Title №21:根管内に突起状石灰化物がある感染根管に対し て手術用顕微鏡による歯内療法を行った1症例 Author(s) 末原, 正崇; 佐野, 陽祐; 佐古, 亮; 杉内, 亜紀奈; 間, 奈津子; 村松, 敬; 古澤, 成博 Journal URL 歯科学報, 115(3): 282-282 http://hdl.handle.net/10130/3691 Right Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ 282 学 会 講 演 抄 録 №20:筋圧形成時のモデリングコンパウンドの軟化条件に関する検討 1) 髙野智史1),釘宮嘉浩2),古池崇志1),上田貴之1),櫻井 薫1)(東歯大・老年補綴) 2) (東歯大・千病・総合診) 目的:有床義歯の製作にあたりモデリングコンパウ ンド(以下,MC)を用いた筋圧形成は,口腔周囲 筋の動きに調和した義歯床縁形態を得ることを目的 として長年行われている。しかし,各種 MC の選 択や軟化方法は術者の経験に依存しているのが現状 である。本研究は術者の経験に左右されない MC を用いた筋圧形成法の確立を目的とし,印象採得時 に MC にかかると想定される機能圧を測定し,軟 化条件の検討を行った。 方法:被験者は,歯列欠損のない健常有歯顎者10名 (平 均 年 齢29±1. 7歳)と し た。筋 圧 形 成 時 に MC に か か る と 想 定 さ れ る 機 能 圧 を 舌 圧 測 定 器 JMTPM(JSM 社)を用いて測定した。測定部位は, 上顎第一大臼歯部齦頬移行部,下顎第一大臼歯部口 腔底,同部位齦頬移行部,下顎中切歯部口腔前庭と した。機能圧は,各部位に測定用プローブを挿入 し,機能運動を行わせた際の最大圧力を計測した。 その後,測定した機能圧を基に,ペリコンパウンド (ジーシー,東京,以下,Green) ,イソコンパウ ンド(ジーシー,以下 Pink) ,インプレッションコ ン パ ウ ン ド レ ッ ド(Kerr,U. S. A,以 下 Brown)の3種 類 の MC を 用 い て,55℃,60℃, 65℃の温水にそれぞれ20秒,25秒,30秒浸漬後,各 部位の機能圧相当を負荷し,軟化状態を確認して, 水温,浸漬時間の検討を行った。 結果および考察:各部位の機能圧は,下顎前歯部口 腔前庭の口角牽引運動が8. 13kPa と最も高く,下顎 第一大臼歯部頬側齦頬移行部の非習慣性咀嚼側にお ける大開口が2. 54kPa と最も低く,両者間に有意差 が認められた。このことから部位ごとに MC の種 類,軟化条件を考慮する必要性が示唆された。一 方,機 能 圧 を 基 に 検 討 し た MC の 軟 化 状 態 は, Green は 水 温60℃で 浸 漬30秒,水 温65℃で 浸 漬25 秒,30秒において最低の機能圧である2. 54kPa で筋 圧形成可能な軟化を示した。Pink は水温55℃で浸 漬25秒,30秒,水温60℃で浸漬20秒,25秒,30秒に おいて最低の機能圧で軟化を示した。Brown は水 温60℃で浸漬30秒,水温65℃で浸漬20秒,25秒,30 秒において最低の機能圧で軟化を示した。以上よ り,部位ごとに機能圧は異なるものの,筋圧形成時 は60℃の温水に Green と Brown は30秒,Pink は20 秒浸漬することで全ての機能運動時の筋圧を印記可 能となることが明らかとなった。 №21:根管内に突起状石灰化物がある感染根管に対して手術用顕微鏡による歯内療法を 行った1症例 末原正崇,佐野陽祐,佐古 亮,杉内亜紀奈,間 奈津子,村松 敬,古澤成博 (東歯大・保存) 目的:感染根管治療の目的は根管および髄室の無菌 化であり,根管の機械的拡大や化学的清掃が最も重 要な要素である。しかしながら,根管内に石灰化物 などの構造物が形成されている場合,根管処置用の 器具の挿入や到達が阻害され,その結果,根管内の 感染源が充分に除去しきれず,感染根管治療の目的 が達成出来ない状態となる。一方,近年歯内治療に 手術用顕微鏡を応用することの有効性が認識され, 臨床で活用されている。今回我々は,根管処置に障 害となる大きな根管内石灰化物が存在し,そのまま では通常の感染根管治療が行えない症例に対し,手 術用顕微鏡と超音波機器を用いることによってこれ を安全に除去し,治癒に導くことが出来た症例を報 告する。 症例(事例) :患者は18歳の男性。上顎右側中切歯 の慢性化膿性根尖性歯周炎ならびに歯内歯の疑いに より,東京歯科大学水道橋病院へ紹介により来院し た。患者は13歳の時に転倒し上顎右側中切歯部を強 打したが,そのまま放置していたとのことであっ た。自発痛は無く,軽度の垂直打診痛が認められ た。唇側根尖部歯肉には瘻孔が認められ,歯髄電気 検査の結果は陰性で,歯の動揺は無く,歯周ポケッ トは全周2mm であった。根尖部に歯槽硬線と連続 したエックス線透過像が認められた。また根管中央 部にエックス線不透過性の構造物が認められ,この 構造物は撮影領域における4本の歯(上顎右側側切 歯∼上顎左側側切歯)全てに認められた。以上の所 見から,上顎右側中切歯は外傷による歯髄壊死から 継発した慢性化膿性根尖性歯周炎と診断し,治療計 画として根管内の石灰化物の除去と,その後の水酸 化カルシウム療法が必要と考えられた。髄室開拡 後,手術用顕微鏡で根管内に突起状石灰化物を直接 確認し,根管壁との付着部位に対して超音波チップ により振動を与え,これを確実に除去した。手術用 顕微鏡により通法の治療が充分に行える環境になっ たことを確認し,水酸化カルシウム療法による感染 根管治療を行った。 成績および考察:水酸化カルシウムの根管内応用2 か月後には,根尖孔の石灰化による閉鎖が確認でき たため,側方加圧根管充填を行った。根管治療に障 害となる構造物を手術用顕微鏡により直接確認しな がら安全に除去することにより,根管側壁穿孔など の危険を回避することができ,確実に治癒に導くこ とが可能になったものと考えられ,手術用顕微鏡の 有効性が再確認された。 ― 98 ―
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