9月号 Vol.7 もくじ 能登の仕事人 Vol.7 大野長一郎さん(炭焼き職人)

能登に
あつまれ通信
月号
9
Vol.7
今回の仕事人は、珠洲市の里山にたたずむ大
野製炭工場の二代目・大野長一郎さんです。
大野さんが今取り組んでいるのは、茶道で使
われるお茶炭の生産。その美しい仕上がりは
日本でも指折りといわれるほど。真摯に炭作
りに向き合う大野さんに、炭の魅力や炭作り
にかける思いを伺いました。
親子二代で受け継がれる
里山の炭焼き工場
ドラマはいよいよ終盤。9 月 26 日 ( 土 ) に最終回を
迎えますが、それまでの 4 週間にまだまだたくさん
の展開が待っていそうですね! 今回の仕事人は、里
山と生きる炭焼き職人さんをご紹介。お菓子のコー
ナーは、酪農が盛んな内灘町からあのスイーツを。
能登の仕事人
vol.7
おお の ちょういち ろう
大野 長一郎さん
昭和 51 年 9 月、珠洲市生まれ。昭和 46 年に先代
が創業した製炭工場を継ぎ、奥能登に伝わる昔な
がらの炭作りを守る。近隣の山に炭の材料となる
クヌギの木を植林する活動は、能登の里山保全に
も一役買っている。珠洲木竹炭生産組合組合長。
4 基の窯で年間約 25t の
炭を生産している
能登は世界農業遺産に登録された「里山里海」で知られる
ように、三方を囲む海とともに緑豊かな山があり、昔から里山
の木々を伐採して燃料としての炭作りが行われてきました。
父が製炭工場を始めたころは、燃料革命後 10 年ほど経って
いてガスや電気が普及していたので、炭の需要は縮小傾向に
は 22 歳の時。親子としての甘えなのか、父のやり方を素直に
窯の中の熱と水分を操り
上質な炭を焼き上げる
受け止められなくて、生意気なことばかり言っていたように思
炭作りは一年を通して行っています。工場のある東山中地
います。父が亡くなった時に、父と親交のあった多くの方々に
区周辺の雑木林から素材となる木を伐採した後、窯に入れま
助けてもらって、そこで父の偉大さを知りました。父が残して
す。窯の入口を粘土や珪藻土レンガでふさぎ、焚口に火を入
くれた、生きて行くための手法であるこの製炭工場を守り、
れて窯焚きの始まりです。炭は熱分解によって木を炭化させた
次世代に残したい。そう思うようになったのです。
もの。木の持っている水分から発生する蒸気で、木の外側の
あり、正直に言って自分が幼い頃は炭作りに魅力を感じていま
せんでした。年老いた父を手伝うため、この仕事を始めたの
断 面の切 り口 が 美 しい模 様のよ うに
仕上がっている大野さんのお茶炭
水分を保ちながら、5∼6日かけて窯の中に入れたすべての木
材の炭化が終了するように、窯の中の温度や湿度を調整しま
す。窯の蓋は途中で開けることなどできないので、煙突から
出る煙が頼り。煙の色や温度を確認して火を管理します。
火を止めて一週間冷却させた後、窯から出すときは自分の
思うような炭に仕上がっているかドキドキしますね。父の後を
継いで 10 年ほど経つので、ある程度の量はうまく生産できる
ようになりましたが、今の自分の炭作りを採点するならば 100
点満点中30∼40点くらい。自分が思うような炭を作れるよう
になるには、まだまだ時間がかかりそうです。
手前が大野さんのクヌギ林。
あたり一面に里山が続く
月号
9
Vol.7
里山と製炭技術を守るために
始まったクヌギの林づくり
たのですが、変形や節目の部分、規格外が多く、残念ながら
材料となる木はナラやサクラ、シデなどの広葉樹で、その
に工夫を重ねて、長い目で炭の材料作りに適した林を育てて
中でもお茶炭に適しているのがクヌギの木です。このクヌギの
炭を安定的に量産するために、平成 16 年からクヌギの木の植
行きたいと思っています。
古来より、火は神聖なものとして扱われ、人の文明は火を
林を始めました。周辺の山の中には耕作放棄地となっている
使うことから始まったと言えるほど人間の生活になくてはなら
国営農地がたくさんあったので、この土地を炭の材料を栽培
ないものです。近代的な生活の中で火に触れる機会は限られ
する林として活用し里山を保全する目的で、平成 19 年からは
てきましたが、火をコントロールしてうまく使える人間になっ
NPO 法人「能登半島おらっちゃの里山里海」と協力して「おらっ
ていかなくてはいけないと思います。この火を繋いで行くこと
ちゃの森づくり運動」と題した植樹イベントを行っています。
こそが私の使命。私以外にもこの仕事をしていきたいと思う
お茶炭に適しているのは植えてから6 ∼ 10 年の若木。お茶
人が増えて、この東中山地区を炭焼き集落にするのが私の夢
炭は形や太さがいろいろと決まっているので、大きく、太くな
です。
思うような生産量にはなりませんでした。木を植える間隔など
りすぎた木は向いていないのです。平成 24 年に、植樹を始め
て 8 年目の木を伐採し炭を作ってみました。かなり上手く焼け
食べてみて、能登のお菓子
●大野製炭工場 電話:0768-86-2010 http://www.notohahaso.com
おいしい牧草を食べて育った乳牛の生乳を使用。
人々を笑顔にする自然の恵みをいただきます。
ソフトクリームは
S サイズ(2 巻き)300 円∼
金沢市と隣接する内灘町には、緑豊かな牧場・牧草地が広
低温殺菌の牛乳やヨーグ
ルトなども販売する
がる酪農団地がある。そのうちの一つ、ホリ牧場直営のショッ
プが「夢ミルク館」だ。ホリ牧場の奥さんが「うちの牧場の
おいしい牛乳を味わってほしい」という思いで、平成 10 年に
オープン。酪農団地の中という町から離れた場所にありなが
ら、今や週末になると多くの人がソフトクリームを求めてやっ
てくる人気店となっている。
ホリ牧場では約 400 頭の乳牛を飼育。その牛たちに与える
牧草は、敷地内の牧草地で栽培している。季節によって 2 種
類の牧草を植え、年に3∼4回刈り取り、刈った後の牧草は太
陽の光で乾燥させ、ラッピングして発酵させることで、乳牛
が好んで食べる、乳牛の体に良い乾草となる。
「牛に応じた
餌をあげたい。搾乳も牛に無理をさせないで、出る分をいた
だいています」と牧場主の堀さん。健全に育てられた乳牛の
ミルクは、健康的な味わいになるに違いない。
この乳牛の生乳を使ったミルクソフトクリームは、牛乳のう
まみや甘さがギュッとつまった濃厚な味わいながら、後味が
すっきり。ブルーベリーやマンゴーのソースがかかったヨーグ
ルトソフトクリーム420 円はさっぱりとした甘酸っぱさ。
出産をひかえた牛たちが
牧草地でくつろぐ様子
店 名●夢ミルク館
住 所●河北郡内灘町湖西 243
電 話●076-255-1369
営業時間●10 ∼17 時(5 ∼ 8 月の土・日曜、祝日は∼ 18 時)
定休日●無休(10 ∼ 4 月は木曜休み、冬期は不定休もあり)