横浜市 の 「公民連携 に よ る 国際 技術協力 ( Y ― P O R T 事業)」

特 ●
集
●
地方自治体による
国際環境協力
横浜市の 「公民連携による国際
技術協力(Y―PORT事業)」
期構想や数十年に渡る都市づくり
の経験をセブ関係者と共有するな
ど、自治体が持つ経験を活かした
協力を行った。セブ都市圏への技
術協力を行っている副次的効果と
して、横浜市が同地で広く認知さ
●はじめに
浜経済の活性化に向けた主要施策
一四~二〇一七」においても、横
行の「横浜市中期四か年計画二〇
る。二〇一四年度に策定された現
市内経済の活性化に取り組んでい
新興国等の都市課題解決の支援と
が豊富な市内の大手インフラ関連
用するとともに、海外事業の実績
題を克服してきたノウハウ等を活
年代の人口急増や環境汚染等の課
市が両国政府および国際機関等の
機関の参加を働きかけること、両
行うこと、両市が民間および学術
発の推進における技術的な助言を
横浜市がセブ市の持続的な都市開
技術協力に関する覚書」を交わし
これらの活動をベースに、二〇
た。この覚書には協力項目として、 一二年一二月には、外務省の「O
「持続可能な都市の発展に向けた
横浜市はフィリピン国セブ市と
するアプローチをとっている。そ
企業による事業形成の道筋を創出
市づくりの上流計画から参画し、
(JICA)等と連携しながら都
定支援を引き続き進めている。
実現するためのロードマップの策
らしている。なお、横浜市は現在、
するにあたり、大きな効果をもた
横浜市と連携して同地で事業形成
市との信頼関係の構築は、企業が
れるとともに、横浜市は同地の開
横 浜 市 は、 二 〇 一 一 年 一 月 に
「 横 浜 の 資 源・ 技 術 を 活 用 し た 公
に「市内企業の海外インフラビジ
企業や海外に通用する優れた技術
PORT事業:
Yokohama
Partnership
を有する市内中小企業と連携し、
民連携による国際技術協力(Y―
ネス支援」を掲げ、その目標実現
協力を得るための活動を行うこと
橋本 徹 、河上 留
美
発ニーズをより的確に把握できる
)
」
of Resources and Technologies
をスタートさせた。本事業では、
のための戦略としてY―PORT
を取り決めた。
二〇一二年度にJICAは横浜
市と連携して、セブ都市圏を対象
MEGA
横浜市は、本市の高度成長期の長
の策定支援
CEBU VISION 2050
Y―PORT事業の特色として、
を行った。この策定過程において
海外都市と二都市間の協力関係を
構 築 し た う え で、 国 際 協 力 機 構
15 アジ研ワールド・トレンド No.235(2015. 5)
ようになった。このような海外都
横浜が都市開発の過程で培った経
事業は位置付けられている。
とした都市開発ビジョン
横浜市内を中心
とする企業・学術
機関など
企業・学術機関の関係
セブ市の現地
企業など
横浜市
都市の協力関係構築
セブ市
メトロセブ開発
調整委員会
日本国
国家間の協力関係
フィリピン
共和国
JICA
連携
公民連携でセブの都市発展を支援
(出所) 横浜市。
セブ市における萬世リサイクルシステムズ株式会社による
ごみ最終処分場の廃プラスチックを石油由来燃料の代替燃
料にリサイクルする事業(提供:横浜市)
の第一弾として、二〇一二年三月、 JICAが実施する同ビジョンを
験、例えば一九六〇年代から八〇
●都市間協力と企業の海外展
開支援
図1 都市間協力からの公民連携事業の形成イメージ(セブのケース)
「共創Y―PORTワーキング」
報提供や意見交換を行う場として
また、このような企業の実績や
政府等の企業支援策について、情
階に進んでいる。
送して実稼働を行う実証事業の段
案は、現在、セブ市に資機材を輸
物リサイクルや汚泥脱水処理の提
件が採択された。このうち、廃棄
に市内中小企業による調査提案三
調査、
途上国政府への普及事業)
」
展開支援に係る委託事業(案件化
DAを活用した中小企業等の海外
と市内企業の案件受注に向けた取
て具体化し、都市課題解決の支援
査 事 業( 環 境 省 )」 へ の 協 力 と し
のJCM大規模案件形成可能性調
「アジアの低炭素社会実現のため
ロ ジ ェ ク ト( J I C A )」 お よ び
タープラン策定・実施能力向上プ
ク 都 に お い て は「 気 候 変 動 マ ス
開発フォーラム」の実施、バンコ
JICAと連携した「ダナン都市
開しており、ダナン市においては
同様の取り組みをベトナムのダ
ナン市やタイのバンコク都でも展
積極的に支援している。
マートシティ・ネットワークの立
共 有 す る と と も に、 ア ジ ア・ ス
展に向けたビジョンや取り組みを
三回会議では、持続可能な都市発
都市の首長らが参加した昨年の第
いる。過去最多となるアジア二二
スマートシティ会議」を開催して
代表者による国際会議「アジア・
さらに二〇一二年度から、横浜
市はアジアの市長や国際機関等の
大きく寄与している。
海外における横浜の認知度向上に
り組みが評価されたものであり、
国都市へ課題解決策を共創する取
績や、近年の公民連携により新興
(はしもと とおる/横浜市政策局
共 創 推 進 室 国 際 技 術 協 力 担 当 部 長、
ていく。
開支援を、引き続き強力に推進し
の価値向上と、市内企業の海外展
で つ な げ、「 ヨ コ ハ マ ブ ラ ン ド 」
の上流計画から企業の事業形成ま
―PORTセンター」を構築する。
会議等の共同事業を実施する「Y
参画して海外プロジェクトや国際
横浜市・国際機関・市内企業等が
支援策も活用して推進するため、
かわかみ るみ/横浜市政策局共
創推進室国際技術協力課担当係長)
この取り組みにより、都市づくり
を定期開催しているほか、前述の
り組みが進められている。
● 横浜のシティプロモーション
「 国 際 局 」 が 設 置 さ れ た。
新興国諸都市
ち上げが参加者により提唱された。
ような外務省委託事業等の受注に
て企業が有する環境技術の広報や
●おわりに
国際局の主要な機能のひと
図2 Y - PORT センターにおける連携イメージ
向けた支援や、国際会議等におい
ネットワーク形成を行う機会を設
けるなど、市内企業の海外展開を
の受け入れを積極的に行なってい
つであるY―PORT事業
経済団体・企業・
その他関連団体等
二〇一五年四月には、横
浜市の国際関連事業の総合
る。横浜市は昨年、住みやすく活
は、前述の三つの要素(都
連携・情報共有
市から本市の取り組みを認知して
気があり持続可能な都市創造に貢
市内企業
もらうことが重要である。そこで、 調整・相互連携を強力に推
献した都市に贈られる「リー・ク
市 間 協 力、 企 業 支 援、 シ
進し、積極的に自治体外交
ワンユー世界都市賞二〇一四」に
ティプロモーション)を自
国際会議等でのPRや世界的な賞
おいて「特別賞」を受賞した。こ
治体ならではの強みを活か
を 展 開 す る た め、 新 た に
れ は、 過 去 四 〇 年 以 上 に わ た り
しつつ、より多角的に国の
横浜市
日本政府
JICA
JBIC等
知見の共有
の獲得、海外からのインフラ視察
様々な都市課題を解決してきた実
Y-PORTセンター
ODA
(政府開発援助)
等による支援
都市間連携
における協力
CITYNET
横浜プロジェクト
オフィス
地球環境戦略
研究機関
アジア
開発銀行
都市課題解決支援
インフラビジネス展開
各都市のニーズ
都市間協力や企業の海外展開支
援を効果的に行うには、新興国都
第3回アジア・スマートシティ会議(提供:横浜市)
(出所)
横浜市。
アジ研ワールド・トレンド No.235(2015. 5) 16