「香港のビザ制度について」 【香港駐在員事務所】

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【香港駐在員事務所】
「香港のビザ制度について」
1.はじめに
日本人が短期訪問や観光目的で香港に滞在する場合、現状 90 日以内の滞在ならビザは不
要ですが、香港内でのビジネスや、香港に居住する場合には、「就労ビザ」や「投資ビザ」等
の取得が必要になります。香港政府は、香港住民の就業確保を優先しており、就業可能な
ビザの発行には一般就業政策(GEP)という審査基準を設けており、外国人が適切なビザを
取得せずに香港で就業や就学を行った場合、罰金や禁固刑に科される可能性があります。
香港政府は、2015 年に相次いでビザ制度の変更を発表しており、ビザの取得条件は年々
厳しくなっていると言われています。
今回は香港における現在の主なビザ制度の内容と、2015 年中に発表のあったビザ制度の
変更点についてレポートします。
2.現在の主なビザ制度の内容
「就労ビザ」
Employment Visa
・社員(赴任、駐在、就業、現地採用)として外国人が香港で働くため取得するビザ。
・初回 2 年、その後申請のつど、3 年間の延長が可能。就労ビザ(投資ビザも同様)を
取得後 7 年以上が経過すると、パーマネント ID(永久性居民)の申請が可能となり、
パーマネント ID カードを取得すると、就業、転職、起業などにおいての制約がなく
なる。
・一般就業政策の主な就労ビザの発行においては、申請者の業務に関連する経験、資
格、ライセンス等が重要視されるため、基本的に専門職と管理職以外の日本人が、
香港で就労ビザを取得するのは難しいと言われている。
・審査は、申請者本人だけでなく、就業先の業績や香港人の雇用の有無等も含まれる。
「投資ビザ」Investment Visa
・香港法人の株主として就業する外国人が取得するビザ。
・初回 2 年、その後申請のつど、3 年間の延長が可能。
・社会的責任が大きいため審査は厳しくなり、就労ビザの条件に加え香港へ十分な貢
献を行うことが基本であり、事業計画、売上規模、財務資源、投資金額、現地雇用
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の創出、新技術・スキルの導入等が審査基準となっている。
「扶養家族ビザ」Dependant Visa
・就労・投資ビザなどの保持者がスポンサーとなり、その「配偶者、子供、父母」が
取得できるビザ。
・初回 1 年、その後はスポンサーの発行期間に合わせてビザが延長される。
「研修ビザ」Training Visa
・香港企業や研修機関での研修やスキル習得を目的とした短期間(最長 12 カ月)のビ
ザ。
・研修受入先の企業・団体の確定と、研修計画の提出が必要。
・期間延長や就労ビザへの変更は不可。
「香港永久性居民身分証(香港パーマネント ID カード)」Permanent Identity Card
・香港で滞在可能なビザを保持し、且つ、7 年以上継続して香港に滞在している外国人
が申請できる。パーマネント ID カードの取得により香港人と同等の居住資格が与え
られる。
・連続 36 ヵ月間(3 年間)香港を離れるとビザが失効するので注意が必要。
3.2015 年中のビザ制度の変更点
(1)「投資移民ビザ」(CIES)の新規申請暫時停止
・投資移民ビザは、重症急性呼吸器症候群(SARS)で香港経済が大きな打撃を受けた
2003 年 10 月に導入され、香港政府が指定した株式や債券、保険などの金融商品に
1,000 万香港ドル(約 1 億 5,600 万円)以上を投資する者に、香港の居住権を認めて
いた制度。
・香港政府トップの梁振英行政長官は、2015 年 1 月 14 日の施政報告で、「これ以上投
資を呼び込む必要はない。我々が求めるのは資本ではなく人材だ」と述べ、海外の
投資家に居住権を認める投資移民ビザの受付を同日限りで暫時停止する方針を発表
した。
・投資マネーの流入による不動産価格の高騰が社会的不満となっていることも要因で
あるが、香港は日本同様に高齢化が進んでおり、若く優秀な人材を呼び込みたいと
する香港政府の移民対策の一環とも言われている。
(2)ビザ発行期間の緩和とトップティア(Top-Tier)概念の導入
・2015 年 5 月、就労ビザと投資ビザについて、従来初回取得時は最長 1 年間であった
発行期間が 2 年間に変更された。また、延長も原則 3 年まで認められた。
(ビザ期間が、1・2・2・3 年システムから、2・3・3 年システムに変更になった)
・更にトップティアの要件を満たせば、一度の申請で 6 年間まで延長が認められるよ
うになった。
《トップティアの要件》(a と b、両方の要件を満たすこと)
a.申請者が一般就業政策(GEP)または中国本土居住の中国人向け輸入内地人材計
画(ASMTP)の基準に基づいて 2 年以上香港で就業していること
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b.前年度の年収が 200 万香港ドル(約 3,120 万円)以上であることを証明できる
こと
※但し、発行期間は緩和となっているが、ビザの新規取得の条件が緩和されたわけで
はなく、前述のとおり条件的には厳しさを増しているのが現状。
(3)「投資ビザ」の審査項目の明確化
・2015 年 6 月、従来は事業計画と申請者の資金力などを総合的に審査していたが、以
下のとおり審査項目が明確化された。
①事業計画
事業内容の具体的な説明(商品やサービスの特性、市場分析など)に加えて、2
年分の試算表の提示が求められるようになった。
②売上規模
既に事業を開始している場合は前年度の財務諸表の提示、これから事業を開始す
る場合は、事業化のための売上予定の試算表の提示を求められる。また申請者の
事業に関連した投資や業務の経験についての審査も行われる。
③財務資源
申請者個人と香港法人の前年度(直近 1 年分)の銀行ステートメント(英文で口座
名義人の氏名、住所、預金残高 などが印刷された取引履歴)
、もしくはその他資
金源の証明の提示を求められる。
④投資金額
香港での事業運営が可能である金額の投資を実行したことの証明の提示が必要。
⑤現地雇用の創出
当該事業が香港人雇用を創出する証明を求められる。雇用予定の場合は、組織図
を提示して人数やポジションなどの具体的な内容を申告する必要がある。
⑥新技術・スキルの導入
香港に於ける高付加価値産業の創造や知識集約型経済の発展に寄与できるような、
新しい技術やスキルを導入できる場合はその説明が必要。
・今回の変更では、特に次の 2 点について年数基準が示されるなど審査が厳格化され
ている。
①事業計画の精査
当該事業の利益構造を、試算表で精査するようになった。
机上の計算で利益が読めない事業では、成功が期待できないという判断。
②個人資産の開示
申請者(投資者)の経済基盤の確認として過去 1 年間に遡って銀行口座の開示を
求められる。従来は 3 ヶ月程度の残高証明の提示を求められたが、「見せ金」
的な対応を排除したもの。
※ 投資金額や自己資金額、現地雇用人数等は数値基準を示さず、現時点では業種
や業態に応じて個別判断するとされている。
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【香港入境事務署】
【香港入境事務署で申請手続きを行う人々】
4.まとめ
香港の日系コンサルタントに聴取したところでは、ビザ申請においては、香港入境事務
署(イミグレーション)が定める条件基準をよく理解し、要所を押さえたうえでの申請が
必要とされ、英語が得意な方でもビザ申請が初めての場合は、苦労される場合があるとの
ことでした。実際に、日本料理店などでは香港人の技術・スキルが向上したことを理由に
新たな日本人の料理人の就労ビザが認められなかったり、また、これまで就労ビザを取得
していたのに、延長が認められず帰国せざるを得ないといった事例も発生しています。今
後、香港での事業を検討するにあたり、ビザ制度は、事業の成功を左右するポイントの一
つとなりそうです。山口銀行香港駐在員事務所では、香港での会社設立やビザ申請に関し
随時情報を発信するとともに、業務に精通したコンサルタントなども紹介できますので、
ご希望やご質問等がありましたら是非お声掛けください。
換算レート:1 香港ドル=15.60 円
以 上
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