ライセンスビジネスによる日本アート業界の発展に関する研究~文化寄与

平成26年度 MIPペーパー
ライセンスビジネスによる日本アート業界の発展
に関する研究
~文化寄与のための知的財産戦略~
東京理科大学 専門職大学院
イノベーション研究科
知的財産戦略専攻
学籍番号 M313060 氏名 山根 尭
指導教員 教員名 草間文彦
平成 27 年 7 月 4 日
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はじめに(研究の背景と目的)
I.
アートライセンスを行う意義
II. アートとは何か
1.アートがもたらす効果
2.日本においてのアートの関心
3.アートの国際化
III. アートライセンスとは何か
1.ライセンス業界におけるアートライセンス
IV. アートライセンスと知的財産
1.著作権
1)複製権
2.著作人格権
1)公表権
2)氏名表示権
3)同一性保持権
3.アート作品の利用
Ⅴ.アートライセンスをするにあたり大切なこと
1.アート作品が個性的であり、かつライセンスに適しているのかの選定
2.アート自体のブランド認知力の向上
3.ライセンス商品のデザイン性の高さの重要性
4.アーティストとイラストレーターの違いを認識させる
Ⅵ.アートライセンスのリスク
Ⅶ.アートライセンスの実例
1.アーティストのライセンス
1)アンディ・ウォーホル
2)kinpro
2.リテール/ブランドのライセンス
1)ユニクロ
2
2)SLY
3)アートとファッション
4)日本のファッション市場の特徴
3.美術館におけるアートライセンス
1)日本の美術館
2)海外の美術館
3)MoMA
4)海外の美術館のアートライセンス
5)日本の美術館のアートライセンス
Ⅷ.エージェントの必要性
おわりに
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はじめに(研究の背景と目的)
知的財産戦略の専門職大学院(MIP)に入学してから、多くのことを学んだ。
特許、意匠、商標、著作権、ライセンスビジネス、デザイン戦略、ブランド戦
略…。その中でも、特にライセンスビジネスは研究室に所属して最も力を注い
で学んだ。また学んでいく間に様々な業界で知的財産戦略というものがまだま
だ成長過程にあるということがわかった。
そして同時に入学をきっかけに国立新美術館でサポートスタッフとして活動
するようになり、主に美術館の内部業務などを経験した。活動において美術館
のスタッフはもちろんアーティストや美大生と話をする機会も多くあった。そ
こで感じたのはアートの世界でも知的財産について思ったよりも考えられてい
ないということだ。著作権者だけでなく、これを扱う様々な人々が著作権法や、
それに基づく作品の扱い方を正しく理解していないために、証拠不明な権利料
が支払らわれていたり、著作者が安易に著作権を放棄していたりすることもあ
る。本レポートの研究課題の1つでもあるアートの「ライセンス商品化」でも、
著作者の意図とは違う商品が製造販売されている場合もある。改善点は多くあ
るはずだ。
そしてなにより思うのは、日本のアート業界は閉鎖的であるということだ。
本来、美術館は開かれたものであるはずなのに、これに親しむ層は一部である。
その結果、日本ではアートは、日常生活で身近に感じられないものになってい
るのではないか? このことを例示しているのが下の表である。
この表は英国と日本という地理的状況の似た 2 カ国のアートの市場規模を示
しているのだが、日本は英国の約1/8という規模にとどまっている。
出典:佐々木雅幸「創造産業による都市経済の再生」
『季刊経済研究』第 26 巻第 2 号 2003 年
ここで記すべきことは、音楽が CD に、あるいは小説が本になるように、一
次的著作物として大量な生産が可能な一方で、アートは基本的には一点ものか、
せいぜい版画のように何百版の量の世界を出ないということである。
この、量の限界を越え、また結果的には単価を下げることにもなり、それ
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により多くの人々にアートに親しんでもらうために、私は MIP で特に力を注い
で学んだライセンスビジネスを生かしたい。ライセンスビジネスは一言で言え
ば発信のビジネスである。その特徴を生かし、閉鎖的な日本のアート業界にイ
ノベーションを起こしたい。そしてそれにより日本のアート業界が発展し、よ
り豊かなものとなればと願っている。またライセンスビジネス市場内のアート
の市場規模も非常に小さい。たとえば、アートライセンスが比較的活発である
米国でさえも下記のようにライセンス業界全体約 1150 億ドル(約 11 兆 3 千億
円)のうち 3%強の 40 億ドル(約 4500 億円)に過ぎないのである。アートラ
イセンスが発展することでライセンスビジネス自体にも多様性をもたらすこと
になればという期待をもって本論文に取り組んだ。
出典 LIMA (国際ライセンシング産業マーチャンダイザーズ協会)/イェールビジネススクール共同
北米ライセンス市場調査 2014 版
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Ⅰ.アートライセンスを行う意義
日本の映画、音楽の市場規模はそれぞれ1807億円、2130億円と推定
されるのに対し、アートの市場規模は850億円と約1/20以上の差がある。
そして日本にはアートを生業としている人は約 3 万 9 千人いる。しかし、そ
のなかで本当にアートだけで生計を立てられている人はどれくらいだろうか。
日本においてのアートの関心度はどのくらいであろうか。歴史を振り返れば葛
飾北斎、伊藤若冲、本阿弥光悦など数多くの有名な美術家がいた。現存のアー
ティストではどうであろうか。誰もが知っている有名なアーティストと言えば
草間弥生、村上隆などが挙げられるであろう。しかし多くのアーティストは日
が当たることなくアーティスト人生を終える人、夢半ばに諦める人、という現
実がある。特に日本では 20 代の若いアーティストが活躍することはめったに見
られない。
一方で他のジャンルの著作物を生業としている、ミュージシャンや小説家た
ちなどは 20 代前半で活躍するケースも多くみられる。アーティスト(artist)
の本来の意味は芸術家という意味である。日本では、アーティストといえばミ
ュージシャンのほうが先に思いつくのではないであろうか。しかし、美術家も
当然アーティストである。よってここでのアーティストは便宜上、美術家のこ
とを指すこととする。そのアーティストたちが置かれている日本の現状に疑問
を感じる。もっと活躍できる場を設けるべきではないのか。そのようなシステ
ムを構築すべきではないか。もちろんすべてのアーティストたちが、お金儲け
だけのためにやっているのではなく、またアートとは商業目的で作られている
ものでもない。しかしながら、ある程度の稼ぎというものは必要なことである。
また名が知れることで、自己の表現を多くの人に見てもらえるなど、アーティ
ストも恩恵を受けられるはずである。
事実、村上隆は世界的著名デザイナーであるマーク・ジェイコブスによって
ルイヴィトンとコラボレーション商品(図 1)を展開したことによって名を世界
に轟かせたのである。
©ルイヴィトン×村上隆(図1)
そこで提案したいのがアートライセンスである。アートライセンスについて
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の詳細は後述するとして、このビジネスが現在の日本の状況に一石を投じるこ
とになるのではないかと考える。イノベーションを起こすことができるのでは
ないかと。またアートライセンスによって、普段アートにあまり関心を持って
いなかった人々の目にも触れやすくなることで関心を持つ層の増加も見込んで
いる。それによりアートがもっと注目のされるものになればと願う。
Ⅱ.アートとは何か
ここで指すアートとは絵画、彫刻、造形、装飾などを指す。いわゆる美術館
の展覧会などで見ることのできる作品である。ほとんどのものは権利が有効か
は別にして、著作権の対象に分類されるものであろう。建築や庭園などもアー
トと呼ぶにふさわしい作品もあるが研究の目的であるアートライセンスには不
向きのため、今回は除外する。
1.アートがもたらす効果
アートは、人々の感性や日常生活を豊かにし、更にはクリエイティブワーク
に影響を与えるなど仕事にも良い力が働く。人生そのものに良い影響を与える
と言えよう。そのような効果をアートは秘めていると思う。
また後述するがアートを利用した地域おこしというものが日本では、現在一
つのトレンドとなっている。アートであればたとえ観光名産がないような地域
でも、アート作品と街や自然を融合させることで一つの観光名産となる。もち
ろん観光地であっても、それらと融合することで新たな化学反応がおきる可能
性もある。それによって雇用創出や税収の増加など地域に大きな経済効果をも
たらす。例えば、日本で最初の本格的な大規模国際展である横浜トリエンナー
レは2005年に開催された第2回では、経済波及効果が総額50億円を上回
る効果があったとも言われている。iちなみに、世界的に有名な芸術祭はヴェネ
ツィア・ビエンナーレである。イタリアのヴィネツィアで2年に一度、開から
れる芸術祭で参加国が賞を争うことからアートのオリンピックとも言われてい
る。アートは文化的寄与だけでなく、経済にも大きな影響をもたらすことがで
きる。
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©Michael LANDY ART BIN 2010/2014 | Photo: KATO Ken
2.日本においてのアートに対する関心
日本は諸外国に比べアートに対する関心が低いと言われてきた。2007年
におこなわれた森美術館の運営母体である森ビルが東京、ニューヨーク、パリ、
ロンドン、上海の世界5大都市に対しておこなったアートに対する関心の調査1
によると、東京は美術館やギャラリーなどの一人あたりの来館頻度数は平均で
年に1.9回と5大都市の中で最低の数字であった。ちなみに最高はロンドン
の3.9回である
しかしながら近年、日本においてアートに対する関心が急速に伸びてきてい
る兆候がある。
美術館来場者数ランキング1位、2位
国立新美術館・・・203 万人
金沢 21 世紀美術館・・・147 万人
日本で開催されている主なアートによる地域おこし
瀬戸内国際芸術祭・・・瀬戸内海の島々で開催される芸術祭 107 万人
道後オンセナート・・・道後温泉で温泉街とアートとの融合 横浜トリエンナーレ・・・日本で最初の本格的な大規模国際展 21 万人
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森ビル株式会社 https://www.mori.co.jp/pdf/2007121910103806887.pdf
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国立新美術館
この表の通り、2013年度に美術館に訪れた人数2は、一番多い美術館で国
立新美術館の203万人、次に金沢21世紀美術館が147万人と多くの人が
訪れている。また、近年アートを利用した地域おこしがブームである。アート
による地域おこしで、最も有名なのは瀬戸内国際芸術祭である。瀬戸内国際芸
術祭は瀬戸内海の島々で開催される芸術祭であり、2010年に第1回、20
13年に第2回が開催された。同芸術祭は交通の便が良いとは決して言い難い
地域にも関わらず、2013年に開催された第2回の芸術祭では約107万人
が訪れた。ほかにも道後オンセナートや横浜トリエンナーレなど場所や形態が
実に多様である。これらの数字は日本でのアートの関心が広がってきているこ
とを表しているのではないであろうか。
3.アートの国際化
アートは視覚で感じ、心に訴えかける芸術であるため言語的な制約を受けな
い。そのため国境を超え、日本国内のみならず国際的に評価される可能性は十
分にある。もちろん海外で活躍するにはアーティスト自身が外国語を話せ、か
つプレゼンテーションをおこなえる(日本では寡黙なアーティストのほうが良
いイメージがあるが、欧米のアーティストは話すのが上手である。)ことに越し
たことはないが、音楽などに比べ言語的制約を受けないことは大きなアドバン
テージであることには変わりない。そのため日本国内だけでなく、海外でも活
動できるチャンスが十分にある。
国立新美術館平成 25 年度 活動報告 http://www.nact.jp/annual_report/pdf/nact_annual_H25_web.pdf
金沢 21 世紀美術館
https://www.kanazawa21.jp/
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Ⅲ.アートライセンスとは何か
前述したように、アートに対する関心は高まってきている。そこでその機会
を活かし、アートに対する関心をより一層高めるために、更にアーティストが
活躍できる場をより多く築くために、アートライセンスの普及に努めてはどう
かと提案する。アートライセンスとは言葉の通り、アートをライセンスするこ
とである。アーティスト(ライセンサー)のアート作品を企業など(ライセン
シー)が契約を通じて借り、そのアート作品を利用した商品を製造・販売する
仕組みである。その対価として作品を借りた側はアーティストにロイヤルティ
を支払う。
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アートライセンスの商品は何気ないところで目にしている。美術館の物販店
などでもよく見かけ、定番商品でもある作品をポスターや絵葉書にしたものか
ら T シャツにデザインされたものやインテリア、ジグソーパズル、最近ではス
マートフォンカバーなどでもライセンス商品を目にすることがある。
後に取り上げるが、ポップアートのアンディ・ウォーホルは多くの作品をラ
イセンスしていることで知られている。他にもキースへリングやバスキュアな
どが世界的には有名である。彼らのオリジナルの作品を買うものならば、高価
なものでは何億という価格がつくことがある。しかしながら、ライセンス商品
であれば若い人でも手を出すことができる価格にすることも可能である。アー
ト作品はひとつの作品を制作するのに多くの時間を費やす。しかも CD や書籍
などと違い一点ものである。しかしながら、ライセンス商品にすることで大量
生産を可能とし、安価で購入することもできる。ここにビジネスの可能性があ
るのではないかと考える。
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©アンディ・ウォーホル〈キャンベル缶〉、ファーストリテイリング web http://sprzny.uniqlo.com/jp/
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1.ライセンス業界におけるアートライセンス
アメリカ市場のイェール大学経営大学院の研究チームの調査4によると最もラ
イセンサーのロイヤルティ収益が多いのは、キャラクターであり25.5億ド
ル、次いでコーポレート9億2800万ドル、ファッション7億5500万ド
ル、スポーツ6億8500万ドル、大学関連2億600万ドルなどが続く。全
体のライセンサーのロイヤルティ収益が54億5400万ドルであるため、こ
の上位5部門だけで約94%も占める。
特にキャラクターは全体の46.7%と約半分近く占めている。一般的にラ
イセンスビジネスといえば、キャラクターと思いつくのも上記の数字にも表れ
ている。そのなかでもキャラクターライセンスビジネスといえばディズニーで
あろう。ディズニーキャラクターのライセンス商品はファッションやお菓子、
家庭用品、文房具など多岐のジャンルにわたって展開されている。今年は「ア
ナと雪の女王」が大ヒットしたためライセンスも「アナと雪の女王」の関連商
品で非常に好調であった。またマーベルやピクサー、スターウォーズもディズ
ニーの傘下であるため、キャラクターのなかでもディズニーが占める比率は非
常に高い。もちろん日本でもキャラクタービジネスは盛んであり、ハローキテ
ィーなどは世界的にも大人気である。また昨今は地方キャラクターのゆるキャ
ラブームもあり好調であった。
コーポレートライセンスはコカ・コーラが最も有名であり、他にも外国産自
動車メーカーや食品メーカーなどでも、多く行われている。ファッションのラ
イセンスは通常はあるブランドが海外に新規参入するときにコストや時間の削
減のために現地企業にブランドを貸すことが多い。スポーツはアメリカではお
もにベースボール、アメリカンフットボール、バスケットボールのチームのラ
イセンスが盛んに行われている。ヨーロッパではサッカーチームのライセンス
が盛んである。大学関連は大学名の入った洋服などアパレル関係が盛んである。
そのなかアートライセンス市場は39億8千9百万ドルであり、ライセンス
市場のなかで占める比率は決して大きいわけではない。しかしながらアートラ
イセンスにはキャラクターなどにはないデザイン性の高さがあり、商品次第で
はライセンス商品にしたときの反響も大きい。また知的レベルの高い市場であ
る。現在キャラクターがライセンス市場の約半分を占めているが、この状況に
変化をおこすことも必要なのではないかと考える。それがライセンスビジネス
に多様性をもたらし、ライセンスビジネスの発展にも繋がるはずであるためだ。
4
ライセンス団体の LIMA がイェール大学経営大学院のラヴィ・ダール教授の調査結果をまとめたレポー
ト 2013 年データ
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Ⅳ.アートライセンスと知的財産権
アートは著作物であるため、アートライセンスと密接的に関係のある知的財
産権は著作権である。そのため著作権に関する、ある程度の知識を有すること
が好ましい。そのためアートライセンスを行うにあたって、知っておくべき著
作権とアートライセンスに関連する法律を挙げておく。
1. 著作権
著作権の保護期間は原則、著作者の死後50年とされているが、TPP によっ
て70年に見直される可能性がある。日本はベルヌ条約に加入しているために
無方式主義を採用している。つまり特許などのように審査を受け登録するとい
う方式をとらなくてよい。著作物を創作した時点で権利が与えられる。そのた
め著作者が誰であるのか推定することが容易でない場合が往々にある。よって
作品に著作者名などが表示されている場合などは、そのものが著作者であると
推定するとしている。
(14条)また、アート作品では作者が不明ということが
多々あるため注意が必要である。
1)複製権
複製権とは著作物を複製する行為について著作者が有する権利である。これ
がアートライセンスでは最も関わる権利である。アート作品をポスターや、T
シャツをプリントするこれらの行為は複製権として著作者に権利が及ぶ。
2. 著作者人格権
著作者人格権とは財産権である著作権と異なり、作者の人格的利益を守るた
めに定められていて、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの要件で成り
立っている。著作者の生存期間中に認められ、かつ他人には譲渡することがで
きない。
(59条)しかしながら、本人の死後であっても、著作者人格権の侵害
となるべき行為をしてはならない(60条)という規定がある。したがって著
作者が亡くなった後に著作者人格権に接する行為をする場合、遺族等が存在す
るのなら、了解をあらかじめ得ておくことが最善策である。一般に、アートの
ライセンス契約の中には、ライセンサーが個人でライセンシーが大きな企業の
ケースも多く、この場合力関係で、著作人格権については、
「これを行使しない」
という条項が入ってしまうことが多い。しかし、アートというものの芸術性が
高いことから考えて、この条項を入れることが適当かは大変疑わしいと思う。
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1)公表権
公表権とは著作物について公表するか否か、また仮に公表するのであればど
のように公表するかを決めることのできる権利である。
(18条1項)しかし公
表していない著作物の著作権を譲渡した場合、著作者は公表すること、公表す
る方法アートでいえば展示することに同意したと推定される(18条2項柱書、
1号)としている。よってイラストレーターは依頼されて作品を制作している
ため、作品を譲渡した場合、公表することに同意したと推定されることになる。
2)氏名表示権
氏名表示権とは著作物の公表の際に著作者の名義を載せるのか、または匿名
にするのかを決めることのできる権利である。(19条)
3)同一性保持権
同一性保持権とは著作物の同一性を保持する権利である。意に反してこれら
の変更、切除その他の改変をうけない(20条1項)ということである。しか
し例外規定として著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを
得ないと認められる改変(20条4号)とされている。たとえばアート作品を
ライセンスし T シャツにプリントするときに技術上の理由から色彩を忠実に再
現できない場合などが考えられる。しかし再現度合が低いのが明らかであれば
やむを得ないとは言えないため、やはり権利者に許諾をとっておくことが安全
策である。
3.アート作品の利用
アート作品を利用するとき著作権の権利期間中である場合は著作権権利所有
者に許諾を取る必要がある。著作権権利期間が切れている場合はパブリックド
メインに属するため、著作人格権を侵害しない限り、本来は自由に利用できる
はずである。しかし現実は違う。
たとえば美術館が所有している作品で商品を販売するとしよう。その場合は
貸した側には作品の所有権があるが、所有権に対してロイヤルティなどの報酬
を支払う義務はなく、また判例でも所有権を有している側の訴えを棄却してい
る事例5もある。しかしながら現状ではトラブル回避のため、著作権保護期間が
切れている作品のライセンス商品化においても、ほとんどの場合で何らかの名
義で報酬がライセンシーからライセンサーに対して支払われている。展覧会な
5
顔真卿自書建中告身帖事件
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どで作品を借りている場合には借りる側の立場は当然弱く、力関係が働く。ま
た日本では勝ち負けには関係なく、裁判になるなどのネガティブなことは事前
に避けたいという風土があることも影響しているだろう。さらにアート作品の
ライセンス商品を作る場合には、そのオリジナルの作品の写真や雛型などの精
密なデータが必要である。これらのデータは、ライセンス契約があれば、その
条項の中で入手できる条項を入れて解決されるだろうが、著作権が切れている
場合でもデータは必要になり、何らかの契約が必要であるという実態も考慮し
なくてはならないだろう。
Ⅴ.アートライセンスをするにあたり大切なこと
実際にアートライセンスをする場合、いくつか大切なことがある。それは下
記の通りである。
1. アート作品が個性的であり、かつライセンスに適しているかの選定
作品が個性的でなければ、似たような作品をつくることができてしまう。
キャラクターなどであれば、その時の流行の中で似たようなプロパティが並
び立って人気を持つ(たとえば「ゆるキャラ」のように)ということもしば
しば見受けられるが、アートでは状況が異なる。作品の独自性ということが
なければ、芸術として成立しにくいのがその点である。絵であれば、印象派
とかキュビズムとか、ポップアートとか大きな分類はあるが、あまりにもオ
リジナルの作品に似ているものは「まがいもの」と見なされることが多い。
つまりアートのプロパティ6はできるだけ個性的であるほうが良いと言って
過言ではない。ただ、そのことは複雑な作品が良いということではなくて、
単純な作品であっても、その作品の作者が誰であるのか一目でわかるもので
あれば良い。またライセンスすることに向いている作品であるかの判断も大
切である。この判断も、優秀なエージェントが行うことによって、個性的だ
がアートとしては売れ行きに限界があった作品が、ライセンス商品として大
きく飛躍することもある。
2. アート自体のブランド認知力の向上
アートライセンスを成功させるためにはアート作品自体、そしてアーティ
スト自身の知名度の向上も同時に努めなければならない。たとえば、さきほ
どから例に出しているアンディ・ウォーホルやキースへリングのようなアー
ティストであれば、知名度が高く、顧客吸引力も充分にあるため、作品を使
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商品化権の対象となるもの
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用したいライセンシーも多く存在し、ライセンス商品化もある程度容易であ
ろう。しかしながら、多くのアーティストは知名度が高いわけではない。そ
のために作品のブランド認知力向上に努めなければならない。日本はプロパ
ティの人気レベルでライセンスビジネスを行うことが多い。初めからプロパ
ティの人気度ありきの商売をしている。すなわち人気のキャラクターの権利
をいかに獲得するかに力を入れている。人気のプロパティでも、たとえ知名
度のないプロパティであっても、そのブランド認知力をさらに向上させるた
めに、いかにプロモーションの戦略(市場調査、財務分析など)を練り、実
行することが大切である。それと同時にアーティストは個展を開催したり、
メディアで自身の作品の紹介がされるようにするなどして、アーティストと
しての質を高めることも大切である。
3. ライセンス商品のデザイン性の高さの重要性
次に重要な点に、アートライセンスをするにあたって、単純にアート作品
をそのままライセンスすれば良いのかという点がある。もともと、アートラ
イセンスの原点的な商品、つまりポスターや絵はがき、カレンダーなどはそ
れで良いだろう。それらのデザイン性は関係なく、印刷の質などが商品の品
質の分かれ目になるからである。しかし、現在のようにアート作品をアパレ
ルや家具、家庭用品、ゲームなどさまざまなライセンス商品にするためには、
その商品にマッチしたデザインにすることが大切である。アートはキャラク
ターなどの他のプロパティと比べ、デザイン性の高さが重要である。しかし
ながらライセンシーのデザイナーに任せっきりにすることが必ずしも良い
わけではない。アーティスト(またはエージェントにデザインのコンサルタ
ントをできる人材がいるならば、その担当と)と協議しながら作品のコンセ
プトは大切にしつつ、オリジナルのアートを変化させてライセンス商品にあ
ったデザインにすることが重要である。ライセンシーのデザイナーだけでデ
ザインしてしまったらアーティストが大切にしてきた作品のコンセプトま
でもが失われてしまい、オリジナリティがなくなるおそれがある。ライセン
シー任せにしていてはアートライセンスが際立つことはないに等しいため、
デザインの在り方が重要である。
4. アーティストとイラストレーターの違いを認識させる
これはライセンスするアーティスト、特に知名度があまり高くないアーテ
ィストに対して必要なことである。若い多くのアーティストは自身が何者で
あるのかの認識があいまいであり、それゆえにイラストレーターとしての活
動を強いられていることが多い。
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アーティストとは自ら作品を作っているため当然著作権はアーティスト
に帰属する。一方でイラストレーターとはクライアントに頼まれて、デザイ
ンを描き対価をもらう。そのため著作権はクライアント側に帰属し、イラス
トレーターは権利を放棄してしまう。つまり著作権を所有していなければ、
作品をライセンスすることができない。このようにイラストレーターとして
活動している人には、その重要な違いを認識していない人が多い。
Ⅵ.アートライセンスのリスク
アートライセンスをやるにあたり、双方(アーティスト、企業などのライセ
ンシー)にリスクがある。
まずアーティスト側のリスクを取り上げる。最も考えられるのはアート作品
固有の価値を下げてしまうおそれがあることである。アーティストの作品のコ
ンセプトにそぐわないライセンス商品をつくられてしまう可能性があることな
どが挙げられる。そのためアーティスト側はライセンシーと協議し、作品の価
値を下げないように注意しなければならない。もちろんアーティストが予期し
ていなかった化学反応が起き、ライセンスすることで新たなアートができるこ
とも十分に考えられるが。
次に企業やブランドなどのライセンシー側が考えられるリスクを取り上げる。
ライセンシー側にとってのリスクはアート作品が著作権侵害を行っている可能
性である。著作権は登録制度があるわけではないので、世界各国に広がるアー
ト作品の中から確認しようはなく、ライセンス側のアーティストが実は侵害を
意図的に行っているというリスクがある。ライセンスはしていないがアーティ
ストが意図的に著作権侵害をおこなっていた例を一つ上げる。
和田義彦にアルベルト・スギの著作権侵害事件である。侵害者である和田義彦
は芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した画家であるが、実はイギリスに留学中で
あったときの知人であるイギリス人画家アルベルト・スギの作品を盗作してい
た。その結果、芸術選奨文部科学大臣賞が取り消されたという事件があった。
(左)和田義彦(右)アルベルト・スギ
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このような場合、ライセンシーがライセンスの権利を取得した作品が、実は
盗作であったというリスクが考えられる。アート作品は世界各国様々なときに
つくられており、また著作権は登録制度もないため、絶対的な確証を得ること
はできないが作品の検証などを行い、少しでもリスクを減らす必要がある。
また前述の「アーティストとイラストレーターの違いを認識させる。」の項で
も述べたが、若いアーティストに見られることなのだが、企業などに依頼され
クリエイターとして作品をつくっていため著作財産権はアーティストに帰属し
ておらず、依頼主が所有していることもある。それにもかかわらず、その事実
を認識せずにアーティストが自身の権利を所有していないアートをライセンス
してしまうこともある。そのためライセンシーは過去の作品を利用するときは
アーティストに確認し、ライセンスとして利用できる作品とできない作品にわ
ける必要がある。
Ⅶ.アートライセンスの実例
次にアートライセンスの実例を、前述のアートライセンスをするにあたり大
切なことと交えながら挙げていく。アートライセンスはまだまだ少ないが、い
くつか日本においても実例がある。大きく3つに分けてアーティストのライセ
ンス、リテール/ブランドのライセンス、美術館のライセンスを取り上げる。
1.アーティストのライセンス
1)アンディ・ウォーホル
ここでまず日本での例を見る前に、世界的に見ても最もライセンスされてい
るアーティストであり、アートライセンスの代表例であるアンディ・ウォーホ
ルをとりあげる。アンディ・ウォーホルはアメリカ出身のポップアーティスト
でキャンベル・スープ缶やマリリン・モンローなどを描いた作品で知られてい
る。シルクスクリーンという手法を使用したアート作品を多く制作している。
アパレルブランドだけでもユニクロやディオールと低価格ブランドからハイブ
ランドまで幅広いジャンルでライセンスされている。アンディ・ウォーホル亡
き今はアンディ・ウォーホル財団がライセンスを担当している。この場合、財
団は実際には優秀なライセンス・エージェントとして活動をしていると言える。
アンディ・ウォーホルの死後 10 年ほどは、彼の作品が有名な商標を扱ったもの
が多かっただけに、訴訟までには至らないまでも、法的な問題でライセンスが
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できない期間があったということである。しかし、財団はその法人格を生かし、
各商標の保有者と円満な関係を作り、ライセンスを可能にしたのである。
(右)©アンディ・ウォーホル 〈キャンベル缶〉
左の写真、前のページで使っているので、何か他のほうが良くないか?
2)kinpro
次に kinpro というアーティストの作品をライセンスした例を挙げる。kinpro
とは北海道在住アーティストの新矢千里さんのアーティスト名であり、自然を
モチーフにしたデザインである。日本だけでなくイタリア、フランス、ドイツ
など欧米を中心に海外でも活躍しているアーティストである。雑誌や広告、ア
パレル、インテリア雑貨、お菓子類など幅広い商品でライセンス展開されてい
る。kinpro はライセンスするにあたって、リテールへの働きかけが特徴的であ
った。アーティストが、ライセンスエージェントを通じてメーカーではなく、
リテールに働きかけたのである。DTR(direct to retail)と言われるものである。
実際に商品を販売するメーカーに働きかけるのではなく、リテールに働きかけ
ることで流通チャネルをあらかじめ確保するものである。メーカーは売れるか
わからないものに対して、意思決定を下すことは容易にしないが、販売場所を
確保できるのであれば、とりあえずやってみるということがある。kinpro の場
合は百貨店の高島屋に直接働きかけ、高島屋の中に入っている洋菓子屋の
Mary’s がチョコレートにアートを直接印刷するという当時では珍しい商品を販
売したのであった。それによって kinpro は海外では知名度があったが、日本で
はほとんど知られていない当時でもアートライセンスをすることができたので
ある。そして試しにやってみた商品が思いの他ヒットしたため、現在でも Mary’s
では kinpro のライセンス商品が販売されている。またこのヒットがきっかけと
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なり kinpro の知名度は日本でも高まり、他のメーカーもライセンスを申し出て
きた。そこで kinpro はアートブックをつくることでどのような柄がライセンス
できるのかを明確にした。これはディズニーでも行われている手法である。
kinpro のケースでわかるように決してプロパティ自体の知名度だけでライセン
スを決めるのではなく、どのようにライセンスするのか、またその後どのよう
に戦略を立てていくのかが重要なのである。これらの戦略はアーティストの
kinpro がたてたのではなく、ランドマークというライセンスエージェントがお
こなったことである。アーティストがこのようなことにまで関わることは現実
的に難しい。そのためアートライセンスを成功させるにはエージェントの役割
というのが非常に大切になる。kinpro 自体は、まだまだ知名度が高いアーティ
ストとは言えないが、そのライセンス商品の売り上げは数億円に達し、ここ 5
年ほどでは最も成功した日本のアートライセンスの例と言えよう。
©kinpro×Mary’s
2.リテール/ブランドのライセンス
1)ユニクロ
リテールのアートライセンスの代表例の一つがユニクロ(ライセンサー)と
ニューヨーク近代美術館、通称 MoMA(ライセンシー)による「SPRZ NY」iiと
いうプロジェクトだ。ユニクロはご存じのようにファーストリテイリングが運
営するアパレルブランドであり、日本のファストファッションの代表ブランド
である。MoMA とユニクロは美術館とアパレル店と領域は異なれ、両者とも良
質で革新的なものをあらゆる人々に手軽に提供するという共通の考えがあった
ため、今回のプロジェクトをスタートさせた。またニューヨークで近くに構え
ているという縁もあった。「SPRZ NY」とは、SURPRISE NEW YORK の
造語で、ニューヨークを驚かせようという意味である。服とアートが出会う場
所をコンセプトに、世界的ポップアーティストのアンディー・フォーホルやキ
ース・へリングなどのライセンス商品を T シャツやトートバックなどにおいて
19
ユニクロの店舗で展開している。そしてニューヨークにある旗艦店では、T シャ
ツを額に入れてする展示方法など美術館さながらに展示することでファッショ
ンとアートの融合を成し遂げている。そしてユニクロは近い将来、ニューヨー
ク店を参考に各国の旗艦店を中心に同様のスペースを設ける予定と聞く。 ユニクロがこのようなプロジェクトを始めた背景には、世界市場でのファス
トファッション業界の競争にある。ユニクロはファストファッションとして国
内では敵なしではあるが、世界市場ではまだと第4位である。上位には ZARA
や H&M、GAP などの面々が並んでいる。ユニクロが世界市場において勝ち抜
くためには、これまでは機能性や品質などを全面的に押し出した商品を展開し
ていたが、世界市場に目を向けたときには、それらに加えデザイン性を高める
重要性に気が付いたのである。そこでアートの持つデザイン力に頼り、MoMA
とプロジェクトを始めるに至ったのである。MoMA はライセンス商品を展開す
ることに非常に長けている美術館である。モネやゴッホ、ピカソなどの作品か
ら現代アーティストであるアンディー・ウォーホルやモンドリアンやキースへ
リングの作品など10万点以上の所蔵品がある。その所蔵品を活かし、MoMA STORE を中心にライセンス商品を展開している実績がある。そのため MoMA
とライセンスすることは作品の選定としては安全策であった。
(MoMA 自体のラ
イセンスについては後述する。) ユニクロ NY 店内 ©uniqlo 2)SLY
次にアパレルブランドのアートライセンスの成功事例を挙げる。SLYiiiとは2
0代女性に人気あるアパレルブランドであり、このブランドがアメリカを代表
するポップアーティストのキースへリングのアートライセンス商品を販売した
事例である。キースへリングは伊藤忠ファッションシステムが日本におけるエ
ージェントを務めている。その伊藤忠ファッションシステムがプロジェクトリ
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ーダーとなって今回の企画が始まった。キースへリングは80年代に特に活躍
したアーティストなので、SLY の顧客層にはあまり馴染みのないアーティスト
である。それなのに、なぜ始めたかというと「SLY というブランドはこんなア
ーティストに共感していて、こんなアーティストを若い世代にも知ってもらい
たい」というコンセプトの元、始めたのである。これはまさにアートライセン
スの醍醐味と言えよう。またこれまでも、キースへリングのライセンス商品は
多く販売されていたが、SLY はキースへリングの作品をうまくアレンジし、顧
客層の若い女性にも受けいれられるようにデザインしたのである。その甲斐も
あって、大変人気のある商品となった。まさに単にアートをそのままプリント
するのではなく、ライセンス商品にあったデザインをしたのである。
キース・ヘリング×SLY スカート
3)アートとファッション
ユニクロや SLY の事例のようにアートとファッションは繋がりがある。ファ
ッションは商業用製品であり、販売するためにつくられているものである。対
してアートとは自己表現を形にしたものであり、決して販売を第一に考えてつ
くられるものではない。ファッションは時代の流れをいち早く感じ取り流行に
乗らなければならないがアートには一切関係のないことである。このようにア
ートとファッションは一見正反対のようにみえるが、実は近い関係にある。フ
ァッションにアートを取り入れることは昔からよく行われている手法である。
アートとファッションはどのような関係性を持っているのか。おそらくアート
とファッションの関わり方は大きく分けて2通りある。一つはファッションデ
ザイナーがアートに触発されインスピレーションをうけたデザインを制作する
という間接的な関係性、そしてもう一つはアート作家とコラボレーションする
方法、アート作品のライセンスを受ける方法、直接的な関係性である。最近で
は、後述のアートをファッションに直接的に取り入れる方法を採用するブラン
ドが増えている。たとえば、ルイヴィトンが有名であろう。デザイナー、マー
ク・ジェイコブが日本人アーティストの村上隆とコラボレーションした商品を
展開し、アートをデザインに取り入れることで伝統に革新を持ちいれた。他に
もスポーツメーカーのリーボックがバスキアと、同じくスポーツメーカーのナ
イキがモンドリアンとのライセンス商品のスニーカーを展開している。
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このような場合も、多くはアーティストがライセンサーであり、商品メーカ
ーがライセンシーとなる。
4)日本のファッション市場の特徴
2013年の日本のファッションの市場は約10.9兆円規模7(衣類、靴)
である。しかもユニクロを運営するファーストリテイリングなどのように海外
売上比率が2割以上の企業はほとんどなく、7割以上の企業は海外売上比率が
1割未満である。それにもかかわらずこのような巨大市場である。この巨大市
場で特徴的なのは、例えばハイブランドはヨーロッパでは収入も地位もある、
いわば大人の女性がファッション消費者の中心であるのに対し、日本では比較
的、賃金の低い者20代女性でも消費者である。10代でさえも身に着けてい
ることも時々目にすることがある。日本の女性たちはファッションに対する購
買欲が非常に強い。シーズンごと大量に服を購入する。日本ほど服を大量消費
する国はめずらしいであろう。
3.美術館のアートライセンス
アメリカに本部を置く、ライセンス団体である LIMA 主催の世界最大のライ
センスビジネスショーでアメリカのライセンスエキスポでアート部門の賞を、 2011 年と 2012 年に 2 年連続で取ったのはイギリスにある美術館、ヴィクトリ
ア&アルバート美術館である。近年の賞の受賞者の主流はアンディ・ウォーホ
ルやバスキュアなどの著名アーティスト、もしくはキャラクターとアートを融
合したような作品を描くアーティストがほとんどであった。その中、美術館が 2
年連続で受賞した。このヴィクトリア&アルバート美術館に限らず海外の美術
館はライセンスビジネスが盛んである。自分たちのコンセプトやコレクション
をライセンスビジネスによって発信することに努めているのである。一方で日
本の美術館は閉鎖的である。そのため海外の美術館のように、ライセンスビジ
ネスによって外に発信することでよりオープンなものになり、それにより美術
館がより身近のものとなる可能性がある。
1)日本の美術館
7
経済産業省 ファッション業況調査及びクールジャパンのトレンド・セッティングに
関する波及効果・波及経路の分析
22
日本の美術館がライセンスビジネスをどのように行うべきであるか考察する
前に、日本の美術館の形態について述べる。現在日本には約1100館の美術
館があり、そのなかで大きく二つにわけることができる。常設展を主体とする
美術館と企画展を主体とする美術館である。
常設展を主体とする美術館とは美術館が所有しているコレクションを展示す
ることで運営している。ルーブル美術館を代表とする海外の多くの美術館はコ
レクションを多数所有しているため、それを展示し、運営している。数多くの
コレクションを所有している美術館は日本で言えば、私立では岡山県倉敷市に
ある大原美術館、国立では上野にある国立近代美術館などが有名である。彼ら
は所蔵品の保存という大切なミッションがあり、これには相当なコストがかか
る。作品によっては劣化する物もあるので、一定期間しか展示しないものもあ
る。また国宝や重要文化財である場合は文部科学省が制定している規定に従わ
なければならないため、かなりの労力を必要とされる。
企画展を主体する美術館として代表的なのは六本木にある国立新美術館であ
る。所蔵品を一切持たずに他から展示品を借り、一定の期間(約2~3か月)
企画展を開催することを繰り返し行うことで運営している。企画展にも 2 種類
あり、自主企画展と共催企画展である。 自主企画展とは名前の通り美術館単独で行う企画展である。近年の国立新美
術館の自主企画展で言えば、カルフォルニアデザイン展がそうである。グッズ
の作成を行う場合は他の会社が入ることもあるが、基本的には全ての業務を美
術館でおこなう。
共催企画展とは主催に美術館の他に新聞社や放送局などのマスメディアが連
ねる展覧会である。例えば、今年開かれたチューリヒ美術館展は朝日新聞社が
主催、オルセー美術館展は読売新聞社が主催している。キューレーションやカ
タログの編集など学術的なことは美術館のスタッフである、学芸員が担当する。
その他の展覧会にまつわる業務を新聞社や放送局の文化事業部が行う。
当然、企画展の物販店の企画・運営も新聞社や放送局の文化事業部が担当す
る。海外の美術館ではスタッフがマネジメントの役割も担う。マスメディアが
展覧会に関わるのは日本の美術館の特徴である。マスメディアにとっては文化
事業といえ、ビジネスであるため宣伝をし、利益をあげるための努力をする。
そのため集客数は多いものとなり成果はでる。また先に述べたチューリッヒ美
術館展やオルセー美術館展などの大規模の展覧会を開催することができる。し
かしながら、そうなると美術館のスタッフは本来の学芸業務に専念できるとい
う一定のメリットはあるが、一方ではますますマネジメントに関わらなくなり、
美術館所属の研究員のようになり、ビジネスの意識をもった人材は育ち難くな
る。学芸に特化したスタッフではなく、マネジメントなどにも通じる柔軟な視
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点をもったスタッフを育てることが、美術館発展に繋がるはずである。
2)海外の美術館
では、海外の美術館はマスメディアの参入がなく、どのように成り立ってい
るのか。美術館運営を支えているのは一つの方法は寄付である。海外の美術館
では寄付が盛んに行われている。特にアメリカ、ニューヨーク、マンハッタン
にある世界最大級のメトロポリタン美術館は特徴的である。メトロポリタン美
術館は300万点の所蔵品があるにも関わらず、国州立でなく私立美術館なの
である。私立であるのに、なぜこれだけの規模の美術館の運営が成り立つのか。
それは多大なる寄付で支えられているからである。メトロポリタン美術館は入
場料も少し変わっていて大人であれば20ドルであるが、Recommended と記
載されているのである。つまり推奨金額であり入場料も寄付という形で成り立
っているのである。所蔵品も寄付基金による購入、個人コレクターや富豪から
の寄贈などで集まってきたものである。寄付という文化が根付いているからこ
そできる運営方法である。日本社会では寄付はあまり馴染みのないものである
ため、難しいであろう。
3)MoMA(ニューヨーク近代美術館) 海外の美術館で特徴的な運営をしている美術館がある。それが MoMA である。
MoMA とは正式名称は The Museum of Modern Art New York であり、MoMA
の愛称で親しまれている美術館である。アメリカ合衆国のニューヨークのマン
ハッタンにあり、現代美術作品を中心に10万点以上の所蔵品がある。ピカソ
やダリ、ゴッホなどの有名アーティストの作品を所有しているだけでなく、シ
ザーハンズなどで有名な映画監督であるティム・バートン展を開催するなど多
分野に展開していて一般的な美術館と比較して特徴がある。教育にも注力して
いる美術館としても知られており、グループ単位で学芸員が案内するツアーや
様々な世代にわたるワークショップ運営などアート教育にも尽力している。そ
して研究テーマに関連し、最も特徴的なのは MoMA が運営している MoMA デ
ザインストア8である。ショップキュレーター9(バイヤー)が世界各国のアイテ
ムを集め、販売している。彼らは世界中に飛び回りアイテムを集めており、こ
のキュレーターのお目にかかったアイテムはそれだけで価値があるものと世界
8
アート作品だけでなく、日用品、家具など幅広い商品群が特徴的
9キュレーターは作品の管理から展覧会の企画、構成、運営する専門的な役割を担う。学芸員と訳されるこ
とがあるが、日本における学芸員よりは地位が非常に高い
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で認められ、ブランド化される。MoMA が所蔵しているアイテムだけでなく、
日本のアイテムなども多く販売しており、今治タオルなどの伝統工芸品さらに
は無印用品のアイテムなども販売されている。日本にも表参道に MoMA デザイ
ンストアがある。
NY MoMA デザインストア店内 ©MOMA
4)海外の美術館のアートライセンス
アートライセンスが非常に長けている美術館が海外に2つある。先ほどから
述べているアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)とイギリスのヴィク
トリア&アルバート美術館(V&A)である。
ユニクロとコラボレーションした MoMA 美術館は以前からライセンス商品を
展開することに非常に長けている。著作権の切れている印象派のモネやゴッホ、
そして著作権に保護されている近代派のピカソなどの作品から現代アーティス
トであるアンディー・フォーホルやモンドリアンやキースへリングの作品など
10万点以上の所蔵品がある。その所蔵品を活かし、MoMA STORE を中心に
ライセンス商品を展開している。ライセンスに向いている作品があれば、MOMA
のスタッフが現地にいき、ライセンス商品販売に向けて交渉する。 ライセンスに長けているもう一つの美術館である V&A はウィリアム・モリス
の作品(図1)を代表とする作品を所有していて、ライセンスに適している作
品を多く所有している。 「イチゴ泥棒」V&A 所有
©ウィリアム・モリス
2つの美術館の共通点は、単に作品を展覧しているだけでなく、発信・ライ
センスビジネスすることで自分たちの活動を広めている。また、これらの美術
館にライセンスされるということは世界的に優れている作品であるものと認め
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られたという評価に繋がるということである。 では MoMA や V&A のように数多くの所蔵品を有している美術館でなければ、
アートライセンスを展開することはできないのか。必ずしもそうとは言い切れ
ない。もちろん所蔵品が多いということに越したことはないが、所蔵品がない
からといってできないわけではない。
例えば、日本の美術館の多くは欧米の美術館に比べ所蔵品が少ないため、大
規模の常設展は開催できる美術館が少なく、企画展を開催する美術館が多い。
そのため MoMA のように所蔵品を利用したライセンス商品の販売は多くは期待
できないが、展覧会出口の物販店で、その時々の企画展のライセンス商品を展
開することは可能である。これまではポスターやハガキなどが多かったが、そ
こは MoMA の商品展開を参考にして多様な商品を販売することも考えつつ、日
本独自のお土産文化を活かすことで発展を考えるべきである。なぜならば日本
人向けのお土産市場は年間3兆円を超える市場であり、そのなかでも2兆24
0億は国内での消費額である。そのため美術館も積極的にライセンス商品を展
開していくべきであろう。そして MoMA や V&A のようにこれらの美術館にラ
イセンス商品を展開してもらうこと自体が価値のあることとなるように美術館
そのもののブランド価値を向上させる必要がある。
5)日本の美術館のアートライセンス
日本の美術館のアートライセンスはどのようになっているのか。美術館での
アートライセンス商品を目にする機会がある場所は、美術館に訪れた人ならば
一度は立ち寄ったことがあると思うが、展覧会の出口付近にある物販店、もし
くは美術館内に常にある物販店・お土産売り場である。国立新美術館であれば
スーベニアフロムトウキョウというミュージアムショップが常にある。
先にも述べたが、ライセンス商品の制作は自主企画展のときは美術館スタッ
フで担当するが、場合によってはグッズ制作会社など外部に委託することもあ
る。
共催企画展のときは新聞社や放送局が共催に名を連ねているので、新聞社や
放送局がグッズ制作を担当している。そしてほとんどの新聞社や放送局はグル
ープ会社にグッズ制作会社〈テレビ番組のグッズ制作などをしている会社〉を
抱えているため、そこに委任している。つまり、新聞社や放送局、あるいはそ
の下請け会社がライセンシーになるのである。しかしそこに問題がある。彼ら
はマスメディアのため、つくられるグッズはアイディアには富んでいるが、デ
ザイン性は貧しいものが多くみられる。アートライセンスを実際に行うときに
大切なことでも述べたが、アートライセンスはデザイン性の高さが大切である。
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彼らは普段、テレビ番組のグッズやタレント・キャラクターのグッズを販売し
ているため、商品の発想は豊かではあるが、それらのグッズはデザイン性とい
うものをあまり重視されない商品であるため慣れていない。そのため、物販店
にはそのようなグッズが並んでいる。よってその点は改善すべきところである。
これらの改善策としては例えばアパレル業界とのコラボレーションも一つの
手段ではないか。美術展の物販店で最近は必ずといっていいほど T シャツなど
衣料品を目にする。しかしながらチープなものがほとんどである。そこでファ
ッションメーカーやリテールに参入してもらい、アイディアだけでなくデザイ
ン性に富んだグッズを制作してもらう。ファッションはビジネスであるため表
現に制約がある一方で、アートは自由に表現をできるという性質上、アートに
憧れをもっている部分があり、日々参考にし、リスペクトしている。またユニ
クロや SLY の事例をみてもわかるように相性も非常に良い。しかも日本はアー
トに対する関心は欧米などに比べる低いが、ファッションに対しては欧米と比
較しても関心が高い。そして美術館に直接働きかけることで先にも述べた DTR
に似たような効果があり、美術館という売り場を確保することもできる。また
企画展の開催期間は平均して4か月前後と短いが日本のファッションはシーズ
ンごとに大量に消費されライフサイクルが短いため相性は良い。企画展後にア
パレルメーカの店舗によって販売することも可能である。ファッションとアー
トの融合によって新たなムーブメントをおこすことができる。
もちろんそこにこれまでビジネス面にほとんど関わってこなかった美術館の
学芸員の方たちに参加をしてもらいたい。作品、展覧会について一番詳しいの
は、開催する美術館の学芸員たちであり、コンセプトを理解している。日本の
美術館のほとんどはビジネスのことをほとんど意識していない。しかし今後は
アカデミックなことだけでなく、よりオープンなビジネスを意識することでよ
り、魅力的な美術館運営ができるのではないであろうか。そしてアートを最も
理解している学芸員がビジネス感覚を身につけることで、優秀なエージェント
になる可能性を十分に秘めている。
アートライセンスによって初期段階で美術館側が利益をあげることはなかな
か難しいかもしれない。しかしファッション業界とライセンスすることでこれ
まで美術館に足を運ばなかった層、特に若い人たちが訪れる機会が増える可能
性は十分に考えられる。直接的な利益だけでなく、宣伝効果、間接的な利益に
繋がってくるのではないであろうか。
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Ⅷ.エージェントの必要性
これまで個人アーティストのライセンス、美術館のライセンスと大きくわけ
て2つのアートライセンスをみてきた。成功するためにはこれらはどちらもそ
れぞれの特徴があるが、共通して言えることがある。それはエージェントの必
要性である。
エージェント ライセンサー → or → ライセンシー プロデューサー kinpro アンディ・ウォーホル キース・へリング MoMA 貯蔵のアーティス
ト ランドマーク Mary’s アンディ・ウォーホル 財団 ユニクロ、etc.… 伊藤忠ファッション システム SLY MoMA ユニクロ 〈アートライセンスの成功パターン〉
図を見ればわかるようにアートライセンスが成功しているケースは共通して
エージェントもしくはプロデューサーがライセンサーとライセンシーの間に入
っている。間に入る事で両者の足りない部分を補っているのである。
kinpro のケース(図1)であればライセンスエージェントをランドマークと
いう会社が務めている。ランドマークはライセンス契約だけでなく、ライセン
ス商品のデザインもおこなっており、数千ある kinpro のアート作品や、その細
部のグラフィックをデータ化している。ライセンシーにとっては、このことは
商品化の大きな助けとなる。アンディ・ウォーホルであればアンディ・ウォー
ホル財団がエージェントをしている。アンディ・ウォーホルは亡くなっている
ため当然、交渉ができないため、財団がライセンスを担当している。
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(図1)©KinproxMary’s
SLY のケースであればキース・ヘリングの日本のエージェントである伊藤忠フ
ァッションシステムが旗振りとなりプロジェクトをはじめた。
ユニクロと MoMA のケース(図2)であれば MoMA は美術館だが、エージェ
ントの役割を果たしていると言えるだろう。
(図2)®MOMA/uniqlo
これはアーティストであればビジネスをあまり理解していないためライセン
スビジネスを適切に進めることは難しかったり、ライセンシー側はアーティス
トの作品のコンセプトにあったデザインをすることが困難であったりする問題
の有効な解決策である。そのためにエージェントに必要な能力がいくつかある。
アートライセンスを成功させるためにエージェントに必要な能力
1)アート作品がライセンスに向いているかを見極める力 2)アーティストまたはアートの権利保有者との交渉力 3)優良なライセンシーを見つける力 4)アーティストにライセンシーが利用しやすく、顧客吸引力の高い商品を制
作するための資料(ライセンスマニュアル)の作成をさせる力 5)アーティストと作品を大々的に PR する力 29
6)優良なリテールで売り場を開発していく力 アートライセンスを成功させるには上記のような能力がエージェントには
求められる。
1)の「見極める力」は、Ⅴ-1に詳しく記載しているが、アートとして大成
していない作品であっても、アートライセンスによって成功するケースもある。
2)の「交渉力」については、アーティストの中にはアートライセンスを行う
のを「金目当て」と勘違いして拒む人もいるケースも考えられる。特に日本の
アーティストはライセンスビジネスの実態を知らないために、それを躊躇する
ことがあるだろう。そのためアートをライセンスすることのメリットをしっか
りとアーティストに理解させる必要がある。 3)の「見つける力」は、アートライセンスが成功するかはライセンシーの良
し悪しが当然影響する。そのため、優良なライセンシーを探す必要がある。優
良なライセンシーの基準を示すのは難しいが、まずアートライセンスで成功し
ている経験があるライセンシーは、当然よいであろう。しかし、そのようなラ
イセンシーが、必ずしも容易に見つかるとは限らない。そのため、例えば現在
キャラクターばかりのライセンスをやっていて、それ以外のプロパティを持っ
ていない、もしくはプロパティをほとんど持っていないが、何か新しいライセ
ンスをやりたいと強く希望している企業は、良いライセンシーに育つ可能性は
大である。さらにアートライセンスは、リテールで良い売り場を設けることが
大切なので、得意先にそのような会社があるライセンシーは尚良い。また、欲
を言えばアートに対して関心があり、理解を示すキーパーソンがいるライセン
シーは良いであろう。 4)の「作成させる力」は、ライセンシーが利用しやすく、顧客吸引力の高い
商品をつくるため製造するには、まず利用できる作品であるかを選別する必要
がある。著作権がアーティストに帰属していない作品もある可能性があるため。
(イラストレーター時代に制作した作品であり、著作権が会社、組織に帰属し
ている場合など)また顧客吸引力の高い作品にするためには、どのようなコン
セプトの作品であるか記載した資料を作成させる必要がある。(個性的なアー
ト作品が多いため)その他、前述のランドマークの kinpro のデータの例で述
べたように、ライセンシーがすぐに商品化に取り組めるような豊富で使いやす
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いデザインのデータベースを構築しているエージェントは、ビジネスを成功に
導く可能性が高いと言えるであろう。
5)の「PR する力」は、アーティストのブランド力を高めるために、ライセ
ンスだけに頼らず、アート作品そのものを PR するために個展などを開催する
必要がある。
6)の開発する力は、アートライセンスは単に販売して売れるというものでは
ない。リテールと協力して魅力的な売り場をつくる必要がある。ユニクロのケ
ースおいても kinpro のケース(リテールは高島屋)においてもアート作品の
コンセプトに合った、魅力的な売り場を設けている。
アートライセンスは他のライセンスビジネスと違い特徴的であるため、上記
のようなエージェントの役割というものが特に大切になる。今後、日本におい
てアートライセンスを発展させていくためには、このような広い視野・知識を
もった、いわばエクゼクティブプロデューサーのような能力をもったエージェ
ントが必要になるはずである。
おわりに
今回、論文に取り組んでみるとライセンスビジネスのなかでも、まだまだ未
発達であるアートライセンスという議題は非常に難しいものであった。アート
ライセンスは過去にもほとんど議論されていないテーマであるため、他の研究
論文など違い、あまり参考資料になるものが存在しなかった。そのため、どの
議題も一から自分で考えなければならなかった。しかしながら、実際にアート
ライセンスをおこなっている会社やサポートスタッフとして活動している国立
新美術館にインタビューして、当初考えていなかったアートライセンスの問題
点や可能性というものがわかってきて、非常に実りあるものとなった。
本研究では、東京理科大学大学院イノベーション研究科知的財産戦略専攻の
先生方をはじめ、多くの方にご教授頂きました。指導教員である草間先生には、
研究室内の講義はもとより、本論文作成にあたり、懐深く丁寧にご指導を賜り
ました。お礼を申し上げます。また草間先生のご紹介でインタビューの機会を
頂き、大変貴重な話をお聞かせ頂いたランドマークの増田雄二様、福岡正人様
の御両名、またサポートスタッフとしての活動をし、貴重な体験をさせて頂い
た国立新美術館のスタッフ方にお礼を申し上げます。この前例のない研究を論
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文として形にすることが出来たのは、皆様のお力添えのおかげです。皆様への
心から感謝の気持ちと御礼を申し上げたく、謝辞に変えさていただきます。
参考文献
宮津大輔「現代アート経済学」光文社新書(2014)
iiファーストリテイリング
web ページ http://sprzny.uniqlo.com/jp/
iii伊藤忠ファッションシステム(株) ブランドクリエーションビジネスユニット 竹澤 百合 http://www.ifs.co.jp/news/column_201110.html
SLY web ページ http://sly.jp/home/
草間文彦「ライセンスビジネスマネジメント」日本経済新聞出版社(2009)
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