開催報告はコチラ - 京都次世代ものづくり産業 雇用創出プロジェクト

開催概要
元 気 と笑 顔 を届 ける「村 田 製 作 所 チアリーディング部 」の誕 生 秘 話 ・・[講 演 ①]
ロボッ ト の 開 発 に 必 要 な 要 素 技 術 の 進
歩 はめざましい―。京 都 産 業 21 は 9 月 9
日 、ロボット事 業 参 入 のための情 報 発 信 を
目 的 とした「第 6 回 生 活 支 援 ロボットビジネ
ス研 究 会 」 を開 催 。 最 初 の 講 演 で 村 田 製
作 所 の吉 川 浩 一 氏 が全 国 的 に注 目 され
☝10 体 が協 調 移 動 する球 乗 りロボット
ている球 乗 りロボット「村 田 製 作 所 チアリーディング部 」の応 援 パフォーマンスを動 画 で
紹 介 、その制 御 技 術 水 準 の高 さに多 くの聴 講 者 がエールを送 りました。
同 社 チアリーディング部 は、1チーム 10 体 で構 成 され、球 乗 りしながら一 糸 乱 れぬ
動 きで集 団 演 技 する小 型 ロボット(身 長 36cm)。ボール上 で全 方 向 に秒 速 300mm(停
止 精 度 は±10mm)で移 動 するにもかかわらず、「倒 れそうで倒 れない」バランスと「ぶつ
かりそうでぶつからない」チームワークが最 大 の強 み。誕 生 までに約 20 名 のメンバー
(社 外 含 む)と約 3 年 間 の開 発 期 間 を要 したこのロボットは、3 つのジャイロセンサが体
の傾 きを計 測 し、体 の重 心 を地 面 とボールの真 上 でキープするという“離 れ業 ”を身 に
つけている。10 体 が協 調 する群 制 御 システムは京 都 大 学 大 学 院 の松 野 研 究 室 と共
同 研 究 している。
部 品 の機 能 や性 能 をロボットに置 き換 えてアピールするのが狙 い・・[講 演 ①]
講 演 で吉 川 氏 は、ロボット開 発 の目 的 についてロボットビジネスに参 入 する考 えのな
いことを強 調 したうえで、「当 社 が創 業 70 周 年 (2014 年 )を迎 えることと、存 在 が分 かり
にくい部 品 の機 能 や性 能 をロボットに置 き換 えてアピールするのが狙 い 」と説 明 。開 発
の企 画 フェーズについては「アイデアがなかなか決 まらなかった。ようやく目 標 設 定 を
“驚 きと感 動 ”に決 めて球 乗 りロボットの機 構 開 発 を目 指 したものの制 御 方 式 をめぐっ
て試 行 錯 誤 が続 いた」と回 想 。そこで、倒 立 制 御 の最 適 条 件 を探 索 していたところ東
北 学 院 大 学 の熊 谷 正 朗 教 授 に出 会 い、同 教 授 から「過 去 にある自 己 の知 見 を否 定
してはどうか」という助 言 によって開 発 は急 ピッチで進 んだという。
チアリーディングロボットに採 用 されている制 御 技 術 は「Stability(倒 立 振 子 制 御 技
術 )」、「Synchronization(群 制 御 技 術 )」、「Sensing and Communication(超 音 波 位
置 計 測 技 術 )」の 3 つの S。このうち、超 音 波 位 置 計 測 技 術 について「住 居 の温 度 管
理 など生 活 を豊 かにするスマートハウスの進 化 に役 立 つ」(吉 川 氏 )とロボット分 野 以
外 でも用 途 開 発 は進 むとの見 解 を示 しました。現 在 、チアリーディング部 に所 属 する
部 員 数 は 3 チーム 36 体 (補 欠 部 員 含 む)に増 員 しており、世 界 のイノベイターを応 援
するツアーの出 番 を待 っている。
超 音 波 位 置 計 測 システムの開 発 にプロアシストがサポート・・[講 演 ②]
引 き続 き、チアリーディング部 の超 音 波 位 置 決 めシステムの開 発 をサポートしたプロ
アシストの亀 井 達 也 氏 にバトンタッチ。外 部 パートナーの同 社 は 10 体 のロボットが群 に
なって各 自 が向 きを変 えながら移 動 するための位 置 ・方 位 計 測 システムの開 発 を担 当 。
主 力 事 業 は制 御 機 器 の設 計 ・開 発 で従 業 員 数 150 名 のうち 8 割 にあたる 120 名 が研
究 開 発 者 という技 術 集 団 。
亀 井 氏 は、ロボット動 作 の仕 組 みと超 音 波 位 置 計 測 のシステム要 件 やそれを実 現
するための対 策 事 例 について解 説 。超 音 波 センサシステムの応 用 について「プライバ
シーに配 慮 した離 床 予 測 装 置 の開 発 を進 める計 画 。また、買 い物 カゴに発 信 装 置 を
取 り付 けることでスーパーなどでの買 い物 客 の動 線 検 出 にも適 用 できる」 (亀 井 氏 )と
述 べ、介 護 や流 通 分 野 への用 途 開 発 に意 欲 を示 しました。
「理 詰 め」対 「着 想 」・・[講 演 ③]
理 詰 めで行 きますか、着 想 で行 きますか―。続 いて京 都 大 学 の前 川 佳 一 氏 が「アイ
デアから事 業 化 へ」と題 して講 演 。前 川 氏 はイノベーションの定 義 について「技 術 革 新
や発 明 はイノベーションではない。社 会 ・経 済 的 価 値 をもたらす革 新 のこと」と説 明 した
あと、「理 詰 め」対 「着 想 」の 2 つの視 点 、そして新 しいマーケティング手 法 などについて
持 論 を展 開 、持 ち前 の軽 妙 なトークで会 場 を沸 かせました。
前 川 氏 は、京 都 大 学 工 学 部 卒 業 後 、三 洋 電 機 に入 社 。30 年 近 く映 像 機 器 開 発
やデジタル機 器 の技 術 ・企 画 に従 事 した経 験 を活 かし、京 都 大 学 ではイノベーション
や事 業 企 画 を専 門 に研 究 している。
前 川 氏 は、アイデア段 階 から事 業 化 へ進 むステップとして「“理 詰 め”と“着 想 ”の 2
つの手 法 がある」と主 張 。具 体 的 には企 業 活 動 を根 気 よく続 けてリ ソ ー ス を 投 入 す れ
ば 必 ず 目 標 を 達 成 す る こ と が で き る 「 ジ グ ソ ー パ ズ ル 型 ( 理 詰 め ) 」 と 、 幸 運 な気
づきがもたらすブレークスルーがないと目 標 達 成 が難 しい「 知 恵 の 輪 型 ( 着 想 ) 」 と い
う 2 つの、一 見 すると矛 盾 するような研 究 ・開 発 が 存 在 することを示 しながら、
業 務 プ ロ ジ ェ ク ト に 対 し て どのようなマネジメントができるのかを、これまでの豊 富 な経
験 と実 績 を交 えながら提 示 しました。
また、マーケティング学 者 の T.レビットの「アイデアマンの大 罪 」「創 造 性 礼 賛 こそ有
害 」の言 葉 の意 味 を「創 造 力 豊 かな人 材 はイノベーションや成 長 の原 動 力 とは限 らな
い」と前 川 流 に解 釈 し、「イノベーションにアイデアは必 要 である
が、それがすべてではない。むしろそれを根 気 強 く実 現 させて
いく行 動 力 こそがイノベーションの完 遂 に欠 かせない」と指 摘 し
ました。
さらに、ニーズ発 掘 の場 面 でも「シーズ起 点 (理 詰 め)」と「問
題 解 決 指 向 (着 想 )」の 2 通 りのアプローチが存 在 するとし、「片
方 がダメなら、もう一 方 で試 してみること」と助 言 しました。前 川
氏 による講 演 内 容 は自 著 「パズル理 論 」(白 桃 書 房 )に紹 介 されています。
日 双 工 業 と日 進 製 作 所 の 2 社 から事 業 ビジョン紹 介 ・・[自 社 PR 発 表 ]
当 研 究 会 の会 員 企 業 によるロボット事 業 への取 組 みが 相 次
いでいる―。自 社 PR 発 表 コーナーでは、日 双 工 業 の神 代 浩 司
氏 (創 造 企 画 部 長 )が自 社 の得 意 とする金 属 切 削 加 工 技 術 を
紹 介 。このあと、子 供 達 がものづくりの楽 しさを味 わえる手 のひ
らサイズのお相 撲 ロボット「コロマロ君 」(写 真 右 )を商 品 化 する
計 画 のあることを明 らかにしました。
続 いて、エンジン部 品 製 造 や自 動 ホーニング盤 メーカーの日 進 製 作 所 の錦 織 晃 氏
(新 規 事 業 推 進 部 主 幹 )が自 社 のグローバル事 業 概 要 について説 明 。事 業 ビジョンに
ついては「自 社 が得 意 とする機 構 設 計 や製 造 技 術 を活 用 して健 康 で幸 福 に生 きるた
めの機 器 開 発 を目 指 す」と異 業 種 参 入 への意 欲 をみせ、生 活 支 援 機 器 と医 療 機 器
の 2 分 野 に活 動 領 域 を絞 り込 み、開 発 体 制 を固 めていく方 針 を示 しました。
医 療 分 野 で拡 大 余 地 の大 きい超 音 波 利 用 ・・[ディスカッション]
超 音 波 は医 療 分 野 で用 途 拡 大 が見 込 める―。パネルディスカッションでは当 研 究
会 総 合 アドバイザーの松 野 文 俊 氏 がモデレータとなり、講 師 の吉 川 浩 一 氏 、亀 井 達
也 氏 、前 川 佳 一 氏 に加 え、当 研 究 会 サポーターである吉 川 典 子 氏 がパネリストとして
参 加 、ロボット要 素 技 術 の展 望 やロボットビジネス参 入 の課 題 などについて活 発 な意
見 が交 わされました。
最 初 にチアリーディング部 の開 発 の狙 いを松 野 氏 から聞 かれた吉 川 浩 一 氏 は「世
界 中 の人 々に夢 を感 じてもらうこと」と即 答 。完 成 までのプロセスでは「外 部 の協 力 がな
ければ何 も実 現 していなかった」と振 り返 るとともに、「ハード・ソフト、部 材 、デザイン、
社 会 貢 献 度 などで構 成 されるロボットづくりは単 独 ではできない」とロボットづくりは複 合
化 していると指 摘 しました。
ロボット制 御 の開 発 をサポートした亀 井 氏 は、ロボットの位 置 情 報 を画 像 認 識 に置 き
換 わる超 音 波 によって計 測 できるようになったことについて「 この技 術 は高 齢 化 が進 む
ヘルスケア分 野 に幅 広 く応 用 できる」と語 り、同 分 野 でのシステム提 案 を強 化 していく
考 えを示 しました。
超 音 波 は医 療 分 野 で用 途 拡 大 すると予 想 されている―。医 療 ニーズに詳 しい吉 川
典 子 氏 は超 音 波 の医 療 分 野 での利 用 状 況 について「超 音 波 画 像 診 断 装 置 のほか子
宮 筋 腫 や骨 がんの治 療 にも使 われており、拡 大 余 地 は大 きい」と説 明 したうえで、「用
途 拡 大 のためには超 音 波 のリスクを同 時 に評 価 していく必 要 がある」と指 摘 しました。
「わくわく感 」を共 有 することがロボット事 業 成 功 の鍵 に ・・[ディスカッション]
一 方 、ロボットの市 場 形 成 について前 川 氏 は「市 場 を拡 大 させるためにはファンドの
協 力 が望 ましいが、大 きな期 待 は持 てない。それよりもアイデアを事 業 化 することが重
要 で飽 きずにやり遂 げること」と指 摘 。また、ビジネスを拡 大 するためには「ニーズとシー
ズがタイミングよく出 会 うことのできるネットワークは欠 かせない。当 研 究 会 はそういうマッ
チングの場 でもある」と語 り、根 気 強 い粘 りと人 脈 づくりの重 要 性 を強 調 しました。
フロアからの発 言 も。その声 を拾 うと「大 学 発 ベンチャーの当 社 はロボットを使 った解
体 業 がメイン。5K の解 体 現 場 でロボットの位 置 情 報 を知 る超 音 波 に興 味 をもった 」、
「当 社 の技 術 だけでは目 標 とする事 業 化 は困 難 。自 社 は何 ができるか、足 りないところ
のパーツをどう補 足 するかがこれからの課 題 」、「歯 の噛 み合 わせにより将 来 起 こる病
気 を予 想 できるシミュレーションソフトを搭 載 したロボットを開 発 した。歯 科 医 院 に売 り
込 みたい」といった意 見 や研 究 会 に参 加 した感 想 などが聞 かれ双 方 向 から熱 い議 論
が交 わされました。
最 後 は松 野 氏 が「チアリーディング部 の開 発 起 点 である“わくわく感 ”を 共 有 すること
が事 業 化 成 功 の鍵 になる」と締 めくくりました。次 回 開 催 は 11 月 20(金 )を予 定 。