『兵は凶器なり
凶器なり』
なり』資料編１
資料編１
０５，
０５，０５，
０５，１１
前坂 俊之
＜日中戦争対立の
日中戦争対立の原因＞
原因＞
昭和一五年（
昭和一五年（一九四〇
一九四〇年） 二月二日の
二月二日の斎藤隆夫の
斎藤隆夫の第七五回帝国議会
本会議での
本会議での日中紛争処理
での日中紛争処理に
日中紛争処理に関する演説
する演説
( 上)
○ 斎藤隆夫の
斎藤隆夫の支那事変処理方針への
支那事変処理方針への質問
への質問演説
質問演説
支那事変ガ勃発シマシテカラ既二二年有半ヲ過ギマシテ、内外ノ情勢ハ益々重大ヲ
加へテ居ルノデアリマス、此ノ秋二当リマシテ一月十四日、而モ議会開合後二於キマ
シテ阿部内閣ガ辞職シテ、現内閣ガ成立シ、組閣二週間ノ後二於テ初メテ此ノ議会
二臨マルルコトニ相成ツタノデアリマス、総理大臣ヲ初メトシテ、閣僚諸君ノ御苦心ヲ
十分二御察シスルト共ニ、国家ノ為二切二御
健在ヲ祈ル者デアリマス
米内首相ハ組閣勿々天下二向ツテ、現内閣
ノ政策ヲ発表セラレタノデアリマシテ、吾々ハ新
聞紙ヲ通ジテ、之ヲ承知致シテ居ルノデアリマ
ス、併シ其ノ政策卜称スルモノハ、唯僅二題目
ヲ並ベタニ過ギナイノデアリマシテ、諸般ノ政策
ハ此ノ帝国議会二於テ陳述スルト附加へテア
リマス、ソレ故二昨日ノ御演説ヲ拝聴致シタノ
デアリマスルガ、相変ラズ抽象的ノ大要二過ギ
ナイノデアリマシテ、之二依ツテ国政二対スル
現内閣ノ抱負経綸ヲ知ルコトハ勿論出来ナイ、
併シナガラ私ハ今日此ノ場合二於テ、是等ノ問題、即チ第一ハ支那事変ノ処理、第
二ハ国際問題、第三ハ国内問題、是等ノ三問題全部ヲ通ジテ質問ヲ致ス時間ノ持合
セモアリマセメカラ、此ノ中ノ中心問題デアリマスル所ノ支那事変ノ処理、之二付テ私
1
ノ卑見ヲ述べツツ、主トシテ総理大臣ノ御意見ヲ求メテ見タイノデアリマス
支那事変ノ
支那事変ノ 処理ハ 申スマデモナク非常二重大
スマデモナク非常二重大ナル
非常二重大 ナル問題
ナル 問題デアリマス
問題デアリマス、
デアリマス、今日我国ノ
今日我国ノ 政
治問題トシテ
トシテ是以上重大
是以上重大ナル
ナル所
問題ハナイ
ハナイ、
ノミナラズ今日
今日ノ
内外政治
レモ支
治問題
トシテ
是以上重大
ナル
所ノ問題
ハナイ
、ノミナラズ
今日
ノ内外政
治ハ何レモ
支
那事変ヲ
中心トシテ
トシテ、
周囲二動イテ
イテ居
ルノデアル、
ソレ故二吾
故二吾々
スニ及
那事変
ヲ 中心
トシテ
、此 ノ 周囲二動
イテ
居 ルノデアル
、 ソレ
故二吾
々 ハ 申 スニ
及バ
全国民ノ
カントスル所
ヨリ、
ソコ二在
二在ルノデアリマス
ルノデアリマス、
一体支那事変ハドゥ
ズ、全国民
ノ聴 カントスル
所モ固ヨリ
、ソコ
二在
ルノデアリマス
、一体支那事変
ハドゥ
ナルモノデアルカ、
何時済ムノデアルカ
ムノデアルカ、
何時マデ
マデ続
クモノデアルカ、
政府ハ
ナルモノデアルカ
、何時済
ムノデアルカ
、何時
マデ
続 クモノデアルカ
、政府
ハ 支那事
スルト声明
声明シテ
シテ居
ルガ、
如何二之ヲ
処理セントスルノデアルカ
セントスルノデアルカ、
国民ハ
変ヲ処理スルト
声明
シテ
居ルガ
、如何二之
ヲ処理
セントスルノデアルカ
、国民
ハ聴カ
ント欲
シテ聴
クコトガ出来
出来ズ
議会ヲ
ジテ聴
クコトガ出来得
出来得ルト
ルト期待
期待セナイ
セナイ者
ント
欲シテ
聴クコトガ
出来
ズ、此ノ議会
ヲ通ジテ
聴クコトガ
出来得
ルト
期待
セナイ
者ハ
ラク一人
一人モナイデアラウト
モナイデアラウト思
恐ラク
一人
モナイデアラウト
思 フ、
近衛内閣ハ事変ヲ起シナガラ其ノ結末ヲ見ズシテ退却ヲシタ、平沼内閣ハ御承知ノ
通リデアル、阿部内閣二至ツテ初メテ事変処理ノ為二邁進スルトハ声明シタモノノ、
国民ノ前二ハ事変処理ノ片鱗ヲモ示サズシテ総辞職シテシマツタ、
現内閣二至ツテ初メテ此ノ問題ヲ此ノ議会ヲ通シテ国民ノ前二曝ケ出ス所ノ機会二到
来シタノデアリマス、是二於テ私ハ総理大臣二向ツテ極メテ率直二御尋ヲスルノデア
ル、支那事変ヲ処理スルト言ハルルノデアルガ、其ノ処理セラルル範囲ハ如何ナル
モノデアルカ、其ノ内容ハ如何ナルモノデアルカ、
私ガ聴カントスル所ハ、ツト二在ルノデアリマス、私ノ見ル所ヲ直言致シマスルナラバ、
元来今回ノ事変二付キマシテハ、当初支那側ハ申スニ及バズ、我ガ日本二於キマシ
テモ確二見込違ヒガアツタニ相違ナイノデアリマス、即チ我国ヨリ見マスルナラバ、其
ノ初メハ所謂現地解決、事変不拡大ノ方針ヲ立テラレタノデアリマスルガ、其ノ方針ハ
支那側ノ挑戦行為二依ツテ立ドコロニ裏切ラレ、其後事変ハ日ニ月ニ拡大シ、躍進
二躍進ヲ重ネテ逐二今日ノ現状ヲ見ルニ至ツタノデアリマス、
支那側ノ見込違ヒ、是ハ言フヲ要シナイノデアリマス、此処二御参考ノ為二引用スベ
キ文書ガアリマス、是ハ昨年十二月十三日、内閣情報部ヨリ発行セラレタル所ノ週報
デアリマスルガ、
此ノ中ニ「支那事変ヲ解決スルモノ」ト題シテ支那派遣軍総司令部報道部長ノ名ヲ以
テ①ノ 論文ガ掲載セラレテ居ルノデアル、此ノ中二如何ナルコトガ現ハレテ居ルカト
見ルト、「
戦争ハ
支那人、
殊二蒋介石
蒋介石ノ
日本二対スル
スル認識不足
認識不足ト
「 抑 々 此 ノ 戦争
ハ 、支那人
、殊二
蒋介石
ノ 日本二対
スル
認識不足
ト 、其 ノ 日
実力誤算カラ
カラ出発
出発シ
又日本ノ
支那二対スル
スル研究不足卜認識不足
研究不足卜認識不足トニ
トニ依
ツテ始
本ノ実力誤算
カラ
出発
シ、又日本
ノ支那二対
スル
研究不足卜認識不足
トニ
依ツテ
始
メラレ、
メラレテ来
メラレ
、又深メラレテ
来タ」云々卜記載サレチアル、
2
即チ此ノ度ノ事変ハ支那ガ日本二対スル所ノ認識不足、又日本ガ支那二対スル所ノ
認識不足、此ノニッノ原因二依ツテ始メラレ、又是ガ深メラレタモノニ相違ナイ、併シナ
ガラ翻ツテ考へテ見マスト、仮令此ノ認識不足ナシト雖モ、日支両国ノ間二於キマシ
テハ早晩一大事変ガ起ラザルヲ得ナイ其ノ禍根ガ、何レノ所ニカ隠レテ居ツタ、其ノ
機運ガ熱シテ居ツタ、ソレガ彼ノ北支ノ一角盧溝橋二於ケル支那側ノ不法射撃、此ノ
事実二触レテ外部二爆発シタニ過ギナイノデアリマシテ、是ハ仕方ガナイ、所謂運命
デアリマス、
両国間ノ運命デアリマスカラ、是ハ仕方ガナイ、併シナガラ其ノ後事変ハ益々進展シ
テ、彼我ノ勢力並二勝敗ノ決モ明ニナリマシタ以上ハ、成ベク速二此ノ事変ヲ収拾ス
ル、サウシテ出来ルナラバ再ビ斯ノ如キ事変ガ起ラナイヤウニ、日支両国ノ間二横ハ
ルー切ノ禍根ヲ芟除 ( さんじょ )シテ、以テ和平克復ヲ促進スルコトハ独り日本ノ政
治家ノ責任デアルノミナラズ、実二支那ノ政治家ノ責任デアルト私ハ思フノデアリマス
唯問題ハドゥシテ是等ノ禍根ヲ取除クコトガ出来ルカ、ドゥシタナラバ将来ノ安全ヲ保
障スルコトガ出来ルカ、吾々ハ支那ノ立場ヲ考ヘルト共ミ主トシテ日本ノ立場ヲ考へネ
バナラメノデアル、ソコデ先ヅ第一ニ吾々ガ支那事変ノ虞理ヲ考フルニ当リマシテハ、
寸時モ志レテナラメモノガアルノデアリマス、ソレハ何デアルカ、外ノ事デハナイ、此ノ
事変ヲ遂行スルニ当リマシテ、
過去二年有半ノ
過去二年有半ノ長キニ亙
キニ亙ツテ我
ツテ我ガ国家国民ガ
国家国民 ガ払ヒタル所
ヒタル所ノ絶大なる
絶大なる犠牲
なる犠牲デアルノデ
犠牲デアルノデ
アリマス、
此二於キマシテ
キマシテ我
アリマス
、即チ此二於
キマシテ
我ガ国民ガ
国民ガ払ヒタル所
ヒタル所ノ犠牲、
犠牲、即チ遠クハ海
クハ海ヲ越 エテ
転戦スル
スル所
百万二百万ノ
将兵諸士ヲ
メトシテ、
クハ之
後援スル
スル所
彼ノ地－転戦
スル
所ノ百万二百万
ノ将兵諸士
ヲ初メトシテ
、近クハ
之ヲ後援
スル
所ノ
国民ガ
ヒタル生命
生命、
自由、
財産其ノ
他一切ノ
犠牲ハ
壇上二於キマシテ
キマシテ如何
如何ナ
国民
ガ払ヒタル
生命
、自由
、財産其
ノ他一切
ノ犠牲
ハ、此ノ壇上二於
キマシテ
如何
ナ
口舌ヲ
テスルモ、
万分ノ
オモ尽
スコトハ出来
出来ナイノデアリマス
ナイノデアリマス（
拍手）
ル人ノ口舌
ヲ以テスルモ
、其ノ万分
ノ一オモ
尽スコトハ
出来
ナイノデアリマス
（拍手
）
而モ是等ノ犠牲ハ今日ヲ以テ終リヲ告ゲルノデハナイ、将来久シキニ亙ル、今後幾年
二亙ルカト云フコトハ、今日何人卜雖モ予言スルコトガ出来ナイ状態ニアルノデアリマ
ス、実二此
実二此ノ
事変ハ
事変卜称スルケレドモ
スルケレドモ、
戦争デアル
デアル、
実二此
ノ度ノ事変
ハ、名ハ事変卜称
スルケレドモ
、其ノ実ハ戦争
デアル
、而モ 建
国以来未ダ
経験セザル
セザル所
大戦争デアリマス
デアリマス、
国以来未
ダ曾テ経験
セザル
所ノ大戦争
デアリマス
、随テ其ノ犠牲ノ大ナルト共ニ、其
ノ戦果二至ツテモ亦実二驚クベキモノガアル、
昨日モ此ノ議場二於テ陸軍大臣ノ御話ガアリマシタ通り、今日ノ現状ヲ以テ見マスル
ナラバ、我軍
我軍ノ
占領地域ハ
実二日本全土ノ
二倍以上二跨ツテ
ツテ居
ルノデアリマス、
我軍
ノ占領地域
ハ実二日本全土
ノ二倍以上二跨
ツテ
居ルノデアリマス
、而シ
是等ノ
占領ハ
如何ニシテ
ニシテ為
サレタモノデアルカ、
レモ忠勇義烈
忠勇義烈ナル
ナル我
テ 是等
ノ 占領
ハ 如何
ニシテ
為サレタモノデアルカ
、何 レモ
忠勇義烈
ナル
我 ガ皇軍死
3
闘ノ結果デアル
結果デアル、
デアル、即チ是ガ為ニハ、十万ノ
十万ノ将兵ハ
将兵ハ戦場二屍ヲ
戦場二屍ヲ埋メテ居
メテ居ルデアリマセウ、
ルデアリマセウ、
之二幾倍スル
スル数十万
数十万ノ
将兵ハ
マシク戦傷二苦
戦傷二苦シンデ
シンデ居
ルデアリマセウ、
百万ノ
之二幾倍
スル
数十万
ノ将兵
ハ 、悼 マシク
戦傷二苦
シンデ
居 ルデアリマセウ
、百万
ノ
皇軍ハ
ナホ戦場二留
戦場二留マツテ
マツテ、
ユル苦難卜闘
苦難卜闘ツテ
ツテ居
ルニ相違
相違ナイ
ナイ、
皇軍
ハ今 ナホ
戦場二留
マツテ
、有 ユル
苦難卜闘
ツテ
居ルニ
相違
ナイ
、斯クシテ得ラ
レタル所ノ此ノ戦果、斯クシテ現ハレタル所ノ此ノ事実、之ヲ眼中二置カズシテハ、何
人卜雄モ事変理ヲ論ズル資格ハナイ（「ヒヤく」拍手）
諸君モ御承知ノ如ク、我国ハ曾テ四十余年前二支那卜戦ツタ、三十余年前二ロシア
卜戦ツタ、是等ノ戦ハ何レモ国運ヲ賭シタル戦デアツタニ相違ハゴザイマセヌガ、今
回ノ戦卜比べマスルナラバ、其ノ規模ノ大ナルコト、其ノ犠牲ノ大ナルコト、日ヲ同ジク
シテ語ルベキモノデハナイ
、然 ルニ是等
ルニ 是等ノ
是等 ノ 戦 ハ 如何ナル
如何 ナル条件
ナル 条件ヲ
条件 ヲ以 テ 、和平克復ヲ
和平克復 ヲ見 ルニ至
ルニ 至 ツタカト云
ツタカト 云 フコトハ、
フコトハ 、
歴史ガ
歴史
ガ之 ヲ明記シテ
明記シテ居
シテ居リマスルカラ、
リマスルカラ、ツトニ二述
ツトニ二述ベル
二述ベル必要
ベル必要ハナイ
必要ハナイ、
ハナイ、ソレ故二之
ソレ故二之ヲ
故二之 ヲ過去
歴史二鑑ミ
又之ヲ
東亜二於ケル
ケル大日本帝国
大日本帝国ノ
将来二鑑ミ
基礎トシテ
トシテ、
ノ歴史二鑑
ミ 、又之
ヲ東亜二於
ケル
大日本帝国
ノ将来二鑑
ミ 、之 ヲ基礎
トシテ
、以テ
事変処理
内容ヲ
充実スルニアラザレバ
スルニアラザレバ、
出征ノ
将士ハ
フニ及
バズ、
事変処
理ノ 内容
ヲ充実
スルニアラザレバ
、出征
ノ 将士
ハ 言フニ
及バズ
、日本全国民
ジテ之
承知スルモノデハナイ
スルモノデハナイ（「
（「ヒヤヒヤ
ヒヤヒヤ」
拍手）
ハ断ジテ
之ヲ承知
スルモノデハナイ
（「
ヒヤヒヤ
」拍手
）
政府二於テ其ノ用意ガアルカナイカ、私ガ問ハントスル所ハ、米内首相ハ事変処理
二付テハ、既ニ確乎不動ノ方針ガ定メラレテ居ル、斯ク声明セラレテ居ルノデアリマス
ルガ、其ノ方針トハ何デアルカ、所謂近衛声明ナルモノデアルニ相違ナイ、
即チ一昨年十二月二十二日二発表セラレタ所ノ近衛声明、是ガ事変処理二関スル
不動ノ方針デアルコトハ、申スマデモナイコトデアリマス、所ガ私ハ元来此ノ近衛声明
ナルモノニ向ツテハ、疑ヲ抱イテ居ルノデアリマス、此ノ際誤解ヲ防グガ為御断リヲシ
テ置キマス、キッパリト御断リヲシテ置キマスルガ、私ハ今俄二近衛声明二反封スル
者デハナイ、サリトテ賛成ヲスル者デモナイ、賛成ヲスルカ反対ヲスルカハ、政府ノ説
明ヲ聴イテ、然ル後二於テ考ヘル横リデアリマス （拍手）
今日ハ質問デアリマス、質問ハ読ンデ字ノ如ク疑ヲ質スノデアル、ソレ故二此ノ考ヲ
以テ御聴取ヲ願ヒタイノデアリマス、近衛声明ノ中ニハドゥ云フコトガ含マレテ居ルカト
言ヒマスルト、大体五ツノ事柄ガ示サレテ居ルノデアリマス、
其ノーツハ支那
ノーツハ支那ノ
支那ノ独立主権ヲ
立主権ヲ尊重スルト
尊重スルト云
スルト云フコトデアル、
フコトデアル、
第二ハ
第二ハ領土ヲ
領土ヲ要求シナイ
要求シナイ、
償金ヲ要求シナイト
要求シナイト云
フコトデアル、
シナイ、償金ヲ
シナイト云フコトデアル、
第三ハ
第三ハ経済関係二付テハ
経済関係二付テハ、
テハ、日本ハ
日本ハ経済上ノ
経済上ノ独占ヲヤラナイト
独占ヲヤラナイト云
ヲヤラナイト云フコトデアル、
フコトデアル、
第四ハ
第四 ハ 支那二於ケル
支那二於 ケル第三国
ケル 第三国ノ
第三国 ノ 権益二付
権益 二付テハ
二付 テハ、
テハ 、 之 ヲ 制限セヨト
制限 セヨト云
セヨト 云 フ如 キコトヲ支那
キコトヲ支那
4
政府ニハ
政府ニハ要求
ニハ要求シナイ
要求シナイ、
シナイ、
第五ハ
第五ハ 防共地域デアル
防共地域デアル所
内蒙附近ヲ取除ク
取除ク其 ノ 他 ノ地域ヨリ
地域ヨリ、
日本軍ヲ撤兵ス
撤兵ス
デアル所 ノ 内蒙附近ヲ
ヨリ 、日本軍ヲ
ルト云
フコトデアリマス、
ルト
云フコトデアリマス
、
此ノ五ッガ近衛声明二含
近衛声明二含マレテ
明二含マレテ居
マレテ居ル所ノ要項デアル
要項デアル、
デアル、
而シテ此ノ声明ハ唯日本ノミニ対スル声明デナケレバ、又支ナノミニ対スル声明デモ
ナイ、実二全世界二対スル所ノ声明デアリマスカラ、如何ナルコトガアツテモ之ヲ変更
スルコトガ出来ルモノデハナイ、絶封二是ハ変更ヲ許サ
ナイノデアル、若シ筍且ニモ之ヲ変更スルガ如キコトガアリマスナラバ、我国ノ国際的
信用ハ全ク地二墜チテシマフノデアリマス、
唯ソレバカリデハナイ、御承知ノ如ク彼ノ江兆銘氏、同氏ハ此ノ近衛声明二呼応シテ
立上ツタノデアル、即チ此ノ近衛声明ヲ本トシテ、和平救国ノ旗ヲ押シ立テテ、新政権
ノ樹立二向ツテ進ンデ来テ居ルノデアル、其ノ後同氏ハ声明書ヲ発表シテ居リマスル
ガ、此ノ声明書ヲ見マスルト、徹頭徹尾近衛声明ヲ文字通り、額面通リニ解釈ヲシテ
居ルノデアル、
即チ同氏ガ発表シマシタ所ノ声明書、此ノ声明書二現ハレテ居ル所ノ文句ヲ、其ノ儘
取ツテ来てテ綜合シマスルト、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、近衛声明
近衛声明ノ
近衛声明
ノ如 クデア
ツタナラバ支那二取
支那二取ツテハ
ツテハ別二不利益
別二不利益ハナイ
ハナイ、
日本ハ
声明二依ツテ
ツテ全
ツタナラバ
支那二取
ツテハ
別二不利益
ハナイ
、日本
ハ此ノ声明二依
ツテ
全ク侵略主
放棄シタノデアル
シタノデアル、
日本ハ
マデ侵略主義
侵略主義ヲ
ツテ居
ツタガ、
近衛声明：
義 ヲ放棄
シタノデアル
、日本
ハ是 マデ
侵略主義
ヲ執 ツテ
居 ツタガ
、近衛声明
：依 ツテ
侵略主義ヲ
放棄シタノデアルト
シタノデアルト言
ウテ居
日本ガ
侵略主義ヲ
放棄シタト
シタト云
フコトハ、
侵略主義
ヲ放棄
シタノデアルト
言ウテ
居ル、日本
ガ侵略主義
ヲ放棄
シタト
云フコトハ
、
軍事上二於テハ
テハ征服二
征服二ヨラズズ
ヨラズズ、
経済上二於テハ
テハ独占
独占ヲ
ナイト云
即チ軍事上二於
テハ
征服二
ヨラズズ
、経済上二於
テハ
独占
ヲ考へナイト
云フコトデア
クノ如
日本ガ
戦争中二於テ
反省シタル
シタル以上
以上ハ
中国モ
亦深ク
反省スル
ル 、斯 クノ
如 ク日本
ガ戦争中二於
テ 反省
シタル
以上
ハ、中国
モ亦深
ク自 ラ反省
スル
ガアツテ、
一日モ
速二和平ヲ
実現セネバナラヌ
セネバナラヌ、
所ガアツテ
、一日
モ速二和平
ヲ実現
セネバナラヌ
、
而シテ斯ノ如キ和平ハ絶対二平等ノ立場二於テ結バネバナラヌ、戦勝者ガ戦敗者二
対スル態度ハ一切放棄スベキデアル、随ツテ和平条件ハ決シテ支那国家ノ独立自
由ヲ害スルモノデハナイカラ、何人卜雖モ和平ノ実現ヲ拒ムコトハ出来ナイ、声明書
ニ現ハレテ居リマスル所ノ文句ヲ其ノ俵取ツテ釆テ綜合スルト、斯ノ如キモノニナルノ
デアル、サウシテ此ノ声明ヲ発表シテ爾来一念有世ノ間、和平運動ノ為二進ンデ来テ
居ルノデアリマス
ソレデスカラ御承知ノ通り支那民衆、蒋介石－派ヨリハ実二言フニ堪へザル所ノ攻撃
5
ヲ受ケ迫害セラレ、身ヲ挺シテ和平連動ノ為二進軍シテ来テ居ルノデアリマス、ソレ故
二同氏ノ立場カラ見レバ、徹頭徹尾此ノ声明ヲバ裏切ルコトハ出来ナィ、若シ之ヲ裏
切ルガ如キコトガアリマシタナラバ、和平運動、延イテ新政権ノ樹立ハ根本カラ崩壊
セラレテシマフノデアル、
是二於テ私ハ政府二向ツテ御尋ヲスルノデアル、支那事変処理ノ範囲卜内容ハ如何
ナルモノデアルカ、重ネテ申シマスルガ、支那ノ独立主権ハ完全二尊重スル、支那ノ
独立主権ヲ完全二尊重スル以上ハ
、
将来支那ノ内外政治二向ツテハイヤシクモ干渉ガマシキコトハ出来ナイ、若シ干渉ガ
マシキコトヲ為シタナラバ、支那ノ独立主権ハ立ドコロテ侵害セラレルノデアル、領土
ハ取ラナイ、償金ハ取ラナイ、支那事変ノ為ニドレダケ日本ノ国費ヲ費シタカト云フコト
ハ私ハ能ク分リマセヌ、併シナガラ唯軍費トシテ吾々ガ此ノ議会二於テ協賛ヲ致シマ
シタモノダケデモ、今年度マデニ約百二十億円、来年度ノ軍費ヲ合算致シマスルト約
百七十億円、是カラ先ドレダケノ額二上ルカハ分ラナイ、二百億ニナルカ三百億ニナ
ルカ、ソレ以上ニナルカ一切分ラナイ、ソレ等ノ軍費二付テハ一厘一毛卜雖も支那カ
ラ取ルコトハ出来ナイ、悉ク日本国民ノ負担トナル、日本国民ノ将来ヲ苦シメル二相
違ナイ、又経済開発ニ付テハ、決シテ日本ノミガ独占ヲシナイ、支那ノ経済開発卜云
フコトガ叫バレテ居リマスルガ、是モ日本ダケガ独占ヲスベキモノデハナイ、第三国権
益ヲ制限スルガ如キコトハ支那政府二向ツテハ要求シナイ、
是マデ我国ノ政治家ハ国民ノ前二何卜叫ンデ居ツタカ、此ノ度ノ支那事変ハ、支那ヨ
リ欧米列国ノ勢力ヲ騒逐スル、欧米列国ノ植民地状態、第三国カラ搾取セラレテ居所
ノ支那ヲ解放シテ、之ヲ支那人ノ手二戻スノデアルト叫ンデ居ツタノデアリマスガ、
是ハ近衛馨明トハ全然矛盾スル所ノー場ノ空言デアツタト云フコトニ相成ルノデアリ
マス、其ノ他占領地域ヨリ日本軍全部ヲ撤兵スルト云フノデアル、残ル所二何ガアル
カ、ソレガ私ニハ分ラナイノデァリマス、殊二日本軍ノ撤兵ニ付テハ、江兆銘氏ガ如何
ナルコトヲ言ウテ居ルカト云フト、第一次声明ノ中二斯ウ云フコトガ現ハレテ居ル、近
衛声明ニ於テ特別重要ナル点ハ日本軍ノ支那カラノ撤兵デアル、サウシテ其ノ撤兵
ハ全部ガ急速ニ、且ツ有ユル方面二於テ一斉ニ行ハレネバナラメト云フコトデアル、
唯提案セラレタル所ノ日支防共協定ノ存績期間テ限ツテ、日本軍ノ駐屯スベキ所謂
特定地区ハ唯内蒙ノ附近ノミニ制限セラレナケレバナラナイ、斯様二江兆銘氏ハ声
6
明シテ居リマスルガ、之ヲ近衛声明卜対照シマスルト、少シモ間違ヒハナイノデアリマ
ス、
然ル以上ハ是ヨリ新政権ヲ対手ニ和平工作ヲ為スニ当リマシテハ、支那ノ占領区域
カラ日本軍ヲ撤退スル、北支ノー角、内蒙附近ヲ取除キタル其ノ他ノ全占領地域ヨリ
日本軍全部ヲ撤退スル、過去二年有半ノ長キニ亙ツテ、内ニハ全国民ノ後援ノ下ニ、
外ニ於テハ我ガ皇軍ガ悪戦苦闘シテ進軍シマシタ所ノ此ノ占領地域ヨリ日本軍全部
ヲ撤退スルト云フコトデアル、
是ガ近衛声明ノ趣旨デアリマスカ、政府ハ此ノ趣旨ヲ其ノ儘実行スル積リデアリマス
カ、是ガ私ハ聴キタイノデアリマス、総理大臣ハ言フニ及バズ、軍部大臣二於テモ此
ノ点ニ付テハ御説明ヲ煩ハシテ置キタイ
次 ニ 事変処理二付テハ
事変処理二付 テハ東亜
テハ 東亜ノ
東亜 ノ 新秩序建設卜云フコトガ
新秩序建設卜云 フコトガ繰返
フコトガ繰返サレテ
繰返 サレテ居
サレテ 居 リマス、
リマス、此 ノ 言
葉 ハ 昨日以来此ノ
昨日以来此 ノ 議場テ
議場 テ 於 テモドレダケ繰返
テモドレダケ 繰返サレテ
繰返 サレテ居
サレテ 居 ルカ分
ルカ分 ラナイ、
ラナイ 、元来此ノ
元来此 ノ 言葉
事変ノ
メニハナカッタノデアリマスガ、
事変後約一年半ノ
ハ事変
ノ初メニハナカッタノデアリマスガ
、事変後約一年半
ノ後、即チ一昨年 11 月 3
日近衛内閣の
声明二依ツテ
ツテ初
メテ現
ハレタ所
言葉デアルノデアリマス
デアルノデアリマス、
日近衛内閣
の声明二依
ツテ
初メテ
現ハレタ
所ノ言葉
デアルノデアリマス
、
東亜ノ新秩序建設卜云フコトハドゥ云フコトデアルカ、昨日外務大臣ノ御言葉ニモアツ
タヤウニ思ヒマスガ、近頃新秩序建設卜云フコトハ此ノ東洋ニ於テバカリデハナイ、ヨ
ーロッパニ於テモ数年来此ノ言葉ガ現ハレテ居ルノデアリマス、併シナガラヨーロッパ
二於ケル新秩序ノ建設卜云フモノハ、詰り持タザル国ガ持テル国二向ツテ領土ノ分
割ヲ要求スル、
即チ一種ノ国際的共産主義ノ如キモノデアリマスガ、其ノ後ノ事情ヲ見マスルト全然
反対デアル、随分持テル所ノ大国ガ持タザル所ノ小弱国ヲ圧迫スル、迫害スル、併
呑スル、－種ノ弱肉強食デアル、ココ二至ツテヨーロッパニ於ケル新秩序建設ノ意味
ハ全ク支離滅裂、実ニ乱暴極マルモノデアリマス、併シヨーロッパノコトハドゥデモ宜
シイ、
ヨーロッパニ於ヶル新秩序ノ建設ナドハ、吾々二於テ顧ル必要ハナイ、此
此ノ東亜ニ
東亜ニ於
ケル新秩序建設
新秩序建設ノ
内容ハ
如何ナルモノガアルヵ
ナルモノガアルヵ、
ケル
新秩序建設
ノ内容
ハ如何
ナルモノガアルヵ
、是モ近衛声明及ビ之ニ呼応シタル
所ノ江兆銘氏ノ声明ヲ対照シテ見マスルト、新秩序建設ニハ確ニ２ッ３ツノ事柄ガ含ン
デ居ル、ソレハ何デアルカ、
7
第一ハ
第一ハ善隣友好卜云フコトデアル
善隣友好卜云フコトデアル、
フコトデアル、
第二ハ
共同防共デアル
デアル、
第二
ハ共同防共
デアル
、
第三ハ
経済提携デァリマス
デァリマス、
第三
ハ経済提携
デァリマス
、
是ガ是マデノ公文書二現ハレテ居ル所ノ新秩序建設ノ内容デアリマスルガ、政府ノ見
ル所モ之二相違ナィノデアルカ、新秩序建設卜云フコトガ朝野ノ間ニ於テ謳ハレテ居
ルノデアリマスルガ、其ノ新秩序建設ノ実体ハ以上述べタル三ツノコトニ過ギナイノデ
アルカ、
尚ホ此ノ外二何モノガアルノデアルカ、ナケレバ宜シイ、アルナラバソレヲ聴キタイ、
アツテモ言へナイト言ハルルナラバソレモ宜シイ、
兎二角是ホド
ホド広
ホド強
、兎二角是
ホド
広ク、是ホド
強ク高調
セラレテ居
戦争ノ
目的デアリ
デアリ、
犠牲ノ
目的デアル
デアル所
東亜新秩序建設ノ
章髄ハ
セラレテ
居ル所ノ戦争
ノ目的
デアリ
、犠牲
ノ目的
デアル
所ノ東亜新秩序建設
ノ章髄
ハ、
政府ノ
デアルカ、
ツテ置
ケバ宜
政府
ノ見ル所ハ何デアルカ
、之ヲ承ツテ
置ケバ
宜シイノデアリマス
之二関連シテ御尋ヲシテ置キタイコトガアル、此所二昨年十二月十一日附ヲ以テ発
表セラレタル東亜新秩序答申案要旨卜云フモノガアル、是ハ興亜院二於テ委員会ヲ
設ケテ審議セラレタル所ノ其ノ答申案デアリマス、
之ヲ見マスルト云フト、吾々ニハ中中難カシタテ分ラナイ文句ガ大分並べテアル、即
チ皇道的至上命令、「ウシハク」ニ非ズシテ「シラス」コトヲ以テ本義トスルコトハ我ガ
皇道ノ根本原則、支那王道ノ理想、八紘一宇・・中々是ハ難カシタテ精神講話ノヤウ
ニ聞エルノデアリマシテ、私共実際政治二頭ヲ突込ンデ居ル者土ハ中々理解シ難イ
ノデァリマス（拍手〉
併 シソレハ別卜致
シソレハ 別卜致シマシテ
別卜致 シマシテ、
シマシテ 、近頃ニナツテ
近頃 ニナツテ東亜新秩序建設
ニナツテ 東亜新秩序建設ノ
東亜新秩序建設 ノ 原理原則トカ
原理原則 トカ、
トカ 、精神的
基礎トカ
トカ称
ルモノヲ、
委員会マデモ
マデモ設
ケテ研究
研究シナクテハナラヌト
シナクテハナラヌト云
基礎
トカ
称スルモノヲ
、特ニ委員会
マデモ
設ケテ
研究
シナクテハナラヌト
云フコトハ一
フコトハ一
ドゥ云
フコトデアルカ、
東亜新秩序建設ハ
大戦争、
大犠牲ノ
目的デアルノ
体 ドゥ
云 フコトデアルカ
、東亜新秩序建設
ハ 此ノ 大戦争
、此 ノ大犠牲
ノ目的
デアルノ
デゴザイマス、
ルニ此
犠牲、
戦争ノ
目的デアル
デアル所
東亜新秩序建設ガ
デゴザイマス
、然 ルニ
此 ノ 犠牲
、戦争
ノ 目的
デアル
所 ノ 東亜新秩序建設
ガ 、事変以
来約一年半ノ
後二於テ
メテ現
ハレ、
更三年ノ
後二於テ
委員会マデモ
マデモ設
ケテ、
来約一年半
ノ後二於
テ初 メテ
現ハレ
、更三年
ノ後二於
テ特 ニ委員会
マデモ
設 ケテ
、
原理、
原則、
精神的基礎ヲ
研究シナクテハナラヌト
シナクテハナラヌト云
フコトハ、
私共二於テハドゥ
其ノ原理
、原則
、精神的基礎
ヲ研究
シナクテハナラヌト
云フコトハ
、私共二於
テハドゥ
受取レナイノデアリマス
レナイノデアリマス（
拍手）
モ受取
レナイノデアリマス
（拍手
）
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此ノ点ハ総理大臣二限ラズ、興亜院ノ総裁デ宜シイノデアリマスカラシテ、何故興亜
院二於テハ特モ委員曾マデモ設ケテ、斯ウ云フコトノ研究二者手セラレタノデアルカ、
之ヲ聴イテ置キタイノデアリマス
ここまでで、
ここまでで、以下は
以下は官報より
官報より削除
より削除された
削除された。
された。
＜以下は
以下は次回に
次回に＞
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