SSKA頸損 No.114 2014 年 12 月 9 日発行 頸髄損傷者の災害対策インタビュー調査 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部 高橋競 北村弥生 頸髄損傷者は、災害に対してどのような不安を 自宅に留まる場合には、電気や水などのライフラ 抱えているのでしょうか?そして、どのような対 インや地域のつながりが不可欠です。また、自宅 策が必要なのでしょうか?平成 26 年 6 月~8 月、 以外に避難する場合には、長期の外出経験や長距 東京と神奈川の頚損連メンバー16 名にご協力い 離を移動する力が重要になります。 ただき、訪問インタビュー調査を行いました。 (調 基本的に我々は、ご存知だと思うんですけど、 査にご協力いただいた皆様、本当にありがとうご 変に外でちゃだめなんですよ。ああ地震が、 ざいました!)調査結果の一部と調査参加者の印 震度6がきた、7がきたってなった場合、家 象的な声(斜字)をご紹介します。 が崩れない限りは絶対家にいた方がいい。行 って支援を待つより、まあここにいるってい うことを分かってもらって、そこに支援者が ●災害への不安 来てもらう方が。(40 代男性) 調査参加者は普段から、排泄、褥瘡、体温調節 等の体調管理の不安を抱えており、災害時にはそ 被害のない所に、車乗って逃げた方がいいん の不安が大きくなるようでした。 あの、避難所に行くよりも、離れてる地方に、 トイレだよね、一番は、たぶん。ポイントは じゃないっていう結論になりましたね。ここ トイレだと思います。トイレが何とかなるよ ら辺で逃げるよりも、もう車乗って、地方の、 ってのがあると、あの、けっこう。私も、ト 影響のない、生活のできるところに行った方 イレが何とかなるよってなれば、 (避難所に) が。(40 代男性) 行っちゃおうと思いますもんね。 (60 代男性) (震災時は)ちょうど、ベッドのマットをエ ●対策 2:十分なモノの備え アマットに替えたばっかりで、なんか停電し 水や食料に加え、個人的に必要な医薬品や排泄 たら空気が抜けちゃうってなって、なんか、 用品等のモノを十分に備えておくことも体調管 どうしようって感じでした。(20 代女性) 理の不安をやわらげます。これには、モノを購入 ご存知だと思うんですけど、頸髄損傷はね、 するための経済力や、保管しておくためのスペー 体温管理が自分ではできないので、全部エア スの確保が前提となります。多くの方は、過去の コン、電気で制御するので、エアコンがとま 失敗経験や災害の恐怖、仲間からの情報により、 ると夏なんかはね、本当に。冬もですけど。 モノを備えるようになっていました。また、中に リアルな死活問題というか。(30 代男性) は、家族やヘルパーに必要なモノを余分に備えて いる方もいました。 ●対策 1:安全な環境の確保 何か用意しとけば万が一生き延びたときに。 使えるかどうか分からない避難所をあてにす その後でまた困ってしまうのが一番辛いん るよりも、災害時に利用できる安全な環境を確保 で。で、介助者もいつまでいてくれるか分か しておくことが体調管理の不安をやわらげます。 らないし、その時の状態なので。で、いたと -31- SSKA頸損 No.114 2014 年 12 月 9 日発行 してもできないこと、例えば薬とか医療的な 止まってるから、これご存知かと思うんだけ ことって、人がいてもどうにもならないこと ど、 (電動車いすは)200 何十キロ、私が乗っ があったりするとやっぱり困るなあと思っ てるから 250 キロなんですよ。持ち上げれる たので、いろいろ考えだしたら。(中略)で でしょ男が 8 人もいれば、わっしょいってや あと、あの、実際一人ならまだ覚悟決めるけ ろうとしたら、重いねこれ、A くん重いよこ ど、基本的に介助者ついてるんで。やっぱり、 れつって。すみませーんっていいながら、で そのことも考えなきゃいけない。自分だけま もこれ行くしかないねって、やりきろうって あ生き延びればいいじゃないけど、やっても のでみなさんやっていただいて。ほんとにそ らわなきゃいけないし、けどその人も大変な れはもう、一生モノの頭が下がる思いですけ ことあったら困るし。その人が生きてないと ど、わっしょいわっしょいで降りたんですね、 自分も生きてられないという環境だから。 なんとかね。ほんとにありがたいなって、そ (40 代男性) れは。(40 代男性) ●対策 3:安定した介助者供給 ●対策を進めるために 環境やモノが整っていても、介助者がいなけれ これらの災害対策は、日常のちょっとしたトラ ば意味がありません。頸髄損傷者の健康管理にお ブルの対処にも役立ちます。大きな災害が起こっ ける安定した介助者供給の大切さが浮き彫りに た時にどのような行動をとるべきかを、本人や介 なりました。通常の対応が難しい災害時における 助者、周囲の人々があらかじめ決めておくことも 介助者供給は、良くも悪くも、介助者との個人的 大切です。 な信頼関係によるところが大きいようです。 たぶん俺くらいの重症度だったら、出てって 人がいなかったらベッドにも行けないしね。 くれって、県外に。関東だったら、関西まで 食事もできるけど、セッティングとかしても 行ってくれ、疎開してくれと。重要なのは、 らわないとできないし。自分でおしっこ捨て 僕が思うには、その体制がオートマティック られるわけでもないし、つうのはありますね。 に動くように、地震がおきた、障害者がいる、 セッティングさえしてもらえば、自分でどこ じゃあこのシステムで動けばっていうのが、 でも行けるんですけど。それをね、してくれ 決まってれば。誰が行くんだ、どこ行くんだ る人がいないと困るから、だからそういう助 みたいな、何が必要なんだみたいのを、いち けてくれる人が一番大事なのかなって。(40 いち判断しずに、あ地震来た、あいつ出てっ 代男性) てもらおう、消防いってみたいな。もしかし あの、(震災時)ちょうど会社にいまして、 たら、防災ずきんがあっても意味がないかも で、その当時私の会社のオフィスが 3 階にあ しれないよね、僕たちにはね。(30 代男性) ったんですよ。(中略)退避するってことに なって、出ることになったんだけど、A くん 今後、今回の調査結果のまとめを進めつつ、ア どうするってことになって。したらまあすご ンケート調査や防災マニュアル作成にも取り組 くありがたいことなんですけど、その時の同 んでいく予定です。会員の皆様にご協力をお願い 僚が集まってくれて、持ち上げてわっしょい することもあるかと思いますが、その際はどうぞ で行こうってことになって、エレベーターも よろしくお願いいたします。 -32-
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