2015 年新年のご挨拶 山口大学長 岡 正朗 皆様、新年明けまして

2015 年新年のご挨拶
山口大学長 岡 正朗
皆様、新年明けましておめでとうございます。穏やかな新年を迎えられたこととお慶び
申し上げます。新しい年を迎え、年始のご挨拶を申し上げます。
1.山口大学の歴史について
2015 年と言えば、皆様ご存知のように、山口大学が創基 200 周年を迎える年に当たりま
す。東京大学、東北大学に次ぐ、3番目に歴史のある大学、誇りある大学です。山口大学
は、1815(文化 12)年、長州藩藩士の上田鳳陽先生によって設立された私塾「山口講堂」
を前身とし、以来、永きにわたり山口県における高等教育を担ってきました。今日は理事
全員とともに、鳳陽先生のお墓参りに行き、歴史の重さを改めて感じたところです。山口
講堂は幅約 10m で奥行が約 7.3m の小さな学校でしたが、今や1万人を超える学生が学ぶ
山口大学に大きく発展しました。山口講堂は、山口講習堂、山口明倫館と名前を変え、大
きくなって行きますが、その間、明治維新が成し遂げられます。1月4日、昨日より始ま
った NHK 大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公の一人、楫取素彦(最初は小田村伊之助)や医師
であり兵学者である大村益次郎も講義を行った記録があります。創基 200 周年記念の最大
の事業は、山口大学基金の設立にあります。山口大学では、45%前後の学生が奨学金を受
けており、さらにアジアからの多くの留学生が学んでいます。これらの学生の支援のため
に、皆様から頂きましたご厚志は、大切に使わせていただきますので、さらなるご協力を
お願いいたします。
2.大学を取り巻く状況について
ご存知のように、大学はグローバル化、イノベーションそして地域貢献をキーワードと
して迅速かつ確実な大学改革が求められています。これは、文部科学省だけではなく、財
務省や産業界からも強い要望があるからです。残念なことは、高等教育の未来についての
議論よりも財政の観点からの議論である点です。国立大学が法人となって 10 年を経過しま
すが、大学を運営するための運営費交付金が毎年減らされて、山口大学では約 20 億円が削
減されることになります。このような中で、文部科学省は平成 25 年~27 年度を大学改革の
加速期間とし、さらに第3期中期計画が始まる、平成 28 年度(2016 年度)からは改革の
状況に応じて運営費交付金に歴然とした差をつけると既に公表しています。また、第3期
には世界最高水準の教育研究を行う大学、特定分野で世界的な教育研究を行う大学、地域
活性の中核となる大学の3つに分類し、グループ内での競争を生みだし、運営費交付金に
差をつける案も大きく取り上げられています。もちろん、急激な 18 歳人口の減少は、特に
地方大学にとって学生の確保という観点から、極めて厳しい状況にあることは言うまでも
ありません。
3.大学の運営方針と「明日の山口大学ビジョン」について
昨年4月に学長を拝命しましたが、学長就任に際しては、次の3つを大学改革の基本指
針として掲げました。
Ⅰ 学長のリーダーシップのもと教職員一体となった戦略性のある大学運営を実行
Ⅱ 新学部設置を含む特色ある教育改革により地域や世界で活躍できる人材を育成
Ⅲ 研究支援の強化により地域に誇れる大学としての基盤を固め、山口から世界を
目指す
これらを実現するために、改革の3S:Strategy(戦略性)、Sustainability(継続性)、
Sympathy(共感)が重要であり、トップダウンとボトムアップを相補的に組み合わせたト
ップボトム循環により改革を行うことが大切であると考えています。
大学の運営方針は6年ごとの中期計画にあります。平成27年度は、国立大学法人の第
2期中期目標期間の最終年度となります。引き続き、第3期中期目標期間に向けて、本年
6月を目途に大学として目標・計画を策定する必要があります。昨年から 10 年後の山口大
学を想定し、新たに「明日の山口大学ビジョン 2015」を策定することとしました。既に学
内の会議等で何度か議論していただきましたが、1月中には取りまとめ、これを基盤に第
3期中期目標を策定する予定ですので、ご協力をお願いいたします。
(1)教育改革
私はこの1年間を、創基 200 年を祝うとともに、新たな一歩を踏み出す年、
「新生山大元
年」と捉えています。なぜなら、皆様のご協力により山口大学では4月からグローバル化
及び社会ニーズに応える新学部「国際総合科学部」がスタートし、教育学部の教員養成に
特化した再編、経済学部の5学科から3学科への再編が始まります。全国の国立大学の中
で、新学部が認められたのは僅か2大学であり、まさに、国立大学法人の中で大学改革の
先頭を切ったと言えます。また既に、医学部附属病院では病院再々開発の先頭を切って新
病棟の建設も始まっています。山口大学の改革の動きに、文部科学省は大いに期待を持っ
て見ていただいていると強く感じています。本年には研究院の設置を行い、平成 28 年度に
は人文学部の再編、教職大学院の設置、理系大学院の再編など第3期中期目標期間に皆様
とともに着実な改革を行うことで、社会にとってなくてはならない大学として発展できる
と確信しております。
(2)イノベーション
研究分野のイノベーションでは、既に重点研究分野を選び支援する「新呼び水プロジェ
クト」を開始し、昨年の 12 月には「先進科学・イノベーション研究センター」を設置して
おり、さらに具体的な研究支援を行う方針です。また、このセンターを中心に、URA や知
財の協力のもと、積極的な外部資金の獲得に乗り出します。幸いなことに皆さんの努力に
より、本年度の科学研究費の採択率は 31%と初めて 30%を超えており、さらに躍進するこ
とを期待しています。また、女性教職員の活躍が期待されており、文部科学省の女性研究
者支援事業に採択され、しっかりと取り組みたいと思います。
(3)地域貢献
安倍政権は、最重要課題として「地方創生」を掲げ、その実現に向けて長期ビジョンと
総合戦略を閣議決定しました。大学のミッションの再定義においても、地方大学にとって
地域貢献が重要であることが再確認されているところです。山口大学においても、県や市
などの地方自治体や地元企業とより深い連携を図り、地域に密着した人材育成や、産業振
興、少子高齢化などの様々な問題解決に貢献していく必要があります。私は就任以来、山
口県はもちろん、全ての市長さん、2町を除く町長さんのところに出向き、
「山口大学は山
口県にある大学ではなく、山口県の大学である」ことをお伝えし、学生教育を含めたご協
力をお願いするとともに、お役に立ちたいことも述べてまいりました。その窓口として「地
域未来創成センター(仮称)
」を立ち上げるとともに、文理融合による「やまぐち学教育研
究センター(仮称)
」の構想を練っているところです。
4.結びに
繰り返しになりますが、私はこの1年間を、創基 200 年を祝うとともに、新たな一歩を
踏み出す年、
「新生山大元年」と捉えています。1月4日の新聞で、京セラの名誉会長であ
る稲盛和夫さんが書かれていました記事に、
「利他の心」という言葉がありました。利他と
は、利益の利に他人の他と書きますが、自分の利益を追求するのではなく、他人の利益を
図ろうとする考え方です。私たちには、国立大学として、地域の基幹総合大学として、社
会からの期待に応えることが求められています。すなわち、大学の役割である社会に役立
つ人材、社会に役立つ研究成果を生み出すことはまさに「利他の心」と言え、私を含めて
大学人全てが心すべき言葉と考えます。今年は「未年」
、未来への希望が持てる年とされて
います。皆さんとともに未来に向かって大きく踏み出す所存ですので、絶大なるご支援と
ご協力をお願いいたします。
最後になりましたが、新しい年が、学生・教職員の皆さん、山口大学、我が国日本、
そして人類社会にとり良い年になりますよう心から祈念して、年頭のご挨拶といたします。