3月23日(月) 倉吉市 人と動物の未来センター「アミティエ」視察

3月23日(月)
倉吉市
人と動物の未来センター「アミティエ」視察
アミティエとは、フランス語で友情、親切という意味。
公益社団法人動物臨床医学研究所「Animal Clinical Research Foundation」
が母体となって運営されている施設です。財団の中にある「人と動物の会」は、
人も動物も同じ地球に生きるいのちであることを念頭に、人も動物もシアワセ
な社会の構築を目指し、創設されました。今回は理事長が獣医師として豊富な
経験を生かした動物保護施設を手堅く手がけている、鳥取県倉吉市にある財団
とアミティエに伺いました。
人と動物会は、動物愛護や動物愛護思想の向上、動物との共生を推進するた
めに、1991 年、公益社団法人動物臨床医学研究所内に発足。2011 年に内閣府よ
り公益社団法人動物臨床医学研究所として認可を受け、そして 2013 年に財団が
自ら動物愛護活動を行うためにアミティエが総世知されました。2014 年には鳥
取県とも連携をし、保健所より殺処分される運命の犬猫の引受をし、譲渡活動
を開始しました。
視察は朝、倉吉市にある公益社団法人動物臨床医学研究所に伺い、現在まで
の動物愛護の概要について、財団の理事長である山根義久獣医師・医学博士と、
総院長の高島一昭獣医師にお話を伺いました。
2011 年の東日本大震災で多くの動物達が犠牲になったことに山根理事長は憤
りを感じておられ、獣医師会の会長として政治的な交渉にも尽力。しかしなが
ら、結果として牛を殺処分に追いやってしまった現実に未だに心を痛め、今も
主に牛についての放射能被害に関して調査をしているとのこと。最近白斑の現
れた牛が報道され、私も福島県の希望の牧場で白斑のある牛を確かにこの目で
見ました。山根理事長によると、チェルノブイリにおいても、汚染地区の牛に
白斑が現れたが、総じて放射線度がそこまで高くない地区の牛に発生率が高く、
線量の高い地区には出ないという不思議があるそう。
さらに最近、被災地のもぐらにも白斑が出たという研究結果があり、相関は
あるとしながらも、結論づけるにはまだ研究の結果が待たれるということでし
た。
話を愛護動物に戻し、最近では動物愛護の機運が高まってきたとしつつも、
まだまだ先進諸国のようにはなっておらず、向上が見込めそうだと感じた。
山根理事長みよると、刑務所等で犬の世話をした場合、海外では再犯率が下
がったというデータもあるとのこと。動物は人の感情を豊かにするという。こ
れは、以前に太田光明麻布大学教授の講演でもあったシアワセホルモンである
オキシトシンが分泌されることにより、弱者や他人への思いやりが生まれるた
めではないかとのことであった。また、アメリカでは犬を飼っていると、健康
にもいい結果をもたらすということで、保険料の料率が下がる保険会社もある
そうで、科学的なエビデンスを調査していけば様々な施策を民間と共に展開で
きるヒントがありそうだと感じた。
高島一昭総院長
私
山根理事長
アミティエでは、行政ではなかなか行き届かない部分まで行えることが強み
のひとつ。厳しい報告義務を里親さんに課し、不妊去勢手術はもちろん、マイ
クロチップの挿入も。今後は万全を期すために譲渡後にインスペクションも行
うかも知れないと理事長は言う。
「こういった厳しいことに耐えられない飼い主
が引き取った犬猫を大切にすることはできない。厳しくしないと、また保健所
に戻ってしまうような負の連鎖が生まれている。それを断ち切りたい」とのこ
と。
高島総院長によると、動物愛護センターや保健所から譲渡した犬の中から脱
走する犬も実はかなり多く、脱走した犬のうち2割しか去勢手術をしていなか
ったというデータもあるそうです。こういった場合は、脱走前にやんちゃだっ
たりと里親さんとの関係も決していい状態ではない犬も多いそうで、脱走して
また保健所に入っていれば意味がない。事実としてそういう犬が少なくないと
のことで、この負の連鎖を断ち切るために、譲渡を担う施設である以上、厳し
くしているとのこと。大変に説得力のある話だった。
さて、研究所から30分ほど離れた場所にある、アミティエの保護施設の見
学もさせて頂いた。建物面積は330平米、敷地は16000平米を有してお
り、ヤギや羊も自適に走り回っている。
ドッグランが入り口にあり、犬は自然の中で気持ちよく運動できることは到
着してすぐに分かる。
施設の中には清潔な個室があり、お部屋と外が繋がっている造りで、これは
ドイツのティアハイム形式である。昨今では日本のセンターでも採用されつつ
あり、東京のセンターでも改修されることがあれば採用して欲しい。
写真左が室内、右が部屋と繋がっている屋外。動物福祉を鑑みた造りである。
私が視察をした 3 月は一番犬と猫の数が少ない時期。4 月に入ると繁殖を迎え
て、頭数が増える。
部屋は個室と、「なかよし ROOM」がある。慣れるまでは個室で過ごすこと
は必要な犬もいる。そして、他の犬と仲良く過ごせる子はなかよし ROOM に入
る。散歩すれば他の犬とも会うこともあるし、複数飼いをする方もおり、他の
犬に慣れておくことも重要。
施設には処置室もあり、動物病院で行うような健康管理はもちろん、不妊去
勢手術、マイクロチップの挿入も行っている。脱走や迷子時にマイクロチップ
は有効であることは間違いない。私も万全を期すために、飼い猫2頭にマイク
ロチップを挿入している。しかし、昨今の、個体識別のためにマイクロチップ
を二重で法で課そうとする動きに関しては疑問を持たざるを得ない。なぜなら
ば、個体識別であれば狂犬病予防法がある(個体識別につながる鑑札が交付さ
れる)。狂犬病予防法を遵守している飼い主が半数程度といわれている中、まず
は人間の命を守る為にも狂犬病予防法の徹底が第一ではないでしょうか。登録
と鑑札が交付される。鑑札も迷子札もアクシデントで取れて心配であるという
なら、私のように飼い主が費用を持てばいい。
どうしてもマイクロチップの推進をしたい勢力があるのは間違いないので、
それならば、8週齢規制を日本にも導入をする際に週齢証明としてブリーダー
に課すべきである。飼い主ではなくブリーダーに課す理由は購入時点で入って
いなければ週齢の証明にならず、意味がないからである。これなら、二重で飼
い主に個体識別として法を課すことにはならない。山根先生は獣医師会の前会
長である。この話に深い理解を示して下さり、私は安心をした。
猫ルームもあり、人に慣れた猫ちゃんが数頭いた。このとおり、記念撮影も
できてしまう(笑)。数頭で一緒にいても大丈夫。数頭飼いも大丈夫そうな子達
ばかり。アミティエでは「しっかり人なれをした子がここにいます」とのこと
で、最初の大変な部分の半分位はアミティエで完了している。あとは、家にい
る猫との相性だけだと思われます。私も猫を飼っているのでよく分かりますが、
猫の性格は千差万別。犬と違って性格がバラバラ。ですから、成猫だと性格が
分かっていて、安心である。
アミティエは 2014 年からは鳥取県と連携を開始した。「鳥取県動物愛護セン
ター」という名前も加わった。このケースは成功し、今年度は静岡にもアミテ
ィエが静岡県と連携をして同施設をスタートするとのこと。こうした施設が全
国に広まって欲しいと願う。
(終)