血小板輸血ガイドライン(JC-AIM)

Ann Intern Med. 2015;162:205-­‐213. IF:16.1
血小板輸血ガイドライン
慈恵ICU勉強会 2015/4/21 葛飾 岩井
GLの概要
ü  アメリカ輸血銀行協会(AABB)が作成 ü 21人のエキスパート 15名(AABB); 血内医,病理医 5名(各学会); 脳外,心外,ICU,麻酔,血内医 1名; GRADEシステムの担当
ü 成人が対象 ü 1900-­‐2014までの臨床研究をレビュー ü 73の引用文献(17RCT, 53観察研究) ü GRADEシステムによるRecommenda@onの作成 ü 6つのRecommenda@on 6つのRecommenda*on =よくある臨床シチュエーションでの勧告=
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血. ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血. ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸血. ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸血. ü R5, 心外手術患者での予防的血小板輸血は推奨しない. ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. ガイドラインを理解する上で必要な知識
ü GRADE system ü 出血の評価基準 Modified WHO Bleeding Scale (⇒研究アウトカムとして採用) ü 日赤PC-­‐LRの概要 (⇒含有血小板数に注意)
GRADE* system
Quality of evidence Strength of recommendaRon 4段階評価, “質”
High
Low
Very low
良
質
Strong
Moderate
2段階評価, “強さ”
Weak *Grading of RecommendaRons Assessment, Development and EvaluaRon
BMJ. 2008; 336: 924-­‐6. BMJ. 2008; 336: 1049-­‐51.
出血性病態の評価基準 (Modified WHO Bleeding Scale)
Grade 問
題
出
血
症状例
1
Minor Bleeding
2
Moderate Bleeding
3
Severe Bleeding
4
DebilitaRng Bleeding
紫斑,点状出血,皮下出血などの軽度の皮膚出血や
一過性の粘膜出血
皮下血腫や持続的な粘膜出血(口腔,鼻腔,性器,
血痰,血尿,吐下血)や侵襲部位出血
赤血球輸血を要するもの
循環動態が不安定なもの
循環動態が極めて不安定なもの
致命的出血
中枢神経系出血をきたしたもの
日赤のPC-­‐LR概要
Platelet Concentrates Leukocytes Reduced
白血球除去処理済み 至適投与Doseを 検討するときに重要だから ご記憶あれ
規格
含有血小板
容量
10U
20U
2×10 11 個
4×10 11 個
200mL
250mL
『濃厚血小板-LR「日赤」』添付文書より
容量; 1U=20mL, 2U=40mL, 5U=100mL, 15U=250mL 値段; 10U=8万円
6つのRecommenda*onの解説
さっそくはじめよう!!
RecommendaRon 1
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のため PLT1万で輸血. Quality of evidence; moderate f recommendaRon; strong
ü R2, 待機的CV挿入時はStrength PLT2万oで輸血. ü R3補足 , 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸血. 1, 治療による骨髄抑制性血小板低下症に対する血小板輸血は Spontaneous bleedingの予防目的である. , 2待
, S機的手術(神経系除く)では
ingle apheresis unit*の投与が奨められる. で輸血. 3, 更に多量はさほど効果が無い, 半量投与は同等の効果がある.
ü R4
PLT5万
ü R5, 非血小板減少患者での予防的血小板輸血は推奨しない *: PLT: 3-­‐4×10 11 個 ≒ 日赤PC20U程度
ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. 血小板輸血の悩みどころ
(1)予防投与か治療投与か? (2)いくつ以下で輸血すべきか? (3)どのぐらいの量を輸血すべきか?
血液悪性腫瘍患者での 検討を次々とご紹介!!
(1)予防投与か治療投与か
ü  予防投与; ProphylacRc transfusion 予め設定された血小板数を下回ったら 出血症状がなくても血小板輸血する (最近のRCTでは閾値をPLT1万に設定) ü  治療投与; TherapeuRc transfusion 出血症状が出現したら輸血する
治療投与で許されるなら, PLT投与機会は相当減るはず. でも, 致命的な出血イベントを起こしそうで怖い. 3つのRCT
Am J Hematol 1982 *1
Lancet 2012 *2
NEJM 2013 *3
n
予防群 vs. 治療群
56 PLT<2万 (Child)
主な結果
・予防群で出血イベント減少 vs.出血症状出現 ・死亡までの期間不変
391 PLT<1万 600 PLT<1万 (16-­‐80才) vs.出血症状出現
・治療群で輸血頻度3割減少 ・全体では予防群で出血イベント減少 (AML;⇩, PBSCT;⇒) ・出血イベントは予防群で低いが有意差なし (18才<) vs.出血症状出現 ・初出血イベントまでの期間は治療群で短い
メタ解析をどうぞ
*1; Am J Hematol. 1982;12:347-­‐56. *2; Lancet. 2012;380:1309-­‐16. *3; N Engl J Med. 2013;368:1771-­‐80.
G2,3,4 Bleeding 予防群
治療群
OR (95%CI)
36.4% 49.7% 0.53 (All Pt)
(192/528)
(258/519)
(0.32-­‐0.87)
G2,3,4 Bleeding 41.2% 68.0% 0.34 (化学療法群)
(77/187)
(115/169)
(0.22-­‐0.52)
G2,3,4 Bleeding (HPCT群)
33.4% (103/308)
40.9% (128/313)
0.48 (0.12-­‐1.92)
死亡率
2.4% (13/545)
3.0% (16/531)
0.72 (0.30-­‐1.55)
0.6% 0.8% 0.54 (0.09-­‐3.1)
出血関連死亡
(3/544)
(4/530)
・予防群では輸血頻度増える (輸血有害事象は増えない, Underpower?) ・予防群では出血イベントが減る (特にHPCT以外, AMLとか)
予防投与は 妥当
(2)いくつ以下で輸血すべきか
1万 vs. 2万 vs. 3万 3万?
2万?
1万?
Chicken race
1万で輸血が許されるなら, PLT投与機会は相当減るはず. でも, 致命的な出血イベントを起こしそうで怖い. n
J Clin Oncol 1997 *1
78 (17才<)
NEJM 1997 *2
(16才<)
Biol Blood Marrow Transplant 159 2002
*3
TRANSFUSION 2005 *4
255 (Median>40才)
166 (Median>30才)
4つのRCT
Method <1万群 2万群 <1万群 vs. <2万群 vs. <
<1万群 vs. <
2万群 <1万群 vs. <
3万群 メタ解析をどうぞ
主な結果
・出血イベントは両群有意差なし ・1万群は予防投与が減少する ・1万群は治療投与が増加する
・出血イベントは両群有意差なし ・1万群はPLT投与が減少する ・RCC輸血頻度は有意差なし ・出血イベントは両群有意差なし ・1万群はPLT投与が減少する
・出血イベントは両群有意差なし ・1万群はPLT投与が減少する ・RCC輸血頻度は有意差なし *1; J Clin Oncol. 1997;15:1143-­‐1149. *2; N Engl J Med. 1997;337:1870-­‐5. *3; Biol Blood Marrow Transplant. 2002;8:569-­‐76. *4; TRANSFUSION.2005;45:1064-­‐1072.
G2,3,4 Bleeding 死亡率
出血関連死亡
<1万
<2万
OR (95%CI)
21.6% (71/329)
17.6% (58/329)
0.74 (0.41-­‐1.35)
20.4% (51/250)
17.8% (43/242)
0.7 (0.4-­‐1.22)
0.3% 0% 0.37 (0.02-­‐9.22)
(1/329)
(0/329)
血液悪性腫瘍患者では・・・ ü PLT1万まで血小板輸血を我慢しても 出血イベントは増えない ü PLT1万を閾値にするとPLT輸血頻度が減少し RCC輸血が増えることもない
(3)どのぐらいの量を輸血すべきか?
Low dose Standard dose 10U vs.
20U
High dose vs.
40U
日赤PC 10U = 2×10 11 個 これに注意して文献を読む!!
4つのRCT
n
Transfusion dose (日赤製剤換算) TRANSFUSION 文献入手できず
1973 *1
TRANSFUSION 2004 *2
111 (16才<)
10U群 vs. 20U群 Blood 7.5-­‐15U群 119 vs. 15-­‐30U群 NEJM 10 vs. 20 vs. 1272
40U群 2009 *3
2010 *4
主な結果
メタ解析をどうぞ
・出血イベントは両群有意差なし ・10U群はPLT投与が減少する ・Low群でG4出血が多く研究中止 ・全出血イベントは両群有意差なし ・G2以上の出血イベントは3群有意差なし ・G3,4の重篤な出血イベントも有意差なし *1; TRANSFUSION. 1973;13:283-­‐90. *2; TRANSFUSION. 2004;44:1711-­‐1719. *3; Blood. 2009;113:1564-­‐1573. *4; N Engl J Med. 2010;362:600-­‐13.
Low dose Standard dose (≒10U*1) (≒20U*1)
G2,3,4 Bleeding 死亡率
出血関連死亡
59.5% OR (95%CI)
(335/563)
58.0% (330/569)
0.91 (0.70-­‐1.19)
1.7% 0.7% (9/531)
(4/539)
0.43 (0.13-­‐1.42)
0% 0% Not pooled (0/531)
(0/539)
*1; 日赤製剤換算
ü  10U輸血でも出血イベントは増加しない ü  20Uの輸血で十分すぎる ü  20U以上投与しても意味が無い
血小板輸血の悩みどころ
(1)予防投与か治療投与か? (2)いくつ以下で輸血すべきか? (3)どのぐらいの量を輸血すべきか?
血液悪性腫瘍患者では 『朝の採血PLT1万以下で, PLT輸血20U*投与』で良い.
*; 日赤製剤換算
RecommendaRon 2
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血. ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血. Quality of evidence; low ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時は
PLT5万
で輸血. Strength of recommendaRon; weak
ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸血. ü R5, 心外手術患者での予防的血小板輸血は推奨しない ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. Transfusion. 2011;51:2269-­‐76. ü 非トンネル型CVで検討した最大の研究 ü 単施設・後向き観察研究, スイス ü 白血病患者(化学療法, 幹細胞移植) ü 193名, 604本のカテ ü 経験豊富な麻酔科医か集中治療医が術者 ü セルジンガー法 ü エコーガイド下穿刺ではない?(記載なし) 穿刺位置 鎖骨下 内頸
性別 男性 施行前のPLT 2万未満 2-­‐5万 5-­‐10万 10万以上 不明
患者背景
施行前のPLT輸血 85% あり 25% 15% なし 75%
施行前のPLT値平均 8.7万
59%
臨床的出血リスク 15% ヘパリン投与 3% 24% Nsaids投与 3% 15% DIC 2% 44% その他 1% 1% なし
91% PLT2万未満は穿刺前にPLT輸血する
604CVC 出血イベント 32%(190CVC)で発生 (193患者) Grade1 96% ü Grade1出血は182CVC ü Grade2出血は8CVC ü Grade3-­‐4はなし ü 凝固異常患者はなし
Grade2 4%(8CVC) 挿入部位 PLT数(万) PT(%) APTT(s) Risk 鎖骨下 鎖骨下 鎖骨下 鎖骨下 鎖骨下 内頸 鎖骨下 鎖骨下 1.4⇒2.7 1.5⇒2.7 3.1 3.1 4.5 4.6 5.5 12.6
97 100 76 116 113 86 73 107
(ー) No 25 No 42 Heparin 32 No 26 No 27 No 23 No 25
No Grade1の詳細は提示なし PLT>2万でも出血するのね
Grade1; 介入不要な出血徴候. Ex.局所血腫 Grade2; 非侵襲的局所圧迫が必要な出血 Grade3; 輸血・アンギオ・内視鏡・外科手術を要する出血 Grade4; 生命危機に瀕する出血
出血イベントリスクに関する多変量解析
Pre transfusion model
PLT(万)
<2
2-­‐5 5-­‐10 10<=
OR (95%CI)
p
2.88 0.015
1.27 0.38
1.60 0.062
(1.23-­‐6.75)
(0.74-­‐2.18)
(0.98-­‐2.63)
Ref
Post transfusion model
OR (95%CI)
p
2.84 0.006
1.45 0.12
1.48 0.09
(1.34-­‐6.02)
(0.91-­‐2.31)
(0.94-­‐2.33)
Ref
ORは,性別,白血病診断,挿入部位,臨床的出血リスクの有無,予防的血小板輸血の有無で調整 Pretransfusion model; 予防的血小板輸血投与前のPLT値で解析 Poscransfusion model;予防的血小板輸血投与後のPLT値で解析
血小板2万未満だと出血イベントリスクが有意に増える
RecommendaRon 3
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血. ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血. ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸
血. Quality of evidence; very low Strength of recommendaRon; weak
ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸血. ü R5, 心外手術患者患者での予防的血小板輸血は推奨しない ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. JAMA. 2000;284:2222-­‐2224. ü 診断的腰椎穿刺で検討した最大の研究 ü 単施設・後向き観察研究, アメリカ ü 白血病患者(小児;平均5.5才) ü 958名, 5442回の穿刺 ü 術者・穿刺器具の詳細記載なし 合併症頻度
ü 調査項目 ・穿刺直前のPLT数 ・RBC/HPF⇒髄液中にどのくらいRBCいるか ・PLT輸血頻度 ・穿刺による合併症頻度 ü 合併症定義 ・神経学的異常(頭痛・嘔気は除く) ・感染症状 ・出血症状 ü TraumaRc LPの定義 ・500RBC/HPC以上 PLT<2万 0-­‐1.75%
PLT<5万 ちなみに 0-­‐0.37%
TraumaRc LP; 10.5%
・詳しい合併症内訳は記載なし(大したことないものだけと記載). ・2万以下と5万以下だと合併症頻度が結構違う. ・いずれにせよそんなに危険な手技ではない? ・ただし、小児. 穿刺針が大人より細い可能性. 手技も多分簡単.
Ann Hematol. 2003;82:570–573. ü 成人の診断/治療的腰椎穿刺の最大の研究 ü 単施設・後向き観察研究, スイス ü 白血病患者(成人;18歳以上,平均38才) ü 66名, 195回の穿刺 ü 術者・穿刺器具の詳細記載なし ü 調査項目 ・RBC/HPF⇒髄液中にどのくらいRBCいるか ・穿刺による合併症頻度 ü 合併症定義 ・神経学的異常(頭痛・嘔気は除く) ・感染症状 ・出血症状 ü TraumaRc LPの定義 ・500RBC/HPC以上 予防的輸血後PLT数
全患者
2-­‐3万
3-­‐5万
穿刺数
195
35
40
43
77
予防的 輸血回数※
37
16
10
11
0
PLT平均
3.2万
2.4万
3.7万
6.0万
22.7万
TraumaRc LP (%)
14 (7.1%)
6 4 (10%)
3 1 (17.1%)
5-­‐10万 10万以上
(6.9%)
(1.2%)
ふえる
※穿刺日朝のPLTが2万以下なら予防的輸血.1時間後に穿刺
ü PLTが低いとTrauma@c LPが増える. ü 合併症は5例(髄膜炎:3, 痙攣:1, TIA:1)⇒血腫/麻痺とかはない. ü 合併症はPLT数と相関がなかった様子(2.3-­‐24.7万の患者で出現). ü Sample sizeの少なさは否めない. ü この結果から予防的PLT投与の閾値を設定するのは困難. RecommendaRon 4
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血. ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血. ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸血. ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸
血. Quality of evidence; very low Strength of recommendaRon; weak
ü R5, 心外手術患者での予防的血小板輸血は推奨しない ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. Am J Hematol. 1987; 26: 147-­‐55. ü 術前PLT数と周術期出血量の相関を検討
ü 単施設・後向き観察研究, アメリカ
ü 白血病患者(16-­‐73歳,平均46才) ü 術前PLT<5万でPLT輸血してからOPするお約束 95名;167手術
Major Surgery 29 例(17%)
開腹術
13 股関節置換
1
開頭術 9 AK
1
開胸術
4 精巣摘出
1
12 扁摘
1
Major-­‐Minor シャント増設
24 例
Minor Surgery 114 例
気切
11
抜歯
19 ヒックマンカテ
52
SG/CVC
5 胸腔ドレーン
4
PDチューブ
4 各種バイオプシー
30
各種リスク解析(ロジスティック解析)
Post-­‐OP outcome
術中出血>500mL
周術期RCC投与(>4U)
周術期PLT投与(>30U)
中-­‐重症出血
Pre-­‐OP parameter*
Major surgery
Fever
Major surgery
Fever
凝固異常
Major surgery
Fever
P
.001
.02
.05
.012
.001
<.001
.007
None
*; 有意なものだけ論文に記載有り
“術前PLT値”, “術後PLT値” は PLT>5万でMajor surgeryも 有意なリスクとはならなかった 安全にできる でも, 1987年の観察研究たった1つでここまで言えるか疑問は残る?
RecommendaRon 5
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血.
ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血.
ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸血.
ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸血.
ü R5, 心外手術患者での予防的血小板輸血は 推奨しない Quality of evidence; very low Strength of recommendaRon; weak
補足
1, 正常値以下の血小板減少(<15万)による出血傾向 , 抗血小板薬服用脳出血患者に対する推奨は示せなかった. 2, CPBによる血小板機能障害 ü R6
いづれかが存在する場合はPLT輸血を検討 あくまでもルーチンの投与はおすすめしない TRANSFUSION. 2004; 44: 1143-­‐1148.
ü PLT輸血を要した患者は予後が悪い? ü アプロチニンに関する6RCTの患者データ再利用 (1990-­‐5にかけて行われた) ü 待機的初回CABG/再CABG患者のみ対象 ü 全例CPB使用 ü 18歳以上 ü n=1720 (PLT輸血有り; 284, PLT輸血なし; 1436) 患者背景
PLT投与群に “EF低下例” が多いが それ以外はそんなに違わない
結果の解釈
前提 『患者背景に差はない』
解釈1 『PLT輸血は悪』 PLT輸血→予後悪化
解釈2 『PLT輸血群は重症度高い』 確かにEFは低い→予後悪化 GLでは・・・ 確かにPLT輸血は悪そうだが 単に重症度の違いだけかも ルーチンのPLT輸血は おすすめできないかな・・・
RecommendaRon 6
ü R1, 骨髄抑制時は出血性合併症予防のためPLT1万で輸血. ü R2, 待機的CV挿入時はPLT2万で輸血. ü R3, 待機的診断的腰椎穿刺時はPLT5万で輸血. ü R4, 待機的手術(神経系除く)ではPLT5万で輸血. ü R5, 心外手術患者での予防的血小板輸血は推奨しない ü R6, 抗血小板薬服用脳出血患者に対する 推奨は示せなかった. Quality of evidence; very low Strength of recommendaRon; uncertain
J Trauma Acute Care Surg. 2012;72:1658-­‐63. ü 抗血小板薬内服中患者の外傷性脳出血(tICH)に 受傷後24時間以内のPLT輸血は有効か? ü Systema@c review ü 5つの後ろ向き観察研究が見つかった. (RCTの発見を期待したが見つからず) ü 2研究は, PLT輸血によるtICHの予後を検討したもの 3研究は, tICHの予後因子を検討したもの ⇒著者に足りないデータを問合わせてレビュー 研究概要(すべて観察研究)
Study
期間
n AnR-­‐PLT
介入
Outcome
Downey*1 2003 -­‐2006
328
Aspirin ±clopidogrel
PLT輸血 6U
病院死亡
Washington*2 2007 -­‐2008
108
いろいろ
PLT輸血 Dose unknown
病院死亡
Ivascu*3 1999 -­‐2004
109
Aspirin ±clopidogrel
PLT輸血 Dose unknown
病院死亡
Ohm*4 1999 -­‐2002
90
Aspirin ±clopidogrel
PLT輸血 Dose unknown
病院死亡
Wong*5 2001 -­‐2005
111
Aspirin ±clopidogrel
PLT輸血 Dose unknown
病院死亡
2 sites
1 site
1 site
1 site
1 site
*1; Am Surg. 2009; 75: 1100-1103.
*2; J Trauma. 2011; 71: 358-363.
*3; J Trauma. 2008; 65: 785-788.
*4; J Trauma. 2005; 58: 518-522.
*5; J Trauma. 2008; 65: 1303-1308.
死亡率比較
Study
n Downey 328
引き分け
Washington 108
Ivascu 109
Ohm PLT負け
90
Wong PLT勝ち
111
死亡率(%)
PLT輸血群
対照群
17.5(29/166) 16.7(27/162)
5(2/44)
0(0/64)
27.5(11/40) 13(9/69)
41.7(10/24) 17.2(11/64)
3.4(3/92) 15.5(3/19)
RR(95%CI)
1.04(0.65-­‐1.69)
Not reported
2.12(0.96-­‐4.65)
2.42(1.18-­‐4.96)
0.21(0.05-­‐0.95)
ü  抗血小板薬の作用を, 血小板輸血で中和しようとの発想は昔からあった. ü  動物実験では確かに40-­‐60%程度に中和される. ü  この戦略は人体でも有効かと思われたが結果は一定ではない. ü  輸血副作用(型間違い,アレルギー,TRALI・・・)、コストを考えるべき. ü  重症度の高い外傷、出血リスクのより高い患者では容認されるかも?
ルーチンの投与はおすすめできない 6つのRecommenda*onのおさらい
RecommendaRon
Quality
内容
R1, 骨髄抑制患者 1万で20U予防輸血
Strength
Moderate Strong
R2, CV
2万で輸血
Low
Weak
R3, 腰椎穿刺
5万で輸血
Very low
Weak
R4, 外科手術
5万で輸血
Very low
Weak
R5, 心外手術
ルーチンにはおすすめしない
Very low
Weak
R6, 脳出血
推奨不明
Very low Uncertain
根拠がありそうなのは
”R1” だけ?
Discussion
1, いままでのGLと, さほど代わり映えしません
1, BriRsh Commilee for Standards in Haematology, Blood Transfusion Task Force. Guidelines for the use of platelet transfusions. Br J Haematol. 2003; 122:10-­‐23. 2, JPAC – Joint United Kingdom (UK) Blood Transfusion and Tissue TransplantaRon Services Professional Advisory Commilee. Transfusion Handbook: Transfusion in Surgery. 2013 3, Blood Transfusion Guideline. Utrecht,Netherlands: InsRtute for Healthcare Improvement; 2011. 4, PerioperaRve platelet transfusion. RecommendaRons of the French Health Products Safety Agency (AFSSAPS) 2003. Minerva Anestesiol. 2006; 72:447-­‐52. 5, PerioperaRve platelet transfusion: recommendaRons of the Agence Franc, aise de Se´ curite´ Sanitaire des Produits de Sante´ (AFSSaPS) 2003. Can J Anaesth. 2005; 52:30-­‐7. 6, American Society of Clinical Oncology. Platelet transfusion for paRents with cancer: clinical pracRce guidelines of the American Society of Clinical Oncology. J Clin Oncol. 2001; 19:1519-­‐38. 7, Italian Society for Haemostasis and Thrombosis. Management of bleeding and of invasive procedures in paRents with platelet disorders and/or thrombocytopenia: Guidelines of the Italian Society for Haemostasis and Thrombosis (SISET). Thromb Res. 2009; 124:e13-­‐8. 2, コストや輸血関連副作用を考えれば 不要な輸血は避けたい 3, 本GLが臨床家の判断の一助になることでしょう 4, ただし, 本GLの根拠は乏しいものもある →更なるアップデートは常に必要
本日のまとめ
ü 6つのRecommenda@onが示された ü 各Recommenda@onの根拠は実は乏しい ü 本GL内容は各施設の医療体制(密度)に 則したものに各施設で微調整したほうが 良いと思われる ü 輸血の文献を読む際は日赤製剤との 換算に注意するべし さらにレビューしたい方は・・・
最新号: INTENSIVIST. 2015; 7: 279-­‐291. 維持すべき血小板数は?:予防的・治療的血小板輸血の考え方
神
尾 直,讃井 將満
付録資料
なぜPLT輸血を回避したいか?
割と多い
Per-­‐Unit Risk
1/7.5万
1/13.8万
1/265万
1/331万
あんまりない?
Ann Intern Med. 2015;162:205-­‐213. 合併症リスクを避けては通れない
危険なのに効果がなければ高いだけ?
PC10U≒8万円 山形県立中央病院HP
ü  室温保存で5日間の使用期限 ⇒効率的に使うの難しく, 廃棄コストも高価 予備スライド
術前PLT数
>5万
[分類
[パー
名]
セン
[パー
テー
セン
ジ]
テー
ジ]
<2万
[パー
セン[分類
テー 名]
[パー
ジ]
セン
テー
ジ]
術中出血量(ML)
[分類 >500 名] [パーセ
[パーセ ンテー
ンテー ジ] ジ] 20-­‐50 14% 術前PLT輸血頻度; 73% 輸血なし患者のPLT平均; 6.0万 輸血有り患者のPLT平均(輸血後); 5.6万 (6U投与で2.4万増加) 凝固異常患者頻度; 19%
術中術後PLT輸血頻度;
73%(平均12U)
8%で30U以上投与
術中術後MAP輸血頻度(>4U); 7%
<20 62% 術後に問題となった出血頻度;
13%(Mildなもの)
Am J Hematol. 1987; 26: 147-­‐55.