
選択肢の作り方
◆Haladyna, Downing, and Rodriguez(2002)
選択肢作成のガイドラインより一部引用






互いに独立したものとし、重複してはいけ
ない。
内容や文法が均質になるようにする。
長さを均一にする。
難しい語彙、否定語は使わない。
生徒たちの典型的な誤りを使って錯乱肢を
作る。
できるだけもっともらしい選択肢をつ
くる。
⇒抽象的。具体的な記述なし
1
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質問タイプ別もっともらしさに
影響する要素の例
もっともらしい選択肢とは?
◆Ushiro, Morimoto et al.(2007)の研究
「言い換え」「照応」問題
→選択肢に含まれる語や情報の
テキスト中の位置



対象:大学生一年生114名
方法:TOEFL Practice test Cのリーディング
セクションを用いてテストを実施。
「言い換え」「推論」「文章構造」問題
→選択肢とテキストとの語彙の重複

結論:
質問タイプごとに、選択肢のもっとも
らしさに影響する要素が存在する。

◎選択肢のもっともらしさは、
テキストと項目(質問タイプ)
両方から影響を受けて決まる。
⇒テキスト・項目・選択肢の3要素を
個々に分けて考えるのではなく、それ
ぞれを組み合わせて考えることで、難
易度を決定しやすくなる。
(%)
90
上位群
下位群
80
70
60
50

結果:

全ての設問タイプにおい
て、熟達度の上下群で有
意差が見られた。
「主題」問題
→選択肢に含まれる情報の細かさ、
テキストとの内容の一致/不一致

テキスト理解を問うことができる
選択肢
◆木村(2013)の研究
対象:日本人大学生45名
 方法:英検, TOEFL, センター試験問
題の長文読解セクションを用いてテ
ストを実施した。
 解答に必要なマクロルール(詳細情
報、 削除、一般化、構成)に応じて
設問を 4つに分類した。
 受験者を熟達度テストにより上位群
と下位群に分類した。



熟達度に関わらず、詳細よりもメインアイ
ディア理解を問う問題の方が正答率が低
い。
下位群は上位群に比べ、一般化・構成の正
答率が最も有意に低い。
40
30
⇒マクロルールを用いて多
肢選択式テストの正答選択
肢を作ることで、学習者を
適切に弁別できる。
20
10
0
各設問タイプの正答率
木村(2013) p.67
図4より
→正答選択肢にテキスト内の情報がそのまま
表れる詳細問題は解き易いが、テキスト内の
情報を統合したり、メインアイディアを構築
したりする必要のある一般化・構成の問題は
難しい。
⇒学習者のテキストの要旨の理解度は、正答
選択肢を選ぶのに必要なマクロルールが一般
化・構成であれば、より測りやすくなる。
2
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まとめ
錯乱肢は、その他の難易度の要因であ
るテキストや質問タイプを考慮し、組
み合わせることによって、もっともら
しさが増し、受験者をより引き付け
る。
 学習者を習熟度別に分けたり、テキス
ト内容の要旨を理解しているのかを調
べたりするには、マクロルールを用い
て正答選択肢を作ることが有効であ
る。

◎「選択」すること自体は単純で容易な
作業。
↓
正答にたどり着くのに必要なプロセス
が、自由記述式や要約問題と同様に複雑
で、自分の読解ストラテジーを駆使する
ものになるように選択肢を作ることが、
選択式リーディングテストの妥当性を高
めると思われる。
課題・限界

「選択」が受動的な作業である以上、
自ら産出・統合する力は測れない。
参考文献



確率的には、全く分かっていなくても
当たってしまう可能性がある。

テキスト自体の特性の見直しなど、選
択肢のみでは解決できない問題もあ
る。

Henry L. Roediger Ⅲ, Elizabeth J.Marsh(2005).
The Positive and Negative Consequences of
Multiple-Choice Testing Journal of Experimental
Psychology: Learning, Memory, and Cognition 2005,
Vol.31, No.5, 1155-1159.
Kobayashi, M.(2002). Method effects on reading
comprehension test performance: text
organization and response format. Language
Testing, 19, 193-220.
木村雪乃(2013). マクロルールに基づくメイ
ンアイディア理解能力の検証 EIKEN
BULLETIN 2013,Vol.25, A研究部門 報告Ⅲ, 5576.



卯城祐司(2009).『英語リーディングの科学
―「読めたつもり」の謎を解く』. 研究社
Ushiro,Y., Morimoto,Y., Hijikata,Y., Nakagawa,C.,
Watanabe,F., Kai,A., et al.(2007). What makes
distractors plausible in multiple-choice reading
tests? JLTA Journal,10, 56-67.
Haladyna,T.M., Downings,S.M.,&
Rodriguez,M.C.(2002). A review of multiplechoice item-writing guidelines for classroom
assessment. Applied Measurement in
Education,15,309-334.
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