塗料中鉛の廃絶に関する現状と今後の方針について

塗料中鉛の廃絶に関する現状と今後の方針について
平成27年12月10日
(一社)日本塗料工業会 事務局
国際的な 2020 年までの塗料中鉛の廃絶を目指した取組の議論の高まりを踏まえ、当工業
会としては、平成8年(1996 年)の「塗料の鉛リスクリダクションに関わる(社)日本塗料
工業会宣言」を改定し、更なる削減に向けて徹底強化を図ることとします。
Ⅰ.国際的な動き
1. 背景
2002 年のヨハネスブルグサミット(WSSD)では、
「透明性のある科学的根拠に基づ
くリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康
と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを 2020 年まで
に達成することを目指す」との目標(WSSD2020 年目標)が採択されました。この目標
を受けて、2006 年2月、第1回国際化学物質管理会議(ICCM:International
Conference on Chemicals Management)において「国際的な化学物質管理のための戦略的
アプローチ(SAICM:Strategic Approach to International Chemicals Management)
」
が策定されました。これ以降、SAICMのフォローアップのために、ICCMが定期的
に開催されています。
2. 「塗料中の鉛」に関する国際的な議論
2009 年5月にスイスのジュネーブで開催された第2回国際化学物質管理会議(ICCM
2)において、塗料中の鉛が人健康に及ぼす悪影響への対応が「喫緊の課題(Emerging
Policy Issues)
」の一つとして認識されました。そのため、国連環境計画(UNEP: United
Nations Environment Programme)と世界保健機関(WHO: World Health Organisation)
を事務局とするグローバル・パートナーシップが組織され、この課題に対応することとな
りました。なお、当該グローバル・パートナーシップには、当工業会もメンバーとなって
いる国際塗料印刷インキ協議会(IPPIC: International Paint and Printing Ink
Council)が参加しています。
2012 年9月にケニアのナイロビで開催された第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)
において、上記のグローバル・パートナーシップの活動として作成されたビジネスプラン
が報告され、参加者から歓迎されました。
その後、本年9月から 10 月にかけてスイスのジュネーブで開催された第4回国際化学
物質管理会議(ICCM4)において、上記のビジネスプランに基づくグローバル・パー
トナーシップの活動が報告され、
これを踏まえて、
WSSD2020 年目標を達成するために、
各国において塗料中の鉛をフェーズアウトするための効果的な措置(effective measures)
をとることとされました。
1
II. 日塗工の対応
以上のとおり、本年開催された第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)において、
2020 年に向けて塗料中の鉛をフェーズアウトするための効果的な措置をとることが世界
的に求められたところ、この観点から、本件に関する日塗工宣言は、更に一層重要な位置
づけとなっています。このため、平成8年(1996 年)の「塗料の鉛リスクリダクションに
関わる(社)日本塗料工業会宣言」を改定し、更なる徹底強化を図ることとします。
(参考)第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)
出席者:各国政府代表(103 か国・地域及び 29 オブザーバ国)
、関係国際機関、産業界、
非政府機関等約 800 名が参加。日本政府からは、環境省、経済産業省、外務省担当官が
出席。なお、この中で、塗料関係としては、IPPICが出席。
2
塗料中鉛廃絶に関する日塗工宣言の改定について
平成 27 年 12 月 10 日
(一社)日本塗料工業会事務局
当工業会は、塗料中鉛に関して、1989~94 年頃のOECDの動向及び幼児・妊婦・飲料
水・食品等への直接接触する恐れのある用途への使用等の社会的悪影響の問題から、1996
年(平成8年)7月の理事会決議によって、
「塗料の鉛リスクリダクションに関わる(社)日
本塗料工業会宣言」を公表し、順次削減を行って参りました。この活動の結果、現時点、人
健康に直接悪影響を及ぼす用途分野としての使用はありませんが、その他の分野でも、当工
業会によるJIS品目の廃止促進及び各社での代替物質への切り替えによる自主的な削減
努力を行った結果、2014 年度の鉛使用量は、問題発生当時(1992 年度)に比較して約 96%
の削減がなされているところです(添付「塗料業界の鉛使用量推移(PRTRベース)
」を
参照)
。
国際的な 2020 年までの塗料中鉛廃絶の動きが高まる中、今後の残されている課題の解決
に向けて、以下のとおり宣言を改定し、更なる徹底強化を図ることとしました。
鉛含有塗料の廃止に向けての(一社)日本塗料工業会宣言の改定
平成27年12月10日
一般社団法人日本塗料工業会
(一社)日本塗料工業会は、1996 年7月に、
「塗料の鉛リスクリダクションに関わる(社)日本
塗料工業会宣言」を発表し、その活動を行って参りましたが、2020 年までの国際的な塗料中鉛
廃絶の動きが高まる中、業界の自主的な取組として、以下のとおり当該宣言を改定し、更なる
徹底強化を図ることとします。
1.内外装など一般用途分野
(1) 鉛含有塗料のJISに関して全ての品目の廃止手続きを行うとともに、公共建築・改修工
事標準仕様書(国土交通省監修)等からの使用義務を取り除く手続きを行う。このことによ
って、公共的な使用が終了することとなる。
(2) 上記(1)の公共用及びそれ以外の民生用を含めた鉛含有塗料の廃止に向けて、会員各社はそ
の重要性を認識しつつ、需要者との話し合いによる理解を深める努力を行い、その準備が整
備された会社から、各社自らが「遅くとも 2018 年度末までに鉛含有塗料の生産及び販売を終
了する(実績又は計画)
。
」旨の宣言・公表を行う。
(3) 会員外の各社においても、関係先に情報提供しつつ、廃止への理解が得られるよう、奨励・
促進するための最大限の努力を払う。
2.特殊用途分野
路面標示分野など、生命や国の安全確保の面でやむを得なく必要な分野においては、需要
者の動向によって廃絶時期の見通しが立てにくいため、当該用途分野を限定・特定化させ、
国(経済産業省をはじめ関係省庁)と相談・協議しつつ、2020 年までに廃絶を実現するべく
必要な措置をとる。
3
【参 考】
(1)(社)日本塗料工業会は、平成8年7月、理事会承認のもと以下の宣言を公表しました。
塗料の鉛リスクリダクションに関わる
(社)日本塗料工業会宣言
(社〉日本塗料工業会は、安全・環境を配慮して塗料のリスクリダクションを進めることを宣言する。
・会員会社は各社の責任において技術面、経済面ならびに社会面を考慮して鉛のリスクリダクション
を順次、自主的に進める。
・とくに鉛のリスクが予想される幼児・妊婦が直接触れる恐れがある用途に使用される場合、または
飲料水・食品に接する恐れがある場合は鉛を使用しない。
・塗料の使用・廃棄に関わる鉛のリスクリダクションの情報を使用者に提供する。
(2)JIS規格さび止め塗料の廃止活動を積極的に推進し、JIS K 5629(鉛酸カルシウムさび止めペイ
ント)が次年度代替規格(JPMS28)に移行する。
●鉛・クロムさび止めペイントの統合・改正
JIS番号等
名
称
改正内容
特
変性エポキシ系追加
JIS K 5551 構造物用さび止めペイント
徴
統合JIS(高防錆性)
改正・制定日
H20.1.20
変性ポリウレタン系追加
JIS K 5621 一般用さび止めペイント
水系追加
統合JIS(VOC対策) H20.1.20
JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント
水系追加
統合JIS(VOC対策) H20.1.20
JPMS 28
新
一液型変性エポキシ樹脂さび止めペイント
規
亜鉛めっき用(鉛フリー) H27.7.9
●これまでの関連JIS
JIS番号
名
称
内 容
今
後
廃止日
JIS K 5622 鉛丹さび止めペイント
鉛を多量含む
廃止→JIS K 5674へ
H22.5.20
JIS K 5624 塩基性クロム酸鉛さび止めペイント
鉛・クロムを多量含む 廃止→JIS K 5674へ
H22.5.20
JIS K 5627 ジンククロメートさび止めペイント
鉛・クロムを多量含む 廃止→JIS K 5674へ
H22.5.20
JIS K 5628 鉛丹ジンククロメートさび止めペイント
鉛・クロムを多量含む 廃止→JIS K 5674へ
H22.5.20
JIS K 5623 亜酸化鉛さび止めペイント
鉛を多量含む
廃止→JIS K 5674へ
H26.4.21
JIS K 5625 シアナミド鉛さび止めペイント
鉛を多量含む
廃止→JIS K 5674へ
H26.4.21
JIS K 5629 鉛酸カルシウムさび止めペイント
鉛を多量含む
廃止→JPMS 28へ
H28.10頃予定
4
塗料業界の鉛使用量推移(PRTRベース)
トン
16000
H27.9.14
100
100
90
出典:・1992年(塗料産業における鉛・クロム問題の現状とリスクリダクション
報告書、(社)日本塗料工業会 1995年4月
・2003~2014年(化学物質排出把握管理促進法(PRTR)に基づく数値)
14000
12000
指数
80
11524
70
10000
60
=
5
8000
41
数量(t)
50
指数 (1992年を100)
40
6000
4729
30
25
4000
20
2833
2310
19
2215
19
2245
20
15
2000
1677
1992
=
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
11
8
1291
2009
8
8
6
4
946
939
886
725
514
2010
2011
2012
2013
2014
10
0