第 2 節 蘇州の商圏概要

第 2 節 蘇州の商圏概要
蘇州では、世界遺産である9つ古典庭園などを保護し、古来の庭園雰囲気破壊を阻止するよう、市内
では高層オフィスビルの建設を基本的に禁止している。そのため、他の都市とは違い、3~4 建ての店舗
もあったりするし、たとえ 6 階の店舗でも売り場のビル単独で高層ビジネスセンターがないことが印象的で
ある。
正にその理由で、今まで成熟商圏と言えるエリアは 1700 年の歴史を持つ「玄廟観」から起源する観前
街商圏のみ。また、中心地で新規商業施設の建設もあまり進展はなかった。こんな状況下、新築マンショ
ンの建設が進む高新区、工業園区、平江新城など郊外の新区では逆に商業施設の整備が加速してい
る。
たとえば、工業園区では、既存の久光百貨を含めた圓融時代広場以外に、金鶏湖天虹商場、印象城
(蘇州店)が追加され、高新区では、緑宝百貨も含めた緑宝広場が既に開業され、且つ 2011 年末までに
は日本大阪市の株式会社も「蘇州泉屋百貨」を開設する予定で、現在人事採用中とのことである。一方、
高速鉄道北駅の周辺では、高速鉄道駅の建設がある程度一段落したため、それにあわせて「平江新城
CBD」の建設が計画されている。現在は、まだ「万達広場」の「万千百貨」しか施設は整備していないが、
今後建設の過程が加速すれば、新しいタウンとして他の商業施設も進出する可能性がある。
その意味では、蘇州では現代的な商業施設の発展はむしろ中心部においてではなく、郊外型総合シ
ョッピングモールとして発展していく可能性が高いと思われる。
〔蘇州市内主要商圏の位置関係図〕
高速鉄道北駅商圏
環金鶏湖商圏
高新区商圏
観前街商圏
石路商圏
南門商圏
1.蘇州の代表的商圏
(1)観前街商圏
蘇州の「亭園」とともに知られているこの街、「玄廟観」の
前の街であることがその由来である。もともとは、旧暦の七
月二十四日に「盂蘭勝会」(お盆祭り)が行われ、それに
会わせて(昆劇、京劇など)演劇の披露、伝統的な軽食、
サーカスなど賑やかだった。
1982 年には、歩道街と指定され、その時から観前街は
蘇州の一大商業街として定着してきた。現在、上海の城
隍廟、南京の夫子廟、北京の天橋と肩を並べるほど、ショ
ッピング、レジャー、飲食、文化の観光スポットとして有名
観前街
である。観前街は全長約 770 メートル、幅約 9~13 メートルで、都市規模・街広さの割にはゆとりのあるレ
ジャー・スペースとなっている。現在、周辺地域も含めて、約 6 つの大型百貨店(しかし、小型の小売店は
沢山ある)を有し、蘇州美羅商城を除き、ほとんどは古い建物をそのままリニューアルしたのが普通である。
そのため、観前街商圏の狙っているターゲットはビジネスマンというよりも、本当に買い物のために来たお
客様である。
ただ、国際一流ブランドの入居はここ3・4年のことだけで、
商圏全体のハイエンド消費はまだ 10 億元台に留まり、現代
百貨店業態へのエボリューションの道ほどはまだ程長いと言
われている。また、2012 年に竣工予定の地下鉄 1 号線はこ
の商圏を通らないのも残念である。(地下鉄 2 号線は通る予
定)。
主要な商業施設:蘇州美羅商城、金鷹国際購物中心(蘇
州店)、蘇州第一百貨商店、蘇州長発商場、蘇州豫園商城、
蘇州大洋百貨、蘇州人民商城など
古風の百貨店
(2)環金鶏湖商圏
蘇州では、古城、工業園区(金鶏湖沿い地域)、新区
(獅山地域)という3つの CBD(Central Business District)
の建設を予定している。そのうち、金鶏湖沿い地域にお
いては、特に力を入れている。それは、工業園区の管理
部門がそこに所在するためだけではなく、金鶏湖沿い地
域をショッピング、レジャー、観光などの機能を備えた現
代的都市にする計画があるからである。
金鶏湖沿いエリアは総土地面積が約 3 キロ平方メート
ル(内、湖西側が約 1 キロ平方メートル、湖東側が約 2 キ
圓融時代広場の天井付き商業街
ロ平方メートル)となっており、主な施設としては左岸商業街、湖浜新天地、李公堤、圓融時代広場などが
ある。これらの施設は米国 HOK のアジア太平洋支社に建築設計を依頼しており、商業顧問に仲量聯行
測量師事務所(香港)有限公司、施設管理顧問に第一太平戴維斯物業顧問(上海)有限公司を採用して
いる。
そのため、設計当初から駐車場、ビジネスオフィス、地下鉄、飲食、ショッピングセンター、観光スポット、
教育施設などあらゆる角度から市民の利用利便性を考慮しており、関連性・ファッション性の工夫が成さ
れている。しかもそれらの施設を「金鶏湖」という糸口で繋がっており、将来には増設の余地を残してい
る。
特に圓融時代広場の設計は特別で、500 メートル
の天井は多数の LED で映画スクリーンを作り上げて
おり、毎晩のようにその下には個々の 2 階建て商業施
設が天井下の道を挟んで左右に展開され、全体的に
は「天幕街区」という。天幕街区の北側にはモダンチ
ックなオフィスビル 4 棟が一の字型のように並んでおり、
将来にホワイトカラーが沢山ここで仕事することを意
味する。さらに、この商圏のターゲットは周辺地域に
住む住民だけではなく、高級オフィスの職員を狙って
いることを示唆している。
天幕街区の商業施設
特に、2009 年以降、天虹百貨(蘇州店)、印象城(蘇州店)などの新型商業施設も建設され、消費者に
より多くの施設を提供した。しかし、やはりマイカーを持たない下位買い物客にはタクシー以外、交通のオ
プションはあまりなく、市内や高新区の消費者を誘導するための施策が問われている。
工業園区全体は未だに住宅団地+工場団地という位置づけが払拭できず、商業エリアであるイメージ
が弱く、久光だけでは高級消費を支えるほどの集客力は依然と欠けていると思われる。
主要な商業施設:久光百貨(蘇州店)、圓融時代広場、天虹百貨(蘇州店)、印象城(蘇州店)など。
(3)高新区商圏
まだ、成熟商圏としては成り立っていないと判断したため、ここでは省略する。
(4)高速鉄道北駅商圏
まだ、成熟商圏としては成り立っていないと判断したため、ここでは省略する。
(5)石路商圏
まだ、成熟商圏としては成り立っていないと判断したため、ここでは省略する。
(6)南門商圏
まだ、成熟商圏としては成り立っていないと判断したため、ここでは省略する。
2.蘇州概況
「上有天堂下有蘇杭」(天上には天国地上には蘇州・杭州がある)の曰く通り、蘇州は紀元前 514 年に建
設され、2,500 以上の歴史を持つ中国屈指の園林都市、「24 の中国歴史文化名城」の一つ。同里と周庄
などの町は世界遺産としても高く評価されている。
(1)地理、気候
江蘇省の最も東南部、揚子江が中国東海に注ぐ河口水域の近くに位置し、東南には上海市(約
85km)、南西には浙江省(約 60km)と繋がっている。同市は亜熱帯季節風の海洋性気候に属して、年間
の平均降水量は約 1,100 ミリメートル、平均温度は約 20℃で、平均湿度が約 70%と多湿の日が多い。
(2)面積、人口
同市の総面積は 8,488k㎡である。「2010 年中国第六次人口普査」のデータによると、同市の戸籍統計
では、2010 年末に約 637 万人が計上されたが、出稼ぎ労働者など外来人口も含むと 1,177 万人を超えて
いるという。
(3)市区構成
市内の行政区画については、平江区、金閶区、滄浪区、虎丘区・蘇州高新区、蘇州工業園区、呉中
区の6つの区と昆山市、太倉市、呉江市、常熟市、張江港市の5つの県級市を管轄している。
(4)交通
①飛行機
市内に空港はないが、上海虹橋空港から約 70km(移動時間約 1 時間半)、上海浦東国際空港から約
120km(同約 2 時間半)、無錫碩放空港から約 40km(同約 1 時間)、杭州蕭山空港から約 120 km(同約 2
時間半)などと利用は便利である。
②鉄道
滬寧線では、2010 年に入ってこれまでの時速 200 キロメートルの CRH(動力組)から、徐々に時速 300
~350 キロメートルの高速鉄道へシフトしている。現状は、上海まで最速で約 20 分。
③地下鉄
地下鉄 1 号線は 2007 年 12 月着工し、全長約 26km、駅を 24 箇所設置する予定だが、内の 10 箇所が
蘇州工業園区にある。2012 年竣工予定。
地下鉄 2 号線は 2014 年開通予定。地下鉄 3 号線は 2020 年開通予定。地下鉄 4 号線は 2016 年開
通予定。
④高速道路
上海⇔南京高速道路、沿江高速道路、上海⇔南京第二高速道路(2007 年着工、2012 年開通予定)、
蘇州⇔上海高速道路、蘇州⇔嘉興⇔杭州高速道路、上海⇔江蘇⇔浙江高速道路、蘇州外環状高速道
路、空港バイパス、国道 312 号など蜘蛛の巣のように広がっている。