若手プロジェクト 研究テーマ 手術の定量データ化・解析をめざした サージェリレコーダシステムの開発 名古屋大学大学院 工学研究科 マイクロ・ナノシステム工学専攻 助手 加藤 大香士 Takashi KATO 臨床の手術データを蓄積することにより,様々な手 近年,10mm径以下の内視鏡・手術ツールを数か所の 穴から体内に挿入して行う内視鏡下手術が急増してい 術の包括的なデータベースを構築できる.それらから, る.患者のQOLに重点をおく低侵襲医療への移行がす 手術解析に有用なデータを抽出する技術を組み合わせ すむ反面,内視鏡下手術に独特な事故の増加も顕著と ることで,問題の発見を迅速に行うことができるよう なり,執刀医の教育・研修制度の充実,手術事故の原因 になり,医療の安全性,透明性を飛躍的に向上するこ 究明に向けたガイドライン策定が強く望まれている. とができる. そこで,飛行機のフライトレコーダ,ボイスレコーダ と同様,内視鏡下手術の完全記録,事故後の手術解析 を目的としたサージェリレコーダシステムを提案して きた(図1).特に症例の多い腹腔鏡下手術について, 鉗子位置と操作力を中心とした手術手技情報に加え, 内視鏡像と音声情報まで時系列デジタル記録するシス ■図1 サージェリレコーダ概要図 テムを試作した. 本研究は,医用マイクロロボティクスの発展に寄与 するものであり,手術を定量データ化・解析するため のセンサ実装技術,データ処理技術が開発できる.こ れは, 「情報社会」がキーワードの本拠点形成プログラ ムの中でも重要な位置を占める. 現在までに,生体ブタを用いた動物実験を2回行っ た.腹腔内手術における危険な鉗子操作を熟練医が意 ■図2 手術データ収集鉗子 図的に行い,図2に示す「手術データ収集鉗子」を試 ■ 業績リスト 作し,動物実験により術中のデータを収集した. 術中の異常事態は正常データとの比較によって検 出可能となる.すなわち,相当数の手術データが必要 であるため,今後,動物実験を継続し,手術手技デー タを蓄積していく. また,数時間に及ぶ手術データの中から,特定のタ イムラインを自動で検知し,切り出すことのできるシ ステムも構築していく予定である. ■学会発表論文 1. 生田幸士,加藤大香士,大栄広樹,吉山博章,サージェリレコー ダの研究(第1報)基本コンセプトと腹腔鏡下手術への適用,日 本エム・イー学会誌, Vol.42, Suppl.1, 2004, pp.269. 2.生田幸士,加藤大香士,大栄広樹,森島昭男,吉山博章,サージェ リレコーダの開発と腹腔内手術事故への適用,日本機会学会ロボ ティクス・メカトロニクス講演会 2004 予稿集 CD-ROM,2004, 2P1-H-67. 3. 生田幸士,加藤大香士,大栄広樹,森島昭男,サージェリレコー ダの研究(第2報)動物実験による臨床データ収集と解析,日本 ロボット学会学術講演会予稿集 CD-ROM, 2004, 2H17. The 21st Century COE Program ― 116 ―
© Copyright 2024 ExpyDoc