国際柔道連盟(IJF)審判規定

国際柔道連盟(IJF)試合審判規定
(2015 年 9 月)
1. 審判員の心得
2. 主審
(1) 位置
(2) 姿勢、基本事項
(3) スコア
(4) 「待て」「始め」
(5) ジェスチャー
3. スコアボードの訂正
4. 立技での注意点
5. 「組み方」
6. 寝技での注意点
7. 総合勝ち(キャンセル)
8. ゴールデンスコア
9. 反則(①指導、②反則負け)
10.試合の終了
11.医療処置関係
12.髪の結い直し
13.柔道衣(サポーター)、衛生、その他
1
1. 審判員の心得
(1) 審判員・選手ともに正しい礼法(30 度曲げた状態で 2 秒静止させる)を徹底させる。
「柔道は礼に始まって礼に終わる。礼はお互いと他人への敬意と感謝を意味するものである。指
導者は柔道の試合に勝つことだけでなく、柔道の精神を教えなければならない。」
(2) まわりから受ける数々のプレッシャー(コーチ・試合者・観客・テレビ・試験官)による余計
な考えや感情を取り去らなければならない。
(3) 自信に満ち、公平で注意深く、威厳に満ち、落ち着いた態度でなければならない。
(4) 多くの審判の数をこなし、また同僚に自己の審判評価を求め、審判経験を積むことが重要であ
る。
(5) 審判員は大会前に審判規定を見直すべきである。
(6) 主審は試合の中心的権威であって、冷静さ、自信、合理性を保たなければならない。
2. 主審
(1) 位置
a) 主審は原則として試合場内に位置する。主審は、試合の進行と勝負の判定を司る。主審は、自
分の判定が正しく記録されていることを確認しなければならない。
b) 試合者と3~4メートルの間隔をとる。
c) 主審は常に試合者の動きを判断して、予測を立て、最高の位置につくこと。
d) 寝技においては、主審は試合者と2~3メートルの間隔をとる。
e) 両試合者が寝技の状態にあり、場外側に向いている場合には、主審は安全地帯からその動作を
観察してもよい。
(2) 姿勢、基本事項
a) 主審は腕を垂直に垂らし、基本姿勢を身につける。
b) 試合場を歩く場合、度が過ぎないようにすること。走らないこと。
c) 主審は、試合者が投げられた時、畳とのインパクトの全体が見える位置にいなければならない。
d) 主審は、投げられた試合者が着地した時、腰を引いたり頭や体を捻ったりしてはならない。
主審の動きが試合者の投げる動きと同じにならないよう注意。
e) 「もう少し」といったような顔の表情や頭の動きは避けること。
f) 主審は、試合開始位置に戻す指示を礼節をもって行なったり、直接ふれることを避けるなど、
2
選手に対する敬意を示さなければならない。
g) 姿勢、動作やジェスチャーはどんな状況であっても自然でなければならない。
(3) スコア
同時の技:試合者双方が、同時に見える攻撃の後、畳に倒れ、主審及び両副審がどちらの技が
優位か判断できないときは、何のスコアも与えられない。
テクニック(技)の価値
「一本」にもっと価値を与える。背中が畳につく際に本当のインパクトがある場合にのみその
技を一本とみなす。倒れた時に巻き込まれて本当のインパクトがない場合は一本とは考えない。
(解釈)側面から着地してローリングして背中が着いた場合は最高で「技有」
。体側がついて
からのローリング状態であれば最高で「技有」とする。
「有効」の定義
選手が相手をコントロールして投げて体の上部側面が着地した場合は「有効」とする。
(解釈)上部側面と定義されているため、下半身が側面であろうが、うつぶせ状態であろうが、
上部側面がハッキリと畳に着いた場合は「有効」
* 体側から落ちた場合、腕が前に伸びて体が地面に垂直な場合は有効。限りなく腹ばいに近い状
態、もしくは腹ばいの状態はノースコア。肘で着地し肩が地面に着いてない状態はノースコア。
* 肘(の上に自身の体があり)と同時に肩が地面に着いている状態は「有効」。受の腕が着地し
た体側の外側(背中側)にある場合はノースコア。
最初にしりもちをつき、その後の別のアクションで背中を着けた場合は有効ではない。(古い
規定では「効果」
)
二つの別のタイミングとなるため「有効」ではない。
しりもちをついた後に同じアクション(続いた場合)であれば有効とする。
(4) 「はじめ」「待て」
a) 審判員は試合の流れを十分理解し、選手達による柔道のダイナミックスを熟知しておく必要が
ある。試合の動作を理解していない審判員は、続行が許されるべきときに罰則を与えたり、
「待
て」を宣告して試合をつまらなくしている。
b) 「待て」のあと選手が試合開始線に戻らなくても、また主審が試合の開始の位置に戻らなくて
も(逆の位置にいても)、選手同士が向かい合った平等な状態であれば「始め」を宣告しても
よい。また、柔道衣が少し乱れていても、試合の流れを止めることなく、安易に「待て」をか
けるべきでない。
c)主審は危険と思われる状態以外で試合場外に出ようとしている試合者を止めるために「待て」
を宣告してはならない。理由のない「待て」は宣告してはならない。
d)主審は絞技、関節技などから逃れた試合者に休息が必要と見られても、また試合者から休息を
要求されても「待て」を宣告してはならない。
(5) ジェスチャー
a)審判員の全ての合図は少なくても3秒から5秒間維持し、試合者から目を離さないこと。体を
回すとき、両試合者から目を離さないように注意する。
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b) 不明瞭と思われる場合は、主審は公式合図の後、技の効果を得た試合者又は罰則を与えられた
試合者を示すために、開始時の位置(白・青)を指差す。※明らかな場合は出す必要はない。
c) 両試合者に罰則を与える場合は、主審は、該当する動作を行い、試合者を交互に指差し、訂正
する合図が必要なときは、取り消しの合図の後、速やかに示す。
「待て」の発声は試合者等に聞
こえるように、手は時計係へ向け、試合者から目を離さない。
d) 自然体を保ち、腕だけでジェスチャーを行う。体がアップダウンしないよう注意する。
e) 「有効」
「技あり」の場合、右手は左肩からスタートさせると大きく見える。
f)苦笑いをしたり、うなずいたり、「しまった!」というような表情はつつしむ。
g)自信あふれる表情を保つこと。
h) 試合者に罰則を与える場合は、主審は、該当する動作を行い、左の試合者には左の人差し指で、
右の試合者には右の人差し指で指差す。
i) 宣告の取り消しにおいては、発声は必要としない。
j) 主審は、必要ならば、試合結果を示す前に、試合者に柔道衣を直させるべきである。
<主なジェスチャーは以下の通り-IJF 審判規定より>
1)「抑え込み」試合者に向かって上体を曲げ、試合者の方へ掌を下に向けて片腕を挙げる。
2)「解けた」片腕を前方に挙げ、上体を試合者の方に曲げながら左右に早く二、三回振る。
3)「待て」片手を肩の高さに畳とほぼ平行に挙げ、指を上にして開いた掌を時計係りに向けて示す。
4)「そのまま」上体を前方に曲げ、両掌で両試合者に触れる。
5)「よし」両掌を両試合者にしっかりと当て、その後強く押す。
6)「柔道衣を直させる場合」帯の高さで掌を内側に向けて、左手を上にして手を交差させる。
7)
「医師の招請」医師のテーブルに向かい、その方向から負傷した試合者へ掌を上に向けて片手を振る。
8)「罰則を示す場合」握りこぶしから人差し指を伸ばして、試合者を指差す。
9)「積極的戦意に欠けること」胸の高さで両前腕を前回りに回転させ、人差し指で試合者を指差す。
10)
「偽装的な攻撃」手を握って両腕を前方に挙げ、その後両手を下げる動作をする。
11)「帯から下を攻撃・防御」足を一歩前に進ませ、同じ側の腕で足を取るような動作をする。
3. スコアボードの訂正
(1) 提示に関する訂正は主審のみの権限である。
(2) 主審はスコアボードの提示に誤りがあれば、試合を止め、訂正しなければならない。
(3) もし、副審が提示板の誤りを発見したら、それを主審に通知しなければならない。
4. 立技での注意点
(1) 「捨て身技」
「返し技」がおこなわれて一方が畳に背中から着地した場合、コントロールされ
て着地したのか、それとも自分から着地して「捨て身」または「返し」が行われたのかを正し
く見極めなければならない。この判断を間違うと勝者が逆転してしまう大きなミスとなって
しまうからである。スコア-を与える場合は当然「青か白」の位置を指差すことになる。
(2) 立ち姿勢(立技)のとき、アクションが場内から始まった場合、その技の効力がある場合、
両者が場外に出ても試合を継続する。
(3) 投げ技において受けの背中、体側、臀部等が着地する前に、投げに中断があり背が直接につ
かない場合スコアを格下げる。原則は、巴投げに中断があった場合は、
「技あり」が与えられ
る最高のスコアになるのと同様である。
(4) 関節を決めながらの投技は無効とする。腕返しや腕絡の状態からの引き込み返し等がある。
4
(5) 試合者の一方が、投げられたときに意識的にブリッジをして、
「一本」を取られるのを防いだ
としても、負担のかかるブリッジを推奨しないために、主審は「一本」又はその技の効果に
相応しいと思うその他のスコアを与える。
(6)場内外について
① 場内で技を掛け合うことを目的としている。意味もなく場外に出た場合は厳しく指導を与える。
② 片足が出た場合は直ちに攻撃するか、場内に戻らないと指導が与えられる。
③ 片足が出て偽装攻撃をした場合には指導が与えられる。
④ 攻撃などのアクションのないまま両足が場外に出た場合は指導。
⑤ 相手を押して場外に出した場合は、押した選手に指導が与えられる。(押しているだけで攻撃を
していない場合)
⑥ 相手に技を掛けられて場外に出た場合は指導ではなく「待て」
⑦ 場内で始まった攻撃は、立技・寝技共に一連のアクションであれば場外に行っても継続される(今
までと同じ解釈)
。一連のアクションが続いている限りは場外での返し技等も有効とする。
例:場内でケンケン内股をかけて両者が場外に出た後、受けが返し技で取りを投げた場合はスコア
になる。
⑧ 試合者がほぼ同時に技もなく場外へ出た場合は、両者に指導を与える。
5. 「組み方」
(1) 立ち姿勢において、
「標準的な」組み方でない場合、取が直ちに技をかけない場合は「指導」
を与える。
(2) 正中線を超えた組み方は、「標準的な組み方」とは認めない。
(3) 自分の襟等を手で押さえ、反対の方向に開いて相手に握らせない場合は「指導」。
(4) 相手の足の間に片足を引っ掛けたままの姿勢で攻撃しているように見せかけの動作は「標準
的な組み方」とは認めない。この組手で直ちに攻撃を行わない場合は「指導」
。
(5) ピストルグリップ(絞る握り方)や、袖口に触れて引っ掛ける握り方(ポケットグリップ)
は、直ちに技をかけない場合は「指導」
。
*その他、指導が与えられるケースの組み手は「9.反則 a.指導」を参照
6. 寝技での注意点
(1) 主審は進展がない寝技を止めることと、寝技への準備段階であり進展が起ころうとしている
状況との違いを見極めることが大切である。
「待て」が早すぎる傾向にあるので、進行をよく
見極めるように注意すること。柔道の中での重要な寝技の技術の発展を阻害させる原因にな
っている。
(2) 抑え込みのスコアは、有効10秒、技有15秒、一本20秒とする。
(3) 抑え込んでいる試合者は、その身体が「袈裟」又は「四方」又は「裏」の体勢、すなわち「袈
裟固」あるいは「上四方固」、
「裏固」のような形にならなければならない。「裏固」も有効と
する。
(4) 主審が、寝技のとき間違って「一本」と宣告したので、両試合者が別れてしまったときは、
主審と両副審は、できれば多数決の原則に従って、試合者の一方に不公平のないように、試
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合者双方をできるだけ元の位置に近づけてから試合を再開する。
(5) 場内で「抑込」が宣告された場合、両者が場外にでたとしても「抑込」は継続される。
(6) 寝技においては、抑込、関節技、絞技等の効力がなく、両試合者の全身が出た場合「待て」
を宣告する。
(7) 場内で掛けた絞技、関節技の効力がみられる場合、両者が場外にでてもしばらく様子をみる。
(8) 寝技においては、場内で掛けた投技が場外で決まった場合、受取どちらかが直ちに抑込の状
態になっている場合は両者が場外に位置しても「抑込」が宣告される。
(9) また、場内で掛けた投げ技が場外で決まった直後に、受取どちらかが直ちに関節、もしくは
絞技を施し、相手が「参った」をした場合は「一本」を宣告する。
例:場内で「抑え込み」を宣告後、抑え込みの状態のまま両者が場外に行き、そこで受が鉄砲で返して
直ちに取を抑え込んだ場合は「とけた、
(受の)抑え込み」を宣告。
例:場内で「抑え込み」を宣告後、抑え込みの状態のまま両者が場外に行き、そこで抑え込んでいる方
が関節技に移行し、相手が参ったした場合は関節技による一本となる。
例:場内でかけた背負投が場外で決まり「有効」もしくは「技有」を宣告後、投げた選手が投げられた
選手に関節を極められ参ったをした場合は一本となる。
7. 総合勝ち
新ルールのため、今後総合勝ちはキャンセルされる。
8. ゴールデンスコア(延長戦)
(1) 延長に入る場合、最初の試合のスコアや指導は掲示板に残して引き継ぐ。
(2) 試合の最後にスコアが同等の場合、
「指導」が少ない選手が勝者となる。スコアも「指導」も
同等の場合、延長戦が行われる。時間は無制限とする。
(3)主審は「それまで」を宣告し休憩なく「はじめ」を宣告して延長戦を開始する。
(4) 試合者のどちらかが最初に「指導」
・もしくは「有効」以上の差が出た時点で試合は終了する。
※「有効・それまで」
、「指導・それまで」と宣告する。
(5) ゴールデンスコアは1回のみ行われる。
(6) 寝技において、
「抑え込み」の場合、選手自身が解かない限り 20 秒(一本)まで継続される。
ただし、途中で「抑え込み」を受けている試合者が絞め技を施し、
「参った」または「落ちた」
場合は規定どおり絞め技を認める。
9. 反則
(1) すべての罰則は「軽微」な違反(指導)と「重大」な違反(反則負け)に分類される。
(2) 軽微な違反とは、技術的・戦術的なもの。
(3) 重大な違反とは、試合者の安全に対する侵害、あるいは柔道精神に反するもの。
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(4) 主審が罰則を与えるときは、罰則に対する理由を簡単な動作で示さなければならない。
a) 指導
「指導」を与える場所について
(1) 指導を与える際には開始線に戻らないでその場で与える。選手は1,2歩下がったり少しだ
け位置を変えることは可能だが(全くそのままでいなければいけないということではない)今
までのように歩いて呼吸を整えたりすることはできない。
(2) 場外に出て指導が与えられる場合は開始線に戻る。
(3) 寝技の際に指導を受けた場合は一度立ち上がって開始線に戻ってから指導が与えられる。
(4) 指導を与える流れ
① 指導を与える反則が発生
② 主審が「待て」を宣告
③ 試合者はその場で組み手を離し(もしくは立ち上がり)
、少し間合いを開けて向き合った状態に
なる
④ 主審が指導を与える(指導を宣告する前にはジェスチャーでその理由を示す)
⑤ 主審が「始め」を宣告→試合再開
※場外に出たり、帯がほどけたり、寝技がこう着状態となり「待て」が宣告された場合、選手は試合場
中央に戻り、主審が「始め」を宣告する。
(従来どおり)
4回目の指導(
「反則負」
)は開始線部分に選手が戻ってから与えること。
指導が与えられる行為
1) 試合において、勝負を決しようとしないため、故意に取り組まないこと。
2) 立ち姿勢において組んだ後、極端な防御姿勢をとること。(通常 5 秒以上)
3) 攻撃しているような印象を与えるが、明らかに相手を投げる意志のない攻撃を行うこと。
(偽
装的攻撃)偽装攻撃とは、以下のような行為をいう。
-投げる意志のない攻撃
-組み手なしの状態で技をかける、もしくは技を掛けた直後に組み手を放す
-受のバランスを崩すことなく、単発の技、もしくはいくつかの技繰り返しかける。
-受に攻撃させないために、取が受の脚の間に自分の脚を入れてブロックする。
4) 立ち姿勢において、防御のために相手の袖口を握り続けること。また絞って握ること。
5) 立ち姿勢において、勝負を避けるために、相手と片手又は両手の指を組合す姿勢を続けること。
6) 故意に、自分の柔道衣を乱すこと、及び主審の許可なしに、帯や下穿の紐をほどいたり、締め
直したりすること。
7) 寝技を始めるために相手を引き込むこと。
8) 相手の袖口又は、下穿の裾口に指を差し入れること。
9)立ち姿勢において、攻撃しないで、
「標準的」な組み方以外の組み方をすること。
10)立ち姿勢において組む前にでも組んだ後にでも、何の攻撃動作もとらないこと。
11)「ピストルグリップ」と呼ばれる方法で、親指と四指の間で相手の袖口を握り直ちに攻撃しな
いこと。
12)
「ポケットグリップ」と呼ばれる方法で、相手の袖口を折り返して握り直ちに攻撃しないこと。
13) ダイレクトにベアハグで攻撃を行うこと。また、ベアハグは、少なくとも一つの組み手をもっ
ていなければ攻撃できない。相手に持たれて自身が組手を持っていない状況でベアハグをする
のは指導となる。
14)帯の端や上衣の裾を、相手の身体のどの部分にでも巻きつけること。
15)柔道衣を口にくわえること。
16)相手の顔面に、直接手又は腕、足又は脚をかけること。
17)相手の帯び、襟若しくは衿に足や脚をかけること。
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18)柔道衣に上衣の裾又は帯を使って、あるいは直接指で絞め技を施すこと。
19)立ち姿勢、寝技のいずれにおいても、場外に出るか、相手を故意に場外に押し出すこと。
選手の片足が場外へ出た場合、その選手は直ちに攻撃をするか、場内に戻らないと指導が与え
られる。
両足が場外に出た場合は指導が与えられる。
選手が相手選手に押されて場外に出た場合は、相手に指導が与えられる。
(場内からの攻撃で両選手が場外に出た場合は指導を与えない)
20)相手の胴(胴絞)
、頚、頭を脚で挟んで絞めること。(両足を交差し、両脚を伸ばして)
21)相手の握りを切るために、相手の手又は腕を膝や足で蹴ること。また技を掛けることなく、相
手の脚や足首を蹴ること。
22)相手の握りを解くために、相手の指を逆にとること。
23) 両手を使って相手の組み手を切ること。
24) 組み手をさせないために、自身の柔道衣の襟を隠すこと。
25)直ちに攻撃することなく、片手、もしくは両手を使って相手に腰を曲げさせる体勢(プッシュ
ダウン)にさせる場合、ブロッキングで指導を与える。
* 4 回目の指導を与える際は、主審は副審と確認を取った後で反則負けを与える。4 回目の指導を
与える時は「指導」ではなく、
「反則負け」と発声する。
* 「標準的」な組み方とは、通常左手で相手の帯より上である右側の袖、襟、胸部、肩の上部、
背部を、右手で相手の帯より上である左側の袖、襟、胸部、肩の上部、背部を握ることであ
る。
* 「積極的戦意の欠如」は、一方又は双方に攻撃の動作が見られないときに与えられるものであ
る。攻撃の動作がなくても、純粋に試合者が攻撃のための機会をうかがっていると主審が判断
する場合には、積極的戦意の欠如は与えられるべきでない。
b) 反則負け
1)河津掛を掛けること。
相手の足に自分の足を巻きつけ、持ち上げて、捻りを加えて投げた場合「反則負け」。ただし、
相手の試合者と向き合って相手の後方に向かって「大内刈り」や「大外刈り」のようにして投
げた技や、「内股」のような技は認める。
2) 肘関節以外の関節をとること。
3) 背を畳につけている相手を引き上げ、これを畳に突き落とすこと。
4) 相手が払い腰等を掛けたとき、相手の支えている脚を内側から刈ること。
5) 主審の指示に従わないこと。
6) 試合中に、無意味な発声や、相手や審判員の人格を無視するような言動を行うこと。
7) 特に首や脊椎など、相手を傷つけたり危害を及ぼしたり、あるいは柔道精神に反するような動
作をすること。
8) 腕挫腋固のような技を掛けるか又は掛けようとしながら、畳の上に直接倒れること。
9) 内股、払い腰等の技を掛けるか、又は掛けようとしながら、身体を前方へ低くまげ、頭から突
っ込むこと。また、立ち姿勢又は膝をついた姿勢から、肩車のような技を掛けながら、あるい
は掛けようとしながら、まっすぐ後方に倒れること。
10) 試合者の一方が、後ろからかみついたとき、これを制しながら、故意に同体となって後方に倒
れること。
11) 硬い物質又は金属の物質を身につけていること。(覆っていても、いなくても)
12) 立ち姿勢または寝技への移行時において、片方または両方の手又は腕によって直接相手の帯か
ら下部を攻撃・防御すること。ただし、返し技や連絡技として時間差のあと脚を取ることは許
される。また、相手が標準的でなく肩越しに背部を掴んだ場合は脚を取ることは許される。
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13) 柔道精神に反するような行為があった場合、試合時間のいかなる時であってもダイレクト反則
負けが与えられる。
試合時間中に行われた禁止事項に対して、または特別な状況において、試合終了の合図の後に行われ
た重大な行為に対し、試合の結果が与えられていなければ、「それまで」の宣告後にでも罰則を与える
ことができる。
「反則負け」を与える前に、主審は副審と合議しに確認をして、三者多数決の原則に従って下さなけれ
ばならない。両試合者が同時に反則を犯した場合は、両者各々の反則程度に応じて罰則が与えられる。
スコアボードに関しては、繰り返された禁止行為は累積される。
スコアボード上の繰り返された指導
指導 1 つ ~ 3 つ=相手のスコアにならない
指導4つ=反則負け
※4回目は「指導」ではなく「反則負け」
10. 試合の終了
(1) 審判員が試合場を降りた後でも、結果に誤りがあり、その原因が明らかに人為的ミス(タイ
ムキーパーの記録違い)である場合は、試合者を再度試合場にあげて勝者宣告のやり直し、
もしくは GS からの試合再開ができることとする。
(2) 主審と副審とによる三者多数決によってなされた全ての動作や判定は最終的なものであり抗
議は許されない。
11. 医療処置関係
(1) 主審は頭部または背部(脊椎)に大きな衝撃のあった負傷の場合、あるいは主審が大きな負
傷についてのもっともな疑いをもったいかなる場合にでも、試合者に対処するために医師を
呼ぶことができる。このような場合には、医師はできるだけ短時間に試合者の診察を行い、
主審にその試合者が試合を継続してよいか否かを報告する。もし、続行できないようであれ
ば、合議のうえ「棄権勝ち」を宣告し試合を終了する。
(2) 試合者は主審に医療介入を求めることができる。ただしこの場合にはその試合は終了され相
手に「棄権勝ち」が宣告される。
(3) 出血がある場合にはどのような場合にでも常に粘着テープ、包帯、鼻用の止血栓などで覆わ
なければならない。安全面の見地から、主審は必要な回数医師を呼ぶ。出血しながら試合を
行うことは認められない。医師が試合者の世話をする場合は、その医療援助はできるだけ短
時間に済まさなければならない。
(4) 出血を伴う負傷は、同じ箇所に限り2回まで医師による手当てを受けることができる。もし、
同じ箇所から3回目の出血があった場合、副審と合議のうえ「棄権勝ち」を宣告し試合を終
了する。
(5) 軽微な負傷や損傷は、試合者自身が処置することが認められる。例えば指が脱臼した場合に
は、主審は「待て」又は「そのまま」を宣告して試合を中断し、脱臼した指を自ら復すこと
を認める。この行為は速やかに行われなければならず、審判員も医師もこれを援助してはな
らない。またその試合者は試合を継続しなければならない。ただし、試合者が同じ指の整復
を行うことは2回までしか認められない。同じ脱臼の3回目の再発の時点で、その試合者は
9
試合を続行する状態にないとみなされる。主審は副審と合議した上で試合を終了し、相手の
「棄権勝ち」を宣告しなければならない。
(6) 軽微な負傷や損傷の場合
爪の損傷の場合、医師は爪を切ることを手伝うことができる。
医師はまた睾丸の負傷を調整するのを手伝うこともできる。
(7) 試合者が嘔吐した場合、どのような場合でも相手の試合者の「棄権勝ち」となる。
(8) 試合者が打撲等によって軽微な負傷をした場合、3~4秒程度様子を見て試合の続行を促す。
(9) 試合者が出血した場合の治療は、試合場外で行う。治療には、副審の一人が立ち会う。
(10) 怪我を負ったため選手がドクターを要請した場合、主審は直ちにドクターを呼び、相手の棄
権勝ちを宣告する。相手の選手はそのまま試合場を去るが、主審はドクターの治療が終わる
まで試合場に留まる。
12. 髪の結いなおし
髪の結いなおしは、1 回だけ許される。2 回目から「指導」とする。ただし、「待て」をとっ
て結いなおしをする動作に対してカウントされるもので相手の「待て」の間に素早く結いなお
す場合はカウントされない。※回数は表示されないので正確に覚えておくこと。
13. 柔道衣(サポーター)、衛生、その他
(1) 女子の試合者は上衣の下に、次の何れかを着用しなければならない。
a)相当な丈夫さがあり、下穿の中に入る十分な長さのある、白色又は白に近い半袖無地の T シ
ャツ。
b)白色又は白に近い無地の半袖のレオタード。
c) 色は白、半そで、丸首。
製造業者マークは、最大 20 ㎠のサイズであれば認められる。柔道衣を着用した際に、製造業
者のマークが見えてはならない。
正式な国家、NOC、もしくは IJF 加盟連盟のエンブレムを左胸に固定してつけることは認めら
れる。
いかなる商業的なマーキングもつけてはならない。
(2) 試合者の柔道衣が、この条項に適していない場合は、審判員はその試合者にできるだけ短時
間に、この条項に適した柔道衣に着替えるよう命じなければならない。
(3) 柔道衣は清潔で、おおむね乾燥していて、不愉快な臭いがしないこと。
(4) 手足の爪は短く切ってあること。
(5) 試合者の個人的衛生状態がよく保たれていること。
(6) 長い髪は試合相手の迷惑にならないよう束ねること。着け毛等をすることは禁止する。
(7) 第3条(柔道衣)及び第4条(衛生)の必要条件に適合していない試合者は、試合する権利
を放棄させられ、三者多数決に従って試合がまだ始まっていなかった場合には「不戦勝ち」
が、試合がすでに始まっていた場合には「棄権勝ち」が相手に与えられる。
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(8) マウスピースの着装について
歯の矯正のために固定されたものは問題ないが、脱着可能な物質は飲み込む危険性や相手に
危害を与える可能性があるので禁止とする。
(9) 下穿きの下に着けるスパッツ等の長さは、膝よりも短いことを原則とする。
14.その他の IJF 大会運営ルール
カデーU18
カデの選手が関節技を施すことを許可する。
カデの選手が、絞技によって意識を失った場合、その選手はその大会は試合をすることはできない。こ
の年代の選手に多くの試合をさせる機会を与える為に、ダブルレペチャージ、もしくはその他のシステ
ムを適用する。
礼
畳に上がる際、(二名の)選手は同時に試合場入り口に歩いて行き、お互いに同時に礼をする。
試合開始前に選手は握手をしてはいけない。
選手が試合場を降りるとき、選手は柔道衣をきちんと着用していなければならない。試合会場を出て行
く時に、いかなる柔道衣の部分もあるいは帯も脱いではいけない。
試合時間
ゴールデンスコアの時間制限はなし。(判定は取りやめ)
シニア男子―5分
シニア女子―4分
ジュニア・カデー変更なし
前日計量
シニア並びにジュニアの公式計量は、試合の前日に行われる。
ランダムに選出した選手に対して、公式計量と同じ方法で大会当日朝の初戦の前に体重チェックを行う。
選手の体重が、階級の公式体重上限より5%以上であってはいけない。例えば 100 キロ級の選手は、柔
道衣なしの状態で 105 キロが最大の体重である。
カデの計量に関しては、大会当日の朝に行う。
団体戦の計量については、大会の前日に行う。個人戦に出場していない選手は、自身の階級体重内であ
ること。個人戦に出場した選手に関しては2キロまで許容範囲とする。
柔道衣
柔道衣サイズの計測システムについて、より正確な測定手順を行うこととする。
両袖が前ならえした状態で手首にかかっている状態でなければいけない。(横に伸ばした上体ではなく
前ならえした状態)
胸骨から合わせまでが10cm以内。合わせの前身が20cm以上。
大会当日の選手の呼び出し
今までは、選手が試合時間に現れない場合に名前を1分間隔で3度ほど呼び出していたが、今後は厳し
くしていく。選手が試合場にあがった時点で対戦選手が試合場にいない場合、スコアボードでカウント
ダウン(30 秒)を始める。30 秒たっても対戦選手が現れない場合は、不戦勝となる。
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三人制の場合
主審
1) 主審は副審の視野を妨げないように注意する。主審と両副審は三角形の位置関係を維持する
こと。
2) 主審は副審 2 人との密接な関係を保つことが重要である。
3) 主審の全ての合図は少なくても3秒から5秒間維持し、試合者から目を離さず、両副審にわか
るように動きながら継続すること。また、副審の片方を視野に入れて異見がないか確認する。
副審
(1) 背筋はまっすぐとし、椅子の背もたれに深く掛ける。
(2) 両手は膝に手のひらを下にして置く。
(3) 足はやや開きぎみにし、畳に平らに置く。
(4) 副審は、主審に対して過剰な影響を及ぼす行為をしてはならない。
(5) 副審は、主審より先に(技の効果の)ジェスチャーをしてはならない。
(6) 副審の姿勢も、審判団全体の威厳にとって重要である。
(7) 場内外のジェスチャーは、主審の技の評価の宣告か「まて」の宣告が行われるまで維持する必
要がある。
(8) 副審は、得点表示係によって記録されたスコアが、主審によって宣告された得点を正しく記録
しているかをも確認しなければならない。副審が提示板の誤りを発見したら、主審がそれに気
付くように立ち上がらなければならない。
(9) 副審は、主審の威厳を認め、適切な寛容度を持って見なければならない。
(10) 副審は、審判団の重要なメンバーであり、主審と同等の発言権を持つ一方で、異なった責任を
有し、特に技の場内外の意思表示を明確に行う。
(11) 医師が呼ばれたとき、副審は着席したままで状況を観察する。医師とともに立っている主審の
みが負傷した試合者のそばに位置する。ただし、何らかの決定のために意見を述べる必要があ
る場合には、主審は副審を呼ぶことができる。
意見の相違
(1) 異なった意見をもつ副審は、すぐに適切なジェスチャーを行い、他の副審がその意見を認識す
るまで持続しなければならない。
(2) 主審によって与えられた技の効果、罰則の意見に、副審がその価値を認めない場合は副審は頭
上に片手を挙げ、二、三回振る。
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(3) 副審 2 名が主審と異なった評価を示したが、主審が副審の合図に気付かなかったときは、副審
は立ち上がり、主審が気付いて評価を修正するまで、自分の合図を維持しなければならない。
(4) 主審が、副審が立ち上がっているのに暫く(数秒間)気付かずにいるときは、主審に近い方の
副審は、直ちに主審に近づき、多数決の異見を知らせなければならない。
(5) 主審、もしくは副審のうちの一人にのみはっきりと見えて、他の二人に見えなく、そして判
定を変えられるものがある場合のみ、合議は可能であり、必要である。
(6) 副審が主審に「待て」や「合議」を要求したい場合は、手を上げたりしないでその場に立ち上
がる。もう一方の副審もそれに気づいたら立ち上がる。
合議
(1) 主審と 1 名の副審が青の試合者に技評価(例えば「有効」
)を与え、他の副審が白の試合者に技
評価(例えば「一本」
)を与えた場合、審判員は合議しなければならない。
(2)
(3) 合議は最小限にとどめなければならない。
(3) 主審は、両副審を「主審の開始位置」の少し後方、選手に聞こえる範囲の外に招く。
(4) 主審は相手の方に向かい、副審はその両側で内に 45 度向いて立つ。
(5) 主審は両選手を、副審は少なくても一人の選手を視野に入れながら合議する。
(6) 合議の間、主審は副審一人ずつ意見を聞く。
(7) 一人の副審だけと合議をしてはならない。
立技での注意点
場外際での決まり技での主審のアクションについては、第1に副審の OUT か IN かの動作を見
る。第 2 に主審の意見と副審の意見が同じ IN であればスコアを与える。しかし、主審は IN
で副審が OUT の場合は、まず「まて」をかけて副審と合議をして2人の意見が合った内容で
決定して IN であればスコアを与え、OUT であれば「はじめ」で再スタートする。
(これは選手・
コーチ・観衆ともにトラブルが少ない方法である)
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