追悼文:日本におけるアーユルヴェーダの基礎を築いた豪傑を偲ぶ 日本

追悼文:日本におけるアーユルヴェーダの基礎を築いた豪傑を偲ぶ
日本アーユルヴェーダ学会 理事
富山大学和漢医薬学総合研究所・未病研究部門 客員教授
日本アーユルヴェーダ協会 理事長代理
上馬塲 和夫
幡井先生は、アーユルヴェーダ研究会の最初の構成メンバーとして、日本におけるアー
ユルヴェーダの普及に一番長く、且つ最も深く尽力されてきた人物である。アーユルヴェ
ーダ研究会をたちあげられた丸山博先生は、あまりにも有名であるが、幡井先生もアーユ
ルヴェーダの普及に、本当に私財をなげうって一生をささげられていた。
東邦大学名誉教授として、東洋伝承医学研究所(現・内閣府認証 NPO 法人日本アーユル
ヴェーダ研究所:宇住晃司理事長)とハタイクリニックを起ちあげられたが、その活動は、
アーユルヴェーダの普及のための教育と研究、さらには臨床にまで及ぶだけでなく、組織
療法や漢方医学、鍼灸なども取り入れて、まさに最近知られてきた「統合医療」を早くか
ら実践されておられたのは、先見の明のある医師であることを示している。まだ志半ばで
あったが、その過程過程で、無私の心で打ち込んでおられる姿は、本当に神々しいもので
あった。私自身が、このようにアーユルヴェーダの世界で活躍できるのも、幡井先生のお
かげでボストンのパンチャカルマセンターにご一緒させていただけたり(アルソア化粧品
の援助)、学位を岸清先生に依頼していただけたからである。また、ハタイクリニックや東
洋伝承医学研究所のスタッフが、毎年海外研修にでかけることができたのも、幡井先生の
無私の経済的支援があったからと聞いている。また私生活でも奥様の身を安じられ、亡く
なる2か月前まで、奥様が若い時に行きたいといっておられたマレーシアの動物園を見学
する予定を立てておられた。さらには、医学部に献体されるなど、人間的に本当に優しい
豪傑であった。
そのご遺志は、我々日本アーユルヴェーダ学会の会員や、日本ヨーガ療法学会の木村先
生達によって受け継がれているが、アカデミックであるべきアーユルヴェーダ学会を、経
済的・社会的な側面から補助する当日本アーユルヴェーダ協会も、幡井先生の亡きあと、
できるだけ正しくアーユルヴェーダを日本に普及させるべく使命に燃えている。
幡井先生の最後まで矍鑠として凛とした姿は、驚嘆に値するものであり、私自身にとっ
て人生の手本となっている。非常に優秀な幡井先生の活動は、そのため多岐にわたってお
り、残る我々が、すべて請け負うことができないほどである。そういう意味で、当日本ア
ーユルヴェーダ協会は、同じく幡井先生が創設された NPO 日本アーユルヴェーダ研究所
(旧東洋伝承医学研究所)とも共同で、幡井先生の崇高なご遺志の実現に向けて尽力させ
ていただく所存である。
幡井先生、天国からも変わらず、我々のご指導ご鞭撻の程宜しくお願いもうしあげます。