米潮流から見る注目キーワード

数年後の SP 手法をガラリと変える!?
米潮流から見る注目キーワード
数々のグローバル企業で新規マーケット参入・商品開発の経験を持ち、現在は複
数の大手企業のアドバイザーを担う射場瞬氏が、アメリカでの調査をもとに、日
本の販促担当者が知っておくべき SP 分野のキーワードを解説します。
No.04
MCX(Merchant Customer Exchange)
2012 年、米国の大手小売事業者が共同で立ち上げたジョイントベンチャー。GMS のウ
ォルマート、家電量販店のベスト・バイ、コンビニのセブン-イレブンなど、リーディングカ
ンパニーが参加し、独自のモバイル決済サービスを開発している。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<解説者>
IBA カンパニー 代表取締役
射場 瞬
氏
いば・ひとみ/日本コカ・コーラ副社長、アメリカン・エキスプレス・カンパニー U S 本社
ディレクターなどを経て独立。約 20 年間の米国などでの最前線の実務経験と人脈を活か
し、データドリブンマーケティングの領域を中心にコンサルティングを手がける。
<聞き手>
プロモーション業務を担当して 5 年目
販促太郎
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------太郎:米国でジョイントベンチャー「MCX」に注目が集まっているそうですが、どんな組
織ですか?
射場:モバイル決済の共通プラットフォームを作り、消費者のショッピング体験を向上させ
ることを目的として設立された、米・小売大手 62 社(2015 年 1 月時点)が参加す
る独立した企業です。MCX が開発中のプラットフォームはテスト段階で、まだ最終
的な仕様や導入のタイミングは発表されていません。参加社の年間総売り上げを合
算すると、1 兆ドル (約 120 兆円 2015 年 1 月 5 日時点)を超える規模で、GMS、
スーパー、ドラッグ、コンビニ、アパレル、飲食、ガソリンスタンド、航空会社など
多様な業界のチェーンを含みます。
太郎:MCX に参加する企業には、どんなメリットがあるのでしょうか。
射場:参加企業のメリットは、大きく三つ。一つ目はシステム開発の効率化。各企業が独自
にモバイル決済やデータ分析に投資する必要がなく、常に最新のプラットフォーム
を使えます。二つ目は効率的なデータ収集と分析。MCX のプラットフォームを利用
し、消費者の属性と購買履歴データを効率的に収集、分析できます。三つ目は効果的
なマーケティングの実行。データ分析結果を元に、消費者の属性や購買パターンとニ
ーズにあわせたカスタマイズオファー(割引クーポンなど)を効率的に配布できます。
太郎:MCX のサービスが正式にスタートすると、生活者の行動はどう変わるのでしょう?
射場:参加企業のメリットは、大きく三つ。一つ目はシステム開発の効率化。各企業が独自
にモバイル決済やデータ分析に投資する必要がなく、常に最新のプラットフォーム
を使えます。二つ目は効率的なデータ収集と分析。MCX のプラットフォームを利用
し、消費者の属性と購買履歴データを効率的に収集、分析できます。三つ目は効果的
なマーケティングの実行。データ分析結果を元に、消費者の属性や購買パターンとニ
ーズにあわせたカスタマイズオファー(割引クーポンなど)を効率的に配布できます。
太郎:MCX のサービスが正式にスタートすると、生活者の行動はどう変わるのでしょう?
射場:MCX は、消費者向けに CurrentC というスマホ向け決済アプリを提供予定です。こ
のアプリは、クレジットカード類の決済情報を登録すれば、スマホ画面に表示した
QR コードを使って支払いできるため、消費者にとって財布を持ち歩かないスムーズ
なショッピング体験がより一般的になるでしょう。また CurrentC は、消費者が日常
に行く店舗の多くで利用できる予定なので、CurrentC さえ利用すれば、チェーン毎
のアプリは不要で、その便利さから新たにスマホでの支払いを行う消費者が増加す
ると予測できます。さらに CurrentC は各チェーンのポイントプログラムと統合で
きるとされており、それぞれのポイントカードを携帯しないでも、自動的にポイント
が収集・利用できたりと、便利になるでしょう。米国では CurrentC と Apple Pay が
2 大モバイル決済方法として、競い合いながら急速に消費者行動を変化させると見ら
れています。今後「その店で利用できるモバイル決済方法は何か」が、消費者にとっ
て、店選びの重要な判断基準になるかもしれません。
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既存のポイントプログラムとも連携新モバイル決済サービス
MCX とは、2012 年に独自のモバイル決済サービスを開発するために設立された、米国
の大手小売事業者 62 社(15 年 1 月時点)が参加するジョイントベンチャーです。大型 GMS
のウォルマートやディスカウントストアのターゲットをはじめ、家電量販店のベスト・バイ、
コンビニのセブン-イレブンや専門店の GAP など、各リテール業界のリーディングプレイ
ヤーが参加しているため、その影響力の強さから今後の動向が注目されています。
MCX が開発中のサービスの詳細と開始時期は未定ですが、
「CurrentC」というスマホ向
け決済アプリを提供すると発表しています。このアプリでは、最初にクレジットカードや銀
行口座などの情報を登録すれば、スマホ上に表示された QR コードで支払いを済ませるこ
とができるとされています。またアプリの一般提供開始時点から、さまざまなチェーンのポ
イントプログラムと統合したサービスを提供予定のため、支払い時にそれぞれのポイント
やクーポンを余分な手間なく利用することができるようになると言われています。
現在米国では、14 年 10 月からアップルによる、iPhone6 など最新機種を利用した決済方
法 Apple Pay が導入されており、CurrentC との市場競争に早くも注目が集まっています。
顧客情報を一切入手・保管・利用しないとしている Apple Pay に対し、CurrentC の利用
チェーンは、消費者の属性と店頭での購買履歴データを収集・分析できるので、高価値なマ
ーケティングや広告配信が可能になります。また消費者自身には、情報を提供するかどうか
を選択できるという配慮もされる予定です。さらに現時点では Apple Pay は各種ポイント
プログラムなどと連携されていませんが、CurrentC は、こうしたマーケティング機能との
統合が導入時から予定されています。支払いに QR コードを利用するシステムに関しては、
ワンタッチで決済が可能な Apple Pay に比べ、アプリを起動し、QR コードを読み取らせる
という手間がある一方、 Apple Pay のように最新 iPhone などの購入の必要がないため、
多くの人が気軽に始められるというメリットもあります。
今後、消費者と業界が、Apple Pay と CurrentC のどちらの決済方法を受け入れるか、そ
の攻防から目が離せません。
米国で成功した新しいモバイル決済方法は、世界のスタンダードとなり日本に上陸し、日
本国内の既存決済方法と競合する日も遠くはないかもしれません。今から注目しておきた
いですね。
Current C(カレントシー)
MCX が 2015 年に提供予定の iOS および Android のアプリ。QR コードによりモバイ
ル決済が可能。消費者がクレジット/デビットカードや銀行口座などの情報を登録し、スマ
ホで支払いができると同時に、既存ポイントプログラムと連携したクーポンなどが使用で
きる仕様になると発表されている。
競合するモバイル決済アプリとして、アップルの Apple Pay が挙げられる。CurrentC は
Apple Pay とは異なり、提携する企業が、自社の消費者の購買情報を収集することができ
る。
Apple Pay(アップルペイ)
2014 年 10 月からアメリカで導入されたアップルの新しい決済機能。
Apple Pay 機能のついた iPhone6、iPhone6 Plus を NFC に対応する読み取り装置にか
ざし、
「Touch ID」機能で指紋認証をするだけで支払いができる。
Apple Pay へのクレジットカードなどの登録には、カードの写真を撮影するかカード情
報を入力し、Passbook アプリに登録するだけ。Apple Pay 機能は、15 年春に発売と見られ
ている Apple Watch にも搭載予定。