専攻科特別実験資料 - 国立舞鶴工業高等専門学校

建設・生産システム工学専攻科特別実験
計測器からの信号取得手法とデータ処理手法
平成27年度
舞鶴工業高等専門学校専攻科
総合システム工学専攻
三輪
建設工学コース
浩
1.はじめに
本実験は,計測器からの信号取得とデータの処理および結果の整理について,水理実験を通し
てこれらの手法を習得することを目的としている.実験は等流の流れ場を対象として,プロペラ
流速計を用いて流速の測定を行い,得られたアナログ信号をデータレコーダに取り込んでディジ
タル信号に変換する.さらに,このデータをもとに解析プログラムによって目的の変量を計算し,
得られた結果を整理する.
2.実験の概要
開水路における流速をプロペラ流速計によって測定し,測定結果を統計処理して流速時系列,
平均流速および流速変動成分の頻度分布を求める.流速検出部(プロペラ)によって取得された
信号はアンプを通してアナログ信号(電圧)でデータレコーダに送られる.この信号はデータレ
コーダでディジタル信号に A/D 変換されて,電圧値としてコンパクトフラッシュメモリに記録さ
れる.
3.実験装置
実験に用いる水路は,建設システム工学科棟1階の水工学実験室に設置されたアクリル製の矩
形断面を有する小型可変勾配水路であり,全長 1m,水路幅 0.07m,深さ 0.2m を有する.なお,
水路勾配は 1/100 に設定されている.
また,水路の底面は一辺 5mm の四角形桟粗度となっている.
流量は流量計で測定された値を読み取る.
流速測定には直径 3mm の超小型プロペラ流速計(中村製作所製)を使用する.なお,流速計の
測定範囲は±2.5~±100cm/sec,測定精度は 1cm/sec である.流速計で得られた信号はアンプに送
られ,表示部で指示されるとともに,測定範囲に対して-5V~5V のアナログ信号が出力される.
流速計(アンプ)の出力信号(アナログ)はデータレコーダ(TEYENCE 製)に送られ,A/D
変換されてディジタルデータとしてコンパクトフラッシュメモリに記録される.なお,データレ
コーダのサンプリング周波数は 100Hz,測定時間は 20 秒に設定されている.
4.実験方法
実験の手順は以下のとおりである.
(1) 流量の測定:
流量は制御装置に表示された値を読み取る.
(2) 水深の測定:
ポイントゲージを用いて水深を測定する.測定位置は水路下流端から 0.5m の位置とし,水路横
断方向中央位置の水深を測定する.
(3) 流速の測定:
ポイントゲージに取り付けられたプロペラ流速計によって流速測定を行う.測定位置は(2)の水
深測定位置と同じとし,底面から水面に向かって,次の6箇所における流速を測定する.
0.06h,0.1h,0.2h,0.4h,0.6h,0.9h;h は上記(2)で測定された水深
測定にあたっては,まず,所定の位置にプロペラの中央をセットする.つぎに,データレコー
ダの 20 秒間の流速を 100Hz のサンプリング周波数で記録する.
5.実験上の注意
プロペラ部はわずかの衝撃によっても破損するので,取り扱いには細心の注意を払うこと.
6.データ処理
コンパクトフラッシュメモリには1つの測定に対して1つのファイルが保存されている.たと
えば,
20140428_101.csv
である。表計算ソフト(MS-Excel など)を用いて,上記のテキストファイルを読み込む.このフ
ァイルを Excel で読み込む.
図-1 表計算ソフト(Excel)への読み込み
第1列目は測定時刻,第2列目は流速の電圧値である.第2列目のデータを実際の流速データ
に換算するには以下のようにする.すなわち,2.5~100cm/sec の流速に対して,0~5V を出力す
る.いま,簡単のために測定範囲を 0~100cm/sec とすると,流速(u)と電圧の関係は
u
となる.
100
V
5
(1)
7.測定結果の整理
上記の方法で処理された流速データをもとに統計処理を行うとともに以下の検討を行う.
1)平均流速の算出と流速分布図の作成
測点位置の平均流速(average velocity),標準偏差(standard deviation)を算出するとともに,流
速と測定位置(水路底面からの距離)の関係を片対数紙上にプロットする.
semi
方対数グラフ用紙を用
u (cm/sec)
いること
横軸1幅に対する縦幅の読みが 5.75u* に等し
5.75u *
い.例えば,縦幅の読みが 12.3(cm/s)とすると,
u*=12.3/5.75=2.14(cm/s)となる.
1
対数目盛り上での1である.
log
y (cm)
したがって,10 倍の目盛り幅
を取る.例えば,log8-log0.8=1
だから,y=8cm と 0.8cm の区
間を取ると良い.
図-2 平均流速分布(図中,u*は摩擦速度)
2)流速変動時系列図の作成
各測定流速から平均流速を差し引いた流速(流速変動成分)の時間変化を図化する.図-3 に例
を示す.なお,横軸が時間であることに注意すること.データ 100 個で 1 秒である.
図-3 流速変動時系列
3)変動流速成分の頻度分布図の作成
変動流速成分のヒストグラム(頻度分布図)を作成し,正規分布式を重ね合わせて,その適合
性を調べる.図-4 に測定された流速の例を示す.
Frequency
0.1
x / L = 1.0
–
ub = 42.8
ub = 4.574
cs = 0.060
ck = 2.719
0.05
0
–20
–10
0
u'b
10
20
(cm/sec)
図-4 流速変動成分のヒストグラム
図中,ub は平均流速, ub は標準偏差である.また,Cs,Ck はそれぞれ分布のひずみ度(skewness
coefficient)ととがり度(kurtosis coefficient)であり,次のように表される.
Cs 
Ck 

E u  u 
3

(4)

(5)
 u3

E u  u 4
 u4
ここに,E{X}は X の平均を意味する.正規分布の場合は Cs=0,Ck=3 となるので,測定結果がど
うであったか検討せよ.
8.実験報告書について
報告書はワードプロセッサによるものとする.なお,提出期限は別途通知する.