第 21 回 日中友好富山県地方議員連盟 訪中団 視察報告書 平成 27 年 10 月 13 日(火)~17 日(土) 遼寧省、瀋陽市、青島市、大連市 第 21 回 日中友好富山県地方議員連盟 訪中団 視察報告書 平成 27 年 10 月 23 日 □実施日程 □実施場所 □参加者 □活動報告 平成 27 年 10 月 13 日(火)~17 日(土) 中国(遼寧省、瀋陽市、青島市、大連市) 鹿熊正一団長(県議)以下 29 名 ※名簿別添 10 月 13 日(火)午前 7 時 15 分~ 富山きときと空港にて、受付・搭乗手続きの後、訪中団総員 29 名の結団壮行式 が執り行われた。 鹿熊正一団長(県議)の挨拶の後、横山県議会議長より激励の言葉があり、宮本 光明副団長(県議)の謝辞で、全員心をひとつにして訪中の成功と安全を誓った。 8 時 25 分発 ANA314 便にて羽田空港を経由し、成田空港 13 時 25 分発の中国 南方航空 628 便にて瀋陽へ(フライト 3 時間 25 分) 15 時 50 分(現地・中国時間)瀋陽市桃仙空港着。バスにて瀋陽市内へ。市内の 遼寧賓館にて夕食。富山県から大連と上海へ派遣してる職員も合流し、それぞれ の活動について報告も行われた。 瀋陽市の印象をあげると、大きな街である。東北地方最大の都市であり、人口 825 万人。社会インフラは整備されており、メイン道路は片側 5~7 車線の規模 であり、車文化の進んだ都市であった。心配した空気であるが、意外と綺麗で、 マスクをしている人は見なかった。街にはかつて見た自転車の大群は無い。今や 中国でも車社会の時代を印象づけられた。街の中心部にあるロータリー公園内 の毛沢東の銅像前で踊る一団が印象的であった。 10 月 14 日(水) ■瀋陽市内視察① 「北陵公園」 北陵は後金の 2 代目、清の初代皇帝である太宗皇太極ホンタイジとその妻の 孝文端皇后のお墓である。 敷地面積 330 万㎡、北陵とは瀋陽の中心部から北に あることからつけられた通称で、正式名称は昭陵という。 陵墓、建築物などは現在でも良好な状態を残し、清朝初期の技術・建築文化の 一端を知ることができる。2004 年にユネスコの世界遺産(文化遺産)の明・清 王朝の皇帝墓群の一部として追加登録された。 規模は清の関外三陵(他の二陵は東陵と永陵)のうちで最大規模である。また 現在、周囲は瀋陽で 1 番大きな公園「北陵公園」となっており、自由な散策が可 能であり、市民の憩いの場となっていた。 ■視察②「瀋陽故宮」 北京の故宮と並んで、保存状態の良い後金時代の皇居である。建築様式は漢民 族、満州民族、蒙古民族の様式が融合している。規模は、北京の故宮の 12 分の 1 で、1625 年に建てられた後金の 2 人の皇帝・ヌルハチとホンタイジの皇居で、 清の入関後は引き続き離宮として用いられた。 1961 年に、中華人民共和国の全国重点文物保護単位に指定、2004 年にはユネ スコの世界遺産(文化遺産)、北京と瀋陽の明・清王朝皇宮に追加登録された。 現在は、瀋陽故宮博物院として一般公開されている。 ■視察③「宋雨桂芸術館」 遼寧省で芸術家個人の名前をつけた最初の美術館。年間を通して無料開放 し、各種展示会や芸術活動の拠点として提供している。敷地面積 40,000 平方 メートル、建築面積 12,000 平方メートルの広さで、宋氏の過去 30 年間に渡る 創作や、古代中国の石彫刻コレクション等が収められている。 宋雨桂氏 1940 年に山東省生まれ。幼いころより母から画を学んだ。 1960 年魯迅美術学院絵画学部予科に入学、同学院版画学部 卒。後に軍に入隊。1979 遼寧画院専門創作員になった。 1988 年からは海外出展もし、日本やシンガポールの芸術 界、収集家達からも注目を浴びている。 ■遼寧省政府、人民代表大会へ表敬訪問 人民代表大会副主任のトウ志武氏をはじめとする皆さんを表敬訪問。 トウ志武氏からは、昨年の遼寧省・富山県友好30周年に触れて、国家間の問 題はあるが、地方・自治体間、そして民間での交流を続けていくことの大切さ が語られた。 また、その後に行われた遼寧省主催の歓迎宴会では、団員それぞれの遼寧省 や中国との接点について、また中国側からも富山や日本との関わりについて披 露するスピーチが交わされ、終始和やかに交流が進められた。 10 月 15 日(木) 瀋陽(桃仙空港)~中国南方航空 6311 便にて青島(流亭空港)へ移動 ■世界で最も美しい湾「青島湾」視察 団員 29 名が全員乗車できる遊覧船に乗り込み、湾内を約 40 分程度かけて遊 覧する。PM2.5 の影響なのか、湾上では全体的に靄がかかっている状態だった が、特に若い団体の観光客が多く見られた。中国内地からの海を見てみたいと いう観光客が多く訪ねてくるとのこと。 ■青島市人民政府外字弁公室、青島市旅遊局と意見交換 青島市の状勢や青島湾についての説明を受けた。山東省は、中国における第 2 位の人口を抱え、第 3 位の GDP であり、その中でも青島市は、90 万人を抱 える副省級都市である。日本からの進出企業では、食品、繊維、機械・電気・ 科学、流通・サービス業種が主なものとなっている。青島湾の美化整備に力を 入れており、中国内地からの観光客は勿論、海外からのお客様にも満足して帰 ってもらうように頑張っているとのこと。 意見交換では、青島湾発着のクルーズ船観光ルートに、この度認定された富 山湾を入れて、世界で最も美しい湾を繋ぐクルーズ観光が実現できないかなど 前向きな意見交換が成された。 ■和食が集まる一角で昼食 この時間に団員の平木柳太郎氏に長男が生まれた朗報が入り、定食を味わい ながら命名案が出されるなど、お祝いムードで盛り上がった。 ■青島ビール工場の見学 青島ビールの歴史が分かりやすいパネル展示や、麦酒製作工程をホログラム で展示するなど、先端技術を使った素晴らしい工場見学となった。 10 月 16 日(金) クラウンプラザホテル青島内の会議室にて意見交換会。 ■日本国青島総領事館 対応者 :加藤 英次 四柳 亮一 首席領事(前任地は瀋陽市領事館) 副領事(東京都庁より出向者、前任地は新潟県) 加藤首席領事の父親は富山県大沢野出身で幼少時にはよく富山県に来県して おり、大学時代はワンダーフォーゲル部で立山登山経験あり。2012 年まで遼 寧省瀋陽総領事館に勤務。 山東省は、1982 年に山口県と 1984 年に和歌山県と友好都市関係があり、省 内 32 の自治体が日本と友好都市。人口は約 9,733 万人で広東省に次いで中国 2 位。また、2014 年の GDP は約 9,510 億米ドルで前年比+8.7%で全国第3位。 これはインドネシア国を少し上回る値で遼寧省の約2倍。1 人当たり GDP は 約 9,771 米ドルで全国 10 位。 2014 年の貿易総額は約 2,771.2 億米ドルで前年比+4.0%で中国全体の約 6.44%で、輸出入品目は、輸入品が機械電子、ハイテク製品で、輸出品が農産 品、繊維の順で多く、最大の貿易相手は米国で、次いで韓国、EU、ASEAN、 日本の順で多い。 山東省の在留邦人数は 2,812 人で日系企業は 2,094 社である。在中韓国人 10 万人のうち半数の 5 万人が青島市在住であり、韓国の中国全体の投資の 25%が 青島市への投資である。省都は煙台市であるが、青島市は先に経済発展した。 イオンは山東省内にイオン、ミニストップ、マックスバリューを展開してい る。また、2012 年 5 月に第 5 回日中韓サミットにて、温家宝首相(当時)の 指導により、山東省の地理的優位性を生かし、日中韓地域経済協力モデル地区 を建設し産業交流エリアを作り上げるとしたが、2012 年 9 月の日本国の尖閣 諸島国有化以来韓国が先行している。 次に、青島市の人口は 904.62 万人、副省級都市の GDP ランキングで 7 位の 8,692.1 億元、1 人あたりの GDP は 15,515 米ドルで上海市の次に高い。青島 市在留邦人は 1,753 人で日系企業は 1,044 社、青島日本人会加盟企業数は 350 社で食品部会と繊維部会が多く、対日農産品輸出の基地である。近年、円安と 中国人件費の高騰により加盟企業の撤退が進み、新しい日本からの投資が来な いので会員数が減少してきている。 青島港より南部の董家口港区は、膠州湾に位置し黄海に面する港で、オース トラリアからの鉄鉱石輸入の港あり、コンテナ取扱量 1,658 万 TEU(2014 年、前年比 6.84%増)で貨物取扱量は 4.77 億 t(2014 年、前年度比 約 4.19%増)である。41.58 ㎞の世界最長の海上大である橋膠州湾大橋と中国最 長の海底トンネルである膠州湾トンネルが青島市内と黄島を連絡している。 観光都市として青島を形容する代表的な言葉は「赤瓦」「緑樹」「碧海」「藍 天」である。 特記すべきことは、1960 年設立である中国人民解放軍三大艦隊の1つ北海 艦隊司令部が青島市に所在し、2013 年 2 月、空母「遼寧」が青島軍港に配備 されている。 青島市が目覚しい経済発展をしている都市と感じる理由は、中国の経済発展 政策として、特区と 13 の沿海開発都市計画をし、外資投資が早くから入った ためで、山東省の発展戦略として中国 9 番目の国家級新区として青島西海岸新 区発展した。 政府の地方自治体への権限移譲は都市開発の法整備もできているので容易で ある。中国の人口現況は増加している。夫婦とも1人子同士であれば、第 2 子 を持つことが可能である。少数民族も第 2 子可能。農村部に於いては、1 人目 が女子であれば第 2 子可能である。基本的に教育費が高いので第 2 子を持つこ とは大変であるが、将来的には人口減になると予測されている。 青島市は高層マンションが多く見られるが景観条例はない。建築規制はあ る。空港近くは高層ビル建築不可、旧市街地はドイツ国建築物の景観を守り建 て替えしており、高層ビル建築不可。新市街地の高層建築規制はない。 日中友好関係を高めるための民間レベルにおけるベストな交流方法として、 再来年は、日中友好 45 周年であり、前在中国全権大使の丹羽日中友好協会会 長は、関係回復を求めている。 日中間の経済は、政治的影響は受けていないと感じるが、個人的には全ての 分野の民間交流は困難と感じる。例えば、川崎市でロボット競技大会を開催し ているが来年度は瀋陽市において開催し、日本の川崎市で開催されるロボット 競技大会に、青島市と瀋陽市の学生チームを招待して交流に結び付けている。 人的交流としては、交換交流を通して、実質交流に結びつける方策をとって いる。青島市において、現地人の反日感情は、あまり感じられない。先の青島 市の日系企業襲撃事件のあった黄島には、中国の東北地方から多くの労働者が 移住してきている。その人達が内政に不満があり事件を起こしたと言われてい る。また、日本人学校の学生数のピーク時期は、2011年の東日本大震災の 年で、日本から多くの子供達が避難したためであり、現在、生徒数が減少して いるのは、大気汚染が強いので、赴任者は子どもの同行を望まないため。 青島港は川崎港と友好港提携しており、2015 年5月、北部の老港区に日本 や韓国向けの観光用の青島のクルーズ船母港整備をした。現在、日本国の法改 制によりビザなしで福岡県や長崎県へ爆買クルーズ旅行に行っている。富山県 もクルーズ船誘致の可能性があると考えるので情報収集や情報提供活動をして はどうか。 青島湾は海藻が多いので、海辺や沖で藻の回収事業を行い、この回収した藻 で肥料を作り、輸出している。 ■JETRO(日本貿易振興機構)青島事務所 対応者 :佐藤 秀二 所長/代表 今年の 9 月末まで JETRO 青島事務所で働いていた職員が、10 月からは JETRO 富山事務所の所長として働いている。 青島市は中国有数のビーチのある観光名所であり、7 月と 8 月はホテル料金 も 1.5 倍、タクシーも拾えなくなるので、路線バス移動を余儀なくされる。 青島には、総領事館(中国に 1+6+1 箇所)、JETRO 事務所(中国に 7 箇 所)、日本人学校(中国に箇 10 箇所)があり、青島日本人会は 380 社(在青島 日系企業数 847 社)でヤンマーのディーゼルエンジンを作っている。ヤンマー の建機の現地生産は輸入に切り替えた。煙台・威海日本人会は 107 社(在 515 社中)、済南日本人会は 18 社(在 68 社中) 、済寧日本人会には、(株)コマツ が進出している。 投資環境上の問題点として、 (1)日本の需要低下による日本向け輸出拠点である為、在山東省日系企業の業績 として黒字企業が 50.9%に低下し中国で1番悪い。2 番目は遼寧省である。 (2)2914 年夏、発電所改良の為、電力供給制限が起きたが現在は OK。 (3)リーマンショック後、韓国企業の夜逃げが横行した為、中国のビザ発行に警 察の犯罪履歴の提出が必要となった。 (4)降水量が少ないため水不足で、工業、商業、一般の順で取水制限がある。 (5)2012 年 9 月に青島市で発生した日系企業への襲撃に関する中国政府の保証 がされていない。Cf.ベトナムで発生した中国企業への襲撃事件ではベトナム政 府の謝罪と保証があった。民間の保険は全額でなかったが折り合いをつけた。 保税物品(関税がかかる前の物品)も襲撃にあったが保証がなかった。 サービス産業は、2012 年以降は、JETRO への青島進出の問い合わせが無 い。現在、イオン系列店が多く、イオン東部店は世界最大の売り上げがある。 セガは、青島市にアミューズメント施設「ジョイポリス」をショッピンクモー ル 1、2F 部分に展開し、来年は上海市に開業し中国全土に展開予定である。 ここ山東省は人口1億人を養える豊かさがある農産地であるために、模倣品 対策が重点政策。農薬は、安全な日本製農薬を使用し、粗悪な模倣品を摘発す る必要がある。山東省の野菜は北京で使用する野菜の 4 割を生産している。 青島市のファッション等の流行は、上海や北京よりは少し遅れ気味である。 大連は日系企業がメジャーであるが、青島市には日本人 3,500 人の 20 倍の 韓国人 7 万人が在留しており、韓国企業がメジャーである。 大連は外資の進出が多いのでイベント等に大連市長が出席するが、青島市 は、ハイアールやハイセンス等の中国企業が経済の中心を占めているので青島 市長はイベントに参加しない。 山東省は元来、綿花の産地であった為に繊維産業がさかんで、現在はスポー ツウェアー産業や付属品(ボタン、ファスナー等の)産業に移行している。ま た、食品産業も生産基地として No.1 であるが、日本の需要が低下し、ニッス イの現地法人も株を売却し日系企業でなくなった。ここでは安心安全な食品を 生産している。 また、青島市は鉄道で変わる。来年に全長 25.1 ㎞の地下鉄 3 号線が完成 し、高速鉄道の架線も青島北駅まで完成して、青島市を中心とした経済圏が完 成する。 高齢者産業はさかんになってきている。青島に、ロングライフ(大阪市)の 合弁会社が進出し高齢者施設建設計画がある。医療は中心病院と提携し、日本 人医師が 1 名駐在している。また、亀田総合病院(千葉県)が進出する噂も。 青島市は、牛乳 1 パック(1ℓ)400 円、卵 1 パック 400 円の物価で、青島の 農産品の品質は高い。しかし、桃は日本の品質が高い。りんごと梨だけ輸出で きるが、青島の地元のものでもブランド化されている。さくらんぼも青島に品 質が良いものがある。日本の地元の農産品をブランド化して、青島で流通させ ることは困難と考える。 物流取扱量の 8~9 割は日系企業向けである。中国企業を顧客にしにくい理由 としては、中国の商習慣として会社と会社の取引とは別に、個人と個人の利益 の取り方があるので難しい面がある。 ■迎賓館にて懇談会 ・大連側出席者 大連市人民対外友好協会 秘書長 曲世成 氏 大連市対外貿易経済合作局 宗薇 氏 富山県大連事務所 所長・首席代表 高山久 氏 富山県大連事務所 副所長・代表 酒井和宏 氏 北陸銀行 大連代表処 首席代表 清水賢一 氏 高山所長のレクチャー ・図表で見る大連の現状(1) 2008 年の大連の平均賃金月額は 2859 元、2013 年は 4922 元と、この5年間 で 1.72 倍となっている。 ・図表で見る大連の現状(2) 産業の中心は加工貿易で、最近では設備産業よりもインテックやソフトバン クなどのソフト開発などが挙げられる。賃金の高騰により輸出が低迷している ため、対象マーケットを国内に切り替えている。 ・図表で見る大連の現状(3) 東北3省では人口は一番少ないが、大連の可処分所得は 30,238 元で、日本 円に換算すると約 60 万円となっており、東北3省では最大。また1億元超の 富裕層も一番多くなっている。 ・図表で見る大連の現状(4) 人口ピラミッドは洋ナシ形で、今後 40 年間は安定しているが、20 歳以下の 人口が極端に減少しており、将来はマーケットの縮小が予想される。 ・その他 驚異的な高度成長を脱し経済成長の鈍化と安定を図る。具体的には個人消費 を中心とした安定した構造への移行。=新常態 中国の夢は、国の富強・民族の復興・国民の幸福を実現する事(→ナショナ リズムの高揚)。既存の陸路シルクロードと、21 世紀海上シルクロード(アジ ア・インド洋・中東・アフリカ・欧州)の 2 ルート構築による長期的な経済発展 を目指す。 高速鉄道網整備(新幹線)が急ピッチ。瀋陽→丹東→大連ルートが間もなく開 通。しかしGDP成長率は 1.9%と全国最低レベル。政府から正直な数字を報 告する旨の指導があったが、遼寧省が正直すぎて叱責され、その後再提出した 数値。 10 月 17 日(土) 周水子空港(大連)から富山への直行便(中国南方航空 613 便)で帰富。団員 全員、ケガや事故なく無事に帰ることができた。 山本秘書長、お疲れ様でした。
© Copyright 2024 ExpyDoc