所報 - 明石市教育委員会

平成27年(2015年)3月2日
あ
か し の
教
育
181号(1)
第 18 1号
所報
平成27年
(2015年)
3月2日
明 石 市 教 育 研 究 所
〒673-0883
明石市中崎1-4-1
☏(078)918-5815
F AX 9 1 8 - 5 8 1 7
「あかし教育プラン」に見る人づくり
明石市教育委員長
田中 陽三
「あかし教育プラン」の基本方針の一つに「た
自然体験が有効だと考えます。幸いなことに、風
くましく未来を拓き、夢を持って生きる人づく
光明媚な明石市は、「本のまちづくり」に取り組
り」があります。ではそれに適う人とはどんな人
んでおり、市民とともに読書活動を進めていま
を具体的に想像しますか。私は、リアルモデルと
す。「まちなか図書館」プロジェクトを始め、新
して、昨年上半期に放映されたNHKの連続テレビ
しい市民図書館(仮称)も現在建設中です。学校
小説「花子とアン」の主人公、村岡花子のような
では、ブックママによる読み聞かせが積極的に行
人を想像します。花子は、M.L.モンゴメリーの小
われ、教育の一翼を地域人材が担っています。
説“Anne of Green Gables”(「赤毛のアン」)の日本
視覚だけでなく、聴覚に訴え、考える機会を与
語訳を初めてした実在の人物です。幼少の頃よ
えること、柔軟な時期に頭脳を刺激することが、
り、読書好きで、本をむさぼり読むことによって
どれほど若い人材を育てるのに役立つかは自明の
「想像の翼」を広げていきました。読書により、
ことです。豊かな想像力を身につけることによ
発想や感受性が豊かになり、想い(夢)をどんど
り、他人を思いやり、人と人の絆が深まり、住み
ん広げて、明るく逞しく人生を切り拓いていきま
よいコミュニティが育っていくことでしょう。そ
す。そういえば、モンゴメリーの同小説の主人公
のためには、まず、自分の頭でものごとを考え、
アンも、持ち前の明るさと豊かな想像力で自らの
判断し、行動できる人材を増やすことです。そこ
人生に立ちはだかる苦難に耐え、未来を切り拓い
で、日々教育に携わる教職員の皆さんが、自らの
ていきます。この二人に共通しているのは、貧し
授業を見直し、改善することにより、その先頭に
く物質的には恵まれないけれども、明るく、想像
立ってもらうことを期待します。子ども達の発想
力に富む逞しさを持っていることです。
や想像力が豊かになると、他人の心の痛みが分か
ところで、現代の日本社会では、メールやオン
る人間になり、結果として、人権感覚が育ち、い
ラインゲームなど過度なネット依存の傾向が進ん
じめが減り、住みよいコミュニティになります。
でいます。また、TVなど一方通行のメディアに接
家庭、学校、地域社会が協力して子ども達に想像
することが多いため、視覚に訴えるものばかりに
力を育む教育を是非、進めていただきたいもので
とらわれ、自分の頭でものを考えたり、想像した
す。
りすることが苦手になっているように思います。
つまり、自分の言動の結果がどうなるかを予測す
ることが難しくなっているのです。こういった、
他人を思いやる気持ちが希薄な社会では「共に生
きる心」が育ちにくく、人の絆は深まりません。
では、子ども達の想像力を育むにはどうすれば
いいのでしょうか。私はその方策として、読書や
あ
平成27年(2015年)3月2日
か し の 教
育
181号(2)
みんなの特別支援教育をめざして
関西国際大学 教授
1.「みんなの特別支援教育」とは
特別支援教育とは障がいの有無にかかわらず、
すべての子どもたちのためにすべての教員がかか
中尾
繁樹
2.教師の子ども理解
①子ども理解のためのアセスメントとは
子ども一人一人の特性を理解するアセスメント
とは、「子どもについての情報を様々な角度から
わる教育です。
そのためには、一人一
人違う学び方をしている
収集し、それらを整理分析して、子どもの実態や
全体像を理解していくプロセス」のことです。
子どもたちを理解し、楽
したがって、医学的な検査や知能検査だけでな
し く「わ か る、で き る」
く、学校で見られる子どもたちの行動の様子や学
ように工夫、配慮された
力の状況、家庭環境等を的確に把握し、子どもた
授業を行う必要があります。それが「授業のユニ
ちの強いところと弱いところを見つけることが大
バーサルデザイン」です。通常の学級における授
切です。子どもたちの強いところが見つかると指
業デザインをどう組み立てるかは、特別支援教育
導を行う上でのきっかけ作りができます。また、
と教科教育の融合が必要になり、安心して過ごせ
弱いところが見つかると「できなさ」の背景のメ
る学級集団づくりが大切になります。すべての教
カニズムが解明されます。
員が特別支援教育を理解し、「わかる授業と楽し
②「困った子ども」から「困っている子ども」へ
い学級づくり」の形成のための研究・実践が必要
になってきます。
の視点の転換
○苦手なことを把握する
これらを現実化していくために、教師自身の意
子どもたちの見え方や聞こえ方、感じ方、記憶
識改革を図り、より高度な専門性を身につける必
や理解の仕方等の認知といわれる脳の処理過程の
要があります。教師における専門性の向上とは、
特性を理解し、それを踏まえて指導・支援に生か
授業力と学級経営力を高めることが大切になりま
ことも重要なポイントになります。
す。授業や学級経営を行う上で子どもたち一人一
・聞いて理解するより、見て理解する方が得意→
人の実態を理解し、教育的ニーズに応じた指導・
支援の充実を図ることが求められています。
学校教育は集団での活動や生活を基本とするも
のです。学級が安心できなかったり、授業がわか
視覚支援を活用します。
・手順が明確でない活動は正確に行うことができ
ない→活動の順序、見通しを明確にします。
・じっとしていることが苦手→動作化を取り入れ
らなかったりする状態が長く続くと子どもたちの
た創造活動場面の設定をします。
心に不安な状況が生まれ、特別な支援を必要とす
○気になる言動の要因・背景を考える
る子どもたちは二次的な問題を引き起こす可能性
があります。
他
「なぜ気になる行動が起きるのか」その理由を
考えてみます。子どもたちに対して注意や叱責を
安心して過ごせる学級集団づくりを実現するこ
する前に、気になる言動の要因・背景を考えるこ
とは、すべての子どもが楽しく授業に参加でき、
とも大切です。要因・背景がわかれば指導の手立
「わかる・できる」ことにつながっていくと考え
てはたくさん出てきます。
れます。
あ
平成27年(2015年)3月2日
か し の
例えば、授業中に立ち歩く要因・背景は以下の
ようなものがあります。
育
181号(3)
準備されている授業
○欲しい情報が分かりやすく提供される授業
何をしてよいかわからない、注目してほしい、
課題が高すぎる、座らなければいけないというこ
とがわからない、指示がわかりにくい、面白くな
い、聴覚や視覚情報の過敏
教
等々
○日頃から児童生徒の気持ちを共感的態度で受
け止める
子どもたちの気になる言動の理由や言い訳、言
い分(「どのように感じたか」「どのように思っ
ているか」等)を、子どもたちの気持ちに寄り添
いながらじっくり聞くことはとても重要です。
○間違いや失敗が許容され、試行錯誤をしなが
ら学べる授業
○現実的に発揮できることが可能な力で達成感
が得られる授業
○必要な学習活動に十分取り組める課題設定が
なされている授業
②授業づくり
○特別支援教育の視点を導入する
授業づくりにおいて、特別支援教育が大切に
していることは「個々の子どもの実態把握から、
授業をどうつくり、どのように展開したいかを考
3.授業のユニバーサルデザイン化とは
え、授業の中でどんな力をつけさせたいか」とい
ユニバーサルデザイン(UD)とは、ノースカロラ
うことにつきます。これは、障がいの有る無しに
イナ州立大学ユニバーサルデザインセンター所長
関わらず、一人一人の実態を客観的に見極め、学
のロン(ロナルド)=メイスが提唱した思想で
び方の違う40人に対して、学級づくりや教科教育
す。コンセプトは,「できるだけ多くの人が利用
の中でどのようにわからせるかということになり
可能であるようなデザインにすること」であり、
ます。
そもそも建築やデザインの分野から生まれた言葉
です。
教師は、子どもたちの一人一人のニーズを受
け止め、人間として成長・発達させることが大切
「バリアフリー」が障がいのある人たちを対象
になってきます。そのためには特別支援教育の視
にしているのに対して、UDの対象は全ての人たち
点を取り入れた授業づくりがとても大切になって
です。
きます。
①授業のユニバーサルデザインについて
○分かりやすい授業の構成を工夫する
特別支援教育の視点を活かした授業づくりは、
教室の中で支援を必要とする子どもたちは、状
「全ての児童生徒にとって分かりやすい」という
況に応じて臨機応変に対応したり、先の見通しを
ことであり、「授業のユニバーサルデザイン」と
持ったりすることが苦手な場合があります。
呼ばれている。ユニバーサルデザインの視点を取
子どもたちが目標やめあてを持ち、主体的に学
り入れた授業は、「配慮を要する子」には『ない
習に取り組むことができるように、子どもたちの
と困る』支援であり、どの子にも『あると便利
特性に応じた支援を取り入れることが大切です。
な』支援とも言われています。
授業のユニバーサルデザインの7原則として、
埼玉大学の長江は以下のように提案しています。
○全ての児童生徒が学びに参加できる授業
○多様な学びに対し、柔軟に対応できる授業
○視覚や触覚に訴える教材・教具や環境設定が
あ
平成27年(2015年)3月2日
か し の 教
澤中
181号(4)
代表校園長による教育随想
幸せな想い
高丘西幼稚園 園長
育
千鶴子
父から私が小学校1年生の時に「大きくなっ
たら幼稚園の先生になって、お父さんやお母さ
んが働いている子どものお世話をする。」と
言っていたと聞きました。当時から「幼稚園の
先生」になりたいと思っていました。
この仕事について思うのはとても幸せな仕事
だということです。朝、門のところで元気な声
で「おはようございます」と笑顔いっぱいに登
園してくる子どもの姿に元気をもらっていま
す。園児たちが地域の人から「眼がキラキラし
てかわいいね!」と言われた時には、私は心が
うきうきします。子ども達はかわいく、愛おし
く、神から授かった大切な存在です。
クラス担任をしている時、カタツムリの卵が
小さなキラキラと透明な赤ちゃんに孵った時の
子どもたちの歓声が上がりました。その子ども
たちの姿を見て、登園時保護者と離れられない
日が続いていた子どもに、私は「お父さんにカ
タツムリの赤ちゃん見せてあげる?」と声をか
けました。それがきっかけとなり一人で教室に
入れるようになり、修了文集に「幼稚園で一番
楽しかったことはお父さんとカタツムリの赤
ちゃんを一緒に見たこと」と書かれてありまし
た。それを目にした時、自分なりに考え、かか
わったことが活きていた嬉しさを感じました。
子どもたち一人一人に向き合い、それぞれに
応じたかかわりや援助、どのような体験をさせ
るのか、友達とのつながりの援助の仕方や環境
構成等、自分自身が目標をもって努力をするこ
とにより、毎年、年度末に子どもたちの成長を
実感し、保護者の方からも理解していただいた
時にこの仕事に就いてよかったと思っていまし
た。また、クラス担任を離れてからは教職員が
主体的に動けるよう、職員のいいところが活か
せるよう園務分掌等を考え、その姿の成長を感
じる喜びを味わいました。
今、幼稚園の環境は変わろうとし、幼稚園に
求められる教育のニーズも多様化しています
が、教育の本筋は変わることはありません。幼
児教育に真摯に向かい、家庭や地域における教
育を支えるように努力すると共に、自分と向き
合いながら教師としての喜びを感じられるこの
仕事に感謝し、いつまでも幸せな想いを持ち続
けたいと思います。
未来予知
明石小学校 校長
木村 典泰
未来を予知することは可能でしょうか。現在
は過去の無数の出来事の積み重ねでつくられて
おり、未来もまた同様です。未来は無数の選択
の中から作られます。これから起こるすべての
事象や人の言動に必然がない限り確定した未来
はまだ存在せず、そう考えると、未来を予め知
ることは不可能と言えるでしょう。しかし、未
来を予測することは可能です。
私が初めて自分のコンピュータを手にしたの
は35年ほど前です。個人向けの小型汎用機が
出始めた頃で、コンピュータといってもプログ
ラムを入力しないと何もできない、しかし、プ
ログラムを入れてやるとなんでもできる可能性
を 秘 め た 箱 で し た。そ の 頃 の 先 輩 が 私 に、
「きっと学校でもコンピュータを使う時代が
やってくる。」と言ってくれました。私自身も
コンピュータは教育に活用できるのではないか
と思いながら使い続けてきましたが、今となっ
ては先輩の予測が当たっていたことになりま
す。
「未来を予測する最善の方法は、自らそれを
創り出すことである。」パーソナルコンピュー
タの父といわれ、教育者でもあるアラン・ケイ
(Alan Key)氏の言葉です。日本のある科学者
も、「こんなことができればいいなと思うこと
を自分で実現させていく。未来は自分で描き、
創っていくものである。」と言っています。
しかし、自分が何かをしても未来は変わるも
のではないと思っている人も多いと思います。
それは違います。だれもが予定に基づいて、明
日や来週、来月の準備をしているはずです。ど
んな準備をするかによって訪れる未来は違って
くるのです。
あ
平成27年(2015年)3月2日
か し の
私たち教師は未来に生きていく子どもたちを
育てています。子どもたちが社会で活躍する頃
の未来を予測しながら、そこで、生きていくの
に必要な力をつけさせていかなければなりませ
ん。さらには、積極的に自らの力で未来を創っ
ていく子どもたちを育てていかなければいけま
せん。
そういう意味では、未来を創造していくのは
私たち教師といえるのではないでしょうか。よ
りよい未来の創造に向けて、先生方が目指す未
来の姿をしっかりと描き、未来を生きる子ども
たちの育成にますますご尽力、ご活躍されるこ
とを心から期待しています。
「今、思うこと」
朝霧中学校 校長
汐口
勝
昨年の秋に今後の教育の流れに関わる様々な
記事が、新聞紙上に掲載されました。
大学入試改革、学習指導要領の改訂、学制改
革、道徳教科化、小学校での外国語教育、アク
ティブラーニング、グローバル人材の育成と
いったような言葉が目についたと思います。
適切なシステムの構築が必要であることは言
うまでもありませんが、教育活動の終着点を明
確に示すことは大変むずかしく、社会の情勢や
子どもをとりまく環境によっても変化していく
ような気もします。
ただ、大切なことは社会や価値観がいかに変
わろうとも、明石市の教育の指針にもあるよう
に、子どもたちが「心・学力・体」の三面から
人として望ましい状態になるよう努力し続ける
ことでないでしょうか。目の前にいるこの子ど
もたちをより良くしたいという教師としての原
点は忘れてはならないと思います。
私自身、まだまだ道半ばですが、思いを少し
教
育
181号(5)
だ け 述 べ さ せ て く だ さ い。そ れ は、教 師 も
「知・徳・体」を意識することです。
教師としての「知」の第一は授業力です。個
人としての向上はもちろんですが、学校組織の
中でテーマ設定し授業技術向上に取り組むこと
が大切であると思います。
「徳」とは言えないかもしれませんが、教師
の「心の安定」も大切です。安らかな気持ちで
子どもに接していくことは、子どもたちに必ず
良い影響を与えると経験的に感じています。
「体」については、いまさら言うまでもなく
健康でなければ何もできません。
教師という職業につけたことに感謝しつつ、
私自身の思いをまとまりなく書かせていただき
ました。私が大学で最後に研究室を出るときに
恩師に挨拶をしてドアを閉めようとしたとき
に、河内弁で「勉強せんと教えたらあかんで」
と優しくおっしゃられた言葉が今頃になって自
省と共に甦ってきます。
「すべての子どもにすべての学校・先生が一
生懸命頑張る」今後の明石の教育がますます充
実することを信じています。
平成27年(2015年)3月2日
教育随想シリーズ
あ
か し の 教
181号(6)
先輩教師・指導主事として
支え合う教師集団をめざして
生涯を通じてどの世代においても自己肯定感を
もつことは大切なことです。しかし、ややもすれ
ば“できた”“できなかった”の結果で評価され
上手くいかないと自信を失います。また、結果や
成果を期待されると緊張を強いられ、失敗を恐
れ、消極的になります。このことは幼児はもちろ
んのこと教師にも言えることです。
私自身新任の頃、保育に悩み自信を失ったこと
もありました。その時の先輩方のアドバイスは私
にとって画期的なものでした。そして、視点を変
えて考え保育した結果、子どもの笑顔が戻った時
には、真っ暗だった目の前が一度に開けたように
若い風
育
大久保北中学校
長谷川さゆり
教諭
長尾 正延
出ていますか?そんなあなたには、必ず誰かが支
えの手を差し伸べてくれます。また、このような
気持ちでいれば、教師としての力量も高められ、
子どもたちのことを考えた、素晴らしい学級経営
ができるはずです。
三つ目が、「部活動を一緒に楽しむこと」で
す。日々、子どもたちと全力で向き合い、溢れん
ばかりの若いエネルギーを消費できるかどうかで
す。職員室でパソコンと睨めっこばかりしていて
はダメです(とは言うものの現実やる事が多く
中々難しいのですが・・・)。
若い先生方へ最後に一言。
『若い風!失敗を恐れずに、全力疾走!!』
安全・安心な学校をめざして
安心・安全な学校とは、子どもたちが安心して
学べる学校であり、保護者が安心して我が子を託
せる学校であり、地域の人々が信頼できる学校で
あると考えます。このような学校をめざすため
に、子どもたちに学校の教育活動を通して安全を
確保するために必要な知識を習得させると共に、
体験を通して危機回避能力を育成することが大切
になります。具体的には、うがい、手洗い励行の
意味を理解させ、日常的な実践につなげること。
不審者対応を組み込んだ避難訓練を行うことで、
実際的な対処法を学ばせること。いじめについて
主幹教諭
思えたことを今も覚えています。誰もが失敗を繰
り返しながら、周りの人の支えにより自信を持
ち、少しずつ前に進めると思います。疑問や困っ
たことを様々な経験のある教師と共に考え話し合
うことで多方面から物事を捉え、指導の方法を導
き出すことができると思います。
子どもと生活していく中で共に過ごす喜びを感
じ“良かった”“楽しかった”と思える瞬間に出
会い、教師一人一人が自己肯定感をもって働ける
職場になるよう私自身前向きに努力したいと思い
ます。
~先輩教師より~
最近の学校では、若い先生が増え、新風を吹き
込んでくれています。しかし、若いがゆえに悩ん
だり、思うようにいかないことも多々あると思い
ます。そんな若い先生にとって必要なことは、次
の3つだと考えます。
一つ目は、当たり前のことですが、「子どもを
好きになること」です。好きになればこそ目の前
にいる子どもたちのために自分は何ができ、どう
尽くすことができるかが見えてくるものです。
二つ目は、「謙虚な気持ちと素直な心」を持ち
続けることです。自分にわからないことが出てき
たら人に聞けていますか?『ありがとうございま
す』・『すみませんでした』という言葉が自然に
山手幼稚園
学校教育課
指導主事
濱谷 達也
道徳の時間や学級活動で取り上げ、ロールプレイ
などにより望ましい解決方法を学ばせることなど
が考えられます。また、保護者・地域との連携に
より安心・安全を確保することも重要になりま
す。保護者や補導委員、学校評議員などの外部の
方々に意見を聞くことで、今まで気づかなかった
課題に目を向けることができます。学校は地域安
全部会等を開催して、通学路の危険箇所や避難訓
練の実施方法等について意見をいただくなど、閉
鎖的な意識やシステムを活性化していくことが求
められています。
平成27年(2015年)3月2日
シリーズ
あ
か し の
教
育
181号(7)
教科等研修講座・研 究 グ ル ー プ の 紹 介
これからの英語教育を見据えて
~人と人とのつながる喜びを~
外国語活動研修講座
小学校に外国語活動が実施されるようになって
4年経ちましたが、2020年度から英語教育が
更に拡充強化されようとしています。中学年では
学級担任が中心となって行う「活動型」、高学年
は英語指導力を備えた学級担任に加えて専科教員
による「教科型」について検討されています。本
研修講座では、そのことを見据えて二つのことに
重点を置いて研修を進めています。
まず一つ目は、教材開発を中心とした英語指導
力向上のための研修です。大学の教授や地域の英
語ボランティア、外国人英語講師等を講師として
招聘し、歌やゲーム、チャンツ、フォニックスな
どを含めた様々なアクティビティーを実際に体験
しながら学びました。また、本講座の授業研究会
では、日頃の児童との関わりを活かしつつ、いく
高丘東小学校
教諭
藤井 伸子
つかのアクティビティーをうまく活用した楽しい
授業が展開される様子から、これからの英語教育
においては、専門的な指導方法を身につけた専科
教員が必要となってくると感じました。
二つ目は、小中連携です。中学校の英語教師を
講師とした研修は、小学校教諭からの質問が絶え
ず、これから取り入れようとしている「読み・書
き」について中学校の実践から学ぶことが多くあ
りました。これから、英語教育の研修を進めてい
くなかで、研究授業で見られた「互いを尊重しな
がら生き生きとした表情でインタビューを行った
り、互いの知らなかったことを知ることができた
喜びを嬉しそうに発表したりする子ども達の姿」
を忘れず、中学校と連携しながら取り組んでいき
たいと思います。
子どもの“心の声”を支援に繋げるために
~アセスの使い方・活かし方を探る~
アセス研究会
「あれっ…?」、教師として積み重ねてきた
“経験”や培われてきた“勘”が子どもに通じな
い…、うまくいかない…。そう感じることはあり
ませんか?そんな教師としての戸惑いを解消する
た め の ツ ー ル が「ア セ ス(学 校 環 境 適 応 感 尺
度)」です。アセスは、子ども本人が感じる“S
OS”の度合いを客観的に把握し、より的確な支
援に繋げるツールであり、教師が子どもへのアプ
ローチを工夫するための有効な資料として大いに
活用できます。
誕生から一年が経とうとする本グループは、
そんなアセスを活用できる人材を増やすこと、
教師が主体的にアセスを活用する“実践力”を
身に付けることを、活動の目的としています。
本年度は、講師(先進的にアセス活用の実践に
携わっておられる方)を招聘しての講義と演
習、グループ員相互での事例検討や実践交流な
どを実施しました。
子ども一人一人に応じた適切な支援を実施する
児童生徒支援課 指導主事
横田 直希
には、多面的なアセスメント(アセスはそのため
の一つのツール)と、それによる情報を教師集団
で共有することが重要となります。アセスを通し
て、教 師 間 の“輪”と“和”が よ り 太く 繋 がれ
ば、子どもの“心の声”に寄り添った支援がきっ
と可能になるはずです。本グループは、本年度の
成果を礎とし、自身の教育観や支援スタイルに応
じて、アセスの活用実践をさらに工夫していくこ
とができるよう、今後更に研修を深めていきま
す。“アセスの世界”へ足を踏み入れてみません
か?
平成27年(2015年)3月2日
あ
か し の 教
育
181号(8)
指導力向上は研修講座と現任校で
教育研究所 研修員
澤井 一夫
今年度は教育研究所が中心に
た」などの感想がありました。今
なって計画し実施する重点研修講
年立ち上げた中堅教員研修講座の
座、専 門 研 修講 座、また、多 く の
受講者は「‥若い先生に自分が教
世話人の積極的な協力により実施
えていかないといけないと痛感し
される教科等研修講座及び研究グ
ました‥」「‥若手教員への『伝
ループなど42の講座が実施され
達』という言葉が胸につきささり
ました。
ました。我々中堅教員がはたすべ
第5回あかし若手教師塾
2015.1.29
1月末現在、まだいくつかの講
き一番重要な使命、具体的に手立
座等は終了していませんが、実施(含予定)回数
てを考えたい。」「‥職員室の大切さを痛感しま
は229回、のべ参加人数は約4400人を越え
した。‥」などの感想を下さいました。
ております。これは市立の幼稚園から高校までの
指導力を向上させるのは、まずは本人の自覚と
教職員が年間3回以上講座に参加したことになり
意欲が重要です。研修講座などで「理論」を学び
ます。
自分なりに吟味し「子どもたちに力をつける」た
初任者研修講座に参加した先生から「市教委の
めに実践することが何より大切なことです。そう
研修は色々な角度から刺激をもらえ、受けるた
は言っても一人では難しいものです。自分が勤務
び、学ぶたびに元気になって学校に戻れました。
する学校で先輩や仲間と切磋琢磨し、互いの指導
先生方の経験談も大変勉強になりました」「同期
力を高め合うことが、より効果的で長続きする事
の他の学校の先生と話をすることができてよかっ
ではないかと思います。
所 長
の窓
先 生 は お 土 産 が い っ ぱ い
駅前で、「先生!」と声をかけられました。
10数年前に担任した子が、お母さんになって
子どもを連れていました。「先生、私のこと分
かる?」すぐには思い出せませんでした。その
お母さんは、担任していた頃のことや今のこと
を嬉しそうに話してくれました。
また、下校指導で歩いていると、工事のト
ラックが止まり、「先生、覚えてる?俺な、工
事会社で働いてんねん。先生、あのときに『今
は分からんかも知れんけれど、いつか役に立つ
かも知れんから言うておく。お前はやる気になっ
たらスゴイ力を出せるんやで。』と言ってくれ
たこと、今でも覚えてんで。がんばるわ。」と
少しの時間でしたが、たのもしい後ろ姿を感じ
させてくれました。実は、私自身は言ったこと
を全く覚えていなかったのです。それでも、こ
んな素晴らしいお土産をいただけるのが先生で
はないでしょうか。
教育研究所 所長
玉田 絹夫
私は、どの子にも真っ正面から向き合い、自
分がよかれと思うことは、一生懸命に伝えてい
きたいと考えています。学級には40人の子ど
もがいますが、子どもと先生との関係はどの子
どもともいつも1対1で、どの瞬間も初めて
で、その時1回きりの時間です。だから、自分
がどれだけ本気で関わるかが大切です。その結
果として良いことも悪いことも、その子の中に
一生残っていきます。ひょっとすると、何気な
い一言も含めて、先生の係わり全てが生き続
け、その子の一生に係わり続ける可能性もある
かもしれません。
人を育てることは、同時に先生自身も子ども
からいっぱいお土産をもらって、一緒に育てて
もらっていることだと思います。こんなお土産
のいただける先生の役割に、いつも誇りを持っ
て取り組み続けたいものです。