山川 俊貴 低侵襲な手術で頭蓋内に留置可能な 形状記憶合金を用いた

低侵襲な手術で頭蓋内に留置可能な
形状記憶合金を用いた自動展開型硬膜下電極アレイ
人間の脳波を精度よく測定する手法として、頭蓋内にシート状の電極を留
置し大脳皮質から直接脳波を記録する方法がある。この硬膜下電極の留置
研究の背景と目的
山川 俊貴
電子工学研究所 助教
には広範囲での開頭手術が必要であり、また留置して閉頭した後の位置変
更、抜去や再配置にも再度の開頭手術を要するため侵襲性が高い。しかし、
この手法は難治性てんかん等のような異常脳波に起因する疾患の病変部位
の特定に非常に有用であるので、今日でも広く用いられている。
本研究では、頭蓋骨に 1cm 以下の穴を開けるだけの局所麻酔下で行える
低侵襲な手術で頭蓋内に留置することが可能で、硬膜下で組織を傷つけるこ
となく所望の形状に電極センサを展開する機能をもった電極アレイを開発して
いる。
■ キーワード
微細加工技術を用いて作成した直径 76um のテフロン被覆白金線に特殊な
・脳波(EEG)
微細研摩加工を施すことによって、それを頭蓋内脳波用センサとして用いラッ
・皮質脳波(ECoG)
・慢性硬膜下電極留置手術
・硬膜下グリッド電極
研究の概要
・てんかん
・形状記憶合金:SMA
トのてんかん性異常脳波を計測することができた。また、その電極を絶縁被
覆した直径 0.1~0.3mm の形状記憶合金(SMA)ガイドの上に複数配置すること
に成功した。このガイドは室温では柔軟だが、通電加熱により所望の記憶形
状に変形するように記憶処理を施している。この性質を利用し、柔軟な状態で
脳の組織を傷つけないように小さな穴から硬膜下腔にガイドを挿入し、通電
加熱によって頭蓋内の所望の位置に電極を配置することができる硬膜下電
極アレイを開発した。
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特筆すべき研究ポイント:
・微小白金線を特殊な被覆・研磨加工によりセンサとして利用
■ 技術相談に応じられる関連分野
・SMA ガイドの材料、直径の調整により必要最低限の変形応力で脳を
傷つけることなく硬膜下腔で形状回復
・被覆材料の組成、膜厚の調整により長期間の留置に耐え、かつ通
電加熱による SMA の発熱が外部に伝導することを抑制
・生体信号計測装置の小型/低
消費電力化
・生体埋め込み型デバイス
・低侵襲凍結外科治療デバイス
・レーザによるニューロンの刺
激/抑制と伝達機能の破壊
・生体信号処理 CMOS LSI
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セールスポイント
・微小生体信号センサ
新規研究要素:
・微小白金線電極によるてんかん性異常脳波の測定
・SMA ガイドを用いた頭蓋内電極配置
・光トポグラフィ(NIRS)と同時計測が可能
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・CMOS アナログ LSI の歩留り向
従来技術との差別化要素・優位性:
・直径 5mm の導入管を介して挿入するため、直径 1cm 以下の穴を開
上
ける低侵襲な手術で留置可能
・留置後も容易に抜去、再配置可能
・電極センサの微細化とアレイ化による空間分解能の向上
・SMA ガイドの記憶形状に応じて電極配置を自由に設定可能(正 6 角
形、正 8 角形、星形、クモの巣状など)
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特許等出願状況:
特願 2010-13482「配置システム、生体内計測装置及び制御方法」
 試作した電極アレイ
5cm
A
Electrode 5
Electrode 6
Electrode 4
B
Type III
Type II
Type I
Electrode 1
Electrode 3
Electrode 2
 電極アレイの挿入と通電加熱による形状回復
イメージ図
挿入前
挿入後
通電加熱後
 電極アレイの構造
Lead wire(PTFE-coated Pt wire)
Outer Insulator(PTFE)
PTFE-coated SMA guide wire
Electrode
Inner insulator (PTFE)
Outer insulator
SMA guide wire
Lead wire
Electrode(uncoated Pt wire)
拡大図
断面図
(1). 自動展開型硬膜下電極アレイの In-vivo 機能試験
実験動物を用いたてんかん性異常脳波(epileptic burst)の測定試験および電極展開による脳への損傷の
今後の展望
有無について確認する。また、頭蓋内留置下における X 線可視性の検討を行う。
(2). 病変部の高精度な特定に向けた最適なガイド形状および電極配置の検討
頭蓋内の異常脳波発生源を高精度に特定することを目指し、ミリ精度の空間分解能を得るために最適なガ
イドの形状と電極の配置位置、電極数を明らかにする。
(3). 量産に向けた安定的な製造方法の確立
薄膜生成技術、MEMS 技術等を用いて、電極特性にばらつきが少なく、かつ低コストで量産が可能な製造方
法を開発する。
■ その他の研究紹介
・ 低侵襲凍結外科治療プローブの開発
・ 頭蓋内微細深部電極の開発
・ 生体信号処理 CMOS アナログ LSI の開発
・ 低コスト心電 R-R 間隔遠隔計測システムの開発