全中派遣報告書 - 長崎県バスケットボール協会審判委員会

大会派遣報告書
1.派遣大会名
平成27年度 全国中学校体育大会 第45回 全国中学校バスケットボール大会
2.派遣期間
平成27年8月21日(金)∼25日(火)
3.派遣者
松永 雄平(佐世保)
4.日程
21日(金) 移動 佐世保∼長崎空港∼東京国際空港(羽田)∼東京駅∼一関
22日(土) レクチャー(田邊真由美氏)
審判会議(ホテルサンルート一関)
審判レセプション(ホテルサンルート一関)
23日(日) 大会初日 予選リーグ(一関市総合体育館)
24日(月) 大会2日目 決勝トーナメント1日目(一関市総合体育館)
25日(火) 大会最終日 準決勝・決勝(一関市総合体育館)
移動 一関∼仙台空港∼福岡空港∼博多駅∼佐世保
5.研修内容
(レクチャー)
27日(金) レクチャー(田邊真由美氏)
「これからの日本を考える∼ジュニア期を相手にする者として∼」
日本のバスケットボール界の現状
・FIBAの国際資格停止処分の解除(8月9日)を受けて、日本のバスケットボールがど
うあるべきか、考えて実行しなければならない。
・現在の日本のFIBAランキング 男子:47位 女子:15位
・「JAPAN 2024 TASKFORCE」3つの課題
①男子2リーグの統合
②JBAのガバナンス強化
③日本代表の強化体制確立
この中でも、日本代表の強化体制確立については、ジュニア期から時間をかけて行う
べき大きな課題である。
○ジュニア期の現状
・ミニバスケットボール選手 140,000人 中学生選手 200,000人
・有能な選手の発掘のために…(有能な選手が埋もれている可能性がある) → JBAタレント発掘事業(中学校連盟の強化担当が各ブロックを回っている)
・各年代において、年齢層が幅広いことが問題視されている。
○(強化のための)ジュニア期におけるゾーンディフェンス禁止
・マンツーマンに対する経験の欠如(1対1が弱い)
・FIBA MINIBASKETBALL RULES への準拠 → ミニバスケットボール
・強化のツールとして15歳以下ではゾーンディフェンス禁止
・マンツーマンディフェンスのルールブックを解説DVD付きで製作
→ねらいは、「『個』のスキルを高める」「指導力をあげる」
※ジュニア期では、スキルやコーディネーション能力を磨き、次のステップに上げ
ることが必要とされる。勝つことだけに焦点を合わせるべきではない。
○女子日本代表 内海 知秀 監督 のWJBLサマーキャンプでの講話より
・世界的に見て、トラベリングの判定は、アドヴァンテージ・ディスアドヴァンテー
ジはない。国内での判定は甘く感じる。ぜひジュニア期で徹底して直して欲しい。
(「技術」は「ルール」の上に成り立っている。)
→ディフェンスが離れているかどうかや、バスケットに向かってペネトレイトして
いるかということは、トラベリングの判定には関係ない。
□ゾーンディフェンス禁止
資料: http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/sites/14/2015/08/
U15mandf_20150812.pdf
試作版動画: https://m.youtube.com/watch?v=EsHNX2V2smg
(参照:第2回 JAPAN 2024 TASKFORCE 議事録 トーステン・ロイブル氏のプレ
ゼンテーション http://www.japan2024.jp/pdf/taskforce_20150319.pdf )
6.研修内容
(実戦)
23日(日) 本戦(予選リーグ)
会場:一関市総合体育館
男子 久米(愛媛県) 対 打出(滋賀県)
主審 金子 智則 氏(群馬県・日本公認)
副審 松永 雄平(長崎県・日本公認)
審判主任 藤代 透 氏(東京都・A級)
トラベリングの基準について、プレゲームカンファレンスで話をしてゲームに入っ
た。第1ピリオドにトラベリングとファウルの基準を示したが、少し軽いのではない
かという印象を持っていたこともあり、第2ピリオドでは基準にブレが出てきてしま
った。後半は要所で判定できた場面もあり、ゲームは両チームの協力のもと、スムー
ズに終了した。
□これからの課題
・プレスディフェンスへの対応
→相手審判との距離感を維持し、アイコンタクトをとりながら臨機応変に対応
する。ポケットを作らない。
・判定の公平性と一貫性
→片方のチームに判定したことと同じような現象は、もう一方のチームにも同じよ
うに判定した。ただし、一貫性については疑問が残るところがある。ゲームの最
初から最後まで一貫した判定を心がける。
・反則となる事象が起こりにくいゲームの中での工夫
→笛でゲームが止まることが少ないゲームの中では、吹いたものがクローズアップ
されやすい。準備を怠ることなく、集中力を切らすことなく、ゲームを進行させ
る。変に審判が目立ってはいけない。
24日(月) 本戦(決勝トーナメント)
会場:一関市総合体育館
女子 明陵(山口県) 対 藤浪(愛知県)
主審 武藤 陽子 氏( 城県・A級)
副審 松永 雄平(長崎県・日本公認)
審判主任 森田 将史 氏(長崎県・A級)
及川 学 氏(岩手県・A級)
激しいプレーやスピードのあるプレーが予想されたので、その心構えを持ってゲーム
に入った。第1ピリオドの初めに、悪い手の使い方についての基準を示すことができ
た。第1ピリオドの終わりあたりから、ポストプレーが激しくなりはじめ、判定でき
たものとできないものがあった。ベンチや観客席もアピールがある場面があったが、
最後まで正しく判定しようと取り組み、協力していただきゲームをつくることができ
た。非常にタフなゲームであったが、考えに一貫性をもってプレーを見ることで、非
常に良い経験になった。
□これからの課題
・プレーの始めから終わりまでを見ることができる位置取り
→特に、激しいポストプレーの駆け引きの部分について、一番始めの駆
け引きを捉えることができず、判定できない、もしくは判定が遅れて
しまう場面があった。試合の中で位置どりと視野を修正することで判
定につなげたが、最初からできるようにする。
・プレゼンテーション
→手の上げ方、大きく見せるためのプレゼンテーションなど、もっと研
究する必要がある。
・トラベリング
→トラベリングにアドヴァンテージ、ディスアドヴァンテージはない。
ルール通りに判定すること。
7.所感
今回、佐世保市中体、長崎県中総体、九州中学、全中と、予選から全国大会まで全
て審判として関わり、中学生のバスケットボールに関して深く考えることができまし
た。審判としては、もっと正しい判定を求めていくことが必要だと思います。正しい
判定をするためには、正しい知識と理解、そしてこれに基づいた経験が必要です。
「多くの人がこう思っているから正解である」ということではなく、根拠(evidence)
をもっておく必要があります。判定の根拠はルールブックです。
「審判は、正しくルールを理解して判定をする」
「指導者は、正しくルールを理解して指導する」
「プレイヤーは、正しくルールを理解してプレーする」
「観衆は、正しくルールを理解して声援をおくる」
バスケットボールは、この四方向からの努力が必要であると、競技規則のまえがき
には書いてあります。そして、この四者でよりよいゲームを作るためには、審判とし
てルール+αの部分が必要であり、ルールだけで納得するゲームを作ることはできま
せん。
4つの大会を経験し、特に、自分が認識を改めないといけないと思ったのは、「シ
リンダーの概念」と「トラベリング」です。誤った判定をすることは、生徒に誤った
理解を与え、ゲームの結果や、そのプレイヤーの将来性にも影響を与えかねません。
中学生に指導をする我々は、もっと正しいことを追求しなければならないと思いま
す。今後、ジュニア期のバスケットボールは、ゾーンディフェンスの禁止をはじめと
して、さらなる発展のための新しい方向に向かっています。正しいルールの解釈と技
術の追求のためには、主体的、積極的に求めていく姿勢(proactive)が必要です。現
在は情報をインターネットでたくさん得ることができるし、動画サイトで試合を見る
こともできます。何についても、受け身の姿勢ではなく、自ら情報を得て自分のもの
にしようとすることが、成長につながることだと思います。審判活動だけでなく、仕
事の中でもこの姿勢を持ち続けたいです。
最後になりましたが、今回お世話になりました日本バスケットボール協会、岩手県
の中体連・バスケットボール協会の皆様、派遣いただいた長崎県バスケットボール協
会審判委員会の皆様をはじめ、関係の皆様に厚く御礼を申し上げ、お礼の言葉とさせ
ていただきます。本当にありがとうございました。