-大型家電量販店の経営戦略- - 駿河台メディアサービス

-大型家電量販店の経営戦略-
明治大学
経営学部 経営学科
2年 出沼
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目次
1、はじめに
2、家電量販店業界の動向
3、ヤマダ電機の経営戦略
4、ヨドバシカメラの経営戦略
5、通信販売業界と家電量販店業界
6、おわりに
1、 はじめに
現代において今や生活必需品と言われる家電製品、そしてその家電製品無しで生活す
るという事が想像できなくなりつつある世の中、また生活必需品だけでなく個人の趣味
や娯楽を提供する品々として私たちの生活に根差し、その技術の進化、成長には目覚ま
しいものがある家電製品、そこでそれらの品々を取り扱っている各家電量販店がどうい
った経営をしているのか、また通信販売が浸透してきた今、それらは大きな家電量販店
業界にとって大きな競争相手となりうるのか、そうであるならそれに対抗するために何
か戦略が各販売店にあるのかという点についてこのレポートで明らかにしていく。
2、 家電量販店業界の動向
家電量販店業界の過去の推移では、平成 15 年から 19 年まで業績は拡大傾向にあっ
たが平成 19 年から 22 年にかけて若干の増加傾向になった。一方で平成 22 年から 24
年にかけて業績は悪化している。家電『エコポイント』の終了や地デジ移行に伴う薄型
テレビの需要先食いなどの反動により、各社減収減益となり業界全体の業績も大きく落
ち込んだ。しかし昨年は消費税の増税前の駆け込み需要もあってか 3 月までは一時的な
業績回復が見られた 1。今後近年国内の家電売上は伸び悩みを見せる一方、家電量販店
業界内の競争は激化していく見込みがある。
3、 ヤマダ電機の経営戦略について
今回は 2013年度売上高 1 兆 7014 億円 2、現時点でも国内家電量販店において売上
高、シェア共に業界内1位を誇るヤマダ電機の経営戦略について分析していく事にする。
ヤマダ電機は郊外型店舗をテックランド、テックサイト、都市型店舗をLABIといった
屋号で全国展開しており、また 2005 年 2 月には、家電量販店としては日本で初めて売
上高 1 兆円を達成している。そして同年7月に業界初の全都道府県出店を果たした家電
量販店として知られている。
ヤマダ電機の経営戦略としてよく名が挙げられるのはコストリーダーシップ戦略で
ある。
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http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/ryouhan/result/pdf/h2rhsallj.pdf
http://www.yamada-denki.jp/company/busin_perporm.html
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3-1 ヤマダ電機の経営戦略 -コストリーダーシップ戦略-
ヤマダ電機は業界全体の広い顧客をターゲットにし、他社のどこよりも低いコスト実
現をすることにより競争に勝とうとするコストリーダーシップ戦略をとっている。
これはヤマダ電機の経営戦略の中でも代表的なものである。
コストリーダーシップ戦略とはこのようなサイクルから成り立つ。1、常にコスト削
減に取り組み業界トップクラスのローコストオペレーション企業になる。2、ローコス
トオペレーションができれば、低価格を武器と
して販売を行うことができる。3、低価格販売
で販売数量を拡大できれば、大量の仕入れに繋
がる。4、大量仕入れが実現すれば更なる仕入
れ価格の削減につながる。5、仕入れ価格が削
減できれば更なる販売数量の拡大で販売シェア
を上げることができる。6、販売シェアが拡大
し、収益が拡大すればその収益で更なるコスト
削減のための投資を行うことができるというも
のである。
ヤマダ電機のコストリーダーシップ戦略の
具体例としては、規模の経済の実現、仕入れ
図1 コストリーダーシップ戦略 3
価格やオペレーションコストの削減などが
挙げられる。家電製品はメーカー品が多く付加価値による商品の差別化ができない家電
量販店業界においては値段に消費者の意識が向くのでこういった戦略を業界全体が傾
向としてとってはいるが業界最王手のヤマダ電機に優位性がある。家電製品販売の場に
おいて顧客が最も優先するのはやはり値段である。そのために低価格販売を実現してい
るヤマダ電機は他社よりも比較的に支持を得ることができると言える。
4、 ヨドバシカメラの経営戦略
続いて 2013 年度の売上高は 6,908 億円でヤマダ電機、ビックカメラ、エディオング
ループ、ケーズホールディングスに次ぐ家電量販店業界日本国内 5 位のヨドバシカメラ
の経営戦略について記述していく。2014 年 11 月現在、21 店舗を持ち、都内だけでも
新宿西口本店、マルチメディア新宿東口、マルチメディア Akiba、マルチメディア上野、
マルチメディア吉祥寺、八王子店、マルチメディア町田、マルチメディア錦
糸町と、都内有数の大型駅の近くに店舗を構えている 4。
ヨドバシカメラの経営方針の大きな特徴として他の大手量販店とは異なり、企業買
収・合併による規模拡大を行なわない、株式を上場しない、売上高より利益を重視した
経営戦略を持つ。
また先に記述した店舗の位置から伺えるように都内大型駅近辺に店舗を構えるレー
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4
図1http://www.00keiei.com/kigyou-senryaku/yamada.html
http://www.yodobashi.co.jp/company/profile/
3
ルサイド戦略と呼ばれる出店形態が特徴で、同業ではビックカメラが同様の形態を取っ
ており、後にヤマダ電機も LABI の店舗名で追随している。
他にはヨドバシカメラは家電量販店として初めてポイントサービスを導入した点も
有名である。ヨドバシカメラではポイントサービスを「ゴールドポイント」という名称
で行っている。
ヨドバシカメラは売上高こそ国内 5 位に留まるものの高収益を上げ続けている。それ
には大きく分けて3つの特徴がある。
一つ目は、効率的に収益を上げることができる店舗展開を進めていることである。
2014年時点において、全国で21店舗という決して多くない店舗数に的を絞る形で
各店舗を「マルチメディア館」とするなどして大型店舗とし、レールサイド戦略として
それぞれの店舗の出店場所として各都市の中心地の駅前というアクセスの良い場所を
選び集客率の上昇を狙っている。
二つ目の特徴は、消費者のニーズに合わせIT関連やAV関連製品の品揃えを充実さ
せている点である。ヨドバシカメラが取り扱っている商品数は、60万点以上にも上る。
そして3つめの特徴としては、各店舗に配置する販売担当の社員数の多さと各販売員に
確実に商品知識を持たせている点である。
これらの要素からヨドバシカメラは店舗数が少ないものの毎年高収益を挙げること
ができていると考えられる。
ヨドバシカメラは社員1人当たりの売り上げは月に 1600 万円だとされている。 5
そして最近導入されたのがインターネット通販サイト「ヨドバシ・ドットコム」配達
料金無料で注文当日配達サービスである。ペン 1 本、書籍 1 冊でも送料無料な上、商品
や場所によっては当日配送も可能であり、さらにネット上ではなく店舗でも使える 3%
のポイントが付与されるなど大手の通販サイトを意識したサービスを行っている。
5、 通信販売業界と家電量販店業界
ヤマダ電機の業績は 2013 年 3 月期の決算では 1 兆 7000 億円であった。アマゾンは
国内の売上高を公表していないが、現在では 1 兆円程度に達しているといわれ、このう
ちの何割かが家電製品ということになる。
一方家電量販店の場合はヤマダ電機だけで 1 兆 7000 億円であるので今現在のところ、
通信販売と家電量販店の売り上げ差はまだ市場の規模が違うと言える。しかし現在の規
模は小さいが、今後も Amazon や楽天を代表とするネット通販がシェアを伸していく
可能性は十分に高いと思われる。事実、自分の身の回りの人々もよく通信販売は利用す
ることが多いらしく、家電製品も電池や蛍光灯などのちょっとしたものからテレビや冷
蔵庫などの大型家電までインターネットを利用した通信販売で買うという人が多いよ
うに見受けられる。理由としては、やはり値段の安さが第一に挙げられ、次点で直接店
舗に出向くわずらわしさがない事や、品揃えの豊富さ、商品が売り切れているという事
がほぼ無いという点が挙げられる。スマートフォンやコンピューターに慣れ親しんだ若
者ほど通信販売を利用している傾向にある。図2を見るとやはり、通信販売を利用して
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http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d02/02/economist0702.html
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いる人々は増加傾向にあることが分かる。
通信販売が利用されてい
るカテゴリの中で特に伸びが
大きいのは、
「金融取引」
、
「衣
料・アクセサリー類」
、
「趣味
関連品・雑貨」
、
「食料品」な
どである。
6、 おわりに
現在、売上高の規模が違う
ため通信販売業界は家電量販
店にとって今はさほど脅威に
感じられないが、インターネ
ットが世の中に浸透し、通信
販売も年々利用者が増えてい
る現在では通信販売業界が今
後脅威になりうるような規模
にまで成長すると考えられる
図2 通信販売利用状況の推移 6
だろう、そしてそれは家電量販店
業界にとって大きな競争相手になるに違いない。
そこで家電量販店がとりうる戦略として考えられるのは、利益とのバランスが難しいが
やはり通信販売サイトとの商品の低価格化による価格競争は必須であり、更に店員の顧
客の購買欲を刺激するような営業力とアフターサポートや保証等の各種サービスの向
上が今後必要不可欠になっていくと思われる。
参考文献
得平 司 (2012) 「ヤマダ電機の「PCDA」経営」 日本経済新聞出版社
山名一郎 (2005) 「よくわかる家電量販店業界」 日本実業出版社
参考URL
http://www.00keiei.com/(経営コム)
12/2 アクセス
http://www.jmrlsi.co.jp/
(Japan Consumer Marketing Research Institute)
http://www.meti.go.jp/(経済産業省)
1/24 アクセス
1/24 アクセス
http://www.soumu.go.jp(総務省)
12/2 アクセス
http://www.yamada-denki.jp (ヤマダ電機)
11/20 アクセス
http://www.yodobashi.co.jp (ヨドバシカメラ) 11/20 アクセス
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http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc213310.html
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