日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) 理科授業における子どもの予習と学習意欲の関係に関する研究 Research on children's preparation and relationship of learning motivation in science class 髙橋 一哉* 桐生 徹** TAKAHASHI,Kazuya* KIRYU,Toru** * 上越教育大学大学院 ** 上越教育大学 Graduate School of Joetsu University of Education * ** Joetsu University of Education [要約]本研究では,小・中・高等学校教員の予習への意識を調査するとともに,理科授業 において,子どもが予習で学習内容を得た状態で,授業を受けた場合の子どもの授業への学 習意欲や目的意識に関して調査・分析を行ったものである。その中で,教員は復習を中心に 指導していることが明らかになり,理科においては,予習を行うことが学習意欲を損なうと 考えていることが明らかになった。一方,中学校 2 年生を対象に授業実践を行った結果,予 習を行ってきても子どもは学習意欲や目的意識を失わず,授業から新たな発見を得たり,事 象との新鮮な出会いを行ったりしていることが明らかになった。その結果,教師の意識と子 どもの意識に大きなずれがあることが明らかになった。 [キーワード]予習,復習,学習意欲,目的意識 1.はじめに で,そのずれを埋めようと子どもが興味・関心 現行の中学校学習指導要領理科(2008)の目標 を高めることによって,学習意欲を持って授業 では「自然の事物・現象に進んで関わり,目的 に臨むことを狙いとしている。教材を使って子 意識を持って観察実験などを行い」と示されて どもの学習意欲を高める研究として,上田 いる。中学校学習指導要領解説理科編(2008)で (2006)は,ジョン・M・ケラーの ARCS モデルを は,自然の事物現象に進んで関わることは,生 取り入れた新たな教材開発を行った。その結果, 徒が主体的に疑問を見つけるために不可欠であ 生徒の興味・関心を高めることができ,その後 り,学習意欲を喚起する点からも大切であると の学習活動を意欲的に進めることができること し,自ら学ぶ意欲を重視している。また,学ぶ を明らかにしている。 意欲を高め,観察や実験を探求的に進める上で, これら,教材提示や事象提示の場面で子ども 目的意識を持たせることの重要性を強調してい の知識とのずれを示すことについて,白岩 る。 (2008)は,教科書を読んで予習をしたり,教師 学習意欲を喚起し,目的意識を持たせること が結果を与えてしまったりするような授業では, について,新潟市教育委員会(2012)では授業の 子どもの興味関心が高まらず,理科を学ぶ意欲 導入部で,子どもの興味関心を高めるため,既 や科学への関心を高めることは無理であると述 習事項等とのずれが生じる内容の教材を提示す べ,学習意欲と事象との出会いの重要性を指摘 ることを推奨している。また,宮城県教育セン している。ここまで述べてきたことは,これま ター(2010)において,自然事象と出会う場面で, での理科授業で行われてきた「なぜだろう」と 既有概念では理解や説明ができない事象や既有 いう学習意欲を高めるための一般的な授業方略 概念と矛盾する事象,既有概念にはない事象を と考えることができる。 提示することで,児童生徒に共通の疑問を抱か 一方,川上(2008)は,先行オーガナイザーを せることができるとしている。これらは,子ど 使う演繹的思考過程を重視する学習理論を学習 もの持っている知識とのずれを生じさせること の初めに導入することで,子どもが学習の見通 ― 7 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) しを持つことができ,授業が「わかった」 「おも 中学校教諭 22 人 しろい」と実感させることができることを実証 高等学校教諭 6 人 している。また,本間(2003)は,先行オーガナ 2)調査時期 イザーを取り入れながら観察,実験を行うと, 2014 年 3 月〜4 月 子どもは学習する内容が明確になり,実験を行 3)方法 う目的がはっきりするため,学習に対し意欲的 調査には,質問紙を用い,家庭学習と予習・ に取り組む姿勢を見せると述べ,意欲を持たせ 復習について「学習意欲を持って授業に臨むた ることや目的意識を持たせることの有効性を説 めには予習・復習どちらを行うのが有効か」に いている。鏑木(2008)や市川(2008)は,授業前 ついて「予習中心」 「復習中心」 「必要なし」 「そ に予習をさせたり,授業の前半で実験結果を先 の他」の選択肢で自分の考えを選択してもらい, に教えたりした後,新たに発展的な課題を導入 その理由についても予め与えられた選択肢から する授業実践を行ったところ,子どもの学習意 選択をしてもらう方法で調査した。また,子ど 欲の低下が起きにくいことを明らかにしている。 もへの家庭学習の指導は予習・復習どちらを中 また,篠ヶ谷(2008)は中学校社会科の歴史分 心に行っているかを「予習中心」 「復習中心」 「予 野において,予習をさせるが発展的な課題を授 習復習同じ割合」「内容に応じて変える」「して 業中に導入しない学習方略を実践し,予習が授 いない」の中から選択をしてもらった。 業への興味を下げないことを実証している。 3.3 結果 しかし,これらは理科において,授業時間以 表 1 の意識調査から,χ2 検定を行った結果, 外で予習をさせ,発展的な課題を授業中に導入 人数の偏りは有意であった(χ2(12)=34.120, しない授業方略において,予習を導入した際の p<.01)。残差分析によると,理科において復習 目的意識や学習意欲との相関,子どもの認識に を行うことが学習意欲につながると考えている ついての報告をしたものではない。 教員が他の選択肢よりも 5%水準でプラスに有 意であった。逆に英語では,予習を行うことが 2.研究の目的 学習意欲につながると考えている教員が他の選 本研究では,教員の予習に対する意識調査を 択肢よりも 5%水準でプラスに有意であった。 行うとともに,子どもに予習を課した授業実践 表 1 学習意欲と予習・復習についての意識調査(人) N=57 を行い,予習と子どもの授業への学習意欲や目 的意識との相関を子どもの実態から明らかにす 国語 社会 算数数学 理科 英語 ることを目的とし,以下の調査を行った。 調査1 教員の予習に対する意識調査 調査2 予習を奨励した授業の実践 3.調査1 教員の予習に対する意識調査 予習 18 15 17 9▽ 30▲ 復習 26 32 33 36▲ 13▽ 必要無 2 1 0 4 3 その他 5 3 1 2 5 (▲有意に多い ▽有意に少ない p<.05) 3.1 目的 教員が理科授業における予習をどのように捉 理科で復習の方が学習意欲につながると考え えているか明らかにする。 ている理由として, 「事象との新鮮な出会いがな 3.2 調査の概要 くなるから」と回答する割合が最も多く,つい 1)調査対象 で「授業で理解,家庭で定着が理想的だから」 国立教員養成大学派遣の現職院生 と続いた。それに対して,英語ではその理由と 小学校教諭 29 人 して, 「予め学習内容が理解できているとスムー ― 8 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) ズに授業に入ることができるから」としている。 4)単元展開 また,これまでの家庭学習の指導実績調査に 表 3 は,授業実践校で使用している学校図書 関する調査を表 2 に示す。調査の結果から多く の教科書の単元計画と実際の単元展開である。 の教員が家庭学習の指導で,復習を中心に指導 実践を行った単元は学校図書の教科書では,10 していると回答した。 時間扱いである。本実践でも学校図書の単元計 表2 校種別家庭学習指導実績(人) N=57 小学校 中学校 高等学校 予習中心 0 0 0 復習中心 21 15 3 予習・復習同じ割合 1 1 0 内容に応じて予習・復習 7 5 2 特にしていない 0 1 1 画同様に 10 時間とし,教科書と同じ実験を行っ た。 表3 単元展開 授業内容 時間 1 2 3.4 考察 3 教員の意識調査から,理科に関して子どもが 4 事前に学習内容を得ることは, 「事象との新鮮な 出会い」が損なわれるため,学習意欲が損なわ 5 れると考えていることが明らかになった。また, 学校で与える家庭学習は復習が中心であること 6 が明らかになった。 7 4.調査2 予習を奨励した授業の実践 8 4.1 目的 9 子どもに予習を奨励した授業実践を行った際 の,子どもの授業への学習意欲や目的意識との 10 相関を明らかにするために,以下の分析を行っ 実践校での単元展開 [実験]スチールウールを燃やしてできる物質を 調べよう。 鉄の酸化についてまとめる。 銅やマグネシウムの酸化について知る。 [実験]酸化銅から銅を取り出してみよう。 [実験]スチールウールを燃やしてで きる物質を調べる。 [実験]鉄・銅・マグネシウムの酸化 についてまとめる。 [実験]酸化銅から銅を取り出せるか 調べる。 実験から酸化と還元が同時に起こって いることをまとめる。 [実験]化学変化によって温度が変化 することを調べる。 実験結果から吸熱反応や発熱反応につ いてまとめる。 [実験]化学変化の前後で物質の質量 が変化するか調べる。 実験結果から,化学変化のきまりをま とめる。 [実験]金属を加熱した時の質量の変 化を調べる。 実験結果から物質と物質の化合のきま りをまとめる。 還元について知る。 酸化と還元が同時に起こっていることを知る。 [実験]化学変化における温度の変化を調べよ う。 発熱反応・吸熱反応があることを知る。 有機物の燃焼によってできる物質を知る。 [実験]化学変化の前後の物質の質量を調べよ う。 質量保存の法則を知る。 [実験]金属を加熱した時の質量の変化を調べよ う。 物質と物質は常に一定の比で化合することを知 る。 た。 分析1 予習と学習意欲,目的意識について の質問紙調査 分析2 ビデオ・ボイスレコーダーによる発 話プロトコル分析 4.2 授業実践の概要 1)対象 新潟県公立中学校 2 年生(60 人) 2)時期 また今回,篠ヶ谷(2008)が中学校社会科で実 践を行ったものを参考に,生徒には授業を行う 範囲の教科書を読むことを予習と伝えた。その 際,予習の手助けとなるよう学習シラバスを配 付した。配付した学習シラバスには,授業日時 を記載する欄,教科書の学習ページ,学習内容, 目当て,問題集のページが記載されている。 4.3 分析1 予習と学習意欲,目的意識に ついての質問紙調査 2014 年 5 月〜6 月 3)実践単元 化学変化と原子・分子 第 2 章 いろいろな化学変化 学校図書の単元計画 1)分析のねらい 予習を奨励した授業実践において,子どもの 授業への目的意識や学習意欲について明らかに するため,質問紙調査を行った。 ― 9 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) 2)分析方法 定を行った結果,有意水準 1%で有意な差が認 授業実践において,授業への期待の度合いと められた。 学習意欲について調査を行うために,毎時間授 4)考察 業開始前に「授業が楽しみに思えた」,「新しい 生徒は,予習を行っても授業に対する意欲や 知識が得られるか楽しみ」という項目について, 授業から得られる新たな発見を損なうことがな 質問紙を用い四件法で調査をした。また,毎授 いことが明らかになった。 業後にも授業への期待や学習意欲について,授 4.4 分析2 ビデオ・ボイスレコーダーに よる発話プロトコル分析 業に「楽しく取り組めた」 「意欲的に取り組めた」 「新しい発見ができた」という項目について, 1)分析のねらい 質問紙を用い四件法で調査をした。その際, 「と 予習をしている生徒,予習をしていない生徒 ても当てはまる」 「当てはまる」を選択した生徒 の実験中の発話から,生徒の実験への意欲や実 を肯定群,「あまり当てはまらない」「当てはま 験の際の驚き・発見について明らかにするため, らない」を選択した生徒を否定群とし,予習を 発話分析を行った。 行ってきた生徒を対象に分析を行った。 2)分析方法 実践終了後に,今後の予習についての調査を 発話プロトコル分析の対象は,予習に対して 行い,生徒の予習に対する意識を分析した。 抵抗感の少なくなったと考えられる 9 時間目の 3)結果 授業「金属を加熱した時の質量の変化を調べる」 予習を行ってきた生徒を対象にした質問紙調 を対象とした。9 時間目の授業で予習を行って 査において,それぞれの質問項目と肯定群,否 きた生徒は 14 名であり,予習を行ってこなかっ 定群の人数を表 4 に示した。肯定群と否定群に た生徒は 17 名であった。授業は,理科室で行い, ついて,直接確率計算で両側検定を行った結果, 1 班 4 人の全班編成で授業を行った。実験中の 全ての項目について有意水準 5%で有意な差が 意欲や驚き・発見についての分析を行うため, 認められた。 発話プロトコルの作成は実験中の約 25 分間の 表 4 予習をしてきた生徒の意識調査(人) N=263 発話とし,8 班分作成した。また,分析の際に 授業前の質問項目 授業が楽しみに思えた 新しい知識が得られるか楽しみ 授業後の質問項目 楽しく取り組めた 意欲的に取り組めた 新しい発見が出来た 肯定群 否定群 254 9 243 20 247 249 245 16 14 18 有意差検定 p=0.0000 ** p=0.0000 ** 使用したカテゴリーと定義,具体例を表 6 に示 p=0.0000 ** p=0.0000 ** p=0.0000 ** カテゴリー す。 意欲 (**p<.01 *p<.05 +.05<p<.01) 驚き 今回の授業実践終了後,予習を行ってきた生 徒に対して,これからも予習を行っていきたい 発見 かを問う質問紙調査を行った結果を表5に示す。 表5 今後の予習についての調査(人) N=47 これからも予習を 続けていきたい 肯定群 39 否定群 8 同意 有意差検定 p=0.0000 ** 質問 授業中の実験や観察に 「次何をする?」 対する気持ち 「これ持ってくるわ」 今ここで起こっている 「お〜 すげ〜」 ことへの反応 「おもしろ〜い」 今ここで起こっている 「なるほど こういうことな ことからわかったこと 教師や生徒に同意を求 のかな」 「ねぇ こうするんだよね」 める発言 わからないことや確認 「ここ(ですか?)」 したいことに対する質 「選ぶの(選ぶんですか)?」 問 (**p<.01 *p<.05 +.05<p<.10) 肯定群,否定群について直接確率計算で両側検 表6 各発話の分類基準 定義 具体例 その他 ― 10 ― 上記以外のカテゴリー 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) C2 C3 このカテゴリーを基に,全班分の発話プロトコ ルをそれぞれカテゴリーに分類し,予習をして きた生徒と予習をしてこなかった生徒で学習意 D3 C4 欲や実験の際の驚き,発見に違いがあるのか分 析を行った。 3)結果 D4 C3 D4 D4 B3 D4 A2 D5 A3 D6 表 7 は,実験開始直後のグループαの発話プ ロトコルの一部である。 表 7 実験開始直後のグループαの様子 生徒 発話 A1 これは?どうやるの?(配られた Cu と Mg を見て) D1 ねぇ ねぇ ねぇ マッチは? A2 えっ?マッチは〜 う〜ん(C の方 を指差す) C1 (薬さじを持ってくる)異様に綺麗 なの持ってきた D2 本当だ B1 火つけるぞ A3 火つけるよ〜 D3 はいよ。(火をつけようとしている) 分類 意欲 意欲 その他 C4 A4 その他 その他 意欲 意欲 意欲 その他 驚き 驚き 驚き その他 その他 驚き その他 驚き 驚き 質問 その他 質問 その他 発見 E:他の班の生徒 マグネシウムの燃焼が終わり,銅の加熱場面 この授業で,A,C は予習を行ってきた生徒で での発話を表 9 に示す。この時,銅を加熱する あり,B,D は予習を行わなかった生徒である。 際,薬さじでかき混ぜることに対して,C2 で薬 分類は,生徒の発話を表 6 のカテゴリーで分類 さじに銅がつくことで質量が変化するのではな したものである。これより,下線部のように, いかと,実験を行っている最中に気づいている 実験開始直後から予習の有無に関係なく協力を ことが下線部から明らかになった。 して実験を進めていこうとする姿が見られる。 表 9 銅燃焼中のグループαの様子 実験が進み,マグネシウムを燃焼させる場面 生徒 D1 C1 D2 C2 のグループαの発話プロトコルを表 8 に示す。 マグネシウムの加熱の場面では,下線部のよう に,マグネシウムの燃焼を見て,予習を行って きた生徒も激しい燃焼に驚いていることがわか る。その後,質量を図りマグネシウムの質量が D4 増加したことを知った。 C3 表 8 マグネシウム燃焼中のグループαの様子 生徒 発話 C1 (着火剤であるマグネシウムリボン を加熱し,火がつく) D1 わ〜すごい A1 ひどくなる前に冷やしておかなき ゃだめだよ D2 すげ〜 E リボンも入れておかないと 重さ に含まれているらしいよ OK やばくない?(ピンセットを台拭き に押し当てている) わ〜 ジュージューいってる めっちゃ うわぁ〜 すごいすご い すごいことになってきた(Mg に 火がつく) わ〜 きれい〜 そんな綺麗でもないよ おかしいかもこれ わ〜 光った光った 当たり前だろう 光ったよ! キラキラしてるね! えっ 何? これマグネシウム? うん うん あれ これマグネシウムじゃない の?(銅を指差して) 銅だ! 見てわかるだろ! マグネシウムがすごかったからこ れよりももっと綺麗ってことだよ ね(銅の方を指して) D5 分類 発話 うわ〜 うわ〜(何かに例えて表現する) 混ぜて混ぜて ここにくっついてさ 質量変わる じゃん(薬さじを見て) ねぇ もうこれよくね(冷やしてい たマグネシウムを指して) 2 回目何 g になった?(マグネシウ ム) まだ測ってないよ 今測ろうとし てたんじゃん 分類 驚き 驚き 意欲 発見 意欲 意欲 意欲 驚き これらの発話プロトコルを表 6 のカテゴリー その他 に従い分類したものを表 10 に示す。予習をして 驚き きた生徒としてこなかった生徒の人数が違うた めカテゴリー分類したものを母比率不等直接確 ― 11 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 4(2015) 率計算で検定を行った。その結果,意欲・発見・ いと感じており,実験中の発話プロトコル分析 同意・質問・その他において,有意水準 5%で から,予習を行った方がより意欲的に取り組む 予習有群の方が有意に多い結果となった。また, ことができるということが明らかになった。 驚きでは,同様に母比率不等直接確率計算を行 これにより,予習を行った教科書通りの授業 ったところ予習有群と予習無群で有意な差が見 を行ったとしても,生徒は授業中の実際の事象 られなかった。 から「新鮮な出会い」を感じていることが明ら 表 10 発話のカテゴリー分類 N=1065 かになった。このことにより,従来の復習中心 母比率不等 の授業展開ではなく,予習を取り入れた授業展 直接確率計算 開を行うことが,多くの子どもが意欲的に学習 カテゴリー 予習有 予習無 意欲 303 289 ** p=0.0013 に取り組むために有効であると考えられる。 驚き 29 36 ns p=0.4819 発見 20 11 * p=0.0227 7.今後の課題 同意 26 12 ** p=0.0030 今回の実践では,全 10 時間の実践を通して, 質問 67 52 ** p=0.0087 予習をする生徒の人数が毎時間,クラスの人数 その他 308 292 ** p=0.0011 の 6 割を超えることがなかった。他教科や習い 人数(人) 14 17 事等の要因が考えられるが,それらの要因を精 査し,様々な単元や学年での検証,評価を行っ 4)考察 ていきたい。 予習を行ってきた生徒は,予習を行ってこな かった生徒よりも意欲的に実験に取り組み,そ 引用文献 こで新たな発見をしていることが明らかになっ 文部科学省:中学校学習指導要領,57,2008 た。また,予習を行ってきても行ってこなくて 文部科学省:中学校学習指導要領解説理科編,16,2008 も実験中に起こる様々な事象に対し,驚いてい 新潟市教育員会:若手教師のための授業づくりハンドブック,7,新潟 市立教育センター,2014 ることが明らかになった。 佐藤拓也・加藤康・菊池一貴・矢島充・小野寺昭人・髙梨正博:平成 4.5 考察 分析1,分析2より,生徒は予習をしても授 22 年度専門研究員研究報告書,4,宮城県教育研究センター,2010 業に意欲的に取り組んでいることが明らかにな 白岩等:実感を伴った理解を目指した理科学習,初等理科教育,42(12), 14-17,2008 り,生徒は実際の実験を通して事象との出会い や新たな発見をしていることが明らかになった。 上田理恵子:生徒の興味・関心を高める理科教材,奈良県立教育研究所 紀要,1-6,2006 6 まとめ 川上昭吾:日本における有意味受容学習の展開,理科教育学研究,50(3), 1-13,2010 本研究は,教員の予習に対する意識調査と共 に,予習を取り入れた授業を行った際の子ども 本間雅人:第 2 章研究授業,川上昭吾編著「教えの復権を目指す理科授 業」,91-98,東洋館出版,2003 の学習意欲や目的意識について質問紙調査や発 話プロトコル分析行ったものである。調査 1 の 鏑木良夫:「教えて考えさせる」をどうとらえるか,日本理科教育学会 全国大会発表論文集,6,37-38,2008 結果,教員は「事象との新鮮な出会い」は予習 によって失われると感じていることが明らかに 市川伸一:「教えて考えさせる」授業を創る,11-19,図書文化社,2008 なった。しかし,調査 2 で行った中学校 2 年生 篠ヶ谷圭太:予習が授業に与える影響とそのプロセスの検討,教育心理 学研究,56,256-267,2008 を対象にした調査・分析では,質問紙調査から, 予習を行っても学習意欲が損なわれることがな ― 12 ―
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