進化するスマート家電 - 日本OSS推進フォーラム

2015年1月27日
日本OSS推進フォーラム
成果報告会
IoT(Internet of Things)と
進化するスマート家電
パナソニック株式会社
全社CTO室 ソフトウェア戦略担当 主幹
梶本 一夫
パナソニックの
Internet of Things取組み事例
パナソニックが目指す方向 = Internet of Things
http://panasonic.co.jp/ir/vision/pdf/20130328_vision_j.pdf
お客様が渡り渡り歩かれる4空間をクラウドでつなぎ、お客様に常に寄り添う
産業のパートナー様とともに歩む
2013年3月28日
中期運営方針発表会にて
出典:http://panasonic.co.jp/ir/vision/pdf/20130328_vision_j.pdf
家電から始まり、自動車、住宅、あらゆるB2Bに向けパートナー様と協働
Wonder Life Box 2020
2014/5 東京・有明の弊社ショールームにて、クラウド時代の生活事例を常設展示
多くのビジネスパートナー様と、ともに楽しく快適なお客様の生活を提案
出典: http://panasonic.co.jp/center/tokyo/floor/floor_01/lifebox2020/
対話技術 (IFA2013)
2013/9 IFA2013@ベルリンで、「音声で対話する家」のコンセプトデモを実施
調理のため、水400ccを入れて
とエージェントに指示
母親が来訪するのに合わせ、料理を
エージェントと相談
出典:http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/avt/20130910_614771.html
http://www.youtube.com/watch?v=_6y0viToHFsなどで動画も公開
対話技術 (CES2014)
2014/1 CES2014@ラスベガスで、「空気を読む家」のコンセプトデモを実施
3人同時に話しても、聞き分けて認識
行きたいレストラン検索の際、家から
条件(価格や場所など)を問いかけ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140108/k10014358121000.htmlなどでも動画公開
音響センシング技術(家電技術からB2Bへ)
ビームフォーミング
エコーキャンセラ
背景ノイズ抑圧
非音波ノイズ抑圧
(超狭指向)
(常時適応学習)
(高い音質・ノイズ抑圧量)
(風雑音・振動雑音対応)
マイクロホン
アレイ
ユーザ
ノイズ
×
エコー
ユーザ マイク
マイク
×
ジー
×
ゴー
×
ユーザ
ノイズ
入力
出力
風雑音
ステレオ
マイク
振動雑音
対話・HiFi・雑音抑圧等で利用
おやすみナビ
スマートフォンでエアコンのおやすみ制御
寝ている間の温度変化パターンを選択
(自分の好みの温度変化の登録も可)
寝ている間、自動的に制御
寝ている間の実際の温度や
寝返り等を記録
長期ログで快眠温度を
分析
朝、お目覚めの時の音楽も
好みのものを選択
家・クルマ連携
ナビでエアコン制御
出典:http://car.panasonic.jp/cloud_app/
※T-Connectはトヨタ自動車様の登録商標
HEMS
ダイワハウス様の新型HEMS “D-HEMS 3”に貢献
出典:http://www.daiwahouse.co.jp/release/20140403143258.html
Echonet Liteで接続された機器群を、宅内モニタ、宅外スマートフォンで制御
レシピ(コンテンツ)の配信サービス
調理家電を楽しく使う提案を、ことづくり仮説から始める
機器とコンテンツのコラボ
出典:
http://panasonic.jp/health/ata/
体重、歩数などとエクササイズ映像をコラボ
(試験体験者(男性)が3ヶ⽉で体重を14kg落とすことに成功)
IoT実現における課題とアプローチ
モノづくりの視点から
伝送規格の多様性(1)
NFC, BlueTooth, ZigBee, WiFi, 特定小電力無線, PLC …
国ごとに異なる認可周波数
日本におけるスマートメータへのBルート規定の事例
http://www.meti.go.jp/press/2013/05/20130515004/20130515004-5.pdfより引用
伝送規格の多様性(2)
・⾳声や映像を伝送するには、⾼周波数の規格が有利
・920MHz帯で⽇本ではARIB STD T-108を満たす必要があり、例えば⼀時間
あたりで許される通信時間は360秒以下などの制約を受ける
・⾒通しの悪い宅内の部屋間での伝送では、低周波数の規格が有利
・数多く普及している規格では、アクセスポイントが近接する相互⼲渉により、
伝送距離がさらに短くなる
・2.4GHz帯では、電⼦レンジの不要輻射電波の妨害を受ける
・⼾建て住宅の検針では無線が有利だが、マンションでの集合検針では有線が有利
・待機電⼒が必要な規格は電池駆動で⻑寿命が求められるユースケースには不向き
・宅内はブロードバンドルータ内のNAT技術によりIPv4でも構わないが、宅外は
IPv6が望ましい
全体コスト視点からは宅内の規格統一は望ましいが、使われ方の違い
により複数規格が混在するのが現実
すべてをつなぐ課題
・接続の多様性
ご家庭ごとに異なるGWの種類、設定、宅内構成
ご家庭ごとに異なる間取り、宅内・ご近所との⼲渉
・機器の多様性
洗濯機、冷蔵庫、エアコン、TV、…で異なる電気設計や ソフトアーキテクチャ
・コストの多様性
百万円オーダ(太陽電池など)から千円オーダ(⻭ブラシなど)まで幅広い商品群
・ライフサイクルの多様性
10年以上のライフサイクルを持つ建築材料、⽩物家電、⾃動⾞制御系等と、
短期にバージョンアップを繰り返すデジタルI/F系の共存
・お客様がつなぎたくなる動機
つなぎたくなるようなウケるサービスとは?
SNS、ゲーミフィケーションの利⽤も考慮
IoT実現における課題とアプローチ
コトづくりの視点から
WebサービスとIoTサービス(1)
・Webサービス
大学等
非営利機関
URI入力・アプリ起動
=サービス指定(意図表明)
意図を持った情報提供
企業
営利機関
インターネット
サービス享受
利用者
アプリ=
Web世界を
覗き込む窓
利用者からのフォードバック
情報提供者(サービサ)の
発信情報(データ)
個人
情報提供者(サービサ)
- 情報提供者は意図を持って情報を発信する(情報は⼈がそのまま解釈可能)
- Webの世界では、利⽤者が情報提供者の情報に到達するためのURI定義の
世界ルール・組織(ICANN,JPINIC等)、URIを実際のIPアドレスに変換する名前
解決⽅法(DNS)を規定
- 利⽤者は、この規定の上で、⾃ら意図を表明して、⽬的に応じた窓からWeb世界を
覗き込み、所望するサービスを享受する
WebサービスとIoTサービス(2)
・IoTサービス
ひもづけに壁
データ提供(データ列)
=機器には意志なし
サービス指定(意図表明)?
インターネット
サービス享受
利用者
アプリ=
Web世界を
覗き込む窓
制御コマンド
データ提供者の
発信情報(データ列)
データ提供者
(機器やセンサー)
- 機器が提供するのは単なるデータ列で、何を表しているかがわからない
- 利⽤者の意図をくみ取り、所望のデータ列にひもづける標準的なルールが
規定されていない
例)利⽤者の意図:オフィスから「梶本家のリビングのエアコンの設定温度は何度か知りたい」
↓
・梶本家のリビングのエアコンへのアクセスパスはどう解決?
・機械に「梶本家のリビングのエアコン」と誰がいつ意味ある名づけをする?
・エアコンのデータ列のどれが設定温度と、誰がいつ意味ある名づけをする?
・他⼈が勝⼿にアクセスしてもらっては困るが、誰がブロックする?
WebサービスとIoTサービス(3)
・IoTサービス
セマンティック
ネットワーク
機器やデータ列に意味ある名づけ
(メタデータ)
=オントロジー管理
Panasonic
データ提供(データ列)
=機器には意志なし
サービス指定(意図表明)
インターネット
利用者
サービス享受(端末側)
アプリ=
IoT世界を
覗き込む窓
サービス享受(機器群側)
制御コマンド
データ提供者の
発信情報(データ列)
データ提供者
(機器やセンサー)
センシング情報
- データ列とメタデータ(データ列の意味ある名づけ)のペア(オントロジー)管理で
セマンティックネットワークを構成
- 名づけルール(名前空間定義)と、複数企業・団体間でDNSのようなオントロジー探索
ルールのの規定が必要
- 誰がいつ名づけるのかの課題解決は、利⽤者に接する機器関連の会社が主導したい
(出荷時、販売時、設営時などのタイミングで顧客接点を持てるため)
IoTの世界での家電の見え方
家電API
家電GW
UXアプリ
パナソニック
クラウド
仮想世界
実世界
ユーザが操作したり視覚化された情報を見るアプリからは、クラウドを介して
各家電群が抽象化されたオブジェクトとして見える
家電ゲートウェイ(GW)機能
家電GW機能
メディア変換
パナソニック
クラウド
(Ethernetと各方式)
回線終端装置
プロトコル変換
(クラウドI/Fと各方式I/F)
Ethernet
機器自動発見
簡単接続支援
クラウド遮断対応アプリ
(宅内自律制御:HEMSも一例)
条件反射対応アプリ
プライバシー宅内終端
家庭内に多様な方式との通信変換を行う家電GW機能が必要
独立した箱である必要はなく、家電が機能を内包する実装でも良い
家電GWは、クラウドから見れば家電とのパイプでもある
UXアプリでの家電の見え方例
たとえばブラウザで、
http://www.pcpf.com/customer=“Kajimoto”&device=“Refrigirator”
とたたくと
急冷
現在状態:通常運転
冷蔵庫内:7℃
冷凍庫内:-20℃
ON
OFF
パナソニック
クラウド
冷蔵庫
・アプリ記述⾔語:HTML5等
・通信プロトコル:JSON-RPC、WebSocket、HTTP等
・クラウド側API:REST等
・送受⽤データ形式:JSON、XML等
これらを、どう整理してデファクト化を共創するかはIoTの汎用化に向けた課題
協調の重要性
垂直統合型サービスの乱立
◆現在のIoTは垂直統合システムの集合体
IoTの世界
Owner
Application
Owner
Layer
Application
Owner
Layer
Application
Layer
Platform
Layer
Platform
Layer
Platform
Communication
Layer
Communication
LGE
- PV Controller
(Panasonic)
- Remote
- PV
Controller
Maintenance
(Panasonic)
(Panasonic)
- Remote
- PV
Controller
Maintenance
(Panasonic)
PDSP
(Panasonic)
- Remote
(On Premise)
Maintenance
PDSP
(Panasonic)
(On Premise)
PDSP
Wired
(On Premise)
Photovoltaic
Wired
Communication
Photovoltaic
Wired
Device
Photovoltaic
- Refrigerator
- Detergent
- Remote
- My Home Cloud
Samsung
based
Recording
(Panasonic)
Energy
Washing control
Management
- Third
party’s
Management
Refrigerator
Detergent
- Remote
- My
Home
Cloud
Panasonic
(Panasonic)
(Panasonic)
(Panasonic)
Apps
based
Recording
(Panasonic)
Energy
(Third
parties)
Washing control
Management
- Third
party’s
Management
- Refrigerator
- Detergent
- Remote
- My
Home
Cloud
(Panasonic)
(Panasonic)
(Panasonic)
Apps
(Panasonic)
Energy
based
Recording
Dimora PF
Viera parties)
Connect
Gemini(On Premise)
(Third
Washing control
Management
Management
- Third
party’s
(On Premise)
(On Premise)
(Panasonic)
(Panasonic)
Apps
(Panasonic)
Dimora PF
Viera parties)
Connect
Gemini(On Premise)
(Third
PCPF(Open Cloud)
(On Premise)
(On Premise)
Dimora PF
Viera Connect
Gemini(On NFC
Premise)
WiFi
PCPF(Open Cloud)
(On Premise)
(On Premise)
BD Recorder WiFi Smart TV
Refrigerator
washing machine
NFCCloud)
PCPF(Open
BD Recorder
BD Recorder
WiFi Smart TV
Smart TV
Refrigerator
Refrigerator
NFC washing machine
washing machine
オープンな
Webの世界
- Remote Control
(Panasonic)
- Sleep Control
- Remote
Control
(Panasonic)
(Panasonic)
- Sleep Control
- Remote
Control
(Panasonic)
(Panasonic)
AP Server
- Sleep Control
(On Premise)
(Panasonic)
AP Server
(On Premise)
AP 802.15.4g/d
Server
(On Premise)
Air Conditioner
802.15.4g/d
- Navigation
Assistance
(Toyota)
Navigation
Toyota
- Home Control
Assistance
(Panasonic)
(Toyota)
- Navigation
- Home Control
Assistance
T-Connect
(Panasonic)
(Toyota)
(Open Cloud)
- Home Control
T-Connect
(Panasonic)
(Open Cloud)
T-Connect
3G, LTE
(Open Cloud)
Connected
Car
3G,
LTE
Information Retrieval
Web browse
SNS
Game etc.
Air Conditioner
802.15.4g/d
Connected
Car
3G,
LTE
3G, LTE
WiFi
Air Conditioner
Connected Car
Smartphone
PC
Everyone
Open API module family
(HTML, HTTP, RDF, XML,
JASON,….)
AWS, Azure, GAE, ….
IoTでは機器の機能差、ライフサイクルなどの違いが激しく、同じ社内であっても
機器ごとにデザインされたサービスPF、アプリが乱立してしまいやすい。
ましてや複数の会社が個別にサービスを提供する世界では、Webの世界で見られる
お客様が自分の気に入ったアプリを選べるアプリマーケットが形成できず、進化が
難しい状況に陥る
宅内制御のオープン化によるデファクト化
- 住宅向けのサービスは、地域生活に依存し、地域別にオープン化によるIoTでの
デファクト化を狙う団体が存在
- 階層別に大別すると以下のような団体が存在する
1:全体フレームワーク・セマンティクス: W3C(グローバル)
2:P2P通信: Echonetコンソーシアム(⽇), EEBus(欧), Qivicon(欧), Zwave(⽶), iris(⽶)
ZigBee(⽶), AllSeen Alliance(⽶,アジア), Open Interconnect Consortium(⽶,アジア)
3:OS・プラットフォーム: Thread(⽶), Apple HomeKit(⽶), Smartthings(⽶,韓),
ARM mbed(英)
4:アプリケーション: Home Connect(欧), iControl(⽶), Control4(⽶), HomeChat(韓)
W3Cの活動例
・WoT (Web of Things)
HTML5の次テーマとして、W3CもIoTの
オープンスタンダードづくりの議論が始まる
まだ討議内容は多様性に富むが、
サードパーティがアプリを書けるようにするため
セマンティックネットワーク等の仕掛けづくりも
議題に上がる
@2014/6/25-26 WoT Workshop
@2014/10/29 TPAC2014/WoT Breakout Session
出典
http://www.w3.org/2014/02/wot/
オープンソース利用でのデファクト化戦略
利用タイプ分類
事例
貢献中心タイプ
まき餌型
トップランナー型
先行他社価値希釈型
利用中心タイプ
開発費削減型
B2B相手先指定型
・貢献中⼼タイプの会社は、「損して得取る」を実践
・利⽤中⼼タイプはコスト削減の⾯で当初は有利。しかし、OSS側が進化するたびに後追いで
追従するコストが⼤きな負担になってくる
従来:ハードアーキテクチャを規定→ソフトウェア開発効率を上げる、安く仕上げる(垂直型)
今後:ソフトアーキテクチャを規定→ハードウェアの画⼀化促進(⽔平型)
役割ごとに多数派ソフトが⽀配し、全体でアプリやハードの洗練を促しエコシステムを作る
しかし、縦割り収支管理の日本の企業構造が、垂直統合型のIoTから水平分業型の
IoTへの転換を阻害。これを克服できるかが鍵
オープンソースの懸念
◆提供形態ごとに異なる端末(機器)の実態と利用者意識
B2B
境界はあいまいに
B2C (PC/スマホ)
B2C (IoT)
機能の実現
専⽤を開発委託
アプリを⾃分でインストール
組込みソフトで埋め込み
開発者との関係
運⽤委託や保守契約
保守契約締結が多い
売り切り+コールセンター
利⽤者の前提
業務運⽤の専⾨家
ITリテラシーのある消費者
⼀般⼤衆
利⽤者による改造
「なし」(不要)
「あり」(インストール含む)
「なし」(不可)が前提
保証の考え
開発者・運⽤者が保証
(契約による利⽤者保護)
消費者の⾃⼰責任
開発者が保証
(消費者保護の理念)
ミスによるリスク
管理情報漏えいなど
個⼈情報漏えいなど
失⽕、病変、事故、個⼈情
報漏えい、盗撮・盗聴、、
関連法
個⼈情報保護法、
著作権法、
業務ごとに各種法的制約
個⼈情報保護法、
著作権法
個⼈情報保護法、著作権
法、電気⽤品安全法、薬事
法、電波法、PL法、、、
OSSの利点:改造内容の相互開示による高速進化、デファクト化の進展、
シェアドコスト
OSSの懸念:IoTでは、改造ミスによる消費者不利益と消費者保護の理念の矛盾が
懸念され、万一の場合に誰が責任を負うべきか不明瞭
懸念事項を意識したルールづくりの下、新しい文化の創造を行うことに努力すべき
パナソニックの経営理念