INFORM - ジュンク堂

世界の本屋さん
vol.47
オーストラリア・メルボルン
スポーツブックス
フットボール、サッカー、ベースボール、
クリケット、バスケットの書籍が並べら
れている。雑誌は一切ない。
二階はアスレティック、ゴルフ、サイ
クリング、モーターサイクリング、サー
フィン、ネットボール、モーターレーシ
ング、栄養摂取、ウェイトトレーニング、
水泳、ボクシング、競馬、体操、オース
トラリアンスポーツ、ラグビー、テニス、
スポーツ心理学、体育、健康、スポーツ
傷 害、 ボ デ ィ ビ ル、 ア ウ ト ド ア、 漕 艇、
等が陳列されていた。
オーストラリアは英語圏なので、この
書店で売られている書籍はすべて英書で
あった。日本語の本はないかと社長に尋
ねたら、ないと言われた。中華街に行っ
たら、あるかもしれないと付け加えてく
れた。社長はこの店を趣味でやっている
と謙遜していた。
ノセ事務所
能勢
仁
オーストラリアはスポーツ大国であ
る。 ロ ン ド ン オ リ ン ピ ッ ク で は 合 計
三十五ヶものメダルを獲得している。そ
のことを反映してか、スポーツ書専門店
のスポーツブックスがあった。社長自身
も 万 能 選 手 で、 各 種 ス ポ ー ツ の 委 員 を
やっているので忙しそうである。
フランダース通りを北に行き、エキシ
ビジョン通りと交差する手前にこの店は
ある。スポーツ書以外は全くない。これ
で営業が成立するのは流石スポーツ王国
だと思った。
店中央に階段があり、二階売場が下か
ら見える。階段も手すりも木製、コテー
ジ風の書店で、創業は一九九〇年である。
スポーツの各種目に分けられた棚は圧巻
である。一階は十二坪、二階は回廊式売
場で四∼五坪くらいか。
一 階 に は フ ッ ト ボ ー ル、 ア メ リ カ ン
(表紙題字・陳舜臣)
11 月
冬 に な り て、 日 ぐ ら し 雨 降 り 暮 ら い
た る 夜、 く も か へ る 風 は げ し う う ち ふ
き て、 空 晴 れ て 月 い み じ う あ か う な り
て、軒近き荻のいみじく風に吹かれて、
世界の本屋さん
月
著書を語る
○ ﹁歪で危ういデビュー作﹂
﹁書標﹂歳時記
1
呉
勝浩
2
書標・書評
﹃つちたち﹄ほか
学
科
特集
人工知能は怖くない
然
科
学
会
童
地 図 ・ 旅 行 書
児
書
芸
社
文 学 ・ 文 芸
18
今月のおすすめ
書
学
術
自
﹁ゆるし﹂の本たち
学
科
コ ン ピ ュ ー タ
文
書
20
碎けまどふが、いとあはれにて、
秋をいかに思ひ出づらむ冬深み嵐に
医
人
用
文 庫 ・ 新 書
実
読者から
語 学 ・ 辞 典
23
26
※表示価格はすべて本体価格です。
泥酔につき﹂
本屋うらばなし
﹁その男、
インフォメーション
25
28
29
まどふ荻の枯葉は
4
19
24
30
﹃更科日記﹄西下経一校注
︵岩波書店︶より
6
17
22
26
27
−1−
11 47
11
523
著書を語る
○
︱︱
﹁歪で危ういデビュー作﹂
第 六 十 一 回 江 戸 川 乱 歩 賞 に 選 ん で い た だ い た﹃ 道 徳
の時間﹄は、私の七本目の長編小説です。
昨 年、 六 本 目 の 長 編 が 同 賞 の 最 終 候 補 に 残 る こ と が
呉
勝浩
三 十 路 も 超 え、 さ す が に 焦 り も あ り ま し た。 じ ゃ あ
ろうか⋮⋮。
小 説 を 諦 め た と し て、 他 に や り た い こ と が あ る か と い
人 生 を 賭 け た 勝 負 作 と し て 応 募 し た の が﹃ 道 徳 の 時
うと、ほとんどない。これはなかなか恐怖です。
間﹄。自分で言うのもなんですが、かなり危なっかしい
でき、そしてあえなく落選、その悔しさをモチベーショ
ン に 一 ヵ 月 ほ ど で 初 稿 を 書 き 上 げ ま し た。 応 募 原 稿 の
そ し て 受 賞 と な っ た の で す が、 ま あ、 な か な か 波 乱
いただき、心底ほっとしたのを覚えています。
は あ り ま し た。 な の で 最 終 候 補 に 残 っ た と い う 連 絡 を
作 品 で す。 の る か そ る か。 応 募 当 時 か ら そ う い う 不 安
完成までにはトータルで四ヵ月ほどは費やしたと思い
ます。
落 選 の 悔 し さ ︱︱ と 書 き ま し た が、 実 は 大 き な 落 胆
は あ り ま せ ん で し た。 何 せ 七 年 の 投 稿 生 活 で、 ほ と ん
万 丈、 ま っ た く 喜 ぶ 間 も な く 刊 行 ま で 突 き 進 む こ と に
どチャンスらしいチャンスを掴むこともできずにいた
の で、 最 終 候 補、 そ れ も 江 戸 川 乱 歩 賞 と な れ ば む し ろ
な る な ん て、 受 賞 を 夢 見 て い た だ け の 自 分 に は 想 像 も
た そ う で す。 単 行 本 の 巻 末 に 選 評 が 掲 載 さ れ て い ま す
選 考 会 は 大 荒 れ も 大 荒 れ。 長 時 間 に 及 ぶ 議 論 と な っ
つかない展開でした。
ここまでこれて光栄だと、そう思っていたのです。
し か し、 次 が 勝 負 だ な、 と い う 危 機 感 は 強 く 感 じ て
き、 最 後 の 壁 を 乗 り 越 え る こ と が で き る の か。 乗 り 越
の で ぜ ひ 読 ん で み て 下 さ い。 ち ょ っ と び っ く り す る か
い ま し た。 よ う や く デ ビ ュ ー の 一 歩 手 前 ま で た ど り 着
え ら れ な か っ た 時、 自 分 は 果 た し て 次 も 頑 張 れ る の だ
−2−
523
実 は こ の 時 も、 私 は そ れ ほ ど 落 胆 し ま せ ん で し た。
れ て し ま っ て い る か ら な の で し ょ う。 何 せ、 私 が 夢 中
自 身 が﹁ な ん じ ゃ こ り ゃ あ ﹂ と い う 感 覚 に、 強 く 魅 か
こ れ は 私 の 未 熟 さ の せ い ば か り で は な く、 き っ と 私
む し ろ 友 人 た ち が 肩 を 落 と し て い る の を み て﹁ シ ョ ッ
で 読 ん で き た の は 新 本 格 に 始 ま り、 初 期 の メ フ ィ ス ト
もしれません。
ク を 受 け て る ふ り を し た ほ う が い い の か し ら?﹂ と さ
賞 作 品、 お ま け に﹃ ア ク ロ イ ド 殺 し ﹄ の 驚 き が 原 体 験
刊 行 に 向 け た 改 稿 作 業 の 最 中、 悩 む 私 に﹁ ど っ ち に
なのですから。
この好悪がはっきりと別れた選評が嬉しかったのです。
したって問題作なんだからさ﹂とよくわからない励ま
も ち ろ ん 半 分 は 強 が り で す が、 正 直 な と こ ろ、 私 は
え思いました。
﹃ 道 徳 の 時 間 ﹄ と い う 作 品 に ふ さ わ し い と 思 い ま し た。
り、 肚 を 括 る こ と が で き ま し た。 私 は、 私 で し か あ り
し を く れ た 方 が い ま す。 あ の 言 葉 で だ い ぶ 心 が 楽 に な
デ ビ ュ ー 作 に は 作 家 の す べ て が 詰 ま っ て い る ︱︱ と
さ は 私 の 危 う さ で す。 そ れ を 私 は 今、 ち ょ っ と だ け 誇
こ の 小 説 の 歪 さ は 私 の 歪 さ で あ り、 こ の 小 説 の 危 う
−3−
深く反省もしましたけれど。
さ に そ う で す。 文 章 の 技 術 や 小 説 作 法 上 の 問 題 は と も
らしく思っています。
得ないんだ、と。
かく、﹁呉勝浩﹂という人間の、この社会にどうにかし
いうのはよく言われることですが、﹃道徳の時間﹄もま
て自分の居場所を獲得してやろうというがむしゃらな
意 志 が 随 所 に 溢 れ て い る 気 が し て、 恥 ず か し く な る ほ
ど で す。 お そ ら く 選 考 の 先 生 方 も、 最 終 的 に は よ く わ
か ら な い こ の 熱 量 を 評 価 し て く れ た ん じ ゃ な い か な、
と今では思っています。
﹃道徳の時間﹄は決して口当たりの良い、きれいにま
と ま っ た 作 品 で は あ り ま せ ん。 推 理 小 説 と し て は、 む
し ろ 歪 で、 危 う い。 読 み 終 え て﹁ な ん じ ゃ こ り ゃ あ ﹂
となる方も多いと思います。
『道徳の時間』
講談社・1,600 円
十八回日本絵本賞大賞、
﹃てつぞうはね﹄で
デビュー作の﹃オオカミがとぶひ﹄で第
な彼の仕事である。最盛期には週に七本の
まつ座﹂の楽曲もアニメ﹁一休さん﹂も﹁ア
童謡﹁アイアイ﹂を作曲したのも、劇団﹁こ
番 組 と 七 本 の 帯 番 組 を 担 当 し て い た と か、
ンデルセン物語﹂も﹁ムーミン﹂も、みん
フィルムや絵コンテからキャラの動きを秒
第四十五回講談社出版文化賞絵本賞、
﹃ぼく
回小学館児童出版文化賞を、﹃オレときいろ﹄
単位で計算してから作曲するとか、時には
のふとんはうみでできている﹄で第六十三
はブラティスラヴァ世界絵本原画ビエン
台本にも介入するとか、逸話も多い方であ
﹃つちたち﹄
ミロコマチコ、待望の最新作。
ナーレで、準大賞にあたる金のりんご賞を
る。しかもアシスタントをつけずに半世紀
学研教育出版・一四〇〇円
本作の主人公は﹁土﹂である。土くれと
受賞と、国内外の絵本賞を次々と獲得。飛
ミロコマチコ著
はいえ、黒や茶色に金色と、土にも色々あ
ぶ鳥を落とす勢いで読者を魅了し続けてい
して﹁ドラマ読み﹂と言わしめ、大勢の関
優山田康雄は﹁鬼﹂と呼んだ。熊倉一雄を
遅筆堂井上ひさしが﹁先生﹂と呼び、声
露出を好まなかった氏の、音楽への思いを
の記述を集めたものである。メディアへの
以上が生前のインタビューや自作について
四四八頁という大ボリュームのうち、半分
流通に乗り店頭に並ぶ運びとなった。函入
出た追悼本であるが、この度めでたく一般
本書は直販のみの限定私家版として世に
ら、並みの人に成せる業ではない。
以上全て独りで作曲していたというのだか
るミロコ劇場を、とくと体感せよ。
︵さ︶
るのである。彼らは地表に近いときはおひ
﹃宇野誠一郎の世界﹄
さまの光を一心に浴び、木の根っこあたり
だとひんやりしてうっとりするほど気持ち
いいらしい。土のなかには、お仲間のミミ
大変化︵ ! ︶が訪れる。どうなる、土たち。
係 者 が﹁ 天 才 ﹂ と 認 め る 宇 野 誠 一 郎 は
888ブックス・五〇〇〇円
予想もつかない展開に驚く読者を尻目
二〇一一年に彼岸の人となった。彼の作品
濱田髙志編
に、見たことの無い視点のアングルから一
知ることができる興味深い良書だった。
ズがにゅるにゅるにゅるにゅると土たちを
気に畳み掛ける力技。筆者は思わず声が出
の多くは日本人の殆どが知っている筈なの
押しのける。そんな平穏な日々に、惑星の
た。数々の点描とダイナミックな線画の迫
だ が こ の 名 前 だ け で﹁ あ の 人 か ! ﹂ と 判
し。黄色を主体にしたカラフルな彩色に目
回の放送で五年も続いた﹁ひょっこりひょ
番﹂にアレンジしたのは彼である。週に五
明堂のCMソング﹁カステラ一番電話は二
新評論
二〇〇〇円
二 〇 一 三 年 一 月 十 六 日、 ア ル ジ ェ リ ア、
桃井治郎著
﹃アルジェリア人質事件の深層﹄
ばしい。補遺編の刊行も心待ちだ。 ︵煮︶
いう形態でアーカイブされたのはとても喜
偉大な作曲家の多大な功績が﹁書籍﹂と
力に圧倒される。ずだだん、ずだだん、ばっ
る人は多くないかもしれない。
を見張り、オリジナリティあふれるデフォ
う た ん 島 ﹂ の 劇 中 歌 を 毎 回 作 曲 し た の も、
オペレッタ﹁天国と地獄﹂を編曲し、文
さばっさ、どんどこどん。地の文の力強い
ルメされた動物たちの雄姿とその背景の細
リズムに高揚感がほとばしること間違いな
部を、もう一度読み返したくなるのだ。
−4−
連 続 ホ ー ム ラ ン。 日 航 機 の 墜 落 事 故 で 当 時
バース、掛布、岡田のバックスクリーン三
の球団社長が亡くなる。そしてセントラル
が交差する﹁今﹂に、この事件を定位して
リーグで二十一年ぶり優勝し、日本シリー
イナメナスのガスプラントが武装集団に襲
最も望むらくは、事件の再発の防止であ
ズでは西武ライオンズを破り、初めての日
いく。
ろう。そのために著者が参照するのが、あ
本一になる。激動の一年だった一九八五年、
撃され、何十人もの外国人スタッフが人質
ルジェリア軍は掃討作戦を敢行、武装集団
らゆる暴力の正当化=﹁正義﹂化を拒否す
として拘束された。三日間の攻防の末、ア
の壊滅︵二十九名死亡、三名拘束︶に成功
われるような暗黒時代を迎えてしまったの
か? そして何故、その後﹁ダメ虎﹂と言
阪神タイガースは何故日本一になれたの
何 よ り 重 要 な の は、﹁ テ ロ ﹂ を 発 生 さ せ
か? あの年の阪神タイガースは何があっ
るアルベール・カミュの﹁反抗﹂の思想で
る環境を、テロリズムを生むあらゆる暴力
たのか?
ある。ぼくは、大いに共感する。
ぼくは、この事件が、﹁ジャスミン革命﹂
主義を、なくしていくことである。それこ
するも、人質のうち、日本人十人を含む十ヵ
から﹁イスラム国﹂へと至る中東︱北アフ
そ真の﹁テロとの戦い﹂なのだ。
国四十人が犠牲となった。
リカの出来事の連鎖の中で、特に重要な事
三十年経過した二〇一五年に、当時監督
だった吉田義男をはじめ、掛布、岡田、バー
時空間座標の中で位置づけることが必要で
されない昨今だが、自分が子どもの頃はプ
文藝春秋 Number PLUS
・一五〇〇円
プロ野球中継が地上波放送であまり放映
マがあった。一九八五年一年だけでは、こ
いがあり、様々な葛藤があり、様々なドラ
読むと、当時では知りえなかった様々な思
一九八五年の阪神タイガースは、この本を
︵フ︶
ス、川藤など当時の選手、コーチ、関係者
のインタビューを交えながらあの輝いた
ある。著者は、アルジェリア内外の新聞報
ロ野球中継が盛んだった。初めてプロ野球
のチームは成り立たなかった。一九八五年
子ども心に強いなぁと思っていた
一九八五年の阪神タイガースを振り返る。
道から事件を時系列で整理し、アルジェリ
中継を見たのは、阪神タイガースにバース
鷲田
康著
﹃1985
猛虎がひとつになった年﹄
件の一つだと思った。だが、事件直後こそ
衝撃とテロへの怒りに満ちた報道で溢れて
い た も の の、 詳 し い 続 報 や 検 証 は 続 か な
かった。約二年後に刊行された本書は、待
望久しいものである。
事件の真相︱深層を知るには、正確で詳
ア政府並びに日本を含む諸外国の対応を検
がいた頃だ。
細な経緯とともにその背景を知り、事件を
証した上で、オスマン帝国領時代からフラ
現在に至るアルジェリア近現代史を俯瞰
の監督になり、記憶に残る甲子園球場での
神タイガースと言えば、吉田義男が二度目
になった年、一九八五年。一九八五年の阪
阪神タイガースの球団史上、唯一日本一
あった。
史の中で一番輝いていた一ページがそこに
チームができたのだ。阪神タイガースの歴
以 前 の 歴 史 が 土 台 と な り、 日 本 一 に な る
ンス植民地、独立、軍事独裁、内戦を経て
し、石油、天然ガス資源に依存するアルジェ
︵鈴︶
リアの経済状況とグローバル・テロリズム
−5−
人工知能は人類の敵か
ジェイムズ・バラット、水谷淳訳﹃人工
今月の﹁愛書家の楽園﹂は﹁人工知能
は怖くない﹂です。
イヤモンド社・二〇〇〇円︶
創 業 者 ビ ル・ ゲ イ ツ な ど が、﹁ 人 工 知 能
名なホーキング博士や、マイクロソフト
というのは、車椅子の科学者として有
人工知能まわりがかまびすしいのです。
な ど で も お な じ み で す が、 ど う も 最 近、
確立したと言われています。爾来、SF
を見るような面白さ。
つぎと登場し、まさにドキュメンタリー
検証。カーツワイルなど重要人物がつぎ
べき未来の可能性をさまざまな局面から
めに人類を絶滅に追いやる、という恐る
間の知能を上回り、自らの目的達成のた
プロデューサー。AIが自己進化して人
かけとなった一冊。著者はフリーのTV
出版界の人工知能ブーム︵?︶のきっ
知能︱︱人類最悪にして最後の発明﹄︵ダ
人 工 知 能︵ Artificial Intelligence・AI
︶
ということばは、一九五六年の﹁ダート
は人類にとって最大の脅威である﹂と
マス会議﹂で命名され、研究分野として
言っているようなのです。いったい人工
端的に言えば、近年の人工知能研究の
か︱︱ディープラーニングの先にあるも
松 尾 豊﹃ 人 工 知 能 は 人 間 を 超 え る
知能に何が起こっているのでしょうか?
進展がすさまじく、このままいけば人間
日本トップクラスの人工知能研究者に
の﹄︵角川EPUB選書・一四〇〇円︶
よる一般向け解説書。シンギュラリティ
の知能を追い越すかもしれないらしいの
問 題 を マ ク ラ に、 過 去 二 回 の 人 工 知 能
です。そして追い越したとき、人工知能
は人類に背き、破滅に追いやるかもしれ
本を選んでみました。これらの本を読め
そこで、人工知能に関するいろいろな
ングを解説している。
とその先を行く最新技術ディープラーニ
ブームを牽引することになった機械学習
れ の ポ イ ン ト を 解 説 し た の ち、 第 三 次
だと言う。第一次、第二次ブームそれぞ
ブームを振り返り、現在は第三のブーム
ない⋮⋮というのです。
まるでアシモフのロボット三原則みた
ば、あなたはもう人工知能が怖くなくな
いな話ですが、本当なのでしょうか?
るかもしれません⋮⋮いや?
−6−
レイ・カーツワイル、井上健監訳﹃ポス
﹃アルゴリズムが世界を支配する﹄︵角川
クリストファー・スタイナー、永峯涼訳
描き出す。
人類の知性を超えるとき﹄︵NHK出版・
ト・ヒューマン誕生︱︱コンピュータが
三〇〇〇円︶
ツ軍の暗号機械から取られているが
チューリングもまたエニグマ︵謎︶だと
いう含みがある。
アンドルー・ホッジス、土屋俊、土屋希
の﹁人工知能脅威論﹂によって再び脚光
を呼んだ本。二〇〇七年刊行だが、昨今
異点﹂を迎えるという主張で大きな反響
な進化によって、人類は二〇四五年に﹁特
社会インフラ、映画や音楽のヒット予測、
ネットはもちろん交通機関や通信などの
高 頻 度 取 引 の 技 術 に 使 わ れ、 イ ン タ ー
ウォールストリートのディーラーが扱う
た ア ル ゴ リ ズ ム が、 六 〇 年 代 末 以 降
古代から数学者たちの興味を引いてき
学 の 分 野 に お け る 業 績 を 評 価 し つ つ も、
論理学、暗号解読、人工知能や数理生物
ルー・ホッジスは、チューリングの数理
この上下巻に及ぶ大著を著したアンド
二七〇〇円︶
チューリング伝
EPUB選書・一六〇〇円︶
を浴びた。本書では﹁特異点﹂は人類が
スポーツや軍事の世界でも不可欠となっ
そこに留まらず、膨大な資料を繙きなが
AIなどのテクノロジーの指数関数的
踏み出す新たなバラ色の未来の一歩だ
らあくまでチューリングの内面に寄り添
発達する現在はセカンド・マシン・エイ
ジと呼ぶならば、コンピュータが急速に
まったものをファースト・マシン・エイ
蒸気機関の発明によって十八世紀に始
だったのか。本書はそれを知る上で決定
ン・チューリングとは、どのような人物
知能の夢へと至る道を切り拓いたアラ
ング伝
上﹄︵勁草書房・二七〇〇円︶
コンピュータの概念を理論化し、人工
和子訳﹃エニグマ︱︱アラン・チューリ
リングのさまざまな業績の解説、さらに
読、チューリング・テストなど、チュー
以外に、数理論理学、エニグマ暗号の解
の第一人者が著した伝記。伝記的な内容
﹃ チ ュ ー リ ン グ ︱︱ 情 報 時 代 の パ イ オ ニ
B・ジャック・コープランド、服部桂訳
してくる。
一貫したものが流れているような感じが
おうとする。多岐に渡る関心の底に何か
下 ﹄︵ 勁 草 書 房・
が、人工知能脅威論ではそれが反転して
た現在まで。人間はアルゴリズムの前に
和子、村上祐子訳﹃エニグマ︱︱アラン・
いるところが興味深い。
アラン・チューリングとは
何者か
ひれ伏すのか。
エ リ ッ ク・ ブ リ ニ ョ ル フ ソ ン、 ア ン ド
リュー・マカフィー、村井章子訳﹃ザ・
セカンド・マシン・エイジ﹄︵日経BP社・
ジである。産業革命期に機械化で労働者
版ともいえる伝記である。題名の﹁エニ
アンドルー・ホッジス、土屋俊、土屋希
が職を失ったように、人工知能の高度化
グマ﹂は、第二次世界大戦におけるドイ
二二〇〇円︶
は人間から仕事を奪うのか。人類と人工
生誕一〇〇年を機にチューリング研究
ア﹄︵NTT出版・二九〇〇円︶
知能の未来の関係を、経済学の視点から
−7−
リング自殺説については証拠を挙げて疑
の叙述を多く含み、勉強になる。チュー
時代背景、コンピュータ創世紀について
を提起する。
るものであるという、斬新なアプローチ
世界︵環境︶の相互作用から︿創発﹀す
中だけにあるものではなく、脳と身体と
﹁ 心 ﹂ が 宿 り、 私 た ち の 生 活 を よ り よ く
ることにも気づくことによって情報に
心だ。技術をただ使うだけではなくつく
が、それを恐れずに使いこなすことが肝
していけると述べる。
問を呈している。
ティム・クレイン、土屋賢二訳﹃心は機
クラーク・エリオット、高橋洋訳﹃脳は
すごい︱︱ある人工知能研究者の脳損傷
械で作れるか﹄︵勁草書房・四一〇〇円︶
人工知能と人間の脳
J ・フォン・ノイマン、柴田裕之訳﹃計
体験記﹄︵青土社・二四〇〇円︶
書いたフォン・ノイマンはすごい。チャー
者を架橋するこのような先駆的な論考を
な存在だが、コンピュータの黎明期に両
AIと脳科学は今日では隣接科学のよう
一部﹁計算機﹂、第二部﹁脳﹂に分かれる。
ン型︶を考案した天才数学者の遺稿。第
現在のコンピュータの基本形︵ノイマ
じて脳の働きにも深い知見を持つ科学
しは、専門分野である人工知能研究を通
﹁ 脳 の 可 塑 性 ﹂、 認 識 の 再 構 築 へ の 眼 差
傷した脳の部位を他の部位が代替する
じることがある﹂という病態の描写、損
に 記 録 し た 一 冊。﹁ 非 人 間 に な っ た と 感
著者が、自らの症状と回復の過程を克明
交通事故によって脳震盪症を抱えた
章が重要。
と同じように計算的なものかを問う第四
を論じた第三章、人の心がコンピュータ
ピュータに人の心や知性が再現できるか
入 門 書。 本 フ ェ ア の 関 心 か ら は、 コ ン
問 題 意 識 の も と、﹁ 心 の 哲 学 ﹂ を 論 じ た
はどうやって世界を表象するか﹂という
ピュータ・サイエンスまでを網羅し、﹁心
英国の哲学者が、数学、論理学やコン
算機と脳﹄︵ちくま学芸文庫・一〇〇〇円︶
チランド夫妻の序言と野崎昭弘先生の解
者ならでは。
なお、本書の内容とは何ら関係ないが、
説も参考になる。
もの。
上がらない言い訳を述べるくだりは抱腹
監訳者解説中の、担当編集者に訳稿が仕
ドミニク・チェン﹃電脳のレリギオ︱︱
人工知能と人間の心
ビ ッ グ デ ー タ 社 会 で 心 を つ く る ﹄︵N T
アンディ・クラーク、池上高志、森本元
太郎監訳﹃現れる存在︱︱脳と身体と世
科学﹂の一冊。身体性認知科学はその名
著。ビッグデータや人工知能などの情報
営者、TVキャスターでもある俊英の近
情報学研究者にしてITベンチャー経
石器時代の祖先たちが残した最初期の
キテクチャ﹄︵日経BP社・二二〇〇円︶
Iは﹁心﹂を持てるのか︱︱脳に近いアー
ジョージ・ザルカダキス、長尾高弘訳﹃A
T出版・一八〇〇円︶
の通り、身体性と心を重視する分野。ロ
技術は人間離れした不可解な側面もある
人工知能の新展開である﹁身体性認知
界の再統合﹄︵NTT出版・三八〇〇円︶
などの豊富な事例を交えて、心は、脳の
ボット、脳科学、赤ちゃん学、人工生命
−8−
学者、現代の科学者が人間の心をどうと
追う第一部、プラトンやデカルトらの哲
が人工知能をいかに想像/創造したかを
芸術作品からハリウッド映画まで、人類
の 息 づ か い が 身 近 に 感 じ ら れ る と こ ろ。
トの開発の歴史、そこに関わった人たち
書で面白いのは、コンピュータ将棋ソフ
は棋士の真剣勝負が話題となったが、本
が対決し話題となった電王戦。世間的に
を遂げる。
て導入した。以降、将棋ソフトは大躍進
トヨタ︱︱
てしまう。将棋を知らなくても非常に読
黎明期から現在までの流れが一気に読め
川EPUB選書・一四〇〇円︶
﹁自動運転車﹂は始まりにすぎない﹄︵角
泉田良輔﹃Goog le
人工知能とビジネスの可能性
ら え た か を 見 る 第 二 部、 最 先 端 の コ ン
ピュータ科学を紹介する第三部からな
みやすい。
なる評価軸を得るために人工知能の分野
ばれる﹁全幅探索﹂を採用。その基準と
ではなく、通称﹁しらみつぶし型﹂と呼
ものごとを﹁認知・認識﹂するコンピュー
概 念。 す な わ ち 計 算 や 検 索 だ け で な く、
グニティブコンピューティング﹂という
技術分野の最前線。そのキーワードは﹁コ
IBMに所属する著者が紹介する情報
レーン﹄︵日経BP社・一六〇〇円︶
てくる︱︱情報過多時代の頼れる最強ブ
ハム、三木俊哉訳﹃スマートマシンがやっ
ジョン・E・ケリー三世、スティーブ・
している。
いう。あたかも異種格闘技戦の様相を呈
組みそのものを変えるきっかけになると
ことだけを意味しておらず、世の中の仕
発とは、単に自動車がぶつからなくなる
行っている。著者曰く、自動運転車の開
らず、すでにGoog le も実証実験を
の開発は、従来の自動車メーカーのみな
人工知能の技術を応用した自動運転車
り、AIと人間とのありうべき関係の形
新 井 紀 子﹃ ロ ボ ッ ト は 東 大 に 入 れ る か ﹄
人工知能と人間の知恵比べ
を模索する。
vs
で活用されている﹁機械学習﹂をはじめ
れまで主流だった﹁選択的探索﹂の読み
木邦仁氏が開発した﹁ボナンザ﹂は、そ
将棋ソフトの世界に革命を起こした保
21
−9−
︵イースト・プレス・一四〇〇円︶
国立情報学研究所の新井紀子教授が率
いるプロジェクト﹁ロボットは東大に入
れ る か ﹂ の 中 間 報 告。︵ 現 在 の ︶ 人 工 知
能にできること、できないことは何なの
最 強 将 棋 ソ フ ト は 人 間 を 超 え る か ﹄︵ 角
・七八一円︶
ンター模試を受けたロボット﹁東ロボく
保木邦仁、渡辺明﹃ボナンザ 勝負脳︱︱
『ロボットは
東大に入れるか』
川one テーマ
かを、講演形式でわかりやすく説明。セ
VS
ん﹂の各科目受験結果と分析がおもしろ
い。ロボットは政治・経済、英語、数学
Ⅱ・数学Bが苦手?
将棋のプロ棋士とコンピュータソフト
七八〇円︶
松本博文﹃ルポ
電王戦︱︱人間 コン
ピ ュ ー タ の 真 実 ﹄︵ N H K 出 版 新 書・
vs.
という。
意思決定の精度を高める役割を果たす
応などの領域で、人間が持つ予測能力や
タ の 出 現。 た と え ば 医 療 分 野 や 天 災 対
コンピュータが仮説を作ることで価値が
ら の 体 験 か ら 導 く 仮 説 検 証 が 通 用 せ ず、
う。ビッグデータはその量ゆえ、人が自
異なるような事実が続々判明したとい
ると、従来、人間が立てていた仮説とは
でを展望。
それらが心理学の位相を変える可能性ま
術 に 支 え ら れ 意 味 づ け ら れ て い る こ と、
礎と応用を解説。その手法が心理学的技
ディープラーニングやビッグデータの基
のか迷い続けている﹂という文学博士が
岡 谷 貴 之﹃ 深 層 学 習 ﹄︵ 講 談 社・
という困難に挑戦した研究者たちには頭
の曖昧さを数値計算できる形に転換する
んでいただくとして、しかし、自然言語
を人工知能と呼んでいいのかは本書を読
戦 に 勝 利 し た。 果 た し て、﹁ ワ ト ソ ン ﹂
組に出場し、二名のチャンピオンとの対
問応答システム﹁ワトソン﹂がクイズ番
二〇一一年二月、IBMが開発した質
浅川伸一﹃ディープラーニング、ビッグ
べる概説書。
工知能の概要と実装を楽しみながら学
く る。 さ あ、 彼 に 知 能 を 与 え よ う。 人
フィンクスは論理的ななぞかけをして
む 必 要 が あ る だ ろ う か。 最 後 の 敵、 ス
彼にどのような知的計算処理を組み込
い る ス フ ィ ン ク ス を 倒 さ ね ば な ら な い。
は、 完 全 自 律 移 動 に よ り ダ ン ジ ョ ン に
人工知能で動く﹁ホイールダック2号﹂
︵作品社・青木、ミシマ社・渡辺、
し、体系的に解説。
されている。その基本的事項を広く網羅
れ、深層学習に高い性能を発揮して注目
ニューラルネットの有効性が確かめら
達や計算機の能力向上を背景に多層
なった。しかし近年インターネットの発
高 揚 の 時 期 を 迎 え た が、 そ の 後 下 火 と
ネットワークの研究は八〇∼九〇年代に
生物の神経回路網を模したニューラル
二八〇〇円︶
が下がる。
データ、機械学習︱︱あるいはその心理
谷口忠大﹃イラストで学ぶ
人工知能概
論﹄︵講談社・二六〇〇円︶
人工知能の理論と実装
出ると著者は言う。
ス テ ィ ー ヴ ン・ ベ イ カ ー、 土 屋 政 雄 訳、
金山博・武田浩一解説﹃IBM奇跡の〝ワ
トソン〟プロジェクト︱︱人工知能はク
イ ズ 王 の 夢 を み る ﹄︵ 早 川 書 房・
矢野和男﹃データの見えざる手︱︱ウエ
一八〇〇円︶
アラブルセンサが明かす人間・組織・社
学﹄︵新曜社・二四〇〇円︶
人体に常時装着するウエアラブルセン
的因果律︵神経生理学︶に基づくべきな
歴史的因果律︵進化論︶に拠るのか物理
﹁人間や機械の知的活動を考える際に、
月九日までフェア展開中です。
京 都 本 店 地 下 二 階 に て、 十 一 月 十 日 ∼ 十 二
タ 前 と 福 岡 店 三 階、 丸 善 名 古 屋 本 店 一 階 と
サから取り続けたビッグデータを日立中
でご紹介した書籍は、池袋本店一階エレベー
*愛書家の楽園・特集﹁人工知能は怖くない﹂
NTT出版・柴︶
会の法則﹄︵草思社・一五〇〇円︶
央研究所が開発した人工知能に解析させ
− 10 −
ゆるし︵許し、赦し︶についての本を
読みませんか。
こんなことを言うと、世間知らずのお
らない言葉であることもある。そんなひ
そやかなゆるしも本は見えるようにして
を学び、ゆるすための勇気を得よう。
いこう。そこからゆるしについての知恵
さて、いよいよゆるしの本たちを見て
くれる。
確かに世間では﹁ゆるさない﹂の声が圧
め で た い 人 間 と 思 わ れ る か も し れ な い。
倒的に大きい。子どもを殺された親が犯
人の死刑を望み、テロリズムへの報復が
叫ばれ⋮⋮等々。多くの人が憤然として
て﹁ゆるさない﹂の声はテレビで拡散し、
﹁ ゆ る さ な い ﹂ と 声 を 上 げ て い る。 そ し
ネット上で核分裂反応を起こし、世界の
まずはゆるしについての物語をいくつ
るす﹂の一言が不意に胸を打つことが
に思う。
﹁ゆるさない﹂の洪水の中で、﹁ゆ
るす﹂という声がそこから聞こえるよう
う な﹁ ゆ る し て く だ さ い ﹂﹁ あ な た を ゆ
る し に つ い て 語 っ て き た。 絞 り 出 す よ
た 本 が あ る。 神 話 や 宗 教 も 古 く か ら ゆ
読を。
人それぞれだと思われるが、まずはご一
すが⋮⋮。さて、結末をどう感じるかは
労を語り、言外に許しを乞う父を追い返
父を許せない長男。長男は二十年間の苦
年ぶりに家に帰った父と、家族を捨てた
いので気軽に読んでいただきたい。二十
池寛﹄所収、筑摩書房・八八〇円︶は短
菊池寛﹁父帰る﹂
︵ちくま日本文学﹃菊
か見ていこう。
あ る。 そ れ は 肉 声 で も 本 の 中 の 言 葉 で
− 11 −
どこかでキノコ雲が上がる⋮⋮そんな終
末論まがいのイメージまで浮かぶ。とは
い え、﹁ そ の 怒 り は 不 当 だ、 ゆ る し て あ
げなさい﹂と言うことにはためらいがあ
る。誰でも﹁ゆるせない﹂と思うことは
ある。
も 同 じ こ と。 そ し て ゆ る し は 言 葉 に な
そ の 一 方 で、 ゆ る し に つ い て 書 か れ
『菊池寛』
の 父 が﹁ 恋 の 応 援 団 長 ﹂ と し て 現 れ た。
が、そのとき美津江の前に、死んだはず
に芽生えた恋からも身を引こうとする
なってはいけんのじゃ﹂︶。そのため新た
る こ と を 許 せ な い︵﹁ う ち は し あ わ せ に
逃げた罪悪感から、自分自身に幸せにな
の広島。美津江は三年前に父を見捨てて
三四〇円︶の舞台は原爆投下から三年後
井上ひさし﹃父と暮せば﹄
︵新潮文庫・
合っていた。
や は り、 小 十 郎 と 熊 は お 互 い に ゆ る し
た。しかし殺す者は殺される。それでも
ぞ﹂︶。そんな小十郎を熊たちも好いてい
てまえを憎くて殺したのでねえんだ
敬 意 を 持 ち 続 け た 小 十 郎︵﹁ 熊。 お れ は
めに熊の毛皮を獲りながら、熊に対する
澤賢治と宮崎駿くらいだろう。生きるた
異なケース。こんな冒険ができるのは宮
円︶は人と動物がゆるしあうという特
でいる。霊魂になった︵?︶章は先に死
男の分身のような男﹁章﹂はすでに死ん
の 最 期 の 一 篇。﹁ 一 家 団 欒 ﹂ で は 藤 枝 静
一一〇〇円︶は七篇からなる﹃欣求浄土﹄
欣 求 浄 土 ﹄ 所 収、 講 談 社 文 芸 文 庫・
藤枝静男﹁一家団欒﹂︵﹃悲しいだけ・
る変化が起き、そして思いがけない結末
くが、それと呼応するように杉原にもあ
そして美津江は、自分が最初から許され
庫・ 六 四 〇 円 ︶。 奈 緒 実 は 子 ど も の よ う
の が 三 浦 綾 子﹃ ひ つ じ が 丘 ﹄︵ 講 談 社 文
ればならなかったのだな、と思わされる
昔の女性は色々なものをゆるさなけ
は音楽とゆるしが満ちている。
が、藤枝静男がここで描いている浄土に
いて死後に待っているのは最後の審判だ
を無条件で受け入れた。キリスト教にお
くもなかった。にもかかわらず彼らは章
歓迎を受ける。章の人生は正しくも美し
んでいった家族と再開し、彼らの温かな
が訪れる。
生き残った者と死んだ者との、笑いと涙
のない交ぜになった対話。その中で父と
て い た こ と を 改 め て 知 る の だ っ た︵﹁ わ
な純真さを見せる杉原に恋して家を飛び
緒実は少しずつゆるすことを学んでい
ことを、父は予見していたのだった。奈
いものをゆるすという試練に直面する
る し き れ る か ね ﹂。 奈 緒 実 が ゆ る し が た
もあるんだよ︵⋮⋮︶杉原君をお前はゆ
で き る わ ﹂﹁ 愛 す る と は、 ゆ る す こ と で
たしだって、人一人ぐらい愛することが
会 話 が 奈 緒 実 の 脳 裏 に よ み が え る。﹁ わ
わせた老婆の妹をも殺してしまい、罪の
の老婆を殺害するが、偶然その場に居合
に償われる﹂という信念のもとに金貸し
コーリニコフは﹁一つの罪悪は百の善行
る 赦 し と 復 活 の 物 語 で あ る。 青 年 ラ ス
イトルこそ絶望的に暗いが、実は愛によ
庫・上巻七五〇円、下巻七九〇円︶はタ
ド ス ト エ フ ス キ ー﹃ 罪 と 罰 ﹄︵ 新 潮 文
− 12 −
娘 の 痛 ま し い 別 れ の 場 面 が 回 想 さ れ る。
しの分まで生きてちょんだいよォー﹂︶。
出すが、杉原に裏切られて自分の無知を
宮 澤 賢 治﹁ な め と こ 山 の 熊 ﹂︵﹃ 注 文
思い知る。家を出る直前に父と交わした
の多い料理店﹄所収、新潮文庫・四三八
『父と暮せば』
し、 赦 し を 乞 う た。 そ し て 彼 は よ み が
コーリニコフは彼女の信念の前に屈服
ど狂気か奇跡のように愛を貫いた。ラス
女は社会のどん底に堕ちながら、ほとん
娼婦ソーニャの愛による赦しだった。彼
いくラスコーリニコフ。彼を救ったのは
執着から自首にも踏み切れず、憔悴して
意識に苛まれる。逮捕を恐れ、信念への
たして長い道程の果てにゆるしはある
と 恥 辱 に ま み れ た 世 界 が 展 開 す る。 は
ギ ム ナ ジ ウ ム か ら 打 っ て 変 わ っ て、 罪
全 て 五 八 一 円 ︶ に 挑 も う。 光 に 満 ち た
な神が支配する﹄︵小学館文庫・全十巻、
者 の 末 席 に 加 わ っ た な ら、 次 は﹃ 残 酷
﹃トーマの心臓﹄を読んで萩尾望都信
ていたのだ﹂。
といったその時から彼はいっさいを許し
の で 言 わ な い。 と に か く、﹁ 愛 し て い る
ぜ﹁ゆるし﹂なのかは、ネタバレになる
ある。まさに狂気のような愛。それがな
マの贈り物の意味に気づくまでの物語で
だった。﹃トーマの心臓﹄はユーリがトー
マの死は彼の愛するユーリへの贈り物
音 ﹂。 や が て 明 ら か に な る よ う に、 ト ー
カは驚愕したのだった。その理解しがた
ミッシュの行為に対して訴訟大国アメリ
家族を赦した。事件の悲惨さ以上に、アー
シュのコミュニティはすぐに犯人とその
十人の生徒が死傷した。しかし、アーミッ
ミ ッ シ ュ の 学 校 で 銃 の 乱 射 事 件 が 起 き、
から北米に移住した。二〇〇六年、アー
の一派で、十八世紀半ば頃にヨーロッパ
エスの教えを忠実に守るプロテスタント
書 房・ 二 五 〇 〇 円 ︶。 ア ー ミ ッ シ ュ は イ
レ イ ビ ル﹃ ア ー ミ ッ シ ュ の 赦 し ﹄︵ 亜 紀
ついても見ていこう。
知れない。そこで宗教の教えるゆるしに
ゆるしというテーマに与えた影響は計り
いるのは宗教である。特にキリスト教が
これらのゆるしの物語の源泉になって
『アーミッシュの赦し』
い迅速さに眉をひそめる者もいた。アメ
リカの良き伝統だとこじつけてほめそや
す者もいた。本書の立場はそれらの安易
な態度から遥かに遠い。アーミッシュの
生活の中にいかに赦しの教えが浸透して
いるか、アーミッシュの赦しはいかなる
特 異 性 を 持 つ か、 わ れ わ れ は ア ー ミ ッ
シュから何を学ぶことができるのか︱︱
本書はアーミッシュの赦しを理解しよう
− 13 −
まず紹介したいのはドナルド・B・ク
えった。
のか。
﹁ こ れ が ぼ く の 愛、 こ れ が ぼ く の 心 臓 の
て ユ ー リ の も と に 遺 書 が 残 さ れ る ︱︱
が、トーマは冒頭で突然自殺する。そし
トーマが主人公の物語と思われるだろう
が笑い、泣き、愛し合う。タイトルから
たい。ギムナジウムを舞台に、少年たち
心 臓 ﹄︵ 小 学 館 文 庫・ 六 七 六 円 ︶ を 挙 げ
マンガを代表して萩尾望都﹃トーマの
『トーマの心臓』
全な人間の一人として強く惹かれてし
まう。
次は宗教者ではなく世俗の﹁大人﹂の
意見を聞いてみよう。
遠藤周作﹃沈黙﹄
︵新潮文庫・五一四円︶
と。そのような日常の実践を著者は何よ
笑顔を向けたり優しい言葉をかけるこ
てて、許すこと。たとえば、嫌いな人に
れることもある。それでも、忘れて、捨
びることもあり、思いやりが踏みにじら
は難しい。思いもよらぬ冷たい罵声を浴
い限り、人を憎んだり恨んだりしないの
る本。
やれているだろうか?そう自問させられ
のだ。さて、自分はちゃんと﹁大人﹂を
すら自らの一部として抱えて生きていく
るほど、大人というものは許せないこと
え て、 そ れ で も 平 然 と 生 き て い る ﹂。 な
う。 し か し、﹁ 人 は さ ま ざ ま な 事 情 を 抱
うしても許せないものに出会ってしま
とするたゆまぬ努力の結晶である。
伊集院静﹃許す力 大人の流儀4﹄︵講
は物語だがキリスト教を主題にしてい
り大事にする。なお、著者は大峯千日回
談社・九二六円︶の新鮮なところは、﹁許
るのでここに挙げる。舞台はキリシタン
峰行という苦行の中の苦行を成し遂げた
せないなら、許さなくていいのではない
禁制のきびしい鎖国日本。ポルトガル司
鉄 人 で あ る︵ 一 三 〇 〇 年 で 二 人 目 ! ︶。
仏教からは塩沼亮潤﹃忘れて捨てて許
祭ロドリゴは日本人信徒たちに加えられ
それだけに、ゆるしの実践を説く著者の
か﹂という姿勢である。生きていればど
る残忍な拷問と悲惨な殉教を前にして苦
言葉には重みがある。
げたい。よほど修行したお坊さんでもな
悩し、ついに背教の淵に立たされる。そ
す 生 き 方 ﹄︵ 春 秋 社・ 一 二 〇 〇 円 ︶ を 挙
のときロドリゴは今まで知らなかったキ
リストの姿を知った︱︱目の前の人間を
救うために教えに背くことをゆるすキリ
スト、ユダのような弱さと醜さを捨てら
れない人間をゆるすキリスト。同じキリ
スト教でも、キリストに倣うことで困難
なゆるしを行うアーミッシュとはずいぶ
ん違う。しかし、不完全な人間とともに
あるキリストというイメージには、不完
『忘れて捨てて
許す生き方』
南 ア フ リ カ に お け る ア パ ル ト ヘ イ ト、
見てみよう。
次に、和解を目指す実際の取り組みを
『許す力
大人の流儀4』
− 14 −
『沈黙』
カ ン ボ ジ ア に お け る ポ ル・ ポ ト 政 権 の
大 虐 殺 ⋮⋮ そ の よ う な 悲 劇 を 通 り 抜 け、
もっと身近なところでも赦すことの困
川名壮志﹃謝るなら、いつでもおいで﹄
難な物事は起こり得る。
共有と、加害者・被害者の和解を目指す。
﹁ 真 実︵ 和 解 ︶ 委 員 会 ﹂ は 過 去 の 真 実 の
二二〇〇円︶によって見ることができる。
利洋﹃真実委員会という選択﹄︵岩波書店・
よ い の か。 そ の 一 つ の 実 践 の 形 を 阿 部
な い 贖 罪 で も な い。﹁ 謝 る な ら、 い つ で
つ。彼が望むのは復讐でもなく、終わら
特に、殺された少女の兄の言葉は胸を打
な 事 件 と 何 と か 折 り 合 い を つ け て い た。
ぎ、被害者と加害者の家族はこの不可解
事 件 は 幕 を 閉 じ た。 そ れ か ら 十 年 が 過
に刑罰もなく、謝罪も赦しもないままに
は途方に暮れる。十四歳未満であるため
か。多くを語らない少女を前に大人たち
し た の か、 少 女 は 正 常 な の か 異 常 な の
ら復讐は罪に対する自動的な反応だか
そ し て 罪 は 復 讐 を 招 く だ ろ う。 な ぜ な
も そ ば に 留 ま り、 人 を 責 め、 拘 束 す る。
る こ と は 誰 に も で き な い。 過 去 は い つ
ま え ば、 罪 を 犯 し た こ と 自 体 を 撤 回 す
許 し の 考 察 は 必 見。 一 度 罪 を 犯 し て し
く ま 学 芸 文 庫・ 一 五 〇 〇 円 ︶ に お け る
︵ 集 英 社・ 一 五 〇 〇 円 ︶ は 二 〇 〇 四 年 の
民 主 的 な 社 会 へ 移 行 し つ つ あ る 国・ 地
裁判ではないので加害者への刑罰はな
もおいで﹂と彼は言う。本書のタイトル
ら。 そ し て 自 動 的 で あ る ゆ え に 復 讐 は
域 が あ る。 い ま だ 健 全 な 司 法 も な い こ
い。逆に、場合によっては特赦が与えら
でもあるこの言葉は、すでにひとつの赦
連 鎖 す る。 こ う し て 一 つ の 罪 が 未 来 ま
の本。なぜわずか十一歳の少女が人を殺
れる。このような真実委員会の理念は確
しではないだろうか。当時中学生だった
で 決 定 し て し ま う。 し か し 許 し と い う
﹁佐世保小六同級生殺害事件﹂について
かに美しい。しかし真実委員会は赦すこ
兄の目覚ましい成長がうかがえる。だと
救 済 が あ る。 ア レ ン ト に と っ て 許 し は
れ ら の 国・ 地 域 が、 激 し い 軋 轢 を 乗 り
と・赦しを乞うことの困難さをも明らか
すれば、加害者の少女もまた罪を自覚し
越えて秩序を回復するにはどうすれば
に す る。 そ の 実 際 を 本 書 に よ っ て 見 て
て成長しているということもあり得る
ず許しあうことで過去から開放しあっ
神 の 特 権 で は な い。 実 際、 人 々 は 絶 え
被害者の兄らの赦しと希望が伝わって
た れ、 時 間 は ゼ ロ か ら 再 開 さ れ る。 許
て き た。 復 讐 の 連 鎖 は 許 し に よ っ て 断
ハ ン ナ・ ア レ ン ト﹃ 人 間 の 条 件 ﹄︵ ち
究した哲学書を見ていこう。
最後に、ゆるしという複雑な問題を追
ほしい。
だろう。さて、本書を実際に手に取って
くることと思う。
− 15 −
『謝るなら、
いつでもおいで』
見 て ほ し い。 表 紙 の 絵 と タ イ ト ル か ら、
『真実委員会
という選択』
くほかない。
れは実際に読んだ上で判断していただ
最 後 の 一 冊。 下 河 辺 美 知 子﹃ グ ロ ー
バ リ ゼ ー シ ョ ン と 惑 星 的 想 像 力 ﹄︵ み す
リ ダ を 参 照 し つ つ、 暴 力、 特 に テ ロ と
し と は、 人 間 に 自 由 を も た ら す 不 可 欠
の 関 係 で 赦 し の 可 能 性 を 模 索 す る。 暴
な能力なのだ。
不可能性から可能性へ飛び移るデリダ
力 も 赦 し も、 言 語 の レ ベ ル で 行 い 得 な
ず 書 房・ 三 八 〇 〇 円 ︶ は ア レ ン ト と デ
の 知 的 ア ク ロ バ ッ ト に は め ま い が す る、
しを探す私たちの試みも矛盾している
という方にはポール・リクール﹃記憶・
か も し れ な い ︶。 し か し、﹁ ゆ る せ な い ﹂
い部分にこそその本質があると著者は
考を経由して﹁困難な﹂赦しへと一歩一
という感情に溺れてしまったら憎しみ
言 う。 言 語 か ら 逃 れ る も の に つ い て 書
歩進む。たとえるなら、赦しは彼にとっ
の 連 鎖 は 断 て な い。 感 情 に 溺 れ る の で
歴史・忘却﹄︵新曜社・上巻五三〇〇円、
今回こういう特集を組もうと思い
て地平線のようなものだと言える。だか
は な く 知 性 を 働 か せ る こ と、 考 え て 書
下巻四五〇〇円︶をお勧めする。リクー
立 っ た そ も そ も の 始 ま り は、 ジ ャ ッ ク・
ら彼の赦しへの歩みは﹁未完﹂のしるし
く と い う 遠 回 り の 営 み こ そ、 赦 し へ と
し て い る︵ ゆ る し の 本 た ち の 中 に ゆ る
デリダ﹃赦すこと﹄
︵未来社・一八〇〇円︶
を帯びている。しかし彼の目は確かに赦
く、 と い う 著 者 の 試 み は あ る 意 味 矛 盾
が 刊 行 さ れ た こ と だ っ た。 本 書 は 赦 し
しを捉えている。それはいつか辿り着く
ルはデリダの﹁不可能な﹂赦しの意義を
についての一般的な考えをことごとく
十分認めつつ、記憶や歴史についての論
否 定 す る。 い わ く、 赦 し は 和 解 と は 全
続く道である。
道に違いない。
︵池袋本店
高木︶
という遠回りの営み︶もゆるしへと続く
だから、私たちの試み︵読んで考える
べき場所なのだ。
こ と を 前 提 と せ ず、 私 た ち の 前 に 純 粋
く 異 質 な も の で あ り、 赦 し が 乞 わ れ る
な 形 で 現 れ る こ と が な い。 真 に 赦 し の
名に値するのはそのような無条件の、非
人間的な、純粋な赦しだけだという。本
書はそのような赦しの可能性を守り抜
な い。 さ て、 純 粋 な 赦 し な る も の が 本
くための思考の冒険と言えるかもしれ
当 に﹁ あ る ﹂ の か、 デ リ ダ は そ れ を 言
葉 で つ か ま え る こ と が で き た の か。 そ
『グローバリゼーションと
惑星的想像力』
− 16 −
『赦すこと』
コンピュータ
ゲームを動かす数学・物理
堂前嘉樹著
著
CEDEC Awards 2013
述賞の﹃ゲームを動かす技術と発想﹄
︵S
Bクリエイティブ・二四〇〇円︶の著者
あなたの知らない
超絶技巧プログラミング
の世界
遠藤侑介著
用的なプログラミング言語を使ってまっ
通算八回入賞の著者が提唱する
Contest
超 絶 技 巧 プ ロ グ ラ ミ ン グ。 こ れ は、﹁ 実
International Obfuscated C Code
ログラミングに必要な数学と物理の知識
による三年ぶりの新刊。コンピュータ上
を具体例を挙げつつ図を使って説明して
たく実用的でないものを作る遊び﹂であ
での数字の捉え方から始まり、ゲームプ
ゴールデン・クリシュナ著
いる。数学と物理を楽しんで使えるよう
やアスキーアート、リポグラ
る。 Quine
ム、厳しい環境でも動作するプログラム
さよなら、インタフェース
武舎広幸監訳
武舎るみ訳
原書はクリシュナ氏が自身のブログに
になるための一冊。
加 筆 し て 出 版 し た﹃ The Best Interface
二六八〇円
に よ る C++11/C++14
対 応 の 書 籍。 型
推論、スマートポインタ、ムーブセマン
著
Scott Meyers
千住治郎訳
の世界的な第一人者である著者
C++
Effective Modern C++
技術評論社
しさが伝わってくる。
が紹介されており、プログラミングの楽
二七五〇円
SBクリエイティブ
ビヨンドソフトウェア
アーキテクチャ
著
Luke Hohmann
岡澤裕二・和智右桂訳
著名な Martin Fowler Signature
シリー
ズから、また一冊名著が邦訳された。著
者の経験に基づいて、技術的側面だけで
テ ィ ク ス、 ラ ム ダ と い っ た C++11
以降
で追加された新機能や強化された機能の
はなく、ビジネス的側面からも見たソフ
効率的な活用法を四十二項目に分けて解
トウェアアーキテクチャについて書かれ
ている。システム開発者とマーケティン
三八〇〇円
グ担当者が共に顧客の要望に応える持続
オライリー・ジャパン
可能なシステムを構築するためにはどう
三八〇〇円
説している。前著﹃ Effective C++
第3版﹄
︵丸善出版︶を更に発展させた内容。
すべきかが学べる。
翔泳社
− 17 −
﹄。 製 品 や サ ー ビ ス を 創
is No Interface
り出す際、インタフェースのみを重要視
する現状に疑問を呈し、実生活の中で自
然と使えるシステムの必要性を説く。U
Iデザインに関わる人は本書を読むこと
で新たな気付きを得られるだろう。
ビー・エヌ・エヌ新社 二四〇〇円
コンピュータ
自 然 科 学
かっこいいぞ !
職人本
寅壱監修
鳶職人、造園職人、左官、内装職人等々、
れ ば、 そ れ に 励 ま さ れ、 癒 さ れ る か ら、
でもすごく綺麗に写った宇宙の写真があ
創作のお供として、キャラ作りの参考
今も続いていると岩谷氏は語る。その写
ける思いだった。
に。また作業服﹁寅壱﹂のコーディネー
真はNASAに匹敵するほどだという。
ジを持たせて、宇宙に飛ばす挑戦をして
彼は、怪獣ピグモンにみんなのメッセー
某 番 組 で 岩 谷 氏 の 特 集 を や っ て い た。
トまで載っている。絵を描く方の資料用
にも使えそうな一冊である。
クロスメディア・パブリッシング
の瞬間ピグモンの背景には綺麗な宇宙が
いた。最初の映像は荒々しかったが、次
パーっと広がっていた。希望を見たよう
一三八〇円
世界一小さい僕の宇宙開発
宇宙を撮りたい、風船で。
﹁宇宙を撮りたい、風船で。﹂という夢
岩谷圭介著
いう未知の世界に私たち人類が夢を見
ることはないかもしれない。でも宇宙と
建 設 業 界 の 職 人 を 集 め た 図 鑑。 し か も、
﹁ か っ こ い い 職 人 ﹂ で あ る。 そ の か っ こ
を抱いた人が、世界中でどれぐらいいる
宇宙工学は、私たちの日常に直接関わ
よさを、本書では写真やインタビューも
だ ろ う か。 私 も そ う い う 類 の 夢 を み て
な気がした。
全部で二十六種の職人についてまず
交えつつ、余すところなく紹介している。
いか?と思うが、それを実行して成功さ
風船で宇宙を撮るなんて不可能じゃな
激が日常にあっても悪くないと思う。次
ともいえない気持ちになる。そういう刺
ありながら、心が突き動かされて、なん
る、希望を抱くというのは、非日常的で
ら、彼らが使う道具とはどのようなもの
せた一人の男がいる。本書はその男の物
きた。
か、 ど う し た ら そ の 職 人 に な れ る の か、
﹁ ど ん な 仕 事?﹂ と い う 基 本 的 な 疑 問 か
どのような資格が必要か、そして気にな
世代はもちろん、今を動かしているひと
﹁やってみる﹂からはじめよう。
は教えてくれたように思う。
にも可能性は無限大だということを、彼
語である。
ホームセンターで誰もが買える道具で組
何度も失敗してきたけれど、回収したカ
船のしっぽにカメラをつけて飛ばすだけ。
キノブックス
一四〇〇円
が、本書のすべてを表している。
著者のホームページにあるこの言葉
み立てた装置で宇宙を撮る。たかが直径
岩谷氏は、大げさな実験装置ではなく、
る 給 料 は ⋮⋮ な ど、 ま さ に﹁ そ う そ う、
こういうことが知りたかった ! ﹂とい
い つ だ っ て、 未 知 の 世 界 を 覗 く と き、
う疑問に答える図鑑である。
はつり職人、墨出し職人、などという
メラの中に、何百枚のうち、たった一枚
二メートル程度の風船を膨らませて、風
存在は、寡聞にして知らなかったが、こ
人はワクワクするものだ。
んな仕事があるのか、と新たな世界が開
− 18 −
自然科学
医
学
書
必見。コウノメソッドの全てがつまった
る作者が自身の経験を元に描いたリハビ
現を可能にする。高次脳機能障害者であ
リテーションコミックと題された本作を
渾身の一冊となっている。
負った主人公が自身、社会、現実とのせ
読んでそれを強く感じた。膨大な時間と
高齢者の望む平穏死を支える
医療と看護
しくもどこか軽妙に描き出す。これは確
八〇〇〇円
長尾和宏著
超高齢化社会に伴い﹁死
亡 急 増 時 代 ﹂ が 到 来 す る と い う。 今 後、
かにこの作者でなければ描きえなかっ
日本医事新報社
ターミナルケア・終末期の医療・看護は、
た、唯一無二の作品である。
独立処方と補助的処方
一二〇〇円
めぎあいの中で溢れさせる感情を、生々
労 力 を 費 や さ れ た 漫 画 は、 突 如 障 害 を
どう変わっていくのだろうか。過剰医療
英国で広がる医療専門職の役割
協同医書出版社
護師︵訪問看護師︶向けの平穏死につい
三八〇〇円
− 19 −
をしない
﹁ 平 穏 死 ﹂ =﹁ 平 穏 生 ﹂ も 選
択肢の一つになる。本書は、医療者や看
ての書籍。いつか迎える人生の終末に医
・
Molly Courtenay
編
Matt Griffiths
療は、どこまで介入すべきか。患者や家
族の意思︵希望︶に寄り添う事が大切に
土橋
朗・倉田香織訳
二〇一〇年に英国で発売された
コウノメソッド流
臨床認知症学
なる。非常に重い問題だけに、支える側
﹁
河野和彦著
本書の筆者である河野先生は年間
はより理解を深めてしっかりした対応を
﹂︵ 第
Prescribing : An Essential Guide
二版︶の翻訳。日本では処方は医師の絶
Independent and Supplementary
一四〇〇人もの新患を診察し、三十一年
しなければならない。
一八〇〇円
間にわたり認知症の診療に携わってき
た。この膨大な経験をもとに考案された
看護師、薬剤師なども処方できるように
対的な医行為であるが、米国や英国では
なっている。地域医療が拡大するにつれ
メディカ出版
﹁のーさいど﹂から
のが﹁コウノメソッド﹂である。本書は
まず総論で認知症の診断をスムーズに進
薬事日報社
よる処方の学習に役立つ一冊。
需要が見込まれるであろう医療専門職に
藤田貴史著
が強烈にメッセージを発し、真に迫る表
く受け入れられやすい形である漫画の方
時に叙事的に文章を重ねるよりも、広
めていく方法が書かれており、各論では
の﹁ 診 断 チ ャ ー ト ﹂﹁ 経 過 チ ャ ー ト ﹂ も
どが体系的に解説されている。巻末付録
認知症の各病型や特徴、治療法の違いな
医学書
社 会 科 学
たとえば、ミライ集落︵ソンミ村︶での
ではなく、国家による戦争犯罪だという。
軍の蛮行を、一部の軍人による逸脱行為
本書はベトナム戦争におけるアメリカ
タンでの戦争犯罪を扱った著作もある。
ナリストで、他にもイラクやアフガニス
や、就職活動、新規プロジェクトの始動
の場でありながら新たな恋愛のきっかけ
半を使うこともある。この食事は出会い
ティーは五時間、下手をすると一日の大
あると指摘する。食事は通常二時間、パー
筆を行う著者は、その理由が﹁食事﹂に
す。現地と日本でワインと食に関する執
を経て、冷戦終結後に国連難民高等弁務
る売春の町だった。彼女たちの大半は借
ビア、ベネズエラなどの外国人女性によ
横浜の黄金町は、かつてタイやコロン
一三〇〇円
官に就任し、時代の変化の中での数々の
金を背負って来日し、両親や兄弟、子ど
八木澤高明著
黄金町マリア
日本経済新聞出版社
ぜひ一度取り入れる価値がある。
持ち、柔軟な発想を生むイタリア流儀は
にも繋がり得る。時間と気持ちに余裕を
公文書を追い、退役軍人やベトナム人
虐殺事件は国家犯罪を隠すためのスケー
からの証言を集め、十年をかけて調査を
聞き書
緒方貞子回顧録
緒方貞子著
野林
健・納家政嗣編
元国連難民高等弁務官として活躍した
プゴートではないかと見ている。
著者が米寿を迎え、その半生を研究者時
三八〇〇円
した労作。
みすず書房
代の教え子たちがインタビュー形式で聞
き取りをしたのが本書である。
曽祖父は犬養毅、祖父と父は外交官と
紛争に関わる。その後はJ ICA総裁も
いう家柄の中で育つ。研究者と国連職員
務める。そうした経験から﹁人間の安全
ものために母国へ送金することが目的
国民であるが、仕事の結果はきちんと出
宮嶋
勲著
イタリア人は、世界一時間にルーズな
彼女たちとの実際のやり取りから、夜の
た。 黄 金 町 の 街 並 と 裸 の 売 春 婦 の 写 真、
症して帰国する者や、亡くなる者も多かっ
版。お金のために避妊をせずエイズを発
で取材をしたノンフィクションの増補新
よる大量摘発までの五年間、著者が現地
だった。本書は、二〇〇一年から警察に
二六〇〇円
保障﹂の重要性を強調していることは重
最後はなぜか
うまくいくイタリア人
い。終章では日本への提言もある。
岩波書店
動くものはすべて殺せ
アメリカ兵はベトナムで何をしたか
著者は一九七五年生まれの調査ジャー
ニック・タース著
− 20 −
社会科学
二二〇〇円
香りが浮かびあがる濃厚な一冊である。
亜紀書房
脱出老人
水谷竹秀著
著 者 は フ ィ リ ピ ン 在 住
十 一 年 の ジ ャ ー ナ リ ス ト。 暖 か い 気 候、
安い物価、若い異性との結婚といった理
由で、近年フィリピンに移住する高齢者
れている。テレビマンの側からの回顧録
災、受信障害など、様々なドラマが語ら
た内容。鉄道会社との交渉、東日本大震
十年間を、現場の当事者として振り返っ
ワーからスカイツリーに移転するまでの
ある。ビジネスの場面のみならず、色々
ライフスタイルの解説にとても説得力が
もとになっているので、各世代の文化や
る。マーケティングを目的とした研究が
観にくっきり差が表れていることがわか
一五〇〇円
な人間関係のシーンで役立つ本だ。
東洋経済新報社
という点に、他にはない面白味がある。
一四〇〇円
中土井僚著
松尾陽子作画
U理論とは、答えの出ない複雑な問題
ポプラ社
に対して有効な、変容やイノベーション
マンガでやさしくわかるU 理論
トするやさしく明るい国民性のフィリピ
を生みだすためのメソッド。紛争解決か
が増えている。孤独に陥りがちな日本に
ンに、極上の余生を夢見て移住するもの
ら個人の人間関係にまで有効と注目され
は や り 方 だ け で は な く﹁ 内 面 の 在 り 方 ﹂
− 21 −
比べ、家族や周囲の人が高齢者をサポー
の、実際はいいことばかりでもない様子
ている。PDCAなど論理的メソッドだ
日本発 ! たった1冊で誰とでも
著者は国内におけるU理論の第一人者
ち ょ っ と 難 解 なU 理 論 が ス ト ー リ ー に
ン ス を し っ か り 学 ぶ こ と が で き る。
に注目し、進むべき方向を示してくれる。
阪本節郎・原田曜平著
中高年を研究
している阪本氏︵一九五二年生︶と、若
なっていることで非常に分かりやすく
うまく付き合える
けでは解決できない問題に対し、U理論
が明らかにされている。言葉の壁や金銭
一六〇〇円
トラブル、巨大台風など、現実は甘くない。
小学館
誰も知らない東京スカイツリー
者を研究している原田氏︵一九七七年生︶
なっており、お薦めである。
で、マンガを読みながらU理論のエッセ
あり、国内外から多くの人をよぶ観光名
の、博報堂の二人が、日本のほぼ全世代
世代論の教科書
所でもあり、なおかつテレビ塔としての
について論じた画期的な一冊。団塊世代
東京スカイツリーは日本一高い建物で
役 割 も あ る。 日 本 テ レ ビ 所 属 の 著 者 は
根岸豊明著
二〇〇四年に発足した﹁新タワー推進プ
日本能率協会マネジメントセンター
一六〇〇円
や新人類、
バブル世代やさとり世代など、
それぞれの育った時代背景により、価値
ロジェクト﹂のメンバーの一人。候補地
選びに始まり、電波の発射機能が東京タ
社会科学
人 文 科 学
ケンブリッジ・コンパニオン
徳倫理学
ダニエル・C.ラッセル著
﹁みんなの学校﹂が
教えてくれたこと
な す 貢 献 ま で 語 る 念 の 入 れ よ う で あ る。
徳倫理学が応用倫理学の諸領域に対して
余 さ ず 辿 っ て み せ る。 そ れ だ け で な く、
ストテレスや孟子にまで遡るその伝統を
き方そのものを問題にする。本書はアリ
と協働して、支援が必要な子も含めたす
り返りつつ、教職員、保護者、地域の人々
員生活を終えた著者が、自らの原点を振
なの学校﹂の舞台裏。初代校長として教
た大ヒットドキュメンタリー映画﹁みん
う﹁奇跡の公立小学校﹂の一年生を追っ
不登校ゼロ、すべての子が共に学び合
木村泰子著
生命倫理学からビジネス倫理学まで、本
近年復権を果たした徳倫理学は人の生
釈
徹宗著
我々は﹁死に関する情報﹂を手に入れ
死では終わらない
物語について書こうと思う
ることで目先をごまかしているが、無意
幸福の構造
小学館
一四〇〇円
導いていったかの、感動的な記録。
べての生徒といかに接し、彼らの成長を
五二〇〇円
書は徳倫理学の可能性を追究する。
春秋社
識では生き生きとした﹁死では終わらな
い物語﹂を求めているのではないか︱︱
これが著者の見立てである。そこで、極
世界史 Ⅰ
ウィリアム・H・マクニール
楽往生を願って逝った人々の物語を著者
と共に読んでみよう。それは﹁日本人は
の歴史﹂があらわすように、相互作用が
る。副題の﹁人類の結びつきと相互作用
そのマクニールの最新著書が本書であ
世 界 史 の 入 門 書 と し て 話 題 と な っ た が、
ジティブ心理学研究の実証データをもと
去と幸福の関係など様々な観点から、ポ
メカニズムを、幸福そうな人の特徴、過
る、幸福について。本書では、幸福感の
はたくさんある。それでもやはり気にな
力ではどうにもできない出来事も人生に
幸福の基準は人それぞれだし、自分の
島井哲志著
歴史を動かしてきたという視点で世界史
に説明していく。幸福って一体何なのか、
中 公 文 庫 の﹃ 世 界 史 ﹄︵ 上・ 下 巻 ︶ は
ジョン・R・マクニール共著
一五〇〇円
こうやって死んできた﹂と教えてくれる。
文藝春秋
を描き、前著よりも少ない分量で、流れ
二三〇〇円
のある記述となっている。中公文庫より
有斐閣
悩んでいるあなたにぜひ。
一八〇〇円
こちらを先に読むべきかもしれない。
楽工社
− 22 −
人文科学
文学・文芸
厭世マニュアル
主人公は、自らを﹁口裂け﹂と称する
阿川せんり著
二十二歳女子。どこへ行くにもガーゼマ
スクを着用し外さない姿は、まさに口裂
数々のトラウマから心を閉ざし、人付
は変わらない。やがて両親と死別し、恋
文が認められ、大学教授になってもそれ
かのように文学的な対話をくり返す。論
生 活。﹁ 大 和 人 と 縁 結 ぶ な よ、 零 さ ぬ 筈
人 に 去 ら れ た フ ラ ン ソ ワ は 孤 独 を 深 め、
ンスに心酔し、まるで本当の親友である
の 涙 を 零 す 羽 目 に な る ぞ よ ﹂。 呪 術 的 な
ユイスマンスの小説の主人公に倣うよう
時、 少 女 ス ヨ は ヤ マ ト の 青 年 と 出 会 う。
島の言葉は、奄美群島・加計呂麻島のノ
素朴で美しく、しかし時に残酷な島での
ロの家系に生まれた著者自身の生い立ち
背景にあるのは﹁イスラーム政権の誕
に宗教への帰依に傾く。
おおらかなのに時折差し挟まれる繊細
と重なる。
生 ﹂。 イ ス ラ ー ム 過 激 派 テ ロ 組 織 に よ る
クーデターが起きたわけではない。国政
選 挙 の 投 票 の 結 果、﹁ 穏 健 派 ﹂ イ ス ラ ー
ム政党が与党︵正確には連立政権の最大
差 し 出 す の は 一 貫︵ 巻 ︶ の 握 り 寿 司 だ。
一級の寿司職人ウエルベックが我々に
ウエルベックは必ず小説の最後に﹁未
すいが、そうではない︶。
事件が起こってしまったため混同されや
の発売当日、実際にシャルリ︱・エブド
二八〇〇円
で痛いほどの毒。その毒に痺れる。
幻戯書房
服従
ンサーセンパイ﹂や﹁ざしき女﹂の登場
シャリはもちろんブランド米を使用、熟
来﹂を描く。または未来形の記述で終わ
﹁ 続 き ﹂ は あ っ て、 ウ エ ル ベ ッ ク は そ れ
きがある。どんな空虚や絶望の果てにも
− 23 −
け女。
に よ り、 や っ か い ご と へ と 巻 き 込 ま れ、
練の技術で握ってある。特筆すべきはワ
る。たとえ主人公が死んでも、人類が滅
党派︶になった、ということだ︵この本
自らのトラウマと向き合っていくことに
サビで、この香辛料の効かせ方には並ぶ
亡してしまっても、必ず﹁それ﹂には続
ミシェル・ウエルベック著
なる。
者がない。合わない者には名前を聞いた
き合いを避けて生活していたが﹁怪人ア
﹁口裂け﹂のやむを得ない戦いに思わ
だけで吐き気を催させるが、激辛のスパ
イスにハマった人びとは連日連夜、店に
一四〇〇円
ず胸が熱くなる。
通 い つ め る こ と に な る。 そ し て ネ タ
KADOKAWA
海嘯
二四〇〇円
に﹁抗議﹂し、﹁復讐﹂する。
河出書房新社
は⋮⋮ネタはのっていない。想像力で味
たりを越えてフランソワは作家ユイスマ
研究対象としての枠を超え、世紀の隔
わうしかないのだ。
島尾ミホ著
島尾敏雄夫人で﹃死の棘﹄のモデルで
ハンセン病の兆しを自分の腕にみた
ある著者による未完の長編。
文学 ・ 文芸
文庫・新書
コンビニコーヒーは、
なぜ高級ホテルより美味いのか
川島良彰著
くれる目から鱗の一冊。
ポプラ新書
七八〇円
ゼロからトースターを作ってみた結果
トーマス・トウェイツ著
村井理子訳
著者が英国ロイヤル・カレッジ・オブ・
アートの卒業制作として行った﹁トース
七五〇円
軽快な文章で、我々が生きる社会の問
て見えてきたものとは何か。
題を提示してくれる。
新潮文庫
沈黙のエール
エ ー ル、 と い う 言 葉 の 意 味 を 考 え る。
横関
大著
をかしげることもしばしばである。
その値段に見合う味なのか、といえば首
の 値 段 の カ フ ェ や ホ テ ル の コ ー ヒ ー が、
おいしい、と思わせる。一方その何倍も
ヒーが飲めて、味もこれで百円なら十分
あるいは迂回して著者はトースターを作
壁 が 立 ち は だ か る。 そ の 壁 を 乗 り 越 え、
者であるが、個人がやるにはさまざまな
るのだ。原料の調達からスタートする著
成し、それを組み立ててトースターを作
ル・マイカ・プラスチックから部品を作
いうことである。原料の鉄・銅・ニッケ
ゼロから、とはほんとうにゼロからと
た姉も自分が高校生だった頃に他界し
された。母は幼い頃に、そして大好きだっ
日、実家の洋菓子店は放火され、父が殺
親戚だという生意気な少年が現われた
の胸を熱くはさせなかっただろう。
ちばかりであれば、きっとここまで自分
い。けれど登場人物がそんな器用な人た
ば物事はもっとシンプルだったに違いな
るよ、そう言葉で伝えてくれていたなら
応援しているよ、いつも大事に想ってい
著者はコーヒーのプロフェッショナル
り上げるのである。このプロジェクトに
ター・プロジェクト﹂の記録。
として、その状況を憂い、コーヒーの魅
た。あとに残されたのは素性のしれぬ少
コンビニエンスストアで提供される百
力を知り、楽しんでほしい、と日々奔走
関して、著者から協力を要請される教授
円 コ ー ヒ ー。 挽 き た て 淹 れ た て の コ ー
している。
年と、素行の悪い兄一人。
最初に著者が原料を調べるために分解
いられない。昨日と同じ姿が今日あると
考える。いつまでも永遠に同じままでは
その謎を追いかけながら、家族について
一体誰が父を殺し、店を放火したのか。
や企業の担当者の誠実かつきっぱりとし
日本のコーヒー業界の歴史と現状、な
した市販のトースターは四ポンドしな
た態度が印象的である。
かった。なぜこんなに便利なものかこん
ぜ高いのにまずいコーヒーを飲まされる
ヒー市場に与える影響と今後、おいしい
の か、 コ ン ビ ニ コ ー ヒ ー が 日 本 の コ ー
コーヒーを飲むには、コーヒーが果物で
六九〇円
は限らないのだ。
講談社文庫
なに安い値段で手に入るのだろうか。
ゼロからトースターを作ることによっ
あり、生鮮食品であるという認識を持た
なければならない、ということを教えて
− 24 −
文庫・新書
芸
術
ヤング・アダルトU・S・A
化け物
庭猫
青幻舎
安彦幸枝著
青森県立美術館監修
本書は、今年八月から九月にかけて行
二五〇〇円
待望の続編が発売された。
﹁ ハ イ ス ク ー ル U・ S・ A ﹂ か ら 九 年、
アメリカの学園映画を題材にした前著
る祭具や、浮世絵、現代アートなど、古
の知れない異形の存在。民間信仰におけ
れる。人々の常識の範囲を超えた、得体
として創造されたもの﹂であると定義さ
畏怖、あるいは超越的なるものへの憧憬
ン タ ク ト を と る。 そ の 姿 は 可 愛 ら し く
共に生きながら、食べるために人間にコ
る ﹂。 こ の 著 者 の 言 葉 通 り、 二 匹 の 猫 は
のなかを覗き込んでは食事の催促をす
なると飛びあがって網戸に張りつき、家
﹁ 二 匹 は い つ も 一 緒 に 過 ご し、 空 腹 に
﹁アフ﹂と﹁サブ﹂の姿を写した写真集。
著 者 の 実 家 の 庭 に や っ て く る 野 良 猫、
われた青森県立美術館の展覧会﹁化け物
展﹂の図録として制作されたもの。
本 書 に お い て﹁ 化 け 物 ﹂ と は、﹁ 人 間
今作では映画、テレビ番組やヤングア
ユーモラスでありながら、どこか切ない
の理解を超える不可思議な現象に対する
ダ ル ト 小 説、 音 楽 を 通 し て ポ ッ プ カ ル
今東西のあらゆる文化における﹁化け物﹂
感覚を観る者に抱かせる。
言っても、﹁恐怖﹂の感覚を中心にイメー
読 ん で い て 感 じ る の は、﹁ 化 け 物 ﹂ と
は、そこにどこか自己投影をしてしまう
の話なのだが、それを眺める私たち人間
ら自身にとってはそんなことは当たり前
れた状態で生きるしかない。もちろん彼
− 25 −
長谷川町蔵・山崎まどか著
チャーに描かれ続けてきた﹁アメリカの
のヴィジュアルイメージが収集された内
ジが集められてはいないという点だ。﹁恐
のだろう。帰る場所を持たず、二匹で寄
彼らは家猫ではなく、世界に放り出さ
思春期﹂について二人が語り尽くす。
る映画や音楽に今でも心を揺さぶられ続
怖﹂よりも、﹁何だかよくわからないもの﹂
り 添 い な が ら 世 界 を 生 き る 彼 ら の 姿 を、
容になっている。
けている。本書でも紹介されているジョ
﹁一見するだけでは理解しがたいもの﹂
愛おしく見守っていたくなる。
思春期を通り過ぎ、年齢だけは大人に
ン・ヒューズ監督作品﹁ブレックファス
というような感覚を掻き立てる構成に
なってしまったが、本書で紹介されてい
ト・クラブ﹂を、本書を読み終わり改め
なっているように思う。社会の中で人々
いもの﹂に対する感覚が、歴史の中で如
何に図像化されてきたかを学ぶことので
きる好著である。
パイ・インターナショナル
一四〇〇円
て観てみたのだが、今までと違った視点
二二○○円
が集合的にイメージする﹁得体のしれな
で映画を楽しむことができた。
できるなら、止まることのない二人の
BOOKS
DU
おしゃべりをずっと聞いていたい。
芸術
実
用
書
地図・旅行書
文響社
一二八〇円
軍事と科学の夢のあと
ぼくらの哀しき超兵器
﹁必至デナクテ必中デアルト云フ兵器
植木不等式著
デアリマシタガ⋮⋮﹂これは、一九四五
ヲ生ミ出シタイコトハ、我々豫テノ念願
一日がしあわせになる朝ごはん
世紀開発について質問を受けた科学界の
大丸智子著
海外旅行先として安定し
た人気を保ちつつも、ガイドブックに恵
兵 器 ﹀ が 一 堂 に 会 し、 そ の 奇 天 烈 さ を
と気合とほんの少しの科学でできた︿超
というのが、古今変わらぬ事実のようだ。
大自然とカラフルな街
まれなかったアイスランド。もっと使い
競 い 合 う。 タ ン ザ ニ ア で は 弾 丸 を 無 力
に 望 ま れ る の は 負 け が 込 ん で き た と き、
でも、朝は一日のスタート。今日を乗
勝手がよく、新しい情報が載っている本
化 す る﹁ 魔 法 の 水 ﹂ が 使 わ れ、 義 和 団
くり返す、夢の新兵器 ! その出現が切
り切るためにも、やっぱり朝ごはんは大
があればいいのに⋮⋮そんな期待に応え
アイスランドへ
重鎮・八木秀次の答弁の一部である。
超兵器 ! この苦境を一瞬にしてひっ
年一月二十四日、帝国議会において、新
小田真規子/料理
大野正人/文
皆さん、朝ごはんを食べていますか?
朝は起きるのがツライ。準備が面倒く
さい。そんな時間があるなら寝ていたい。
忙しくて何かと時間のない日々を送って
いると、正直そんなの気にかけていられ
切 ! そこでオススメしたいのが本書。
る一冊が、ようやく登場した。
いる。
夜にゆっくり作りたいレシピを紹介して
来る簡単レシピを中心に、休日や前日の
苦手な人でも大丈夫な平均五分以下で出
で、行きたいなあ、と想像するだけでも
最新情報が盛りだくさん。図版多数なの
い 温 泉、 ア イ ス ラ ン ド 音 楽 に 至 る ま で、
ン・ホテル案内から、一度は入ってみた
ん、首都レイキャビクの見所・レストラ
一番人気の絶景自然スポットはもちろ
夢の兵器。
超 兵 器、 崩 れ 去 る 自 尊 心 を 守 る た め の、
戦 を 開 始 す る ⋮⋮。 可 笑 し く も 哀 し い
ト ロ 人 気 を 削 ぐ た め にC I A は 脱 毛 作
分 も の 飯 を 炊 け ば、 ひ げ の 立 派 な カ ス
が﹁ 法 力 ﹂ で か ら っ ぽ の 鍋 か ら 何 万 人
本書では、世界各国で考案された、夢
明 日 起 き る の が 楽 し み に な っ て し ま う、
ない⋮⋮なんてことになりがち。
そんな朝ごはんのアイデアが満載。朝が
ちょっとしたコツで基本の定番料理も
岩波現代全書
二五〇〇円
怪著にして好著。ぜひご覧ください。
素敵な朝ごはんに大変身 ! 片付けの手
一六〇〇円
楽しい本に仕上がっている。
イカロス出版
間も減らせるように工夫されていて、安
心のレシピ集。
− 26 −
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
本書。違いを知ると同時に、両者に通じ
る、相手を想う気持ちが見えてくる。
IBCパブリッシング 一五〇〇円
ALL IN ONE Basic
高山英士著
英 語 学 習 書 の 定 番﹁ ALL IN ONE
﹂
はTOEIC受験、大学受験向けに人気
のある書籍。一つの例文に文法事項、複
数の単熟語を盛り込んでおり、音声と合
The Best of Sazae-san
わせて使うことで、少ない例文ながら文
効率的な学習が可能だ。ただ中級者向け
ベスト・オブ対訳サザエさん
のため、文法事項の説明は少ない。この
英語生活マナーブック
長谷川町子著
日本人なら誰もが知っ
ているサザエさんを、日英対訳で楽しむ
特徴を生かしつつ初級者向けにこの度発
法、単語、リーディング、リスニングの
ことができるシリーズ全三巻の一冊。他
刊されたのが本書である。
青版
オリンピックの時代
ナー。相手が文化を異にするのであれば
に﹃赤版・ベビーブームの時代﹄﹃白版・
大切な習慣であるが、アメリカでは形式
返し﹂は、相手に感謝の気持ちを伝える
例えば、日本では贈り物に対しての﹁お
の サ ザ エ さ ん の 世 界 も 併 せ て 楽 し め る。
いる。日本語のセリフは欄外にあり、元
画そのままに、英語のセリフで綴られて
には、当時の人情溢れる日々が原作の漫
東京オリンピックの時代を描いた本作
英訳など例文の音声だけでも五種類収録
富で、聞き流し・シャドーイング・瞬時
は見開きではないため、文法の説
Basic
明が充実している。さらに音声内容が豊
日 本 人 同 士 の 場 合 で も 気 を 遣 う、 マ
尚更である。本書では、日常生活や冠婚
オーモーレツの時代﹄がある。
ジェームス・M・バーダマン著
葬祭におけるマナーについて、日米の違
的なものに感じられてしまうそうだ。そ
また、簡単な語注もついているので、辞
されている。例文での単語の発音変化も
最 後 に は、﹁ サ ザ エ さ ん と 私 ﹂ と 題 し
ら中級者まで幅広いレベルの人におすす
している書籍は少ないだろう。初心者か
記載されており、これほど音声面が充実
− 27 −
いを比較している。
れよりもむしろ、誕生日にカードやプレ
書など使うことなく手軽に英語のセリフ
ALL IN
ゼントを贈ったり、昼食に招待したりし
も理解できる。
も と も と 初 級 者 向 け に は﹃
て﹁返礼﹂するほうが喜ばれるのだとい
ば、せっかく感謝の気持ちを伝えたかっ
たエッセイも対訳で収録されている。一
﹄ が あ る の だ が、 こ ち ら
ONE Re-start
は 見 易 さ 重 視 の 見 開 き 構 成 で あ り、
う。こうした考え方の違いを知っていれ
たのに空回りしてしまった、などという
めである。
一九五〇円
通り漫画でライトな英語を楽しんだ後
Linkage Club
は、エッセイの長文を読み、読解のトレー
八〇〇円
事態を防ぎ、より相手に喜んでもらうこ
講談社
ニングをするのもおすすめだ。
とができる。
単に日米の違いを指摘するにとどまら
ず、その背景や共通点にも言及している
語学・辞典
アルビン・トレッセルト文
ロジャー・デュボアザン絵
戦争といのちと
聖路加国際病院ものがたり
前 に 人 々 や 動 物 の ど こ か 急 い だ 様 子 と、
歩んできた歴史を辿ります。そして、い
これまでの長い生涯と聖路加国際病院の
在一〇四歳の医師・日野原重明。著者の
書
澄んだ空気が伝わってきます。霜が降り
のちの大切さ・重みを常に感じ、そのい
童
るたびに木々があかく、そしてきんいろ
のちを守ることを使命とする医師として
聖路加国際病院名誉院長を務める、現
日野原重明著
もうぬげない
に染まっていく様はとても美しく、実り
の立場から、戦争と平和へのメッセージ
児
えくにかおり訳
ヨシタケシンスケ作
の喜びと共にこの季節に感謝する気持ち
豊かな実りであふれる秋。終息の冬を
お 母 さ ん が﹁ オ フ ロ に は い ろ う ﹂ と、
が湧き上がってきます。
小学館
一二〇〇円
を未来の世代へと伝えます。
いそいでぼくの服を脱がそうとしたから
一四〇〇円
ニレの木広場のモモモ館
高楼方子作
ていきます。届けられた人の喜ぶ姿に幸
したが、丈夫なこづつみとなり、運ばれ
リボンをかけてもらう事はできませんで
ようやく外に出たつつみ紙は憧れていた
すが、これで終わりにはならず、ある謎
た。探しものは無事に見つけ出したので
箱の中に探しものの依頼が入っていまし
徐々に仲間も増えていったある日、投書
聞︿モモモ館﹀を作ることになりました。
モモ・モカ・カンタは、児童館の壁新
千葉史子絵
せを感じるちゃいろいつつみ紙の健気な
一一〇〇円
ポプラ社
る物語です。
一四〇〇円
の仲間と出会えた子どもたちが大活躍す
が生まれます。壁新聞をきっかけに本物
福音館書店
く、まさに贈り物のような本です。
落ち着いた色合いの挿絵も可愛らし
姿に優しい気持ちになります。
つ み 紙 は 冒 険 に 出 た く て た ま り ま せ ん。
殿内真帆絵
新 聞 屋 さ ん の 棚 の 上 で
しっかりとたたまれていたちゃいろのつ
アリソン・アトリー作
松野正子訳
ちゃいろいつつみ紙のはなし
ほるぷ出版
服がひっかかって脱げません。ひとりで
脱ぐからと言っていろいろやったけど脱
げなくなります。そこから作家独自の世
界で話が飛躍していきます。頁をめくる
九八〇円
たびに笑いがこみあげ、楽しいです。
ブロンズ新社
きんいろのとき
ゆたかな秋のものがたり
− 28 −
児童書
﹁ブーム﹂
日 記、 し か も フ ラ ン ス に 住 ん で い る わ け で は な い の
町田
史織
な の だ ろ う。 私 に は な に か す る に も ま ず 本 を 読 ん で か
が こ の 本 で あ る。 一 緒 に 行 っ た 人 と ケ ン カ し た こ と も
すんでみえるだろう。
ら す る。 ザ・ ロ ー リ ン グ ス ト ー ン ズ の ラ イ ブ に は ま ず
お い し い ご は ん の こ と も 書 い て あ り、 著 者 の 気 持 ち や
フ ラ ン ス に は ま っ て い る。 だ が キ ッ カ ケ は 一 体 な ん
イ ン タ ビ ュ ー 記 事 を 読 ん で そ の 記 事 に の っ て い たC D
たこともオープンにしているのでとても勇気のある澄
異国で思ったことがつづってある。著者が恥しいと思っ
も、 き っ と な に か を 読 ん だ 可 能 性 が 高 い。 一 時 期、 私
ん だ 人 だ と 感 じ、 日 記 は 読 ん で い て バ ツ が 悪 い と も 思
を 聴 い て か ら 参 戦 し た。 な の で フ ラ ン ス へ の あ こ が れ
の 中 で イ ギ リ ス ブ ー ム が 来 て い て、 そ こ か ら フ ラ ン ス
わなかった。
一三〇〇円︶
︵二十二歳・学生︶
*﹃フランス日記﹄︵アノニマ・スタジオ・高山なおみ著・
ないが。
ン ス ブ ー ム が 来 た の だ。 た だ 最 初 の キ ッ カ ケ は 分 か ら
その食べ物を調べていくうちに私の何回目かのフラ
に 戻 っ た 理 由 は 覚 え て い る。 高 山 な お み さ ん の フ ラ ン
ス日記を読んだからだ。
この本を読むまでフランス イコール きれいな街、す
て き な 時 間 で あ っ た。 だ が 本 当 に そ う な の か。 美 し い
こ と し か 書 い て い な い 本 は あ る し、 そ れ は 全 体 の 一 部
分 だ け だ と い う こ と は 知 っ て い た が、 全 体 は 分 か ら な
い。 き れ い な 街 も ケ ン カ し た り 嫌 な こ と が あ っ た ら く
− 29 −
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− 30 −
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− 31 −
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五九五六 六一〇〇
丸善ジュンク堂書店特急便係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
〇三
http://www.junkudo.co.jp/
い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て
以下の通りです。
ありがとうございます。本誌定期購読料は
本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも
☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、
定期購読料
年間一二三〇円︵送料込︶
現金書留もしくは八十二円切手十五枚で
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お申し込み先
しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。
四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、
│
五九五六 六一二〇
〇三
│
掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお
〒
1710022
住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。
六一一一
│
返しいたしませんのでご了承下さい。
東京都豊島区南池袋二 一五 五
五九五六
FAX TEL
☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。
〒
〇三
丸善ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係
│
TEL
│
│
編集後記
QR コード
さん﹂でご紹介した、台湾・
台北の誠品書店ですが、新義
店となっていたのは信義店の
誤りでした。訂正してお詫び
いたします。
︵緒︶
− 32 −
│
│
│
先月号巻頭の﹁世界の本屋
PC ・スマートフォンから
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
﹁その男、
泥酔につき﹂
います。
違 い、 よ う や く 会 え た の は 今 年 の 五 月。
しかしてその裏の顔は、ひっそりとミ
しています︵本を読む時間はあまりない︶
。
を詰めたり本を注文したり本を送ったり
文芸書担当として、日々本を出したり本
に僕なんかにも﹁出版社に紹介してもら
ドバイスできることなんてないし、たま
たり前ですが、僕くらいのぺーぺーがア
いる。会ってやってもらえんか﹂と。当
﹁ミステリ作家を目指している友人が
か、五十代のおっさんです。
すが、その友人は僕より年上で、という
さんはとても優しく、共通の趣味である
し、あくまで先輩としてたててくれる呉
作家として一気に追い抜かれた僕に対
峰。 東 野 圭 吾 も 池 井 戸 潤 も 受 賞 者 で す。
呉勝浩さんなのでした。
場している、本年度江戸川乱歩賞受賞者、
いるこの冊子の巻頭﹁著書を語る﹂に登
念の乾杯をしたのが、今あなたが読んで
な ん と、 つ い に そ の 某 賞 に 受 賞 が 決 ま
ステリ作家をやっていたりします。これ
えませんか﹂とか言ってくるような人も
ことがわかった映画についてともに熱く
り、東京での記者会見を終え、帰ってき
まで単著は三冊、共著は一冊出させてい
い る の で︵ 僕 が 紹 介 し て 欲 し い く ら い
語り、しかしその夜呉さんはゲロゲロに
そ の 友 人 が 去 年 あ た り か ら、﹁ 会 わ せ
ただいてます。とはいっても最近は裏の
だ︶警戒していたのですが、どうも話を
吐いてしまったのでした︵笑︶。呉さん、
たい人がいる﹂としきりに言ってくるよ
顔比率は三パーセントくらいになってし
聞 く と、 某 文 学 賞 の 最 終 候 補 に 何 度 か
賞金でおごれと言ったのは冗談なのでま
﹁ と う と う 会 え ま し た ね ー﹂ と 受 賞 記
まってます。
残っているとのことで、その文学賞の名
たその日の夜。
格 闘 技 が 大 好 き で、 出 し て る 本 も だ
前を聞いた僕は﹁そそそ、それはすごい。
うになりました。なんだか結婚したい人
い た い そ ん な 感 じ の も の で す。 こ の 趣
た飲みましょうねー︵割り勘で︶。
を連れてこようとしている息子みたいで
味が縁で知り合った友人が近所に住ん
僕がアドバイスして欲しい﹂となったの
どうも、大阪の書店員です。表の顔は
で い て、 ま あ し ょ っ ち ゅ う ど う で も い
ですが、いろいろとスケジュールがすれ
653- 1600013 0008
︵伯方雪日︶
乱歩賞といえばエンタメ文学賞の最高
いことをしゃべくりながら飲んだくれて
二〇一五年十一月五日発行
﹁書 標
第 号
ほんのしるべ﹂
頒価五十円︵本体四十六円︶
編集・発行人
工
藤
恭
孝
発 行 所
㈱丸善ジュンク堂書店 〒 東京都新宿区三栄町二十九 ニューフィールドビルディング
印 刷 所
㈱七
旺
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〒 神戸市長田区一番町二丁目一
444